ニンテンドーDSのゲーム、『ロストマジック』です。
タッチペンで魔法陣を描いて魔法発動、攻撃が売りの、
リアルタイムシューティングみたいなゲームです。
クリアまでは17時間半でした。
どんなゲームかははっきり覚えていないのですが、
やりながら、スーパーファミコン版の
『魔法陣グルグル』を思い出しました。
ゲームの総評は、『いらつく』です。
ダメゲーム方面のひどさではないのですが、
決して良くはありません。
原因は、すべて『制限』にあります。
「ハリウッド映画なんかじゃ、
ドラマツルギーとして制限がありますよね。
制限つけるとはらはらどきどきして、
ナウなヤングにチョーばかうけですよ!」
なんていう開発の声が聞こえてきそうです。
とにかく、すべてにおいて制限があります。
このゲーム、イメージとしては、
戦略ゲームの『フロントミッション』っぽいシステムです。
でもプレイヤーは、一ユニット一ユニットで
コマンド入力することはできません。
味方キャラも勝手に動きます。
つまり、『フロントミッションオルタナティブ』です。
プレイヤーができるのは、移動位置を指定するだけ。
ここらへんもフロントミッションオルタナティブっぽいです。
さて、制限の話です。
●01 MP制限
主役は魔法使いで、使ったMPは時間がたつと回復します。
でも上限が決まっているので、ずっと待ったからといって
魔法が連続して使えるようにはなりません。
●02 MP回復制限
MP回復の量は、マップにある
クリスタルの数で決まっています。
でもこのクリスタル、初めは敵のものです。
それを奪って自分のものにしていくと、
回復量が増します。
数を増やすまでは、回復はとても微妙で、
全快までにやけに時間を必要とするのです。
●03 ミッション時間制限
このゲームの最悪な部分です。
このゲームがあくまでタクティクスシミュレーションに
ならない原因の一つでもあります。
基本的に、ノーマルバトルは1マップ5分。
ボス戦は1マップ10分です。
わたしがゲームをやる理由には、
理不尽な事だらけでどうにもならない世界で失った、
自己統制感を多少なりとも補完したいという
気分があるわけです。
たとえばスーパーでパックのお寿司を買って来て
家で食べる時は、それを自分の思い通りに
食べられるというところが好きです。
「まずは大して好きでもない、
タレつきのを食べちゃって、それからたまご。
イカは二個入ってるからその次に一つ食べちゃって……
最後はサケ? でもおいしくなかったら困るから
最後の前にサケを食べちゃって、
やっぱり締めは無難にイカかな」
なんて思いながら食べるわけです。
でもこのロストマジックは、
パックのお寿司を買って家で食べようと思ったら、
なにを考えたんだか、お店の人がついてくるんです。
そして家に入るとわたしの前にパックを置いて、
「さあ、食べてください! ただし時間は5分間。
その間に食べられなかったら、
お代はいただきませんが、全部戻してもらいます。
もちろん、すでにおなかに入ったものもね」
なんて言うのです。
……そんなこと言われながら食べて、
食事がおいしいわけないでしょう?
このゲーム、上記のように
主役のMPは時間回復制です。
つまり、実質的にMP回復回数は
限られているということです。
しかも基本的に、クリア時間はぎりぎりになるよう
ゲームバランスが設定されています。
そしてこのゲームの一つの売りだと思うのが、
敵を弱らせて捕獲して、
自分のユニットにするシステムです。
敵は叩きすぎると死んでしまうので、
弱い魔法でちょろちょろとダメージを与えつつ、
捕獲したいと思うのが人情です。
でもミッションの時間制限により、
そんなことはしていられません。
どちらかといえば、何も考えずに
全軍でとっかん(全軍突撃)していかなければ
時間内にクリアなんてできません。
そのため、みんなで戦っているその隙に、
最大戦力である自分が戦うことを放棄し、
その敵を捕獲するために、
捕獲魔法陣の準備をしているわけです。
そして敵のHPが、捕まえられるほど減ったところで
即座に発動して捕獲という
ぎりぎりの行為で敵を捕まえます。
それが。時間内にクリアできなかったら、
全部無効です。
普通に戦ったら勝てる相手でも、
自分たちの足が遅いせいで、火力が足りないせいで、
時間内に倒せずゲームオーバーなんてざらにあります。
そのため、敵を捕まえようとする行為も
「また今回も時間切れで無駄になるかもなあ」
なんて思ったらやる気がなくなってくるのです。
ちなみに、一番の敵は、
とっかん防止壁&集中回復をしてくる土の賢者でした。
仲間がぼろぼろとやられていき、
最後はボスと自分との一騎打ち。
自分はなんとか死なずに魔法を使えて、
回復しながら攻撃魔法を使ってみるのですが、
カベを貫通する魔法では火力がたりません。
向こうは壁をはり、ケアルガの連続魔で
HPを全快させ続けます。
それでも時間があれば倒せると思うのに、
いつも時間切れで終了。
まあ、ボス戦はほんとにいつもそんなものですけど。
1回10分を1時間以上繰り返して、
その時ばかりはさすがに限度を超えました。
一瞬DSを投げつけたくなったところをこらえて、
手を叩きつけたくなったところもぎりぎりこらえて、
手近にあった雑誌を床に思い切り投げつけました。
本当に不愉快なゲームです。
ここに時間制限がある意味が、まったくわかりません。
たとえば主役のマナが5分しかもたないとか
ストーリー上で設定が述べられているならまだしも、
ただ制限をつけたかったからつけたとしか
思えないようなところが腹立たしいです。
無駄に難易度をあげることに何の意味があるのでしょうか。
せめて、ボス戦闘では時間制限があっても、
ノーマル戦闘では敵を捕獲できるように、
時間なしプレイにしてほしかったと思います。
●04 レベル制限
レベルがあるゲームにおいて、
敵に勝てない時はこれ、という常套手段。
それはレベル上げです。
ゲームはこの腐った世界と違い、
努力すればするだけ報われるのがいいです。
LV1の主役でさえ、LV99になれば
ひとりで魔王を倒せたりする、それがゲームです。
でもこのゲーム、それができません。
そもそも前述のとおり、
バトルは雑魚戦闘でさえゲームオーバーになるという
ばくちのようなもの。
しかも上げられるレベルは50までです。
さらには自分のレベルが上がれば敵のレベルもあがり、
LV50でも勝てたり勝てなかったり。
……なんでしょうか、このゲーム。
●05 魔法レベル制限
魔力の最大値はLVが最大を迎えることによって
確実に決まってしまっています。
不思議な木の実のようにMPの上限を上げるアイテムも
存在しません。
でも、魔法を使い込んでいると、
『FF2』のように魔法レベルが上がり、
その系統に属する魔法の消費MPが下がります。
もしかすると、威力もあがっているかもしれません。
そこで使い続けてみたところ。
片方を使い続けると、反対属性の魔法のレベルが下がります。
たとえば火を使い続けると、水のレベルが下がります。
すごく、いらだちます。
●06 仲間制限
自分の強さが決まっているなら、
強い敵を仲間にして使役すれば?
という考えを叩き潰すのが、この制限です。
モンスターはあくまでモンスターですが、
いったん捕まえたモンスターは、
見えないところで主役が洗脳し、
常に洗脳しつつ戦わせていると思ってください。
主役には、その『洗脳力』というようなものが存在し、
たとえば洗脳しにくいモンスターは
必要洗脳力が5ポイント、
しやすいモンスターは2ポイント、など
固定値が割り振られています。
この洗脳ポイント、主役の最大値は11です。
ちなみにモンスターの特徴はこんな感じ。
・2ポイント……ゴミ
・3ポイント……ひやかし
・4ポイント……使える、という感じ
・5ポイント……戦力
ドラクエに置き換えるとこんな感じです。
・2ポイント……あそびにん
・3ポイント……LV10魔法使い
・4ポイント……LV30武闘家
・5ポイント……LV60戦士
この中から合計が11以内になるようにキャラを選び、
ラスボスと戦わないといけないということは、
つまり、すべてを戦力にして戦うことはできない
ということです。
しかたなくわたしが選んだのは、
5・4・2 の組み合わせです。
ラスボス相手に遊び人を連れて行かなければいけない、
この屈辱感がわかるでしょうか。
自分で選んで連れて行っているのではなく、
それ以外選べないからと
連れて行かされているのです。
もちろん戦力になるわけもなく。
戦闘中は後ろであそんだりくるくるまわしたり
転んだりしてるだけです。
●07 仲間能力制限
仲間には、固有の設定があります。
空を飛んでいるもの、遠距離攻撃ができるもの、
そして――クリスタルの浄化ができるもの、です。
前述のとおり、主役のMP回復力は
マップのクリスタルの数で決まります。
基本的にクリスタルは敵が守っているので、
その敵を殺しつくしてから自分の血をかけて
クリスタルを自分のものにするわけです。
となると、敵を倒すのには、
敵を倒せる強いモンスターをいかせるのが
妥当でしょう。
でも、5ポイント、4ポイントクラスのモンスターには
浄化能力がないものがかなりあります。
逆に、浄化能力があるものは
足がおそかったりなにかにかけていたりと
ろくでもないものばかり。
モンスターだけでクリスタルを浄化させたいと思えば
5ポイントの強いモンスターに、
2ポイントの遊び人を後ろにつけて、
倒し終わったあとで浄化させる、
という手段しかないわけです。
これで平均は3.5ポイント。
3ポイントのモンスター2グループいれているのと
同じ計算になってしまいます。
また、モンスターは、1キャラを捕獲したとしても、
自分が使役するときはグループになっています。
たとえば同じ5ポイントでも、
ドラゴンはフィールドでは1匹。
タコはフィールドでは2匹。
攻撃力が200の仲間一匹と、
攻撃力が100の仲間二匹と、どちらを選ぶか
といったような天秤もここにあります。
ここで問題となるのは、
クリスタルの占領と、敵の召喚陣の妨害です。
フィールドには敵モンスターが勝手に涌いてくる、
召喚陣のようなものがあるときがあります。
マップクリア条件が敵の全滅のとき、
召喚陣を塞いでいなければ、
いつまでたっても終わらずに時間切れ、
なんてこともよくあります。
この召喚陣を動作させないようにするには、
味方ユニットを一匹、その上に
置いておく必要があります。
たとえば仲間の数が3匹しかいなくて、
マップ上に召喚陣が4つあれば、
そのマップはもうクリア不可能です。
そのために、ボス戦では召喚陣をふさぐために
仲間を分散させて、
自分と仲間モンスター一匹で
ボスと向かいあわなければいけない、
なんてこともありました。
そのほかにも、戦闘開始から敵におそわれるとか、
始まってみれば仲間は別の場所にいて
自分ひとりで敵に惨殺されるとか、
製作者の悪意がそこかしこでにおってくるのが
本当に腹立たしいゲームでした。
●08 仲間の数制限
敵の全部の種類を自分の仲間に! というのはできません。
保持数に制限があります。
●09 アイテムの数制限
仲間に装備するアイテムしか存在しませんが、
このアイテムもちょっとしかもてません。
そもそも5種類くらいしかないのですが、
3グループある仲間に全部装備する予備をと思うと、
15個必要なのにそれすらもてません。
マップで付け替えるということもできないのです。
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その他のもろもろとしては、
・アイテムの種類がすくなすぎます。
加えて、意味がよくわかりません。
アイテムを装備することにしても、
仲間キャラを変更するにしても、
ステータスの変動が見えないのです。
まずは紙に手で書きつけて、
はずしてどうか、交換してどうかと
見ていかなくてはいけないのはすごく手間でした。
・モンスターグループが微妙
モンスターは一キャラごとだと思ったのに、
グループ単位で仲間になっているのが驚きでした。
それも、加えられるのは三グループだけなんて。
それよりも、一モンスター一キャラとして、
たくさんのモンスターを指示したかったです。
・バランスが微妙
ボス戦闘では、倒したはずの雑魚敵が
いつまでたっても死んでいないことにびっくりしました。
よく見ていたら、HPがかなり減ったところで、
ボスがHPを回復させていたのです。
そのため、攻撃力の低いキャラで戦わせていたら
いつまでたっても雑魚ですら倒せませんでした。
ボスもその手を使ってくるため、
うまくやらないと時間切れまで延々と戦わされます。
これがすごくいやらしく感じました。
自分は体力を回復しようとしても、
魔法陣入力画面を呼び出すまでに
タイムラグがあり、しかも魔法効果がだらだらと流れる間、
魔法陣入力画面も呼び出せず、
移動することすらできません。
自分を守るの壁がない状態で
敵に見つかったらほぼ死亡決定です。
・AIが微妙
マップによっては、はじめっから敵と遭遇しています。
または、敵が勝手にやってきて、戦闘を開始します。
こちらがマップを見回している間に戦闘が起こっていて
やられているというのもよくありました。
しかもその間、味方モンスターは仲間がやられているのに
何一つ行動しようとしないのです。
それとは逆に、敵の召喚陣をつぶすために
上に乗せているキャラが、周りの戦闘に加わろうと
その位置をどいてしまうこともすごくよくありました。
ほんとうにばかでばかでいらいらさせられました。
・システムが微妙
戦闘でそれはもう何度もゲームオーバーになるのですが、
コンティニューは、セーブからリロードと
同じようなものでした。
やり直しは移動→会話を全部やらせられます。
せめてその戦闘の最初からやりなおすくらいは
させてほしかったです。
また、戦闘中はソフトリセットも退却もないので
やりなおすのはすごく手間でした。
さらに戦闘では、魔法エフェクト中は
仲間にカーソルを合わせることも、
移動させることもできないのが納得できませんでした。
ついでに、新しい魔法陣をもらっても、
描けないことがありました。
上に小さく見本は出ているのですが、
下のタッチパネルでどうかけば正解なのかがわからず、
ミスで終わってしまうのです。
かといって練習モードがあるわけでもなく、
雑魚戦闘で練習しようと思っても
下手をすればゲームオーバーという仕様では
試している暇なんてありません。
まとめ。
ユーザーのことなんて何一つ考えられていないシステム。
一方、あくまで苦しめてやるよ、という
製作者側の悪意はそこかしこにちりばめられていて、
うんざりするほどにおってくるので
正直楽しんでプレイすることはできませんでした。
わたしの目の前で、製作者が
「いいゲームになったと思うので、
楽しんでプレイしてください」
なんて言っているのを見かけたら、
思い余って床に雑誌を叩きつけたのと同じように、
その顔面に力いっぱい雑誌を叩きつけたくてたまらない、
そういうゲームでした。
クリアしたあとは達成感でなく、
「これでもうこんなのはやらなくていいんだ」
と思って、ただほっとしました。