ヒーリングっどプリキュア全45話が完結したが
この作品では敵との和解は成立しなかった
今回はその点も踏まえながら
プリキュアの残したメッセージを考察したい
まず44話におけるあすみさんの選択を振り返る
沢泉さんは夢を欲張ること
平光さんは失敗を恐れないこと
花寺さんは心も身体も自分のものであること
そんな彼女たちの気づきから
あすみさんは学び、こう言った
「皆さんのことも人間界そのものも守りたい
欲張りたいのです、やってみれば
何かが変わるかもしれないでしょう?
失敗を恐れすぎてはいけません
皆さんの過ごして重ねてきた経験は
今の私を作っているのです
どんなに反対されても私は実行します
私の心も身体も私のものですから」(44話)
こうしてあすみさんはキングビョーゲン
浄化のための最も危険な作戦を遂行したのだ
実はヒープリにおいては妖精側のほうが
いわゆるプリキュアの型にはまっている
少し子どもなところもあるが
正義感は人一倍強いラビリン
引っ込み思案だが本当は勇気を持つペギタン
のりは軽くも頭のいいニャトラン
そして中盤からプリキュアのパートナーに
覚醒したラテといった具合に
一方でプリキュアの側は
そのイメージとはやや異なる
花寺さんは確かに人一倍の優しさはあるが
皆の成長から学び、強くなったのは
主人公ではなく追加戦士なのだ
しかもその戦士は人間ではなく
ヒーリングガーデンの出身である
なぜヒープリは従来のプリキュアの型に
はまらないのだろうか
そのヒントは最終話にあった
あすみさんに人間を嫌がる理由を問われた
サルローさんはこう答えた
「わからんか?
人間などもはやビョーゲンズと変わらんからだ
(中略)
俺に言わせりゃヒーリングアニマルは
人間だって浄化すべきなんだ、
この星のためにな」(45話)
前回の感想の最後にビョーゲンズと人間とは
同じなのではないかという仮説を上げた
だがこのサルローの言葉はある意味で
それよりも厳しいものである
なぜなら地球を救ったプリキュアに対してさえ
特権的な地位を認めず人間として浄化
すなわち消滅すべきだと主張するのだから
しかもプリキュアに好意的な
テアティーヌさんでさえ
「私もいざというときが来たら
人間を浄化する覚悟はあります」(45話)
と述べる
地球を傷つけるものは誰であろうと敵
それはビョーゲンズでも人間でも同じなのだ
となると妖精たちの「プリキュアらしさ」
についても理解できる
すなわちこのストーリーにおける主人公は
人間ではなく地球を守る使命を持った
ヒーリングアニマルなのである
花寺さんが拒んだビョーゲンズを
みんなのため自分の身に引き受ける勇気を
持ったのがヒーリングガーデン出身の
あすみさんであったのもそのためである
前作のスタプリには宇宙を創造した
プリンセスが登場したが
彼女たちは無限の力も絶対的正義も
持っていなかった
だからプリキュアがその力を乗り越えられた
(これについてもいずれ触れる予定です)
一方ヒープリには絶対的正義が存在する
それは自然である
「生きることは戦うこと」
最終決戦における花寺さんと
キングビョーゲンの回答は同じであった
それは自然という絶対的正義の前では
生命は無力だからである
自然に依存して生きている以上
それを乗り越えることはできない
彼らは決して勝者にはなれず
自然の機嫌をうかがいながら
生きるため戦い続けるしかないのである
花寺さんは自分の身体であることを理由に
ダルイゼンの受け入れを拒んだが
地球のためにシンドイーネを取り込んだ
これはつまり
敵の生存<自分の身体<地球の平和
ということを意味する
自然の支配の中で生き続けること
それがわれわれ人類を含む全生命に残された
唯一の選択なのである
ヒープリの回答はそんな生命の無力さと
それでも生きたいという決意
まさに「生きてくって感じ」なのだ