夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第一次内惑星戦争 第二話

2020-05-19 18:00:00 | 第一次内惑星戦争
この作品は本編にて一切描かれていない第一次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』及び『宇宙戦艦ヤマト2202』に基づいてはおりますが、公式設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。 拙い文章ですので過度な期待はしないでください。


前回の話を読まれていない方は、こちらから先に前回の第一話を読まれることを推奨いたします。




艦隊壊滅の一報は消滅を免れた残存艦によって伝えられ、参謀本部は初めて新兵器の存在を知ることになった。
火星では開拓当初より兵器の開発は行われていたが。(主に地球と火星の重力の差により、地球製兵器では100%のパフォーマンスが発揮できなかったからである。)
今回のこの新兵器は公式的には軌道上のスペースデブリの除去のために開発されたレーザー装置とされており、民間企業が進めていたため地球の国連軍司令部まで情報が伝わっていなかったからである。

この大敗の報は報道管制も虚しく、すぐさま各管区で報じられ、元々これは侵略戦争として批判がなされていた為、地球人類は厭戦ムードに包まれた。
更に、火星軍は質量兵器としての遊星爆弾を用いて地球への攻撃や外惑星航路の封鎖で資源供給の停止などを行い一部の市民生活に徐々に打撃を与えていったのもその厭戦ムードの醸造の一助となっていた。
国連の本部が所在するアメリカ、ニューヨークでは大規模なデモが行われるも、その声はすぐに武装警察によって鎮圧されてしまった。
各国は地下にシェルターを建設し、一部の国民は空襲の度に避難を余儀なくされる事となったが、火星からのマスドライバーによるピンポイントの爆撃は困難を極めており、地上に落着することは少なく、殆どは海に落着し、藻の苗床となるだけだった。
しかしその場合も落着時のエネルギーは大きく、沿岸の地域は津波に襲われることも少なくなかった。
しかし常任理事国は国民の被害や主張からは目を逸らし、火星での自ら覇権を維持するため、新たに艦隊を派遣することとした。

その艦隊には今まで派兵には慎重な姿勢を取ってきた日本国の自衛隊の艦艇も含まれていた。
日本国は先の戦争で平和憲法の幻想というのは解かれつつはあったものの憲法自体は自衛権が認められたのみであり、米国などの艦隊とともに先制攻撃と言う行動が取れなかった。
しかし火星軍の無差別攻撃で状況が変化した。
無差別攻撃は、日本国の九州地方の熊本に落着し大きな被害がもたらされた、これを攻撃と認定し内閣総理大臣はマスドライバー砲の破壊を目的とした防衛出動を指示、批判自体はあったものの、艦隊の派遣を正式に決定した。

マスドライバー砲の破壊のため地球からのロングレンジ爆撃を行うも全て陽電子砲で蒸発させられ、陽電子砲の破壊は急務であった。
しかし主力である、アメリカ軍は前回の戦いで派遣できる艦隊戦力の約半数を消滅させてしまい、次に派遣される艦隊は欧州管区のNATO軍、極東管区の航宙自衛隊となった。
連合艦隊指揮官は航宙自衛隊の永倉遼太郎宙将が抜擢され、
艦艇はNATO軍からはオライオン級宇宙戦艦、エトナ級宇宙巡洋艦、航宙自衛隊からは金剛型宇宙戦艦、阿武隈型宇宙巡洋艦(後の村雨型)、襟裳型宇宙巡洋艦、磯風型突撃駆逐艦が派遣され、艦隊の集結地点は月面のディアーナベースとも呼称される宇宙港だった。

「沖田艦長、今回の戦い、どうお思いですか?」とディアーナベースのカフェテリアのような場所で金剛型宇宙戦艦艦長の沖田十三と航海長の山南修、砲雷長の安田俊太郎は話す。
沖田、山南は紅茶を安田は珈琲を飲んでいる。
任務に従事するときと違い、沖田の顔は柔らかかった。
「山南君、我々は自衛官だ。上の命令には従わねばならない。」沖田の声に圧が現れる.
「.......しかし、軍人であっても、一人の人間として行動しなくてはならん時もある。」
「と言いますと?」と安田は訊く
「人は誰であれ間違いをおかす。......もし、それが命令であったとしても、間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要だと私は思う。」
「我々の敵は同じ人間だ。相対的な敵でしかないことを努々忘れるでない。」
「........」と沖田艦長は紅茶を飲み干す
ロビーの喧騒が少し離れたここまで聞こえる。
カフェテリアの大きな窓は母なる大地地球とそこに戻らんとする航宙自衛隊第一護衛艦隊の姿を映す
航宙自衛隊は主に海軍、海上自衛隊の伝統を引き継いでいるが、第一護衛艦群だけは異なり、前世紀に設立された、航空自衛隊、宇宙作戦隊の流れを汲んでおり、指揮官旗は海上自衛隊時代のそれではなく、宇宙作戦隊時代のものを用いている。
「しかしここの紅茶は美味いな…」と沖田は、呟く。
「そうですね....月面で栽培されたとは思えません...」と山南は答える。

轟。
突如月面に火柱が上がった。
《敵襲!月面守備艦隊は直ちに迎撃せよ!》
さっきまで地球を写していた窓は思い金属のシャッターで覆われ、照明は赤色灯に切り替わり、耳障りな警報音が鳴り響く。
「艦長!」と山南は呼ぶ
「急いで船に戻れ!」と沖田達は走り出す
キリシマが係留されている第4ドックに繋がる廊下を走る。
赤色灯と警報音が緊張感を際立たせる。
キリシマに乗り込むと沖田の顔は変わっていた。とても堅い。
「状況を報告!」と沖田は艦橋に入るなり訊く。
近くで爆発音がする、まずいと沖田は直感で感じた。
「火星軍の攻撃です!電子妨害で友軍との通信がほぼ途絶しています。」
「出撃命令は?」
「出ています、既にコンゴウ、ヒエイ、ハルナなどは出撃準備をしています。」と相馬通信長は言う。
「わかった。全艦。発進準備」
《こちら機関室既に主機は起動済み、すぐに出撃できます。》と艦内の有線の通信から徳川機関長の声がする。
「うむ、ガントリーロックを解除、シャッターを開け。」
「了解!ガントリーロック解除!」と山南はレバーを倒すと艦を固定していた重い金属が外され、爆発音とはまた違う轟音がドックの中を響かせる。
「シャッター開放」と山南はレバーを倒し操作するが大きな軋む音がしただけで扉が開く気配が無い。
「どうした」と沖田は訊いて来る
「先程の攻撃でシャッターを開ける機構が破壊されてしまったようです。」
「そうか………しかしここで何もできないというのも船乗りの名折れ……」
「安田。主砲とレールガンを使え」「山南。安田が主砲で扉を開けたらすぐに全速で離脱しろ」「相馬。有線で基地司令室に通達。」
「無茶です!フェーザー砲とレールガンで完全に扉を破壊できる確証はありません!」安田は言う
「命令が聞こえんのか!」と沖田は一喝する
「はっはい!主砲発射用意一番、二番、三番エネルギー充填!」と安田は指示する
「こちらキリシマ!第4ドック正面扉開閉機構が攻撃によって損傷、よって正面扉を破壊します!」
《正気でありますか?可能ではありますが……》
《………先ほどの攻撃を受けてドック周辺の作業員は既に全員退避しています》と管制官は諦めたような声で言う。
「ならば結構。」と沖田は言い
「艦首翼を格納。」
「レールガンの電力充電」と安田は指示する
「フェーザー砲エネルギー充填完了。レールガンは残り48%」
「……エネルギー充填120%!レールガン発射態勢!」
「撃て!」と言う沖田の号令とともに主砲と艦首のレールガンは火を吹き正面の扉を貫き爆散させた。
「扉を破壊できました!キリシマを脱出可能です!」
《艦首レールガン損傷。 魚雷発射管も5番が破損しました》
流石に無理をしすぎたのだろう、至近距離の爆発をもろに受けたのだ。
「山南!」と安田
「なあに!パーツの一つが壊れただけだ!全艦最大戦速っ!」と山南はレバーを最大まで倒し、キリシマは燃え盛る第4ドックから脱出し、戦場となった月軌道を目の当たりにすることとなった。
「火星軍がこんなところまで……」
「データリンクと通信網を潰し、有視界戦闘に持ち込み肉薄戦法か……」
と報告が来る
そう考えていた瞬間魚雷艇が信じられない速さで戦場を横切る。

魚雷艇のコックピットはとても狭い。
《ブースター臨界点まで残り10秒。》と機械の声が告げる
「あともう少しだ.....」とパイロットは呟く。月面重力圏を離れるまで重力の締め付けを感じる。
この攻撃はほぼ無謀とも言うべきだった。参謀の間でも賛否が別れるほどであった。
しかし司令官はこの攻撃がなければ地球圏への脅しは難しいと言う判断を下し。
この攻撃を決めた。パイロットの彼はそれに自ら志願した。
どういう心境なのかは予想しがたい。
「よしよし目標捕捉!」
《ターゲットロック》
「目標、敵軍事衛星ぃ!」
魚雷艇が抱えているのは普通の魚雷ではなく、炸薬が増やされた派手な攻撃を演出するための魚雷だ。
その瞬間鉄に穴が開くような音が聞こえる。
「もう少しだ.......」と彼は呟き魚雷を放った。
魚雷は地球軍の監視衛星めがけて一直線に飛んでいく。
「また....会えたな....」月面の対空砲火が魚雷艇を墜とす為に撃った鉛玉は彼の腸を貫いていた。

魚雷艇はコントロールを失い、宇宙に散る。

その直後魚雷は監視衛星に着弾しまるで花火を彷彿とさせる様子で派手に爆発した。
更に爆発した監視衛星の破片は宇宙に散らばり、周辺の民間衛星や軍事衛星、そして先の大戦時に残された機雷をも巻き込み、まるでひとつの光の筋のような様相だった。
その光の筋が地球市民の目にどう映ったかはまた別の話。

突然の襲撃、そして派手な爆発で月面守備艦隊はおろか国連宇宙海軍は動揺していた。
月面ではもはや陣形などは乱れ、各個、沈んでいくだけのまるで地獄絵図をみているかのような様相であり、近くの声すらも聞こえない。聞こえるのは船が燃える音と耳障りな空襲警報だけだった。
《狼狽えるな!》と旧式のバースト方式の通信機から艦隊司令の永倉の声が響く。
《艦隊を立て直せ!陣形はいい、各個撃破を優先しろ。地球に一隻たりとも通すんじゃない!》と永倉は指示を出し、月面守備艦隊と連合艦隊は形勢を立て直す。月軌道艦隊の帰還も相まって形勢は逆転していた。
キリシマは持ち前の機関の実力で駆逐艦張りの機動を見せて敵駆逐艦に肉薄する。
「魚雷発射管1番から3番」と沖田は指示する。
「攻撃始め!」と艦首から魚雷が放たれ、大暴れしていた火星軍の駆逐艦は轟沈する。
「敵は我々の目を潰している………」
「熱源接近!魚雷です!」とレーダー士の村上は言う
「CIWS!AMWオート!」と山南は指示し
艦橋横に装備された20mm機関砲カタフラクトの連射能力が解き放たれ、船に近づく魚雷を目にも止まらぬ速さで撃ち落とす。
「敵戦力の6割を殲滅。敵は撤退を開始しました。」
「データリンク復旧しました。」
《管制塔の指示で再入港します。》

月面への奇襲自体は予想されていたとはいえ、こんなにも早くこのような戦法で来るとは予想されておらず、月面基地守備艦隊は壊滅、外縁部の月軌道艦隊も同様の戦法で、気づかれずに全て撃沈されていた。
また魚雷艇群は木星からの民間の輸送船と思われる艦艇に偽装して載せられており(それも地球からは観測不能なアステロイドベルトでの積替え作業だったと考えられている)
観測は難しかった。

そして今回の戦いで常備軍をほぼ失った国連軍は、各国に追加の派兵を求めたのだった。

各国の反応と言うのは千差万別であった。
継戦を断固として推す、アメリカ、ロシア、イギリス、ドイツ、フランス。
厭戦ムードを漂わせるイタリア、スウェーデン、オーストラリア、カナダ
国連安保理は継戦派で、総会は戦争の早期終結を目指していた。


続き


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