夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第二次内惑星戦争 第三話

2020-09-25 18:15:00 | 第二次内惑星戦争
この作品は本編にて一切描かれていない第二次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の小説『女王陛下のウォースパイト号』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。

また本作はテロリズムや人種差別を助長するものでも、陰謀論を唱えるものでもありません。
本作はフィクションで、実在する国家、団体、人物とは一切関係ありません。

この小説は拙作の小説『第一次内惑星戦争』の続編となっております。まだそちらをお読みになっていない方はそちらから読まれることを推奨いたします。





─────月軌道海戦及び月面エネルギープラント爆撃より3ヵ月   月面 ティア―ナベース、中央作戦室


モニターの前でOD色から、黒い艦長服など色々な服に身を包んだ軍人が椅子に腰かけている。
副モニターには地球の国連軍上級将校や参謀総長などが写っている。
「我々統合参謀本部は、新たに火星全土大規模侵攻作戦を立案しました。」とモニター横に立つ、芹沢作戦担当参謀が説明する。
そして主モニターも点灯し、火星圏の星図が表示される
「第一次火星圏遠征、そして月面での戦闘において我々は勝利とは言えない結果であった。」
「更に、遊星爆弾による攻撃はより正確に高頻度なものとなっており、既に一般市民に多数の犠牲者が出ており、市民の間では厭戦ムードが漂いつつあります。」
「そこで実行するのが本作戦であります。」と芹沢は言う
「まずは遊星爆弾の発射拠点となっているフォボス基地を破壊し、遊星爆弾による攻撃を封じさせます」と芹沢はフォボス基地にターゲット置いた。

「しかし諜報班に依れば現在火星圏には多数の艦隊が展開している。これを突破するのは楽ではないだろう。」とモニターに映る、国連軍中央情報局局長のデイヴィッドは懸念を示す。
「ええ。そこで我々は少数精鋭による奇襲を提案いたします。」
「少数精鋭か」と中華民国宇宙軍江元級宇宙戦艦江利、艦長の丁鴻章は訊く
「あの艦隊を突破するにはそれが一番得策かと」
「それなら沖田提督だ。沖田提督指揮をするのが適役かと思われます。」と国連宇宙海軍司令長官のウィルハフは提案する
「私でありますか」
「ええ。第一次内惑星戦争で駆逐艦二隻を引き連れた突撃隊で陽電子砲を破壊したのは紛れもない君だ。」
「皆さんもそれでよろしいかね?」とウィルハフは訊き、なんの反対もなく決定した。
「あと、その突撃隊の支援の為、英国王立宇宙海軍のアークロイヤル級航宙母艦2番艦、ケストレルが後方より支援する。」

「そして突撃隊による攻撃の後、我々は火星本星攻略作戦に入ることになる。」
「本隊としてアメリカ合衆国宇宙軍、ジェラルド・R・フォード麾下の第七空母機動艦隊及び中華民国宇宙軍、第1艦隊、日本国航宙自衛隊、第三護衛艦群、英国王立宇宙海軍、第二艦隊が火星圏に突入、制宙権を確保する。」と芹沢は説明する。
「そして制宙権奪取後、宙兵隊や地上軍が惑星全域への侵攻作戦を行う。」
「これが我々統合作戦本部が編纂した作戦概要です。」
「うむ。この作戦に異論があるものはおるかね?」とウィルハフは尋ねる
異論はなく、その後もただ淡々と会議が進められた。


そしてその作戦実行の日がやって来た。

突撃隊はキリシマやウォースパイトなど金剛型宇宙戦艦を主軸とした、戦艦四隻、巡洋艦十二隻、駆逐艦十六隻の計三十二隻で構成された。
月面から基地保守要員及び本隊の乗組員たちに見送られながら突撃隊は発進し、一路、火星圏を目指した。
窓から見える宇宙はとても綺麗でこれから戦場となってしまうとは考えられもしなかった。
火星の観測に見つからないように進路を欺瞞しながら1週間と3日の時間をかけて火星圏へ近づく。
《待ち伏せはなし。敵に悟られることなく火星圏へ到達したようです。》と報告を受ける。
「うむ.......。全周波数帯に発信。第一特殊任務艦隊より各位。」と沖田は言う
「我らは来たり、そして見たり、誓って共に勝たん。全軍突撃せよ!と」
「最大戦速!振り回せ!」と山南は指示する。
フォボス基地に集結していた火星軍艦隊は突然の奇襲に対応しきれず、突撃隊の文字通りの突撃に為すすべもなく食われていく。
エメラルドグリーンのレーザー砲が火星軍艦へ一直線に飛んでいき、船を貫く。
それに負けじと火星軍艦はルビー色のレーザーをこちら側へ差し向けてくる。
《回避!》ミサイルとレーザーが入り乱れる中、キリシマとウォースパイトは文字通り切り込み隊長としてまるで戦闘機のような機動で敵艦隊へ突撃する。
軟なフネならコテンパンに打ち砕かれる所だが、流石はベテランともいうべき操舵と攻撃で火星軍艦を沈める。
まるで双子と見違うようなコンビネーションだ。
アブクマ型宇宙巡洋艦とヨーク級宇宙巡洋艦による統制砲撃でフォボス基地の超電磁加速砲を破壊する。
レーザーが当てられた船はまるで水風船のように破裂し、宇宙に爆炎とともに消えている。
フォボス基地の対空砲火は止まないが、突撃駆逐艦のまるで急降下爆撃のような雷撃に砲火が少しずつ消えていく。
フォボス基地からマーズヴォルチャー戦闘機が出撃してくる。
《好き勝手やりやがって!》と隊長機のパイロットは言う。隊長機には有線式無人銃座が装備されており、それを手足の如く振り回し、銃座に取り付けられた機銃が駆逐艦の装甲に風穴を開ける。
更に一般機もミサイルや機銃で執拗な攻撃をしてくる。
「対空戦闘!」と山南は指示し艦橋横のCIWS、『カタフラクト』が饒舌に火を噴き上げて、マーズヴォルチャーの放つ対艦ミサイルを船に近づく前に墜とす。
隊長機のスラスターで制御された銃座には強固な装甲が取り付けられているようで、振り回して巡洋艦に、ぶつけるという暴挙に出て巡洋艦を葬るも、そのダメージは機体にも及んでいた。
《魚雷発射用意!発射段数二発! 用意でき次第発射!》
《敵艦隊の約5割を沈静化。敵は尻尾を巻いて逃げ出していきます。》
「全艦。マスドライバー砲に集中攻撃だ」と沖田は指示を出す。
一斉に地球艦艇のVLSが噴煙を吹き、主砲は火を噴き上げた。
光線とミサイルが入り乱れ、装甲などないフォボス基地のマスドライバー砲に集中的に攻撃され、マスドライバー砲はその攻撃に耐えかね、爆散する。
これで地球に遊星爆弾の雨が降ることはもう無いだろう。
基地の破壊を確認した本隊は火星沖に艦隊を進めた。
《突撃隊ノ見事ナル奮戦ニ感謝ス、後ノ任務ハ我々ガ実施スル、諸君ラハ引キ続キ静観サレタシ。》とアメリカ宇宙軍のルイジアナより打電される。
アメリカ軍の空母ジェラルド・R・フォードから出撃するブラックタイガー隊は残存のマーズヴォルチャーの掃討にあたっていた。
そんなときであった。彼らが動き出したのは。
《展開中の全艦艇に告ぐ。全艦隊。オーダー7914を実行せよ。》と国連宇宙海軍副司令官の声が告げる。
「オーダー7914…?」と沖田は首を傾げる。
「基幹ネットワークには予め設定されているようです」と通信士は確認する。
「これは……まさか…」と山南は息を呑む
「民間人居住地帯、スペースコロニーに攻撃、軌道をずらしてスペースコロニーを火星の地表に落下させる………」と山南は読み上げる。
「それは…ジュネーブ条約違反の戦争犯罪では……」
「如何なさいますか……?」と山南は訊く。
「現状我が艦隊は弾薬も残り僅かです…」
アメリカ軍、中国軍など艦隊の6割が攻撃を開始するために動き出し、抵抗するスペースコロニーから無抵抗のスペースコロニーまで攻撃の限りを尽くした。
コロニーはその総攻撃に耐えきれず、爆散し、破片が宙域中に飛び散り、大きな外装が火星の重力に捕まり、次々と落ちていく。
中には白旗を挙げる商船や命からがらコロニーを脱出した難民船にも主砲を撃ち込み、虐殺する船もあった。
更に事象をややこしくしていたのは機雷の存在であった。
作業用ポットに偽装した機雷が宙域の至るところに仕掛けられ、国連軍に牙を向いていた。

《被弾!》とアブクマの艦体に機銃で傷がつけられる。
難民船は力不足が否めない機銃で必死の抵抗をしている。
アブクマ艦長は難民船に偽装する卑劣な火星軍艦だと判断、撃沈を命じ、主砲はエメラルドグリーンの光を放ち、装甲などついていない難民船を沈める。
「おいあれを見ろ板東。11時の方向だ」と共に観測をしている島は言ってくる。
板東は言われるがまま11時の方向に大型双眼鏡を向ける。
「救命カプセルだ…」と島はつぶやく。
「こちら第2観測所、島!難民船より救命カプセルを確認。回収の許可を願います!」と有線の通信機で伝える。
《こちら艦橋。第2観測所、救命カプセルの回収は許可できない。》
「何故ですか!」
《敵は難民船に偽装して攻撃を加えてきた。更に情報では機雷を作業用ポットに偽装しているといわれている。》
《カプセルに爆薬が搭載されている可能性は否定できない、船を危険に晒す行為は許可できない。》と冷酷な答えが帰ってくる。
「しかし、本当の人間が乗っている可能性も否定はできません!回収を!」
《貴官はたった7つのポットを救う為に200名の乗員を危険に晒せというのか!》
「7人であろうと立派な命です!船乗りとして人を助けるのは義務だと小官は信じております!」と島は言う。心なしか言葉が震えているようにも感じた。
《あまり時間をかけるな。6つはすでに流れて破損している。近くの一つを回収する。》と艦橋組は折れ、ポットの回収に入る。
航海士の見事な操艦テクニックによって第2観測所で島と板東は救命カプセルを回収し、中を確認するとその中には赤い目をした、赤ん坊がいた。すでに風前の灯火とも言うべき危篤状態で、すぐに艦内の医務室に運んだが、処置も間に合わず、亡くなってしまった。
赤子につけられていた名札には《デイビッド》とだけ書かれていた。

コロニーへの攻撃は続き、コロニーの外層は火星の地表に落下し、宇宙からでもわかる爆発が火星中で起こっていた。

「これは戦争ではない……殺戮だ。」と沖田は拳を握る。このような非人道的な虐殺を前に、何も出来ない自分にただ腹立たしいのだ。

「残りコロニーは我々の近傍にあるサイド7です。」とレーダー士は言う。
「提督。前の戦争のときのこと覚えてますか。」と山南は突然言う。
「提督は、月面基地のカフェテリアで俺たち二人に〈それが命令であったとしても、間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要だと私は思う。〉とその口でおっしゃいましたよね……?」と山南は言う。
「しかし…我々だけではこの攻撃を止めることはできないのだ……」と沖田はクルーの前で初めて感情を顕にする。

その時、コロニー攻撃に対して待ったをかけた船がいた。

《こちらは栄えある英国王立宇宙海軍巡洋艦、「ヨーク」》
《これ以上の虐殺は船乗りとして、いいや英国紳士として看過することはできません。攻撃の中止を》とヨークの艦長は無線で全周波数で告げる。心なしか、その声は震えているようにも思えた。

《艦隊各艦に告ぐ、地球と火星の間には憎悪しか存在しない、巡洋艦ヨークは我々の攻撃を妨阻害している。》
《これを敵と認め、我に従う艦は艦隊の前に邪魔する巡洋艦ヨークを宇宙へ没セシメヨ》
とルイジアナの提督は艦隊に指示する。
《撃ち方始め!》と主砲は火を噴き、ヨークに向けてエメラルドグリーンのビームを飛ばす。
「あいつ!本当に撃ちやがった!」と山南は怒鳴る。
「何千万という人間を殺してまだ殺したりねえっていうのか!」
2発は外されたが、一発は正確に船に当たり、ヨークは即撃沈にはならなかったが大破の状態で救難信号をあげながら、煙を上げている。
しかし、アメリカ、中国艦隊はルイジアナを除いて動こうとしていない。
《こちら中華民国宇宙軍。戦艦「遼寧」同胞を攻撃を命ずる艦隊司令官とは行動を共にできない。》
《我々は地球軍、火星軍問わず、救命活動を開始する。同意する艦は我に続け。》と遼寧は前進し、ヨークから脱出する乗組員の救命活動を始める。
《旗艦に従わぬ艦は攻撃する!》とルイジアナ艦橋では提督が無線で脅す。
「提督。我々も貴方の下で戦うのはもう御免です。」と艦長は拳銃を提督に突きつけてそう言う。
「この野郎…上官に銃を向けるとは…出世などできなくなるぞ…」と提督は憎しみを込めて言う。
「こんな船の艦橋より、独房の方が、貴方にはお似合いだと思いますよ。連れていけ!」と艦長は部下に指示する。提督は拘束され、艦橋からのさり際に一言
「上官の命令に従わないとは…軍法会議が待っているぞ…」と提督は言い放つ。
「それはこっちの台詞です。友軍艦への攻撃を命じた提督閣下。」と言うと提督は艦長を睨みつけ、艦橋から降ろされる。
「救命艇を展開しろ!生存者を一人でも多く収容するんだ!」と艦長は指示する。

《こちら国連宇宙海軍総司令官ウィルハフ・エマニュエル。先程の攻撃は、副司令官の独断で行われ、現時刻を持って副司令官は更迭され今は独房にいる。》
ウィルハフ提督の顔色は明らかに悪く、赤黒い腫れや止血帯が目立った。
《そして、ヨーゼンス提督についても、報告では友軍艦への攻撃を実行したという報告が複数の艦から寄せられており、現時刻を持って彼の艦隊司令官としての任をとく。》
《引き続き、火星人、地球人問わず、全生存者の捜索と、救助を行ってくれ。》と告げ、通信を切る。


コロニー破壊の映像は国連情報部の報道管制も虚しく、地球全土に知れ渡ることになる。
その瞬間テロリストへの正義の鉄槌と称した殺戮を望んでいた彼らが、一転謂れもない虐殺に対する抗議を始めたのであった。



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