危険と隣り合わせの南ア

車を降りて山を見る。今にも降り出しそうだ。
乗客は自分一人のようだ。車掌のおじさんの話では上流はかなり増水していて、
釣りは無理じゃないかと言われた。
それでも今日は終点でこの川に初めて来られる２人のＦＦマンと待ち合わせ。
いずれにせよ行かなくては。

途中の川の様子を気にしながらバスに揺られる。
下流は泥濁り、途中から笹濁りに変わるが、やはり水量はかなり多い。

現地に着くと当然人影は少なく、すぐに合流しご挨拶。
そしてここからいろいろなことが起きる二日間が始まった。

川はかなり増水している。上流も同じだった。
何処に入ろうかと思案していると、車が通りかかり、
支流、本流双方でクマが出たらしく注意を促された。
本流はあきらめ近場の支流で竿を出す。
数匹のイワナが出てくれたものの、状況厳しく早めのバスで戻ることにした。
しかし、同じバスを待つ釣り人から、このバスが最後で
後は運休になることを知り、胸をなで下ろす。


今日は野営地の周辺をやることにして、減水しそうな明日に掛けることにした。
それでも増水した流れの脇から程々に反応もあり、愉しませてくれた。

しかしこのあと、山荘の人から思わぬ情報が。
土砂崩れで道路が通行止めになったらしく、開通の見通しはかなり先になるらしい。
最悪別ルート経由で帰ることができるので、この日は開き直り、テントに潜り込む。

そして翌朝。
夜間雨は降らなかったようで、明るい空と減水し濁りもとれた流れが期待を抱かせる。
しかし道路の開通はないようなので、台風のリスクも考え昼前のバスで戻ることにした。
ということで、午前中だけある区間に入った。
水量はまだまだ多いが、程々に反応もあり愉しむことはできたが、
２時間弱釣り上がったところで、目の前に先行者、万事休す。
と思ったが、下流に一旦下がり少しだけ釣り上がることにした。

そしてその選択により、山から珍しい贈り物をいただくことになる。

そう、鹿の角だ。
林の中で落ち葉に隠れていたが、６０ｃｍほどあるそれは
めだったキズもなくなかなかの風合いがある見事な物だった。
多分抜け落ちる時期に木立にひっかかりとれてしまったのだろう。
２人の新しい友人との出会いと印象深い今回の釣行の記念になった。


しかし今回は本当にいろいろなことがあった。
かなり運も良かったといえる。
でも本来ならこのフィールドではこんな無理はしないほうがいい。
駐車してある私の車をみて心配してくれた人もいたようだ。
ありがとう、そしてごめんなさい。ご心配をおかけしました。
そんなこともあり、最後は困っていたカップルの登山客も乗せてあげて南アをあとにした。

２人の新しい友人には是非平常時に再挑戦していただきたい。
それでも川のすばらしさだけは十分感じていただけたことが救いだった。