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海女_2015年8月の終わり頃に書いた詩のようなもの

2018-09-21 01:50:43 | 書いた・描いた・作った
海女

言葉で武装した君の
独白を聴いている
君自身の安心のために
自身に言い聞かせているのか
因果を噛んで含めるように
私のために場所を空ける気が
無いと言っているのか
私は相槌を打ちながら
話し続ける君の癖を観察し
痛々しさを扱いあぐねていた

君は何でもないように
退院後の計画を話しながら
離れて足を組んで座り
終始鼻に触り眼鏡を上げ
ニキビ跡を掻き
手首を時折ポキリポキリ鳴らして
逆光の中私に見られていた

10歳若い君の無意識が
私に何を示したか
それは背中が寒くなるような
拒絶ではなかった
君はまるで隙だらけだ
再会を約束するほどの積極性もなく
しかしそれが君の精いっぱいなのは
いかな鈍い癖に意地の悪い私でも
わかりはした

君の身の回りには
communicationの淡さと薄っぺらさ
踏み込まない優しさと
溶けたアイスクリームのような
ぬるい甘味を求める連中ばかり
理屈では無い感情だけが
取り残されたように
私の身の内にある

君がじゃあといって去った後
また会いたい、と思った

女は色々だ
しかし皆冷ややかな温みを抱えてる
女ばかりがより深くしたたかな
?がりや結びつきを求めて
自らよりも熱い核を持つものを
求めて貪欲に
人と関わり笑い傷つき泣く
そんな気がする
だけどもう今や女の涙は誰かとの
commitまたはdiscommit
苦しみのためにのみは流されない
もはや時代は終わった
勿論何時のときも変わらず
女に本気じゃない涙はないが

自由の哀しみの為に
様々な輝石をぽろぽろと
美しい眼からこぼし
または無い物ねだりの我儘の為に
安い甘ったるい涙を落とす
男に
若い事情を抱えている君に
その曖昧な境目の区別が
つくだろうか
君はどこまでも君でいて
自分からは
壁の中から出てこようとしない

敏い君の潔癖が私を拒んだからと
安全で気のいいおばさんを
期待通りにやる気はないが
自分のために泣くのは
あれきりにすることにした

あれは私の中にまだ生き残っていた
力ない少女の残滓
はらはらと流れ落ちる甘えの欠片
看護婦に諦めるよう背中を押されて
混乱し泣いて眠ったが
あの後、急に私は私を思い出し
君に恋する力を
未だ自分が持っていることが
嬉しかった
ありがとう スズキくん
私は恋と強さを
無力な幼い少女ではなく
女のSoulをいま一度
己が身の内に見出した

私がかつて愛の為に流した
歓喜の涙と
深海に潜るような
危険で深いコミットへ挑んだことを
君の無意識で彩られた
独白に近いひとつひとつの会話が
思い出させた
私はもはや臆面もなく「愛」という
在り来りを書けてしまう
それが日常にあった日々を
思い出したから
愛の持つ優しさではなく残酷さを

私はかつて真珠採りの海女だった
深く 深く より深く求め
何度もあの白珠の輝きを
掌に握りしめ
水面に浮かび上がっては
笛のように長く尾を引く
息をしたものだ
無自覚な野生に満ちていて
潮の苦さをも身の内に宿し
なお腕手を水圧の中に伸ばす
女だった

それが私を支えている背骨
私はようやく君のおかげで
あの感触を探り当てた
私は改めて彼らに邂逅し
真円のまたは歪んだ涙型の
大粒小粒、黒白取り混ぜた
天然真珠を脳裏の掌で転がしながら
いっそう密かに君に恋している

男は誤解する
求められている要求を
叶えなければならないと
女の私は何も求めていない
今の君のまるごとを
知りたがっているだけ
女は今を生きるから
また会いたいだけなのだけれど



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