34話 「ターゲット補正」
麻生は大きくため息をつきながら、顔を覗き込んでいるセイナに言った。
「パワークロノスはここぞのときにしか使えんかもしれん」
煤だらけに近い状態で、麻生は寝ずの作業をしながらいるとセイナが計算をし始めた。
「…セイナの言う通り背中に余力はあるけど、これじゃ長時間は難しいかもしれないわね。そもそも反動で体勢を崩したら、狙うこと、当たることは困難かもしれない…だからよ!ここぞのときね…」
麻生が守里にそのことを伝えると、素朴が疑問があり頭をぽりぽりさせる。
「ララさんの機体には乗せられますか?」
麻生は煤紛れを無理を承知で払いながら、考え込んで話す。
「守里君、実際にララ機に乗せられて、Gビャクヤの重さを試してみたいんじゃが…発射すれば気付かれるだろうしなぁ」
考え込んでいた守里にとっても、敵に気付かれたら話にならないことは分かっていた。
「…ララさんの機体に乗せられるか、Gビャクヤにもどうかくらいは大丈夫じゃないですか?林の中は無理でも空中で低空飛行なら…」
すぐに「Gビャクヤ発進!」と声がしてカンナは料理を作りながら驚いている。
ララ機がいつ発進するか分からないから、とララと料理当番を変えていた。
覚えが悪いのかしばらくはララが教えていたが、ララ機にも声がかかった。
「ちょ…何この…これがパワークロノスかぁ。んでどうするの?まさか運ぶとか?」
驚いて聞くと麻生もセイナも頷いている。
麻生が細い説明をし始めた。
「ララ機はこれを背負って行くが、守里君に渡すんじゃよ。その後ドッキングじゃ」
無理!と言いそうなララに麻生は続ける。
「ほとんどロロナとトキノにまかせれ良いさ」
「ララ機発進!」重さよりバランスが大変だったが、すぐ守里に追いついた。
自然に守里に向けてロロナが指示して渡すと、守里は体勢を変えた。
「麻生さんにセイナ、重さはあるけど何だろ…ララ機が下にいるからか落ち着いている」
エネルギーは大丈夫だったがバランスは確かに悪い。
守里はロロナとトキノに話す。
「ロロナ!大体でいいから、遠くの敵までかなり距離は必要か?」
「1500mまでで可能みたい!…ターゲット補正は左方向に2m以内で命中率90%!補正プログラム正常〜」
守里はターゲット補正が、左に2mの誤差があることを考え、麻生に向かって言った。
「せめて1m以内ならコントロールできても、2m…」
まで言いかけると、待てよ、と思った。
考え次第では広範囲にダメージを与えられる。