15話 「弟の存在」
「ねえねえ、研究しているリリアンって何者?」と半分笑いながら、椅子を後ろ向きにふざけて座っている少年は話し出した。
シロハタ・カンパニーの中でも、特別な空間にあるのはまるで城のようになっていた。
これこそ「アゼラ」であり、話している少年はカイリ・ゼスタローネ。
アベルト・ゼスタローネの義理の弟だった。
幼さが隠しきれないものの、18歳になりアベルト・ゼスタローネとは10歳も違う。
義理の父親を殺したアベルト・ゼスタローネの母親は、隠れたところに子供がいたことになる。
本当の父親を小さな時に亡くしているアベルトにとって、母親の裏切りは3度目になる。
カイリ・ゼスタローネの他に、マイール・ゼスタローネという16歳の弟もいることから、義理の父親の暗殺説まで浮上していたが、ただの噂に過ぎなかった。
本来母親は優しく穏やかだったが、アベルトの本当の父親の死でおかしくなっていたのか、男関係はあとを絶たなかった。
カイリやマイールはその全てを知った上で、アベルトを兄と慕っていた。
カルロ・アゼルタは顧問でありながら全てを知っていることから、カイリの発言を黙って聞いていた。
「アゼルタさぁ、何でエンド・カンパニーを潰さないの?」と相変わらず楽しげに笑いながらカイリが聞く。
白髪混じりのカルロ・アゼルタは「簡単にはいきません、条約があります」と真面目に答える。
「条約なんて、潰せば良いじゃん」半分真面目なようで笑って答えるカイリだった。
リリアンも頭を悩ませていた。
「どうもね、何だか私の行動が監視されてるみたいで調べられないの」
とお手上げのようなポーズをとって、ゲンナ号でみんなと話している。
「多分よ、多分だけど…アゼラが動いているのかもしれないわ」
カンナとララが顔を見合わせて、困ったようなそぶりを見せる。
「カルロ・アゼルタが動いているのね」
カンナが「だーれ?新しい名前登場だけど、敵なのよね?」
リリアンは考えていたような雰囲気で「アベルトの顧問よ」と答えた。
リリアンはウロウロしながら「ただね、確かアベルトの母親って隠し子がいたわ」
続けて「1人は仲間も殺せる感じの少年だった、確か…カイリ・ゼスタローネって言ったわ」
端末を見ながら話していると「もう1人が…マイール・ゼスタローネ…えっと、情報はそれだけね」
とため息をついて答える。
守里が「謎の存在がいるんですね、他にも何にいるか分からない」
というと、リリアンは相変わらずウロウロしながら「そうね」と呟く。
トキノやカンナ、ララは弟がいることの驚きを隠せなかった。
セイナは調べようとして、カンナに「アゼラ」は調べないよう言われたことに気付いて慌ててロロナに聞くのをやめた。