まだ、「夕凪の街 桜の国」が離れません。
今日原作となった漫画の方を買ってきて読みました。
・・・うまく表現する言葉がみつかりません。
とにかく、こうの史代の漫画は、そのソフトな線とは裏腹に
心に深く深く入ってきます。
映画はそのエッセンスを大事に大事にして、ひとつの作品にしています。
多分、監督スタッフの人たちは、この漫画を何度も何度も読んだのでしょう。
ひとコマひとコマから読み取れるこの作品全体のニュアンスを汲み取って、
映画として構成させることに成功しています。
こんなに「映画化」というのが成功している例を見たことがありません。
漫画も映画も、どちらもすばらしく、二つが陸続きで、
読んだあとで同じ気持ちになります。
それと、漫画を読むと、麻生久美子と田中麗奈がすばらしいことに気がつきます。
二人がいて本当に良かった。
この二人が、この映画に出て、この役をやってくれて本当に良かった。
奇跡だと思います。
映画館で見ているとき、始まって少ししてから、年配の女性が入ってきて私と同じ椅子の並びの離れた場所に座りました。
最初は気にしていなかったのですが、ずっとごそごそと音を立てていて、なんだろう…と思っていました。
見終わってみてわかります。あの女性はずっと泣いていたのですね。
たぶん映画を一度見て、その日もまた、すでに始まっている時間だったのに途中から見にきたのだと思います。
日本は、この国は、戦争でたくさんの人が死にました。
私が生まれる前のことで、私自信は知識としてしか知りませんが、
たった、たった60年ほど前のことです。
私は30を超えたところですが、それは私が生まれる30年ほど前のことなのです。
今を生きている私たちが歩いている道。
その道を振り返ると、すぐそこに、たくさんの亡くなった人たちがいるのです。
道はいっぽんきりです。これしかありません。
なのに、私たちは後ろを振り返ろうとしていません。
私も含めて、自分の足元だけを見てあるいています。
もしかするとすぐ後ろにあるものを全く知らない人もいるかもしれません。
毎日起こる事件、暴力、汚職。自己の利益のために走る人々。
一人だけ羽が生えて、歩いている道から飛んで行けると思っているかもしれませんが、
それは無理です。
この道しかないし、この道からは離れられないです。
何年経っても、何世代重ねても、背中に背負ったものは無くならないです。
そして、放っておけば、人はまた同じ過ちを繰り返します。
そうならないように、私たちが絶対にしてはいけないことを学ばないといけません。
この映画が一人でもたくさんの人々に見てもらえますように。
本当は、日本にいる全員の人が、全ての国会議員が、全ての児童生徒が、全ての大人と子供が、強制的にでも見たほうがいいと思ってます。
きれいごとをたくさん並べてしまったようにも思いますが、
こんなことを考えました。