日韓往来 [Journal Korea]

いま・ここ・実感から=はらだブログ
「現在──過去・未来」

大統領選挙と韓国の学生たち

2007-12-21 02:59:38 | 日々
5年ぶり、2007年の韓国大統領選挙が終わった。12月19日投票・開票の結果は、李明博(イ・ミョンバク〕氏が2位鄭東泳(チョン・ドンヨン)氏に大差をつけて勝利。2008年2月、野党・ハンナラ党から第17代大統領が誕生して、「保守政権」となる。

今回から選挙権が、20歳から19歳からに変更となった。学生たちが金大中、盧武鉉とつづいた10年、「親北」路線をどう見て投票するのか注目だったが、はっきりとかれらは盧武鉉大統領にあきれはてたという気持ちを、李明博大統領を誕生させる投票、あるいは棄権に走らせた。保守化といいきるより、反・盧武鉉路線なのだと解説される。「親日派」「既得権者」をまず標的に洗い出し、「反米」もにじませた大統領の民族派ぶりと一方の経済新自由主義でこの5年、格差拡大、就職難が表面化した。

じつはこの12月に開いた日韓学生のフォーラムを、大統領選挙直前に東京で開く予定だった。しかしその終わりには気を使った。選挙日前に帰国してもらうようにしようとした。別の事情もあって、10日11日のフォーラムとなった。
実際の話や様子で、ことしの韓国の学生は、まったく大統領選挙の話に無関心だった。のっていないのだ。
2003年東京で開いたフォーラム=写真=に来た学生たちは、大統領に盧武鉉を選んだ直後であり、そのことに自信と誇りのようなものを持っていた。聞いてみたら、ほとんどの学生たちは盧武鉉氏に投票したと答えた。インターネット選挙、若い人の支持で盧武鉉大統領、という構図を目のあたりにした。

直後、オーマイニュース=OhMynews=、プレシアン=PRESSian=の2大ネットニュースを訪ねた。韓国のジャーナリストにアドバイスをもらって、ネット新聞の仕組みや新しさ、可能性、方針を聞いて、メディアの「様変わり」を聞きたいと思った。
プレシアンは紙・印刷の新聞出身、ベテラン記者といったようすの50代が編集長だった。ネットメディアの位置など整然と仕組みと方針を語ってくれた。事実、要点、表現方法…しっかりした記事チェックが行われるだろうと思わせる姿勢だった。
一方のオーマイニュースの編集長は30代後半の、バリバリ、意気軒高の韓国人だった。ところが、この編集長は「反日・ナショナリスト」そのものだった。仕組みの説明もしない。ただ「慰安婦」問題など、あまり調べていないことがわかる虚仮威しの議論だけをふっかけてくる。当事者や事実認識もあいまいなまま、自前のとらえ方、ことば=問題の提示作業がなく、その「主張」は自己主張と排他主義になっていた。
──なるほど、こういうイデオロギッシュな高まりが、「革新・左派ナショナリズム」が盧武鉉大統領を生みだしたのかと、ある意味で納得した。インターネット時代、ネット新聞の新しさの実体は、きわめて古風な「学生運動」思想だったのかと「正体見たり」が実感だった。メディアが新奇でも、結局そこで語られることばが「新しい」か、普遍性を意識し自己チェックできるかどうかなのだ。
盧武鉉の基盤は、こうした熱狂一色に支えられた。そして冷めてみると、出来合いのことばの弱さ
そのままに、霧消した。

学生のフォーラムをつづけていると、韓国学生の意識と行動の変化がわかる。
次の2004年には、もう盧武鉉離れが現れた。「口が軽い、実行力がない、方針が変わる」ついには「だいたい人格的に問題がある」と学生が批評しだした。つまり「学生層」「若い世代」が離れたときから、盧武鉉時代は終わった。左派運動の仲間で周りを固め、青瓦台(大統領府)が「運動サークル」になったともいわれた。「辞める!」と口走り、思いつき発言に対して「弾劾」が持ち出され、それでもしゃべりつづけた大統領だった。

今年来た韓国学生たちは大統領選挙を口にもせず、選挙日を外したフォーラム日程を、ともいわなかった。世論の「ハンナラ党」への雪崩現象とも重なっている。「層」としての学生、若い世代が解体した状態。そしてインフレ、就職難、貧富両極化批判になり、盧武鉉路線継続に「ノー」を突きつけることになったように思う。

フォーラム後、参加学生のメールが来る。メールの中身は、「日本観が一変した」「今度、必ずまた訪日して、郊外、田舎も旅行したい」といったことだ。見る、聞く、話す──体験する。これは「インターネット選挙」の新しくもその実、古いイデオロギー。それをもはや超えている学生の動き。やはり、基本的な「意見形成」の王道がやはりつよいのだということを再確認できるものだ。


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2 コメント

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オーマイニュースと韓国政治 (はらだ)
2007-12-28 22:09:33
左派・民族主義政権と「オーマイニュース」はつるんでいた? 
利用されていた?
***
東亜日報DECEMBER 26, 2007 04:14
選挙敗北の与党陣営で頭もたげる「金大中責任論」
第17代大統領選挙で汎与党勢力が敗北した最大の責任は、金大中(キム・デジュン)前大統領にあるという主張が、民主党・刷新委員会で提起された。汎与党勢力の統合議論の過程で、金前大統領が誤判を前提に、現実政治に過度に介入して中道改革勢力が分裂し、このため、大統領選挙で得票率が顕著に落ちたというもの。
─略─
「金大中責任論」が提起 民主党の黄台淵(ファン・テヨン、東国大教授)中道改革国家戦略研究所長は24日、ソウル汝矣島(ヨイド)の党本部で開かれた党刷新委会議で、「(汎与党勢力が)約80議席の中道政党になって候補を選んでいたら、大統領選挙で勝つこともできたし、仮に負けたとしても総選挙でけん制勢力になりえた。すべての責任は金大中氏にある」と批判した。
─略─
黄所長はまた、新党と民主党の党対党の統合交渉が物別れに終わった背景を説明し、「4者の指導部が(統合に)合意したが、金大中氏が『オーマイニュース』を呼び、『統合のない候補単一化をせよ』と(報道が流れるように)した」と主張した。
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金正日にいかれた?盧武鉉 (はらだ)
2008-01-29 00:46:48
ひとつの記憶として──。
盧武鉉とは、どういう思想だったのか。

──引用──
2007/10/25 10:36:12 朝鮮日報
【社説】地獄の地・北朝鮮が「人民主権の国」とは
(部分引用)

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は先日、北朝鮮の万寿台議事堂を訪問した際、芳名録に「人民主権の殿堂」と書いてのけた。また盧大統領は「金総書記は自らの体制について、確信を抱いていた。本物の権力者らしいという印象だった」、「北朝鮮には国民的な情熱が存在していた」と語った。

 金正日総書記と対話し、交渉するのはいい。ただし、数十人、数百人もの人々を動物のように扱う北朝鮮を「人民主権」だの、「国民的情熱」だのといった表現で持ち上げ、そこで殺され、拷問され、無残極まりない生活を余儀なくされている同胞たちをないがしろにすることだけは許されない。

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