リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

メコンの養殖ナマズ 日本へも輸出か? 

2013-06-04 20:01:06 | メコン川研究所(メコンの目改題)
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世界の食料危機を救うのはナマズか!?
2013年05月01日(Wed)  中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)



飼い主は自分のペットと顔が似てくるといわれるが、今回の主人公はナマズのような顔をしたベトナム人の話題である。
自慢のナマズを抱えるトイ会長 (撮影:筆者)

 ステンレスなどに使用されるクロム鉱石の開発でベトナムに行った時、ナマズのような顔をしたトイ会長(60歳)に会った。クロム鉱山の親会社がベトナムで最も大きな水産養殖企業で、そこの会長さんである。700万人都市のホーチミン市から3時間ほど南西、メコンデルタの河口にあるタンホアという町で操業している近代的な水産養殖業を参観した。

 ナマズ会長は、軍出身の企業家である。わずか12年足らずで彼の水産会社をベトナムナンバー1に育て上げ、2007年には会社をホーチミン証券市場に上場させた成長企業の総帥である。

 その秘密が意外なことにメコン河のナマズ養殖であった。それは日本人が思い描く日本ナマズではなく、現地でバサと呼ばれている白身の魚で、英名ではパンガシウス(pangasius)と呼ばれている。たまたま同じ日にコロンビアとウクライナのバイヤーが買い付け商談に来ていたが、なんと世界130カ国に輸出されているのだ。

 1日のナマズの出荷量が1600トンというから凄い。1匹約400グラムのナマズが毎日400万匹も処理されて世界に輸出されていることになる。

 さて、その味は日本でいえばウナギのような味わいでさっぱりしている。その日の晩餐にはあらゆる水産品が供されたが、中でも「バサの唐揚げ」が一番美味しかった。ところが、ナマズのイメージが悪いためか、まだ日本向けの輸出実績はないという。ナマズ会長はこのバサを世界中にもっと供給することが夢で「中村さん、クロムの輸出を貴方に任せる代わりに、バサの輸出も是非とも日本市場に広めて欲しい!」というのである。

 ただ、弊社はレアメタル専門商社で食品を扱った経験はないので丁重にお断りした。しかし、ナマズ会長の占いでは「あなたは、私の最高のパートナーになる運命だ」といって憚らないのである。無下に断るわけにもいかないので、知り合いに紹介して是非成功させましょうと言葉を濁した。

ナマズは魚の中でも最も種類が多いといわれ繁殖力も旺盛で、世界の食料不足に貢献できるとナマズ会長は強調する。世界人口は70億人を超えたが、国連白書によるとさらに人口爆発は進み、今世紀末には100億人となる。その時の食料危機は深刻である。国連食糧農業機関(FAO)の報告では00年に養殖ナマズが60万トンしかなかったが06年に180万トンとなり、12年度ベースでは1000万トンを超えているとのことだ。00年からわずか12年で何と17倍の増加である。
生物多様性の進む
日本の食卓

 哺乳類の飼育には時間が掛かるが、魚類や両生類の生殖能力は目を見張るほど旺盛である。帰国後ナマズの輸入販売の可能性についてきいてみた。三河で漁具の製造メーカーを経営している友人は十分可能性はあるとの意見。去年はウナギが不漁で品不足のため、土用の丑には値上がりが激しく庶民の口には入りにくかったが、実はウナギとナマズの味は類似性があり、蒲焼にすると日本人の口に合うというのだ。

 アフリカのテラピアがタイの代用になっていたり、外国で獲れたサメが蒲鉾の主原料であったり、日本の食卓は気が付かないだけで既に外来種による生物多様性が進んでいるのである。メコン河のナマズが食料危機の決め手になる日が近いことを信じて、1コンテナ(20トン)のトライアル輸入の注文書を用意し始めたら、カミさんに「あら、あなたの顔もナマズに似てきたわよ」といわれてギョッとした。

◆WEDGE2013年5月号より
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