都会と現地(田舎!)の「出会い」によって守られた板取川の支川「西ヶ洞」。ダム建設翻弄される石木川の生活を記録した映画「ほたるの川のまもりびと」が初夏には全国各地で上映されます。ダムに消えようとしてる川が、あらたな「出会い」によって守られますよう。そう願って最終項としました。ご精読ありがとうございました。
「出会い」が守った川
各地の川を訪ねる。ダムが計画されている川は選んで行くようにしている。これから造られようとしているダムは、何らかの問題を抱え、着工まで長い期間がかかっている。ダムが計画されると、河川工事が少なくなり、結果として、素晴らしい自然が残されている。
長崎県の石木川はそんな川だ。計画から五十年余、未だ13世帯60名が暮らす集落には日本の原風景というべき小さな川が流れている。その石木川の人々とくらしを記録した映画「ほたるの川のまもりびと」が各地上映される(ユーロスペース・渋谷7/7より)。
「出会い」が守った川がある。岐阜県長良川最大の支流、板取川。その上流、西ヶ洞に、中部電力がダムと揚水発電所を計画した。西ヶ洞は地元の人でも行くのが難しい秘境というべき渓流で、水没予定地には「大釜」と呼ばれる巨大な甌穴があった。1997年、板取村(当時)が建設に同意しダム工事が始まった。
その年、私は都内で開かれた揚水発電所問題の研究会に参加して、会を主催したNPO法人「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(足温ネット)」と出会う。
「故郷をつくってみないか」私は東京生まれだという彼らを板取に誘った。
それは素晴らしい「化学反応」を起こした。孤立していた地元は「大釜倶楽部」を作り、足温ネットを迎えた。都会から来た人々が、その自然とそこに暮らす人々に魅せられる。それは、地元に誇りと活力を呼び覚ました。足温ネットと大釜倶楽部は、しぶとく、ダム反対を続け、2006年二月の建設中止決定を迎える。出会いが、計画をほんの少しの期間遅らせた。電力の需給予測は変化し、中部電力は経済原理に則ってダム計画を中止したのだった。
ダム建設中止をもって大釜倶楽部は解散した。しかし、板取川で川を知った都会の子らは、今、その子を連れて故郷となった川を訪れている。