リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

2014年 知床のヒグマ 3つの記事から

2014-10-15 13:26:02 | アユの流し目/雑記帳

知床のヒグマについて気にかかる記事がある。NHKのドキュメンタリー 餌としてのサケの不漁によって人里に現れて駆除される若いヒグマ。朝日デジタルは サケマスが捕れなくて痩せ衰えた若熊をとらえている。一方、安定同位体を使用したヒグマの餌の研究では、知床のヒグマはあまり海の資源に依存していないと いう結果が示されている。はて?

撮影された痩せたヒグマはどうして山の餌をたべないのだろう?

 

 ◎Nすぺ「ヒグマ運命の旅」

知床 ヒグマ運命の旅

 

初回放送

2014年8月3日(日)
午後9時00分~9時49分

関連ジャンル

  • 自然・環境

北海道・知床で、4年間にわたりヒグマたちを記録し続けた膨大な映像を、詳細な調査に基づいた血縁関係などから紐解く、かつてないリアルなヒグマたちの物語。
30頭以上が暮らすヒグマ密集地帯、知床・ルシャの渚。特別保護地域に指定されたここは、日本に唯一残されたヒグマの楽園だ。私たちが、生後半年の若いオ スの兄弟と、この楽園に君臨していた老齢のオスの“王者”を中心に撮影を始めたのは、2010年秋。その2年後、楽園を悲劇が襲う。夏の海水温の異常な上 昇によって食料となるカラフトマスの遡上が遅れたことで、次々とヒグマが餓死していったのだ。生まれたばかりの子グマ、そして母グマ。弱いものから命を落 としていった。私たちが追っていたオスの兄弟は、母グマの決死の行動などでかろうじて命をつなぎ、老齢の“王者”も危機を乗り越えた。しかしこの苦難は、 3頭のヒグマにとって、運命の旅の始まりに過ぎなかった・・・。
楽園を旅立たなくてはならない若いオスグマの“掟”、“王者”に忍び寄る政権交代の時。やがて3頭は、それぞれに逃れることのできない過酷な運命を歩んでいく。

 

朝日新聞デジタル 「ヒグマ、知床の浜から姿消す 海に異変 えさのマス激減」

ヒグマ、知床の浜から姿消す 海に異変、えさのマス激減

神村正史

2014年10月14日17時23分

【動画】知床の川に遡上したカラフトマス=神村正史撮影

 世界自然遺産北海道・ 知床で今秋、名物のサケやマスを追い回すヒグマの姿が激減している。例年なら8月ごろに遡上(そじょう)を始めるカラフトマスが極めて少ないのだ。その一 方で山の木の実は豊作。多くのクマは苦労してマスを捕るよりも、山の実りに魅せられたとみられる。ただ、マスへの依存が高いとされる知床半島先端付近では、痩せたクマも目撃される。 ニイムラ注)痩せた熊ばかりではないようだ!

 カラフトマスは、ユネスコ世界遺産委員会が高く評価した、知床の「海と陸との生態系の連鎖」を象徴する魚。知床半島の河川に遡上するサケ科の中心的存在だ。全長45~60センチで、道内の河川には7~10月ごろに遡上する。

 北海道連合海区漁業調整委員会のまとめでは、今年のカラフトマスの北海道沿岸の漁獲数(9月30日現在)は、昨年の半分以下の134万7千匹。過去20年で最少で、ピーク時の1996年の約8%だった。継続的に孵化(ふか)放流事業が行われているが、沿岸漁獲数は急速な減少傾向にある。

 

知床のヒグマはサケを意外に食べない。

知床のヒグマはサケを意外に食べない

投稿日: 2014年09月12日 13時38分 JST 更新: 2014年09月12日 13時46分 JST
 
 
 

ヒグマは秋に川を遡上するサケを大量に食べるとみられていたが、知床のヒグマは意外にサケを食べず、栄養源に占めるサケの貢献は 5%程度に過ぎないことを、北海道大学大学院農学研究院の森本淳子准教授らが詳しい食性分析で突き止めた。最もサケを利用しやすい知床の結果だけに「衝撃 的」と受け止められている。京都大学生態学研究センターの大学院生の松林順さん、北海道立総合研究機構環境・地質研究本部の間野勉課長、ニュージーラン ド・マッセー大学のAchyut Aryal研究員、北海道大学大学院農学研究院の中村太士教授との共同研究で、クマ類に関する米科学誌URSUS(今年12月発行)に論文を掲載する。

北 海道にはヒグマとサケが共存している。サケが海から運ぶ窒素やリンといった元素は陸の動物にとって貴重な栄養源となる。研究グループは、ヒグマによるサケ の利用がどのような条件で変動するかを調べるため、知床半島を対象に安定同位体を使ったヒグマの食性分析を行った。食性分析はこれまで、解剖したヒグマの 胃の内容物や糞の調査で研究されてきたが、証拠が間接的で不十分だった。安定同位体による分析は、動物の長期間の食性を個体ごとにより正確に推定できるメ リットがある。

研究グループは、知床半島内で1990 年代以降、捕獲されて保管されていたヒグマ191頭の大腿骨からコラーゲンを抽出し,炭素・窒素安定同位体比を測定した。骨に含まれるコラーゲンの同位体 比には,その個体が死亡するまでの数年から一生分の食性情報が記録されている。ヒグマの主要な食物源である草本や果実、農作物、昆虫、陸上ほ乳類、サケの 安定同位体比も測り、各食物の利用割合を個体ごとに推定して、各個体のサケの利用割合と年齢、捕獲地点の環境との相関を調べた。

知床半島 は、北海道で最もサケを捕獲しやすい環境だが、ヒグマ個体群全体のサケ利用割合は 平均5%程度にとどまっていた。北米のアラスカのヒグマが栄養源の30%をサケに頼っているのと比べると、極めて少なかった。サケの利用は年齢・性別でも 変動していた。子育てをするメスやその子どもは、サケの利用が相対的に低下していた。「オスによる子殺しのリスクを減らすため、サケを捕獲しやすくて、オ スに遭遇しやすい場所を子連れのメスが避けて行動するため」と研究グループは解釈した。

開発の手がほとんど入っていない世界遺産地域のクマ は、この分析で、その他の知床半島の地域に比べてサケの利用割合が高く、平均的なサケ利用割合は2倍以上と予測された。この結果は、ヒグマによるサケの利 用が人為的な活動で制限されて、北海道の象徴的な光景とされているヒグマとサケのつながりが失われかけている可能性をうかがわせた。

森本淳 子准教授は「ヒグマは栄養分豊富なサケを好むが、雑食性で、かつてなかった農作物まで食べる。自然が比較的残る知床でさえ、サケの利用率がこれほど少ない のは衝撃的だ。多くの頭数を調べた結果で、信頼性は高い。世界遺産に指定された地域のヒグマに比べて、開発された地域ほど、サケを食べていないので、ダム 建設やサケ漁などの人為的な影響が否定できない。知床以外の地域のヒグマや、遺跡から出土したヒグマの骨で同様の食性分析をして、栄養分摂取に占めるサケ の割合の変動を調べたい」と話している。

河川内でサケを探すヒグマ。ヒグマがサケを自由に捕獲できる環境の減少がサケ利用の低迷の一因とみられる。2012 年秋、知床半島内の河川で撮影。
写真. 河川内でサケを探すヒグマ。ヒグマがサケを自由に捕獲できる環境の減少がサケ利用の低迷の一因とみられる。2012 年秋、知床半島内の河川で撮影。

ヒグマとその食物資源の同位体データ。縦軸が窒素の同位体比、横軸は炭素の同位体比。ヒグマの同位体比が、各食物の同位体比に近いほど、その食物の摂取割合が高い。
グラフ. ヒグマとその食物資源の同位体データ。縦軸が窒素の同位体比、横軸は炭素の同位体比。ヒグマの同位体比が、各食物の同位体比に近いほど、その食物の摂取割合が高い。
(いずれも提供:京都大学大学院生の松林順さん)


関連リンク
北海道大学 プレスリリース



http://scienceportal.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/09/20140908_01.html

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今年の鴨川はアユの遡上が少... | トップ | 岐阜県が新たな増殖法 産卵... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アユの流し目/雑記帳」カテゴリの最新記事