※2024年03月24日内容更新(新画像追加等)
栽培・画像提供=サンセットさん(2024年3月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
(C. Alma x Rlc. Cheah Bean-Kee (01/01/1975))
■花色=セミイエロー系
■花径=13~15cmくらいの大輪系
■花型=整型
■弁質=厚弁
■花着き=普通
■着花輪数=1花茎あたり2~3輪くらい
■花期=主に秋~冬咲き
■株姿=比較的コンパクト
■香り=良い
旧属名表記 Blc. Alma Kee、Rsc. Alma Kee
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<2021年10月30日追記>※執筆者の方の許可をいただき掲載。
1975年にハワイの名ブリーダー、マサトシ・ミヤモト氏(Miyamoto Orchids)より作出登録されたこの交配に関して、本気で解説を始めるととんでもない文章量となるので要約させていただくが、この交配が極めて複雑な雑種である特殊性と、そうした交配から生まれたこの‘Tipmalee’という個体の出現は、大袈裟かも知れぬがカトレア改良史における奇跡であろう、と現在でも私は理解している。いわゆる「ブラジル産ロックレリア」であるC. cinnabarina の5代目×3代目という掛け合わせの上に成立した長茎の中輪黄弁赤リップ花C. Alma(1931)と、Rlc. Norman's Bayの次世代に当たるオレンジ黄色系の複合色花、Rlc. Cheah Bean-Keeとの、この複雑な雑種は、当然ながら相当均一性に欠ける開花結果を生んだ事と想像できる。ただミヤモト氏がこの交配を試みた当時、タイなどを中心とした東南アジア諸国でカトレア栽培の人気が高まっており、ミヤモト氏を始めとするハワイのカトレア生産業者は、当時の東南アジアにこうした実生苗の数々を長年に渡り輸出し続けた。特にタイ国においては、いわゆる「ロイヤルカラー」である「黄色花が最ももてはやされ、高い需要を生んでいたため多くの黄色系カトレアの実生苗がタイ国に渡った。Ric. Alma Keeはそうした時代を象徴する銘花であるが、私はこの交配から選抜された‘Tipmalee’以外の個体をハワイにおいてもタイにおいても見た事がない。であるから‘Tipmalee’という個体の出現は極めて低確率で生まれた奇跡的な銘花であると理解しているし、親和性の低い複雑な雑種の作出を試みる事が、いかにギャンブル性の高い行為であるかを学んだ交配でもある。1970年代のカトレアブームに沸くタイ国からはこのAlma Kee以外にも、C. Puget Sound やRlc. Sanimthongなどのタイ国オリジナルの黄色系銘花の数々が日本へ輸入されたが、当時よりこれらのオリジナル株にはウイルス罹病株が多く確認され、それはRlc. Alma Keeにおいても例外ではなかった。またその後世界中で生産された‘Tipmalee’のメリクロン株においても、採芽親であるオリジナル株がすでに罹病株であるケースも多く、されど世界中で人気商品となったこの個体においてはこうした問題は長く黙認されてきたように思っている。
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・交配親 Rlc. Cheah Bean-Kee の交配は C. Los Angeles x Rlc. Norman's Bay で現在の多くの濃色大輪系花の重要な祖先である Rlc. Norman's Bay(ノーマンズ・ベイ)の血が本種に濃く入っているのは意外なようでもありますが、だからこそ Rlc. Alma Kee はこれほどまでの有名優秀花になりえたのだと納得がいくような気もします。
・本種における原種 C. dowiana の構成比率は39.8%で例えば、同じくセミイエロー系の有名品種 Rlc. Toshie Aoki などには58%の C. dowiana の血が入っており、一般的なセミイエロー系花における原種 C. dowiana の構成比率が約50%前後であるのに対して、やや低めです。このこともあって、本種は他のセミイエロー系花に比して強健なのかもしれません。
・これほどの有名品種であるにも関わらず、交配親としての実績は現在までのところ、わずか9品種を生み出したのみと意外で育種・交配の奥深さを感じます。
<個体‘Tipmalee’について>
・セミイエロー系の銘花であり代表花の一つとして、あまりにも有名な花。
・喉まで真っ赤なリップとその金脈が非常に美しく印象的だと思います。
・一見、薄く貧弱に見える花弁は花保ち非常に良く、黄花では、おそらく唯一、現在でも営利用として生産され、ホームセンターなどでも時折見かけることのある程の有名優秀花だと思います。
・いけばなの花材として使われることもあり、時折、雑誌のグラビアなどでも、この花の晴れ姿にお目にかかることがあります。
・個体名表記訂正(2021/10/30)=「Tip Malee」から「Tipmalee」へ
・入賞履歴訂正(2021/10/30)=「FCC/CST, AM/AOS」から「AM/RHT-CST-AJOS-AOS」へ
<入賞データ>
・AM/AOS = 86点、NS=150mm、11輪咲き(4花茎)、1986年
※RHT = Royal Horticultural Society of Thailand
※CST = Cattleya Society of Thailand
◎Rlc. Alma Kee の親品種の交配
・C. Alma = C. Appam x C. Helius (01/01/1931)
・Rlc. Cheah Bean-Kee = C. Los Angeles x Rlc. Norman's Bay (01/01/1964)
◎交配系統図は、こちらをクリック!(協力=Abiko Orchid Room Ronさん)
<Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’別個体(一例)>
特に無し
<Rlc. Alma Kee を交配親とした品種登録実績一覧>
・Rth. Mini Alma (Rlc. Alma Kee x Ctt. Barefoot Mailman (14/03/2019))
・Rth. Varut Goldfield (Rlc. Alma Kee x Ctt. Kauai Starbright (01/12/1986))
・Rlc. Delfina Oliver Prefasi (Rlc. Alma Kee x Rlc. Delfina The Klines (09/01/2012))
・Rlc. Eva's Alma Latina (Rlc. Alma Kee x Rlc. Waikiki Gold (12/11/1998))
・Rlc. Mishima Sunbeam (Rlc. Alma Kee x Rlc. Goldenzelle (08/06/1999))
・Rlc. Sunstate Beauty (Rlc. Alma Kee x Rlc. Sunset Bay (16/08/1993))
・Rlc. Sunstate's Bride Groom (Rlc. Alma Kee x Rlc. Oconee (05/06/2007))
・Rlc. Thomas Charles (Rlc. Alma Kee x Rlc. Golden Canefields (14/07/2008))
・Rlc. Yellow Heart (Rlc. Alma Kee x C. Beaufort (12/03/2002))
・Rth. CATAS Nestling Sparrow (Ctt. Loog Tone x Rlc. Alma Kee (28/09/2022))
・Rlc. Chivas (C. Moscombe x Rlc. Alma Kee (30/08/1995))
※Rlc. Alma Kee の子供(栽培・画像提供:四国巡礼さん)
■Rlc. Mishima Sunbeam‘Rondo’
リンコレリオカトレヤ ミシマ・サンビーム‘ロンド’
(Rlc. Alma Kee x Rlc. Goldenzelle (08/06/1999))
●Rlc. Mishima Sunbeam についての記事は、こちらをクリック!
※Rlc. Alma Kee の子供(於:第45回 神戸市立須磨離宮公園 秋の洋らん展(2008/11)出展=神戸のSさん)
■Rlc. Chivas‘Handsome Boy’
リンコレリオカトレヤ シーバス‘ハンサム・ボーイ’
(C. Moscombe x Rlc. Alma Kee (30/08/1995))
●Rlc. Chivas についての記事は、こちらをクリック!
<Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’画像集>
栽培・画像提供=サンセットさん(2021年10月)※この株はラベルからファーストメリクロンと思われます。
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
栽培・画像提供=サンセットさん(2021年10月)※この株はラベルからファーストメリクロンと思われます。
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
栽培・画像提供=サンセットさん(2021年10月)※この株はラベルからファーストメリクロンと思われます。
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)/栽培・出展=子安健司さん
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)/栽培・出展=子安健司さん
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)/栽培・出展=子安健司さん
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:咲くやこの花館 秋の洋蘭展(2017年11月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:第12回 関西らんフェスタ(2016年1月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:第28回 明石ラン展(2014年1月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
栽培・画像提供=趣味家Kさん(2012年10月開花分)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:神戸蘭友会 第51回 秋の洋らん展(2011年11月、花径約16cm)、出展:子安健司さん(大阪愛蘭会)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
2012年1月撮影分
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:神戸蘭友会 第51回 秋の洋らん展(2011年11月、花径約16cm)、出展:子安健司さん(大阪愛蘭会)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
栽培・画像提供=高知のセミイエローさん
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:世界らん展日本大賞2011(2011年2月)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:第3回 関西らんフェスタ(花径約13cm)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
於:ハワイ・ホノルル蘭展2005(画像提供=サンセットさん)
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
■Rlc. Alma Kee‘Tipmalee’AM/RHT-CST-AJOS-AOS
リンコレリオカトレヤ アルマ・キー‘ティップマリー’
本種が日本国内に流通し始めたころの初期のメリクロン株とのこと。やや樹勢が弱まっている様子が感じられます。ちなみに、本種の葉には正体不明の黒く小さな汚れのような斑点が現れやすいためか、古い株の多くがウイルス病に羅病しているという噂もあります。
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