※当記事は、NEW ORCHIDS(ニュー・オーキッド)廃刊のため掲載されなかった(2012年に掲載予定だったもの)私の寄稿のブログ版です。
・深夜の神戸港に停泊するフェリー「こんぴら2」
〜 温故知新 リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) に見る銘親の“能力(ちから)” 〜
午前0時。暗闇の中、低い唸り声を上げながら神戸港に接岸するフェリー。
仕事納めの宴のあと、くたびれた安背広のまま、このフェリーで仮眠をとり早朝4時の高松港に着くのが、私が育種家サンセットさんと出会ってから数年の年末恒例の“高松詣で”となっていました。
1989年に神戸、高松間に就航したこのフェリーは、寂れた船内にシャンデリア風の照明などの華美な装飾が施され、それが丁度、道化にも似た滑稽な寂寥感を醸し出しており、過去にこのフェリーに乗った人々の気配や思念のようなものの断片が、そこに僅かずつ残留して漂っているかのようにも思われるのでした。
カトレヤもまたそれと似て、往年の銘花などには、その花を創出した方の情熱や想い、愛培した数多の人の情念のようなものの蓄積が、その株に内在して、あたかも、ある種のエネルギーを生じさせているかのように感じられることがあります。
「育種」「交配」「品種改良」などと言えば、ひたすらに未来志向で、往年の品種には目もくれぬかのように誤解を招く場合もあるかもしれませんが、それらのことと真剣に、誠実に向き合おうとすればするほど、花々との対話から学ばなければならない事は多く、彼女たちに秘められた、時に謎かけにも似た先人のメッセージを読み解き、その交配の系統を紐解くことが、思い描いた“理想の花”創出への羅針盤となることも、私が“高松詣で”で学ばせていただいた大切な事のひとつです。
※画像は Rlc. Rie's Delight の選抜個体‘オクトーバー (October) ’(NS:15.0cm)
リエズ・デライト
Rlc. Rie's Delight
(Rlc. Rie's Bay × C. Horace (13/03/2006))
香川県高松市の育種家サンセットさんの交配・登録品種。
同じくサンセットさん登録によるサンセットカラー系花リエズ・ベイ‘オレンジーズ’HCC/JOS (Rlc. Rie's Bay‘Oranges’HCC/JOS ) と、整型花を生む銘親として数多の実績を有し、もはや伝説的とも思える銘親ホレース‘マキシマ’(C. Horace‘Maxima’AM/AOS) との交配です。
この交配からは、一見ソフトな印象の中にも、どこか鮮烈なインパクトを放つアクセントを備えた個性的な個体たちが選抜されており、なお且つ、そのほとんどの個体が忠実に銘親ホレース‘マキシマ’の特長を継承したペタルのオーバーラップするボリューム感のある整型花となっている点は注目すべき点だと思います。
ただし、この交配の場合、ホレース‘マキシマ’の能力以外にも、もう一方の親であるリエズ・ベイ‘オレンジーズ’が、サンセットカラー系花としては特筆すべき均整を有するペタルの展開の良い整型花であることから、相乗効果的にその子どもたちに高い確率で整型個体が出現したとも言えそうです。
ちなみに、写真の個体‘オクトーバー (October) ’はサンセットさんの選抜個体で、透明感のあるペタルの繊細な色調と、斬新なリップの彩りが絶妙に調和する、颯爽とした印象の整型極美花だと思います。
●Rlc. Rie's Delight についての記事は、こちらをクリック!
リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の種子親
リエズ・ベイ‘オレンジーズ’HCC/JOS
Rlc. Rie's Bay‘Oranges’HCC/JOS
(Rlc. Formosan Gold × Rlc. Sunset Bay (13/03/2006))
系統的に黄花とサンセットカラー系花を生む親同士の交配。サンセットさんの登録品種です。
本種の交配を紐解くと黄花やサンセットカラー系花の親としての優れた実績を有する品種が多く、その整型の花容からも交配親として今後の活躍が期待できそうな高いポテンシャルを有している魅力的な品種ではないかと思っています。
●Rlc. Rie's Bay についての記事は、こちらをクリック!
リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の花粉親
ホレース‘マキシマ’AM/AOS
C. Horace‘Maxima’AM/AOS
(C. trianae × C. Woltersiana (01/01/1938))
言わずと知れた、あまりにも有名な偉大なる銘親。
ドラムビート (C. Drumbeat) 。メロディー・フェア (C. Melody Fair) 。ゴールデンゼル (Rlc. Goldenzelle) 等の“銘交配”を生み出した実績を有し、カトレヤの品種改良史に多大なる足跡を残し、今なお重用され続ける伝説的とも思える銘親。(※ C. Horace‘Maxima’の偉大な功績につきましては、また別の機会に記事にさせていただきたいと思います。
●C. Horace についての記事は、こちらをクリック!
<Rlc. Rie's Delight 個体ギャラリー>
リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の現時点(2012年)での選抜個体をご紹介します。
NS:15.0cm
リエズ・デライト‘ガヨウ’
Rlc. Rie's Delight‘Gayo’
非常に力強く展開する精悍な印象の整型極美個体。ペタルも見事にオーバーラップしています。
また、花色は暖かく繊細な色調で、リップの濃厚かつ抜群のコントラストを醸し出す彩りも非常に印象的だと思います。
ちなみに、この個体の選抜は高松の蘭育種家、故ガヨウさんによるもので、個体名‘ガヨウ (Gayo) ’は自らのお名前に因まれたものです。2010年に78才でお亡くなりになるまで、カトレヤについては約30交配を行われ、それらの実生苗は現在、サンセットさんを始めとする高松の育種家の皆さんが遺志を受け継ぎ、栽培なさっています。
なお、香川では育種家間でのお互いの交配苗の分譲・交換は日常的に行われています。
●Rlc. Rie's Delight‘Gayo’についての記事は、こちらをクリック!
NS:14.0cm
リエズ・デライト‘キャナリー’
Rlc. Rie's Delight‘Canary’
力強くフラットに展開し見事にオーバーラップするぺタルと、暖かみのある鮮明なイエローコンカラー系基調の花色にリップの斬新なデザインが非常に印象的な極美個体だと思います。
●Rlc. Rie's Delight‘Canary’についての記事は、こちらをクリック!
NS:14.0cm
リエズ・デライト‘ディッセンバー’
Rlc. Rie's Delight‘December’
暖かな色調の花色にリップ下部中央の真っ赤な彩りが非常にインパクトのある豊満な花容の整型美個体。
●Rlc. Rie's Delight‘December’についての記事は、こちらをクリック!
NS:13.0cm
リエズ・デライト‘ハニー’
Rlc. Rie's Delight‘Honey’
リエズ・ベイからの影響を感じさせる、やや硬い印象の花容に、両親の花色が程よく溶け合わさったような優しい花色の美個体。個体名はこの「蜂蜜」のような花色に因んでいます。
●Rlc. Rie's Delight‘Honey’についての記事は、こちらをクリック!
NS:14.0cm
リエズ・デライト‘レインボー’
Rlc. Rie's Delight‘Rainbow’
個体名の通り、見る角度やライティングによって、多彩な色調に変化する、まるで万華鏡のような不思議な花色の極美個体。リップのデザインも斬新で非常に印象的だと思います。
●Rlc. Rie's Delight‘Rainbow’についての記事は、こちらをクリック!
NS:15.5cm
リエズ・デライト‘レモネード’
Rlc. Rie's Delight‘Lemonade’
鮮明な黄色の花色にリップ先端の赤が非常に印象的な整型極美個体。個体名はこのクリアーな花色に因んでいます。
●Rlc. Rie's Delight‘Lemonade’についての記事は、こちらをクリック!
NS:13.0cm
リエズ・デライト‘サンライズ’
Rlc. Rie's Delight‘Sunrise’
暖かいピンクオレンジ基調の花色に、真ん丸なリップが個体名のように日の出の太陽を想起させる愛らしい印象の美個体だと思います。
●Rlc. Rie's Delight‘Sunrise’についての記事は、こちらをクリック!
●<カトログ !! 版> 大輪系カトレヤ交配種『新時代の胎動』Vol.1は、こちらをクリック!
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・深夜の神戸港に停泊するフェリー「こんぴら2」
〜 温故知新 リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) に見る銘親の“能力(ちから)” 〜
午前0時。暗闇の中、低い唸り声を上げながら神戸港に接岸するフェリー。
仕事納めの宴のあと、くたびれた安背広のまま、このフェリーで仮眠をとり早朝4時の高松港に着くのが、私が育種家サンセットさんと出会ってから数年の年末恒例の“高松詣で”となっていました。
1989年に神戸、高松間に就航したこのフェリーは、寂れた船内にシャンデリア風の照明などの華美な装飾が施され、それが丁度、道化にも似た滑稽な寂寥感を醸し出しており、過去にこのフェリーに乗った人々の気配や思念のようなものの断片が、そこに僅かずつ残留して漂っているかのようにも思われるのでした。
カトレヤもまたそれと似て、往年の銘花などには、その花を創出した方の情熱や想い、愛培した数多の人の情念のようなものの蓄積が、その株に内在して、あたかも、ある種のエネルギーを生じさせているかのように感じられることがあります。
「育種」「交配」「品種改良」などと言えば、ひたすらに未来志向で、往年の品種には目もくれぬかのように誤解を招く場合もあるかもしれませんが、それらのことと真剣に、誠実に向き合おうとすればするほど、花々との対話から学ばなければならない事は多く、彼女たちに秘められた、時に謎かけにも似た先人のメッセージを読み解き、その交配の系統を紐解くことが、思い描いた“理想の花”創出への羅針盤となることも、私が“高松詣で”で学ばせていただいた大切な事のひとつです。
※画像は Rlc. Rie's Delight の選抜個体‘オクトーバー (October) ’(NS:15.0cm)
リエズ・デライト
Rlc. Rie's Delight
(Rlc. Rie's Bay × C. Horace (13/03/2006))
香川県高松市の育種家サンセットさんの交配・登録品種。
同じくサンセットさん登録によるサンセットカラー系花リエズ・ベイ‘オレンジーズ’HCC/JOS (Rlc. Rie's Bay‘Oranges’HCC/JOS ) と、整型花を生む銘親として数多の実績を有し、もはや伝説的とも思える銘親ホレース‘マキシマ’(C. Horace‘Maxima’AM/AOS) との交配です。
この交配からは、一見ソフトな印象の中にも、どこか鮮烈なインパクトを放つアクセントを備えた個性的な個体たちが選抜されており、なお且つ、そのほとんどの個体が忠実に銘親ホレース‘マキシマ’の特長を継承したペタルのオーバーラップするボリューム感のある整型花となっている点は注目すべき点だと思います。
ただし、この交配の場合、ホレース‘マキシマ’の能力以外にも、もう一方の親であるリエズ・ベイ‘オレンジーズ’が、サンセットカラー系花としては特筆すべき均整を有するペタルの展開の良い整型花であることから、相乗効果的にその子どもたちに高い確率で整型個体が出現したとも言えそうです。
ちなみに、写真の個体‘オクトーバー (October) ’はサンセットさんの選抜個体で、透明感のあるペタルの繊細な色調と、斬新なリップの彩りが絶妙に調和する、颯爽とした印象の整型極美花だと思います。
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リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の種子親
リエズ・ベイ‘オレンジーズ’HCC/JOS
Rlc. Rie's Bay‘Oranges’HCC/JOS
(Rlc. Formosan Gold × Rlc. Sunset Bay (13/03/2006))
系統的に黄花とサンセットカラー系花を生む親同士の交配。サンセットさんの登録品種です。
本種の交配を紐解くと黄花やサンセットカラー系花の親としての優れた実績を有する品種が多く、その整型の花容からも交配親として今後の活躍が期待できそうな高いポテンシャルを有している魅力的な品種ではないかと思っています。
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リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の花粉親
ホレース‘マキシマ’AM/AOS
C. Horace‘Maxima’AM/AOS
(C. trianae × C. Woltersiana (01/01/1938))
言わずと知れた、あまりにも有名な偉大なる銘親。
ドラムビート (C. Drumbeat) 。メロディー・フェア (C. Melody Fair) 。ゴールデンゼル (Rlc. Goldenzelle) 等の“銘交配”を生み出した実績を有し、カトレヤの品種改良史に多大なる足跡を残し、今なお重用され続ける伝説的とも思える銘親。(※ C. Horace‘Maxima’の偉大な功績につきましては、また別の機会に記事にさせていただきたいと思います。
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リエズ・デライト (Rlc. Rie's Delight) の現時点(2012年)での選抜個体をご紹介します。
NS:15.0cm
リエズ・デライト‘ガヨウ’
Rlc. Rie's Delight‘Gayo’
非常に力強く展開する精悍な印象の整型極美個体。ペタルも見事にオーバーラップしています。
また、花色は暖かく繊細な色調で、リップの濃厚かつ抜群のコントラストを醸し出す彩りも非常に印象的だと思います。
ちなみに、この個体の選抜は高松の蘭育種家、故ガヨウさんによるもので、個体名‘ガヨウ (Gayo) ’は自らのお名前に因まれたものです。2010年に78才でお亡くなりになるまで、カトレヤについては約30交配を行われ、それらの実生苗は現在、サンセットさんを始めとする高松の育種家の皆さんが遺志を受け継ぎ、栽培なさっています。
なお、香川では育種家間でのお互いの交配苗の分譲・交換は日常的に行われています。
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NS:14.0cm
リエズ・デライト‘キャナリー’
Rlc. Rie's Delight‘Canary’
力強くフラットに展開し見事にオーバーラップするぺタルと、暖かみのある鮮明なイエローコンカラー系基調の花色にリップの斬新なデザインが非常に印象的な極美個体だと思います。
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リエズ・デライト‘ディッセンバー’
Rlc. Rie's Delight‘December’
暖かな色調の花色にリップ下部中央の真っ赤な彩りが非常にインパクトのある豊満な花容の整型美個体。
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リエズ・デライト‘ハニー’
Rlc. Rie's Delight‘Honey’
リエズ・ベイからの影響を感じさせる、やや硬い印象の花容に、両親の花色が程よく溶け合わさったような優しい花色の美個体。個体名はこの「蜂蜜」のような花色に因んでいます。
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リエズ・デライト‘レインボー’
Rlc. Rie's Delight‘Rainbow’
個体名の通り、見る角度やライティングによって、多彩な色調に変化する、まるで万華鏡のような不思議な花色の極美個体。リップのデザインも斬新で非常に印象的だと思います。
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NS:15.5cm
リエズ・デライト‘レモネード’
Rlc. Rie's Delight‘Lemonade’
鮮明な黄色の花色にリップ先端の赤が非常に印象的な整型極美個体。個体名はこのクリアーな花色に因んでいます。
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リエズ・デライト‘サンライズ’
Rlc. Rie's Delight‘Sunrise’
暖かいピンクオレンジ基調の花色に、真ん丸なリップが個体名のように日の出の太陽を想起させる愛らしい印象の美個体だと思います。
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