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『カンマを伴う分詞句について』 第一分冊発行

2022-01-05 17:44:43 | 随想

『カンマを伴う分詞句について』 第一分冊発行

 

野島明著『カンマを伴う分詞句について』――《分詞構文》という迷妄を晴らす試み――(amazonで販売中)は大部である上、デジタル書籍の特性を存分に活用し、膨大な数のリンクを縦横無尽に張り巡らせています。その利便性を十分味わうには一定以上の大きさのモニター画面で、例えば現在Puboo(https://puboo.jp/)で販売しているEPUB形式で本書を読むことが必要になります。

 

現状の頁構成ままでは、amazonのkindle画面で見るには不適当な点も多々あるため、、本書を分割し、膨大なリンクを相当程度整理し、分冊化することにしました。

 

第一分冊は「第一章 第1節 戦国乱世」及び「2節 《分詞構文》という了解」です。本文の量は僅かですが、注の分量が多いため、かかる次第となりました。

 

また、本書の「道案内」とも「解説」とも言える「『カンマを伴う分詞句』の課題」を冒頭に収録しました。

 

第二分冊以降も、順次公刊の予定です。

 

(了)


剣呑な、余りにも剣呑な……

2021-11-30 15:55:48 | 評論

剣呑な、余りにも剣呑な……

 

自著『親近・疎遠・敵意 ――下らざるべからざる坂道が存在する』(amazon.co.jpで販売中)(英文Intimacy, Distance, Animosity――Slippery Slope Exists)(amazon.comで販売中)の中で、長期(数百年)に渡る集団的虐待を被ってきた特定人間集団はその遺伝子に有意な変異が生じるのかどうか、また、長期(数百年)に渡って特定人間集団を虐待し続けた特定人間集団はその遺伝子に有意な変異が生じるのかどうか、という疑問を提起した。

長期(数百年)に渡る虐待ではなく、極めて短期(数年から十数年)の虐待であっても虐待を受けた子どもの遺伝子の変化が生じるという研究結果は些か驚きでもある。

虐待などの不適切な養育を受けた子どもは、遺伝子に変化が生じ、その度合いが強いほど脳の機能にも影響するとの研究成果を、福井大の友田明美教授(小児発達学)らの研究チームが18日、発表した。(「虐待受けると遺伝子変化、脳機能が低下…トラウマ治療につながる可能性も」)(https://www.yomiuri.co.jp,2021/11/19 08:07)

長期(数百年)に渡って特定人間集団を虐待し続けた特定人間集団はその遺伝子に有意な変異が生じるのかどうか、という疑問を提起した私なれば、当然、湧き上がる疑問。

子供を虐待し続けた親は、果たしてその遺伝子に有意な変化が生じるのか。

特定の遺伝子に有意な変化が生じるのに要する時間は、動物実験の結果、マウスの場合は10世代以上、キツネの場合は50世代以上、という研究が発表されている。

ロシア・ノボシビルスク「細胞学遺伝学研究所」の長期に渡る「銀ギツネ[Vulpes vulpes]の選択交配と家畜化」研究によれば、

六世代目 甘える仕種を見せるようになる。

十六世代目 耳が垂れたり、尻尾が巻き上がるというイヌ化が見られた。

2019年には五十世代を超え、犬の様に芸をするものも現れた。

現在の五十六世代目 人間の指示を理解し、コミュニケーションが取れるまでになった。

いわば「キツネのイヌ化」が認められるようになった。

上記「細胞学遺伝学研究所」で長期に渡り続けられている「銀ギツネの選択交配と家畜化」研究を下敷きにした研究論文「アカギツネのゲノム配列によって、ヒト馴れした行動と攻撃的な行動に関連するゲノム領域が明らかに」[Red fox genome assembly identifies genomic regions associated with tame and aggressive behaviours](アカギツネも銀ギツネも学名は同じくVulpes vulpes)によれば、「細胞学遺伝学研究所」の「銀ギツネの選択交配と家畜化」研究では、ヒト馴れした銀キツネの選択交配のみならず、ヒトに対して攻撃的な銀キツネの選択交配も行なわれ、「ヒト馴れした系統と攻撃的な系統の行動の違いには、遺伝的要素が大いに寄与していることが確認され」、「ヒト馴れした行動の強力な位置候補遺伝子の一つとしてSorCS1が注目された。」(下線は引用者)SorCS1については、続けて、「SorCS1は、AMPAグルタミン酸受容体とニューレキシンの主要な輸送タンパク質をコードし、キツネの家畜化におけるシナプス可塑性の役割を示唆する。」という極めて専門的な解説が加えられている。

同研究論文によれば、「ヒト馴れしたキツネと家畜化されたイヌ」の比較ゲノム解析の結果は、

ヒト馴れしたキツネと家畜化されたイヌの行動には有意な類似性があり、同定されたキツネの(遺伝子)領域はイヌの家畜化に関わる候補(遺伝子)領域と重複している

ことを示唆している。

マウスを用いた実験でも、遺伝子の変異が観察されている。

研究論文「新規ヘテロジニアスストックマウスを用いた選択交配と選択マッピングにより明らかになった従順性に関連する二つの隣接した遺伝子座」[Selective breeding and selection mapping using a novel wild-derived heterogeneous stock of mice revealed two closely-linked loci for tameness](国立遺伝学研究所のWEB頁参照)の【概要】を多少補いつつ内容を紹介する。

野生マウス同士の交配で生まれたマウスの中から人の手を恐れず近寄ってくるマウスを選び、それらをさらに交配させるという選択交配実験を繰り返し、自ら人に近づくマウス集団を作り出す。

次いで、ヒトに近づかないマウスと人に近づくマウスの比較ゲノム解析を行う。11 番染色体上の二つのゲノム領域(ATR1とATR2)に相違が見出され、この二つのゲノム領域が人に近づく行動を生み出すゲノム領域であり、能動的従順性と関連する可能性が示唆された。

次いで、高度な従順性を示すイヌとの比較ゲノム解析をおこなった結果、マウスで選択されている領域と相同なゲノム領域、即ちATR1、ATR2に相当する特定のゲノム領域がイヌにも存在することが認められた。

この領域内には、脳内のセロトニン量調節に関わるセロトニントランスポーターをつくる遺伝子 Slc6a4が存在しており、高度な従順性にはこの遺伝子が関与している可能性がある。これらの結果は、マウスの実験によって明らかになった従順性関連遺伝領域が、イヌの家畜化、更にはイヌの従順性にも関わる共通のゲノム領域である可能性を示唆している。(拙著「第三章 家畜動物はなぜ人になつくのか」で紹介している内容)

遺伝子に変異を認められるまでの時間。

マウスの場合は10世代以上、キツネの場合は50世代以上、オオカミからイヌへの変化の場合は1万数千年、ヒトの場合は……。

虐待を受けた子どもの遺伝子の変化が極めて短期(数年から十数年)に生じるという研究結果は些か驚きでもある理由である

長期(数百年)に渡る集団的虐待を被ってきた特定人間集団はその遺伝子に変異が生じるのかどうか、また、長期(数百年)に渡って特定人間集団を虐待し続けた特定人間集団はその遺伝子に変異が生じるのかどうか、という余りにも剣呑な疑問は、提起されてはならないほど剣呑なものであるように思われる。

斯かる疑問を提起した自著『親近・疎遠・敵意 ――下らざるべからざる坂道が存在する』(英文Intimacy, Distance, Animosity――Slippery Slope Exists)が如何に剣呑な著作であるかは、虐待される側と虐待する側の二つの特定人間集団が、現代世界で具体的にどの人間集団を指すのかを推測してみれば明らかなのである。

その人間集団について、自著では、あいまいな書き方をしてはいない。二つの人間集団を明確に示している。

 

(この稿、了)


Intimacy, Distance, Animosity ------------- Slippery Slope Exists

2021-08-02 11:45:53 | 評論

Intimacy, Distance, Animosity
 

Slippery Slope Exists

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Digital Book English Edition on Sale at amazon.com

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OUTLINE  

 

It all starts with the "Miracle Relationship between Humans and Dogs."

Is is possible to quantify dog's tameness?

Is is possible to locate "tameness" at a specific genomic region?

Is is possible to locate "intimacy," "distance," or "animosity"

at a specific genomic region?

Is it possible to locate "a certain kind of psychic disposition", "racial prejudice", "racial superiority complex or racial inferiority complex"

at a specific genomic region?

What happened in Tulsa, OKlahoma, in 1921 and why?

On January 6, 2021, a mob of pro-Trump extremists(mostly white

people) broke into the Capitol and temporarily occupied it,

ransacking the halls of Congress, stealing property and smearing

feces on the wall. The 377 rioters arrested or charged were 95%

white and 85% male.

Does the event have nothing to to with the 1921 Tulsa Race

Massacre?


  

CONTENTS  

 

INTRODUCTION  Quantifying "Human-Dog Bonds"

CH.1 "Positive Loop" between Humans and Dogs

CH.2 The Process of Establishing the "Miracle Relationship between Humans and Dogs"

CH.3 Why Domestic Animals are tame

CH.4 Poor Denby (sometimes called Bill Denby, or Demby)

CH.5 Quantification of Intimacy or Distance

         or Whether "Negative Loop" Exists or Not

CH.6 A Lateralization of Behavioral Traits

        Can we locate "active tameness" at a specific genomic region?

        Where to locate "active tameness"?

        At a specific genomic region?

CH.7 Confirmability of A Lateralization of Psychic Disposition

         Is it possible to locate "a certain kind of psychic disposition",

         "racial prejudice", "racial superiority complex or

         racial inferiority complex"

         at a specific genomic region?

CH.8 "What is happening Here is not like what is happening There"

CH.9 The 1921 Tulsa Race Massacre :Conspiracy of Silence, Cover-up, Amnesia

CH.10 How Many Blacks were Slaughtered

CH.11 How to Dispose of Numerous Corpses

CH.12 "The Nanjing Massacre" : Whereabouts of the Remains

CH.13 The 1921 Tulsa Race Massacre : Aspects of the Violence

CH.14 the 1921 Tulsa Race Massacre : Aspects of the Dead

CH.15 The Haunting of Tulsa

CH.16 The Reality of the Haunting

CH.17 Vague Horrors : The Nightmare of "Replacement"

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親近・疎遠・敵意ーー下らざるべからざる坂道(slippery slope)が存在する

2021-08-02 11:41:28 | 評論

『親近・疎遠・敵意』
 

下らざるべからざる坂道(slippery slope)が存在する

 

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電子ブック日本語版 amazon.co.jpで販売中

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【内容紹介】

  

すべては「人と犬の奇跡の関係」から始まる。

犬の「従順性」の数値化は可能か?

「従順性」の在り処を特定ゲノム領域に求め得るか?

「親近」「疎遠」「敵意」の在り処を特定ゲノム領域に求め得るか?

「ある種の心性」の在り処を、「人種偏見」の在り処を、「人種的優越心あるいは劣等心」の在り処を特定のゲノム領域に求めうるか?

1921年、オクラホマ州タルサで何が起きたのか、そしてなにゆえ?

2021年1月6日、トランプ大統領を狂信的に支持する暴徒(殆どが白人)が議会議事堂に乱入、一時占拠し、議会ホールを荒らし回り、国有財産を略奪し、壁に排泄物を塗りたくった。逮捕もしくは起訴された暴徒377人の95%は白人、85%は男だった。

この出来事は、1921年タルサ人種虐殺と何の関係もないのか?

  

【目次】

  

はじめに 

「ヒトとイヌの絆」の数値化

第一章 

ヒトとイヌ、「ポジティブ・ループ」の成立

第二章 

「ヒトとイヌ 奇跡の関係」の成立過程

第三章 

家畜動物はなぜ人になつくのか

第四章 

Poor Denby (sometimes called Bill Denby, or Demby)

第五章 

親近性(もしくは疎遠性)の数値化、

あるいは「ネガティブ・ループ」は存在するのか

第六章 

《行動特性》局在説

――「能動的従順性」の在り処を特定ゲノム領域に求め得るか

第七章 

《心性》局在説の検証可能性

―ーある種の心性の在り処を、

「人種偏見」の在り処を、

「人種的優越心あるいは劣等心」の在り処を

特定のゲノム領域に求めうるか

第八章 

ここで起きていることは向こうで起きていることとは違う

第九章 

1921年タルサ人種大虐殺:沈黙の共謀、隠蔽、健忘症

第十章 

何人の黒人が虐殺されたのか

第十一章 

膨大な数の死体を如何に始末するか

第十二章 

「南京大虐殺」:遺体の行方

第十三章 

1921年タルサ人種虐殺:暴力の諸相 

第十四章 

1921年タルサ人種虐殺:死者の諸相

第十五章 

呪われたタルサ

第十六章 

呪いの実相

第十七章 

そこはかとない暗鬱、不安――立場の逆転という悪夢

引用文献・資料

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評論-231 小林秀雄の仏語力

2021-03-07 18:54:10 | 評論

評論-231 小林秀雄の仏語力

 

小林秀雄訳

ランボオ詩集(創元選書)

昭和23年11月20日発行(286頁)と昭和47年11月20日発行(303頁)

 

昭和23年版と昭和47年版では翻訳に多々異同を見出せる。

 

「地獄の季節」についてだけ見る。

 

昭和23年版

「俺の生活は祭[festin]であった」(p.92)

昭和47年版

「俺の生活は宴(うたげ)であった」(p.3)

(これ以降、festinは宴に統一されている)

 

昭和23年版

「その上で猛獣の様に情容赦もなく躍ったのだ[j'ai fait le bond sourd de la bête féroce]」(p.92)

昭和47年版

「その上で猛獣の様に情容赦もなく躍り上がったのだ」(p.4)

(この箇所、いずれも明白な誤訳)

 

昭和23年版

「死を手に入れる事だ。……七大罪のすべてを傾けて[Gagne la mort avec .....tous les péchés capitaux.」(p.93)

昭和47年版

「死を手に入れる事だ、……七大罪のすべてを抱へて」(p.4)

 

昭和23年版

「あゝ、俺は死なんか食ひ過ぎて了った。[Ah! j'en ai trop pris」(p.93)

昭和47年版

「あゝ、そんなものはもう抱えきれぬほど抱へ込んでゐるよ。」

 

昭和23年版

「俺の奈落の手帖の目も当てられぬ五六枚、早速貴方から掻拂はして戴く事にする[je vous détache ces quelques hideux feuillets de mon carnet de damné. 」(p.94)(この箇所、明白な誤訳)

昭和47年版

「俺の奈落の手帖の目も当てられぬ五六枚、では、貴方に見て戴く事にしようか」(p.5)

 

小林秀雄の仏語力は決して高度なものでなかったことが分かる。そんな仏語力でランボオの難解きわまる詩を《分かる》のか、という疑問が浮かぶ。

 

そんな疑問に答えることは比較的容易である。

 

高度な語学力があれば《分かる》ものではない。仏語を母語とする人を含め、仏語の達人に問うてみるといい。

「ランボオが分かりますか」

と。

  

 

(了)