「人の手によって作られ、人の手により悪化していく福島の危機」
と題する
フェアウィンズの記事(6月13日)があります。
元記事は、アート・ケラー氏による
報告です。
アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況と
説明されています。
サイト「星の金貨プロジェクト」の
小林順一氏が
翻訳されていますので
紹介します。
全4回です。
〔第1回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=11924
記事は、
「19,000人以上の日本人が波にのまれて、
彼らの遺体が東日本の太平洋岸に散乱しました」
という書き出しで始まります。
カリフォルニア州アナハイムに本社があり、
災害復旧について豊富な経験と技術を持つ会社、パワープラス社のケヴィン・ワン氏が
人々の救出のため立ち上がります。
ワン氏は、
ロサンジェルスにある日本総領事館を訪れ、
我が目と耳を疑うような
返答を得ます――
「まったく必要ありません」。
当時現場で必要不可欠であった
事故収束のための技術を移入することを頑なに拒否し続けたことに対し、
今だに多くの批判が集中しています。
ただ、僕は、
日本人の一人として、
批判の前に
疑問を感じます。
なぜ、事故収束のための
技術を移入することを頑なに拒否したのでしょう。
ワン氏とそのチームは、
除染のデモンストレーションを
数多くの見学者の前で行い、
高い除染能力を有していることを明らかにしました。
彼らは、手始めに
福島第一原発の南西にある福島県白河市に向かいました。
公認放射線防護科学技術者であり、長年除染に携わってきた
サム・エンゲルハートと
放射線保健物理学者として、
スリーマイル島とチェルノブイリ事故の現場も経験している
ウェイン・ショフィールドが同行しました。
荷物の中から
放射線の測定機器を取り出し、
測定を始めましたエンゲルハートの顔が
たちまち凍りつきました。
福島第一原発から約80キロ離れているはずであり、
原子炉建屋が爆発した当時、
その風上にあったはずだったからです。
計測された放射線濃度は、
通常の1,000倍というものでした。
それよりもさらに高い場所すらあったようです。
エンゲルハートが
当時を振り返り語ります。
曰く、この場所がもしアメリカ国内だったら、私たちはあわてて放射線防護スーツ、手袋そして防護マスクを着用し、完全防備の態勢を取ったでしょう。しかしこの場所と周辺のすべての物がどれ程汚染されてしまっているか、何も知らない日本の人々は普段と変わらない様子でその辺を歩き回り、そして仕事をしていました云々。
〔第2回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=11955
最も汚染されていたのは、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子に生えていたカビだとのことです。
実に、カビは、
アスファルトの舗装面の70倍の放射線を含んでいたと言います。
繰り返しますが、
驚くべきは、
何も知らない日本の人々が
周辺で普段と変わらず、
その辺を歩き回り、生活していることです。
ワン氏は、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子を
野球観戦をしていた少年を案じつつ、
次のように評しました、
「その体の男性生殖腺に深刻なダメージを受けてしまったに違いありません。」と。
驚くのは、
日本の普通の人たちの様子だけではありません。
政府が派遣した
災害の「専門家」たちの無知も仰天ものです。
放射線が人体にもたらす被害について、
ほとんど何の知識も持ち合わせていませんでした。
アメリカ産業界の
保健衛生技師でもあるエンゲルハート氏は、
日本の「専門家」たちの、
持参した線量計を操作する様子を観察して後、
こう断ぜざるを得ませんでした、
「彼らはその線量計が何を測定しているのか、そして正しい操作方法すら理解していない、そうとしか思えませんでした。」と。
日本政府の各部署から派遣されてきた3人の職員に対し、
ワン氏とそのチームは、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子が
汚染されていることを指摘しました。
しかし、驚いたことに、
その3人は
まさにそのベンチに腰を下ろしたのです!!
(もっとも、線量の非常に高い地域に送られた
放射線技術者には、
専門的知識の高い者がいたと記されてはいます)。
しかし、最初に出会った『専門家』たちの知識の無さには、
面食らわざるを得なかったという事実は、
語り草になるほどだったようです。
エンゲルハート氏は、
福島第一原発の約60キロ北西にある福島市内で、
別の深刻な事態に遭遇することになります。
メディアなどを通じ公開されていた
毎日測定された放射線量が
実測値より
50パーセントも低いものでした。
エンゲルハート氏は、
「日本の当局が使っていた測定機器に問題があったのか、それとも本当の放射線量を故意に隠蔽しようとしたのか、私には解りません。しかし福島市の人々に対して提供されていた放射線量の数値、それが間違っていたことだけは確かなことです。」
と証言されます。
ワン氏が初めて福島県を訪れた際、
放射線の線量計による測定結果について、
通常用いられる報告様式の中のどれを採用すべきか尋ねたところ、
帰ってきたのは叱責だったと言います。
「馬鹿言っちゃいけない。
公表するのは平均値などではなく、測定した中で、最も低い数値だけだ!」云々。
不本意ながら、
ワン氏は、
放射線量の過小報告に加担する結果となりました。
アメリカ製の測定機器と日本の測定機器の両方の測定結果を
比較・検証したそうです。
判明したのは、
アメリカの機器の測定結果が
日本製に比べ、
常に30%から50%高いことが解ったとのことでした。
それを指摘すると、
日本の担当者は、
「測定結果に問題があった原因は、
『ケーブルの不具合』にあった」と弁解したと言います。
エンゲルハート氏はその答えを疑われます。
ケーブルに不具合があれば、
測定結果はゼロになるか、測定不能を示すか、
あるいは、
でたらめな測定値が表示されるか、
そのいずれかなはずだからです。
ケーブルに問題がある場合、
「常に一定の割合で低い数値を表示する」故障など、
ありえません。
〔第3回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=12008
日本が行っている放射線量の測定と除染について、
もう一つ、
指摘しておかねばならないことがあります。
日本が行っている除染は、
セシウム134と137にばかり集中しているというのです。
「確かにセシウムは汚染物質中、最も量が多いものです。そして放射線の中でも透過力の高いガンマ線を放出することで知られており、標準的な線量計で測定が可能です。」
「しかし環境中に放出された放射性物質の中で、セシウムだけが毒性を持っているわけではありません。検出が容易だからと言って、セシウムだけが問題だというのはおかしな話なのです。」
という点を、
エンゲルハート氏は強調されました。
チームメンバーである
放射線保健物理学者であるウェイン・ショフィールドがこう語ります。
「私の考えでは、汚染が深刻な場所では高線量のセシウムの存在が確認できます。しかしこうした場所では、ストロンチウム-90、プルトニウム、コバルト、その他の汚染物質もまた、非常に危険な存在である可能性が高いのです。
ストロンチウム-90の半減期は約30年です。そして、ストロンチウム-90は『ベータ線崩壊物質』です。
放射線の中でベータ線は携行タイプの線量計での検出は非常に難しく、わずかな量の汚泥や落ち葉などによって簡単にさえぎられてしまうものなのです。」
要するに、ガンマ線を放出するセシウムのみ測定され、
アルファ線やベータ線を放出する
核種が無視されているということです。
一旦、体内に取り込まれれば、
非常に危険な存在になる可能性があり、
「(具体的に)どのような悪影響が現れるか、予測がつかないことになってしまうのです」
と警告されます。
保健物理学者であるウェイン・ショフィールドは、
他の汚染物質を考慮せず、
検出と除染の対象をセシウムにのみ絞り込むことが誤りであるとのことです。
2012年3月に日本の厚生労働省が公表した、
食品に含まれる放射性物質に関するガイドライン(注)は、
「ストロンチウム-90については
『半減期1年以上のすべての核種を考慮』するとして、
一応、言及しております。
しかし、実態は、セシウムの値を基に
「『推定』されたものに過ぎません」と指摘されます。
(注): http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/20130417-1.pdf
エンゲルハート氏は、
こう注意を促されます。
「現在の原子力産業では、ガンマ線の照射量によってベータ線の放射量を推定するという手法が用いられています。これによって正常に機能している原子炉内部で何が起きているかを把握できる、これは産業界の人間なら誰でも知っている事実です。」
「しかし事故となれば話は全く別なのです。環境中に放出されてしまったそれぞれの放射性物質が、互いにどのような作用を及ぼし合うか、それは未知の分野なのです。
環境中のアルファ線やベータ線の放射量を特定するためには、実地に測定する以外の方法は無いのです。」
ただし、測定のためコストがかかります。
しかしその事と、
日本の当局が
セシウム以外の放射性物質の検出検査を行わないという事とは、
また別の問題だということです。
「水の存在」が検査をさらに難しくしているようです。
水はアルファ線、ベータ線、そしてガンマ線に対しても
それを遮る作用があるからです。
『事故発生直後はひどかった福島の汚染は、時間の経過とともにずいぶんと下がったものと考えられます。数値が下がった原因は雨、そして風の存在です。時間の経過とともに、80%の放射性物質が洗い流され、あるいは吹き飛ばされて行ったものと考えられます』
とのことです。
現に、道路にたまった雨水を集める側溝の上に置かれた、
格子状の金属製のフタの汚染度は、
アメリカ国内の原子力発電所で
職員がその場所に行かないように制限を加えるかどうか、
検討を始めなければならない値の
5倍という値でした。
この極度に汚染された
側溝のふたが意味するのは、何か――。
「洗い流された放射性物質は、
その後消滅するのではなく、人間や動植物の生存権に残り続けるという事実です」
と記事に記されてありました。
その通りなんでしょうね。
エンゲルハート氏は、
さらにこう言葉をつながれます。
「風で吹き飛ばされたり、あるいは除染で取り除かれ、現在までに80%程が取り除かれたというこことが解るでしょう。」
しかし、残った20%の放射性物質については、
状況は同じではないわけです。
すなわち、放射性物質は、付着していた物質に固着してしまいます。
「かつて簡単に拭き取ることができた数種類の汚染物質、現在は化学的結合、または分子的結合によって、そこに固着してしまっているのです。こうなってしまうと、除染によってこれらの放射性物質を取り除くことはきわめて困難になります。」
ということです。
〔第4回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=12039
エンゲルハート氏は、
彼が接触した日本政府の関係者の態度の変化に戸惑いました。
「私たちが初めて日本を訪れたとき、これらの関係者は非常に落胆した様子でした。ところが2度目の訪問の際には、彼らは明らかに高揚した様子だったのです。最初の落胆と次の高揚、この対照はあまりにも不自然でした。」
ワン氏は、
何回かの日本訪問を振り返って
次のように述べられます。
「私が日本を訪問した際、一つ覚えのように繰り返し聞かされた言葉がありました。『これは日本の危機であり、日本人自身の手で解決されなければならないのだ。』というものです。しかし私が実際に見聞きした日本政府の対応は、本当の意味で事故を収束させる取り組みには程遠いものでした。」
「代わりに私が目撃したものは、政府関係者が傷ついた自らの立場を修復するための努力、そして現在の事態が如何に緊急性の高いものであるかという事に対する理解の欠如、それらが本当に必要な対策を実施する妨げになっているという事実だったのです。」
僕は、
この記事を読んで驚愕するのは、
「日本の企業も、アメリカの企業も、除染についての専門的技術・知識を提供できる企業に限って、何十という会社が福島の現場に入ることが出来ませんでした」
というくだりです。
我が国のことながら、
理解に苦しむ事態です。
なぜ、かくも閉鎖的なんでしょう。
記事には、
その理由を説明するため、
環境省福島除染推進チーム次長(経済産業事務官と併任)の西山英彦氏が
語った言葉が
引用されてました。
西山氏は、こう言ったそうです。
「もし県内を多数の外国人が行き来するようになれば、福島の高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが皆怯えてしまうでしょう」と。
読みながら、
(アホか)
という思いが込み上げてきました。
契約に漕ぎつけたのは
除染に関する専門知識を持たない代わり、
政治的な力を持つ
日本の大手建設会社でした。
残念な結末です。
それで
思い出しました!
日本では、
アイソセンターに勤務する東大の教授が
参議院で芝居じみた訴えをして
除染を
シロアリのたかる
おいしい蜜にしてしまいました。
福島県のリフォーム会社の社長である志賀正文氏が
ニューヨークタイムズの取材に対し、
こう語りました。
「今、福島で起きていることこそがまさに、日本人にとって不名誉な出来事なのです」と。
記事は、
――「我々には、いかなる援助の手も必要ありません。」
日本政府は
ありもしない国のプライドを優先し、
市民の命を危険にさらす道を選択したのです――
という言葉を持って、
締め括られていました。
と題する
フェアウィンズの記事(6月13日)があります。
元記事は、アート・ケラー氏による
報告です。
アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況と
説明されています。
サイト「星の金貨プロジェクト」の
小林順一氏が
翻訳されていますので
紹介します。
全4回です。
〔第1回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=11924
記事は、
「19,000人以上の日本人が波にのまれて、
彼らの遺体が東日本の太平洋岸に散乱しました」
という書き出しで始まります。
カリフォルニア州アナハイムに本社があり、
災害復旧について豊富な経験と技術を持つ会社、パワープラス社のケヴィン・ワン氏が
人々の救出のため立ち上がります。
ワン氏は、
ロサンジェルスにある日本総領事館を訪れ、
我が目と耳を疑うような
返答を得ます――
「まったく必要ありません」。
当時現場で必要不可欠であった
事故収束のための技術を移入することを頑なに拒否し続けたことに対し、
今だに多くの批判が集中しています。
ただ、僕は、
日本人の一人として、
批判の前に
疑問を感じます。
なぜ、事故収束のための
技術を移入することを頑なに拒否したのでしょう。
ワン氏とそのチームは、
除染のデモンストレーションを
数多くの見学者の前で行い、
高い除染能力を有していることを明らかにしました。
彼らは、手始めに
福島第一原発の南西にある福島県白河市に向かいました。
公認放射線防護科学技術者であり、長年除染に携わってきた
サム・エンゲルハートと
放射線保健物理学者として、
スリーマイル島とチェルノブイリ事故の現場も経験している
ウェイン・ショフィールドが同行しました。
荷物の中から
放射線の測定機器を取り出し、
測定を始めましたエンゲルハートの顔が
たちまち凍りつきました。
福島第一原発から約80キロ離れているはずであり、
原子炉建屋が爆発した当時、
その風上にあったはずだったからです。
計測された放射線濃度は、
通常の1,000倍というものでした。
それよりもさらに高い場所すらあったようです。
エンゲルハートが
当時を振り返り語ります。
曰く、この場所がもしアメリカ国内だったら、私たちはあわてて放射線防護スーツ、手袋そして防護マスクを着用し、完全防備の態勢を取ったでしょう。しかしこの場所と周辺のすべての物がどれ程汚染されてしまっているか、何も知らない日本の人々は普段と変わらない様子でその辺を歩き回り、そして仕事をしていました云々。
〔第2回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=11955
最も汚染されていたのは、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子に生えていたカビだとのことです。
実に、カビは、
アスファルトの舗装面の70倍の放射線を含んでいたと言います。
繰り返しますが、
驚くべきは、
何も知らない日本の人々が
周辺で普段と変わらず、
その辺を歩き回り、生活していることです。
ワン氏は、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子を
野球観戦をしていた少年を案じつつ、
次のように評しました、
「その体の男性生殖腺に深刻なダメージを受けてしまったに違いありません。」と。
驚くのは、
日本の普通の人たちの様子だけではありません。
政府が派遣した
災害の「専門家」たちの無知も仰天ものです。
放射線が人体にもたらす被害について、
ほとんど何の知識も持ち合わせていませんでした。
アメリカ産業界の
保健衛生技師でもあるエンゲルハート氏は、
日本の「専門家」たちの、
持参した線量計を操作する様子を観察して後、
こう断ぜざるを得ませんでした、
「彼らはその線量計が何を測定しているのか、そして正しい操作方法すら理解していない、そうとしか思えませんでした。」と。
日本政府の各部署から派遣されてきた3人の職員に対し、
ワン氏とそのチームは、
野球場の屋外観覧席のコンクリート製の椅子が
汚染されていることを指摘しました。
しかし、驚いたことに、
その3人は
まさにそのベンチに腰を下ろしたのです!!
(もっとも、線量の非常に高い地域に送られた
放射線技術者には、
専門的知識の高い者がいたと記されてはいます)。
しかし、最初に出会った『専門家』たちの知識の無さには、
面食らわざるを得なかったという事実は、
語り草になるほどだったようです。
エンゲルハート氏は、
福島第一原発の約60キロ北西にある福島市内で、
別の深刻な事態に遭遇することになります。
メディアなどを通じ公開されていた
毎日測定された放射線量が
実測値より
50パーセントも低いものでした。
エンゲルハート氏は、
「日本の当局が使っていた測定機器に問題があったのか、それとも本当の放射線量を故意に隠蔽しようとしたのか、私には解りません。しかし福島市の人々に対して提供されていた放射線量の数値、それが間違っていたことだけは確かなことです。」
と証言されます。
ワン氏が初めて福島県を訪れた際、
放射線の線量計による測定結果について、
通常用いられる報告様式の中のどれを採用すべきか尋ねたところ、
帰ってきたのは叱責だったと言います。
「馬鹿言っちゃいけない。
公表するのは平均値などではなく、測定した中で、最も低い数値だけだ!」云々。
不本意ながら、
ワン氏は、
放射線量の過小報告に加担する結果となりました。
アメリカ製の測定機器と日本の測定機器の両方の測定結果を
比較・検証したそうです。
判明したのは、
アメリカの機器の測定結果が
日本製に比べ、
常に30%から50%高いことが解ったとのことでした。
それを指摘すると、
日本の担当者は、
「測定結果に問題があった原因は、
『ケーブルの不具合』にあった」と弁解したと言います。
エンゲルハート氏はその答えを疑われます。
ケーブルに不具合があれば、
測定結果はゼロになるか、測定不能を示すか、
あるいは、
でたらめな測定値が表示されるか、
そのいずれかなはずだからです。
ケーブルに問題がある場合、
「常に一定の割合で低い数値を表示する」故障など、
ありえません。
〔第3回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=12008
日本が行っている放射線量の測定と除染について、
もう一つ、
指摘しておかねばならないことがあります。
日本が行っている除染は、
セシウム134と137にばかり集中しているというのです。
「確かにセシウムは汚染物質中、最も量が多いものです。そして放射線の中でも透過力の高いガンマ線を放出することで知られており、標準的な線量計で測定が可能です。」
「しかし環境中に放出された放射性物質の中で、セシウムだけが毒性を持っているわけではありません。検出が容易だからと言って、セシウムだけが問題だというのはおかしな話なのです。」
という点を、
エンゲルハート氏は強調されました。
チームメンバーである
放射線保健物理学者であるウェイン・ショフィールドがこう語ります。
「私の考えでは、汚染が深刻な場所では高線量のセシウムの存在が確認できます。しかしこうした場所では、ストロンチウム-90、プルトニウム、コバルト、その他の汚染物質もまた、非常に危険な存在である可能性が高いのです。
ストロンチウム-90の半減期は約30年です。そして、ストロンチウム-90は『ベータ線崩壊物質』です。
放射線の中でベータ線は携行タイプの線量計での検出は非常に難しく、わずかな量の汚泥や落ち葉などによって簡単にさえぎられてしまうものなのです。」
要するに、ガンマ線を放出するセシウムのみ測定され、
アルファ線やベータ線を放出する
核種が無視されているということです。
一旦、体内に取り込まれれば、
非常に危険な存在になる可能性があり、
「(具体的に)どのような悪影響が現れるか、予測がつかないことになってしまうのです」
と警告されます。
保健物理学者であるウェイン・ショフィールドは、
他の汚染物質を考慮せず、
検出と除染の対象をセシウムにのみ絞り込むことが誤りであるとのことです。
2012年3月に日本の厚生労働省が公表した、
食品に含まれる放射性物質に関するガイドライン(注)は、
「ストロンチウム-90については
『半減期1年以上のすべての核種を考慮』するとして、
一応、言及しております。
しかし、実態は、セシウムの値を基に
「『推定』されたものに過ぎません」と指摘されます。
(注): http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/20130417-1.pdf
エンゲルハート氏は、
こう注意を促されます。
「現在の原子力産業では、ガンマ線の照射量によってベータ線の放射量を推定するという手法が用いられています。これによって正常に機能している原子炉内部で何が起きているかを把握できる、これは産業界の人間なら誰でも知っている事実です。」
「しかし事故となれば話は全く別なのです。環境中に放出されてしまったそれぞれの放射性物質が、互いにどのような作用を及ぼし合うか、それは未知の分野なのです。
環境中のアルファ線やベータ線の放射量を特定するためには、実地に測定する以外の方法は無いのです。」
ただし、測定のためコストがかかります。
しかしその事と、
日本の当局が
セシウム以外の放射性物質の検出検査を行わないという事とは、
また別の問題だということです。
「水の存在」が検査をさらに難しくしているようです。
水はアルファ線、ベータ線、そしてガンマ線に対しても
それを遮る作用があるからです。
『事故発生直後はひどかった福島の汚染は、時間の経過とともにずいぶんと下がったものと考えられます。数値が下がった原因は雨、そして風の存在です。時間の経過とともに、80%の放射性物質が洗い流され、あるいは吹き飛ばされて行ったものと考えられます』
とのことです。
現に、道路にたまった雨水を集める側溝の上に置かれた、
格子状の金属製のフタの汚染度は、
アメリカ国内の原子力発電所で
職員がその場所に行かないように制限を加えるかどうか、
検討を始めなければならない値の
5倍という値でした。
この極度に汚染された
側溝のふたが意味するのは、何か――。
「洗い流された放射性物質は、
その後消滅するのではなく、人間や動植物の生存権に残り続けるという事実です」
と記事に記されてありました。
その通りなんでしょうね。
エンゲルハート氏は、
さらにこう言葉をつながれます。
「風で吹き飛ばされたり、あるいは除染で取り除かれ、現在までに80%程が取り除かれたというこことが解るでしょう。」
しかし、残った20%の放射性物質については、
状況は同じではないわけです。
すなわち、放射性物質は、付着していた物質に固着してしまいます。
「かつて簡単に拭き取ることができた数種類の汚染物質、現在は化学的結合、または分子的結合によって、そこに固着してしまっているのです。こうなってしまうと、除染によってこれらの放射性物質を取り除くことはきわめて困難になります。」
ということです。
〔第4回〕
☆ 記事URL:http://kobajun.chips.jp/?p=12039
エンゲルハート氏は、
彼が接触した日本政府の関係者の態度の変化に戸惑いました。
「私たちが初めて日本を訪れたとき、これらの関係者は非常に落胆した様子でした。ところが2度目の訪問の際には、彼らは明らかに高揚した様子だったのです。最初の落胆と次の高揚、この対照はあまりにも不自然でした。」
ワン氏は、
何回かの日本訪問を振り返って
次のように述べられます。
「私が日本を訪問した際、一つ覚えのように繰り返し聞かされた言葉がありました。『これは日本の危機であり、日本人自身の手で解決されなければならないのだ。』というものです。しかし私が実際に見聞きした日本政府の対応は、本当の意味で事故を収束させる取り組みには程遠いものでした。」
「代わりに私が目撃したものは、政府関係者が傷ついた自らの立場を修復するための努力、そして現在の事態が如何に緊急性の高いものであるかという事に対する理解の欠如、それらが本当に必要な対策を実施する妨げになっているという事実だったのです。」
僕は、
この記事を読んで驚愕するのは、
「日本の企業も、アメリカの企業も、除染についての専門的技術・知識を提供できる企業に限って、何十という会社が福島の現場に入ることが出来ませんでした」
というくだりです。
我が国のことながら、
理解に苦しむ事態です。
なぜ、かくも閉鎖的なんでしょう。
記事には、
その理由を説明するため、
環境省福島除染推進チーム次長(経済産業事務官と併任)の西山英彦氏が
語った言葉が
引用されてました。
西山氏は、こう言ったそうです。
「もし県内を多数の外国人が行き来するようになれば、福島の高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが皆怯えてしまうでしょう」と。
読みながら、
(アホか)
という思いが込み上げてきました。
契約に漕ぎつけたのは
除染に関する専門知識を持たない代わり、
政治的な力を持つ
日本の大手建設会社でした。
残念な結末です。
それで
思い出しました!
日本では、
アイソセンターに勤務する東大の教授が
参議院で芝居じみた訴えをして
除染を
シロアリのたかる
おいしい蜜にしてしまいました。
福島県のリフォーム会社の社長である志賀正文氏が
ニューヨークタイムズの取材に対し、
こう語りました。
「今、福島で起きていることこそがまさに、日本人にとって不名誉な出来事なのです」と。
記事は、
――「我々には、いかなる援助の手も必要ありません。」
日本政府は
ありもしない国のプライドを優先し、
市民の命を危険にさらす道を選択したのです――
という言葉を持って、
締め括られていました。
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