のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

「器が大きい」・「器量よし」って誉め言葉か

2010年08月15日 18時07分27秒 | Weblog
女性に対する誉め言葉として

「器量よし」という表現があります。

容姿端麗の意味です。

男性に対しては

「器が大きい」という言い方が

その人の度量の大きさを示す表現として

やはり誉め言葉というのが普通の理解でしょう。

広辞苑などの辞書にもそのような説明がなされていると思います。

しかし、この「器」という語句、

本当に誉め言葉として、

素直に受け取って喜ぶべき語なのでしょうか。

器が如何に立派でも中に何も入っていなければ、意味ないでしょう。

「池袋母子餓死事件」というショッキングな出来事が昔、ありました。

正確には池袋で起きた、

1996年4月27日に発見された母と子の餓死事件です。

この事件のニュースに接したとき、

「お茶碗が新聞紙に包んで大事に保管されてあった」

という新聞の記述に、胸が締め付けられる思いがしました。

(母親の日記が残されています。

右、文字列にリンクさせてありますから、よければ、ご参照ください。

 →日記

「器量よし」だとか「器が大きい」だのと聞くと、

いつもこの事件を思い出し、

えっ?

という思いにとらわれます。

孔子は、この「器」についてどう言っているのでしょう。

子(し)曰(いわ)く、

君子(くんし)は器(き)ならず。[為政]

と、にべもないです。

君子(紳士・淑女)として生きたいのであれば、

「器量」を云々(うんぬん)されなさんなよ、ということです。

現代は、競争社会です。

みんながみんな、他者より秀でようとします。

一技一能を磨くことに全てを捧げかねないほどです。

孔子に言わせれば、

そんな能力、美点は、人に使われる道なのですね。

論語は、帝王学と言われる所以(ゆえん)ではありますが、

君子たるもの、人を使えと言います。

そこに至る過程として、

器でなくなりなさいということが

メッセージとして、

上の短い文章に込められています。

荻生徂徠(おぎゅうそらい)という人がこれに関連して、

「器(うつわ)なる人は必ず器を用いずして自ら用いるに至る」

と述べています。

現代語訳すると、

(器の大小にかかわらず)

器であるにとどまっている人というのは、

他人を役立たせず、自分を役立たせてしまうものだ、ということです。

何だか味わい深いと思いません?

では、器でなくなるには何をすればいいのでしょう。

一言で言うなら、「仁」(じん)の実践ということになりましょうか。

周りを見渡して、

「偉い人であるのか、鈍い人であるのか、ちょっと分からない」

という人がいませんか。

そのような人が仁の実践者であるようですよ。




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4 コメント

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なるほど (けろろ)
2010-08-16 07:03:54
いつも読み逃げですが、今日の記事はとても分かりやすく、また興味深い内容でした。

池袋の母子餓死事件については、マンガで読んだことがありましたが、淡々とつづられている日記を読みながら、同じく胸が締め付けられる思いがしました。

器ではなく、器を使う人間であれ、ということですね。
実にふかーいです。
是非、器の大きいうちのアッパ君にしてあげたい話だ(笑)
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☆けろろさんへ (忠太)
2010-08-16 16:29:51
何をおっしゃいます、けろろさん。
読み逃げ歓迎、福の神です。
ありがたいこってす!
これ、本心です。
訪問して頂けただけで感謝、感謝です。

ところで、男は本能みたいなものとして、
大っきくありたい〈そう思われたい)欲求を抱えているようですね。
仲間内でも自分の奥さんに対しても・・・

その証拠にね、
このブログ記事で紹介した漢文ね、
学校では絶対に教えさせないと思います。
「父さんは、器が大きいんだ」
と威張ってたい男性が沢山いるからです。

たとえば、○×ができる、できないとかを自分が決定したいのですね。

子供みたいですが、
孔子の指摘していることは、
筋が通っている分、
旦那さんのプライドを傷つけるでしょう、
もちろん、言い方もあるでしょうが。
それを考えると、
言わない方が賢いような気がします。

ただ、人の家庭のことは、
よく分からないということがあります。
もし、喧嘩してもすぐ仲直りできるようなら
言っていいかもですね。
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こんばんは (baniramama)
2010-08-18 23:33:32
ラジオの深夜放送がかかってます

私はこの時間帯のラジオって淋しくなって、胸キュンとしちゃうけど 夫は聞きながら寝付く

なぜかこのトーンを抑えた話し声、ちょっとした話しの間、曲調でとてもせつなくなるの

で、本題に入ります

忠太さんのブログは、はまると胸にズキンと来ます

本当はコメントを入れたいけど
受け止めるのが精いっぱいで、自分の中で反芻して楽しませて?頂いてます

アハハ

私って怒った と気が付くのも1日後になる
とりあえず受け止めてから・・ですかね エヘヘ

周りでは動きが早い、住みにくい世の中です


マイペースで たまにはシャキッとしてみたい
返信する
☆baniramamaさんへ (忠太)
2010-08-19 01:43:01
>はまると胸にズキン

ですか。嬉しいことを言って下さる。φ(..)メモメモ

人の言葉を受け止めるって大切ですね。これがきちんとできれば、争いのかなりの部分が解決すると思います。

ただ、受け止めるって、意外と難しくて、顔や腹で受け止めてしまうという場合も多々あるようです。

鏡を観てから
(おい、おい、顔が腫れてるやん)という発見は、極力したくないものです。

でも、まぁ、罪の意識で苦しむよりはましかもね、とか何とか言いながら、その内、しゃきっとする・・・その内、しゃきっとする・・・というのは、僕にとっても自分に言い聞かせている言葉です。早いとこ、現実のものにしたいです。お互いがんばりましょうねい。

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