(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

袖抜

2025年04月12日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


     ◆     ◆     ◆

袖抜は、旧・科目表では1級科目として習得した衣服取りの龍王拳(抜き技)です。
2級で出てきた上膊抜や上膊捕(羅漢拳)は腕を鷲掴みする攻撃でしたから、袖抜は攻者が袖をしっかり掴んでくる最初の法形であり、また護身の場面でも遭遇しやすい状況だと思います。衣服を握ってくる攻撃への対処は非常に難しいので、よく練習する必要があります。

教範には袖抜については「袖を掴まれた時の抜き方」とあります。  
科目表では攻撃は「上袖を握り引く」とされています。なので「袖抜」はよく「上袖抜」とも呼ばれます。同様に「袖捕」を「上袖捕 (ウワソデヌキ)」、「袖巻」を「上袖巻 (ウワソデマキ)」と呼ぶ事もあります。ただこの点は注意が必要で、通常 袖抜(龍王拳)の逆技は羅漢拳の袖捕・袖巻の2種と理解されていますが、教範には袖捕と袖巻の攻撃は「袖を掴まれた時」とは書かれていないのです。その事については袖捕と袖巻の項でまた触れたいと思います。

守者の構えは逆下段構えです。
旧・1級科目で守者が逆下段構えを取るのは、龍王拳の袖抜・襟抜と羅漢拳の袖捕・袖巻・袖巻天秤・腕巻で、同じく羅漢拳の片胸落・襟十字では下段構えとなっています。これは「押す攻撃」に対しては下段構え、「引っ張る攻撃」に対しては逆下段構えで修練する、という事です。
攻撃は攻者が決めるのですから、逆下段構えに対しては引く攻撃が攻者に有利なのかと言うとそうではなく、引かれる攻撃に対して逆下段が守者に有利なのです。攻撃が分からないのに最初からその構えを取っているのは実戦としてはおかしい訳ですが、これは修練としてそうしているのです。例えば右下段構え or中段構えで右袖を掴まれて強く引かれた場合、守者は咄嗟に左足を出して守る必要があります。或いは袖を掴んで足払いを掛けてくる場合もあり、その場合守者は咄嗟に狙われた右足を引いて守ります。
2級拳士としては、それを最初からしている形(=逆下段構え)で修練する、という事だと思います。

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上袖抜と上膊抜は掴まれる場所は同じで袖を握るかどうかの違いなので、ほぼ同じ技と考えがちです。押し引きの違いはあるのですが、鉤手守法がしっかり取れていれば実際その後の処理はどちらでも出来るかも知れません。
なので「上膊抜の方法で袖を抜く先生」がかなりいます。たまに「上袖抜の方法で上膊を抜く拳士」もいます。しかし、私自身は上膊抜と上袖抜の抜き方は違う、抜ける原理を理解してハッキリ使い分けた方が良い、と考えています。しかしこれは本部の先生方でも様々なので、議論が分かれるところでしょう。

私が信じる上袖抜の方法とは、手首を上に前腕を立て肘を曲げて大きく回し、我ので打ち切るように抜く方法です。攻者の握り手を確実に天地逆に返す事と、抜く時に若干我の脇腹に引き払うのが point です。これは十字抜のpointでもあり、S字の原理で攻者の握りを無力化し、抜いている訳です。
失敗の多くは攻者の握り手を返せていないからであり、その場合攻者の指がますます袖に絡みついて抜けなくなります。手首を返す為には鉤手守法の段階で充分な緊張状態になっていなければなりません(ユルユルだと手が返らない)。なので鉤手守法を取る際に、若干肘(身体)を引いてゆとりを無くします。

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抜いた後の反撃の当身は、裏拳打と逆中段突(連反攻)です。上袖抜では肘で脇腹を擦る形で抜いてますので、裏拳打が最適解になります(これも片手十字抜と同じ理屈です)。

上膊抜(片手) 袖抜 襟抜 Short Ver.
 :連続複数法形修練;金剛禅総本山少林寺公式Chより

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襟十字

2025年03月29日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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襟十字は、旧・科目表では1級科目で片胸落に続いて習得した羅漢拳(衣服取り)の法形です。羅漢拳は攻者の腕っぷし・握力が強いと非常に難しいので、よく練習する必要があります。片胸落とは兄弟技のような関係なので、一緒に修練した方が理解が進むと思います。

攻撃は「上襟を握り拳を横にして押し込んできた時」とされます。人間は拳を前に突き込もうとするとその拳は横拳に捻じ込むようになりがちですから(
=前腕が回内する)、小競り合いで起こりがちな「胸元を小突くように押し込んでくる」場面となります。

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片胸落との大きな違いは、片胸では我の両手でしっかり挟んでから攻者の拳を返したのに対し、襟十字では先に上から手甲に掛け手をして、下から裏手首の部分で攻者の内手首を打上げるところにあります。それによって攻者の手首を殺し、その流れの儘、我の肘を被せてS字の形にして極めます。肘を被せて十字を作り極めるところは片胸落より十字小手(3級技)に近いですから、それが技の名称の由来になります。

攻者の襟・袖を握る力を無力化する為にS字を用いる点は、多くの羅漢拳に共通する原理ですが、まず手首を殺して攻者の力を減じさせ、そこからS字を作った方がいいと思います。しかし手首を殺すのに苦労すると攻者の肘は伸びがちになり、そこからS字に戻せずに技が流れてしまう、というのもありがちです。送小手の原理が働いて肩が流れて(送られて)しまうと、もう巻天秤などに変化した方がいいかも知れません。
(SKの技にはこのように失敗した場合の変化技も用意されている訳ですが、しかし襟十字の修練をしているのに毎回巻天秤になってしまうのでは困ります。やはり何とか襟十字を出来るようにしたいものですね)

十字小手・片胸落・襟十字などS字系の技で技が流れないようにするコツとしては、<位置取りの意識>と<間合いの意識>を持つ事です。手首は返したいが肩は送りたくない訳です。片手送小手は攻者の肩のラインの延長(攻者の横)に位置取る事で成功率が上がります(=肩が送られ易くなる)。一方、S字系は基本としては攻者に正対するように(=正中線を合わせて)掛けます。また送小手で肩を送る際は原則としては攻者の腕(肘関節)は伸ばします。一方S字系では、Sになった分、攻守の間合いは近くなります。
この攻守の位置関係と間合いの意識を持ちながら攻者の肘をS字に曲げるようにすると、技が流れにくくなると思います。手首に返す力が働いても、肩は出ていけないように出来たらいいのです。

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裏手首(外手首)の部分をSKでは腕骨と言います。前腕の2本の骨(橈骨と尺骨)のうち、手首側では太いのは橈骨
(拇指側)ですから、腕骨打では拇指側を用いた方がいいでしょう。やや手首を殺し気味に用いれば、俗に言う「狐拳」ということになります。(中国拳法や空手では狐拳を攻守によく使うようです。東八拳の事じゃないですからねっ!)

科目表的には上述の通り攻撃は「上襟を握り拳をにして押し込んできた時」なのですが、私は本当は片胸落との使い分けは握り方の縦/横ではないと思っています。
と言うのは、襟十字は縦に握られた時でも出来るからです。
一般的には余り修練されていませんが、襟十字には片手だけでなく両手の技法もあります。両胸を握られた時には一般的には両胸落を行なうと認識されていると思いますが、教範の襟十字の項には普通に「片手または両手」と記載されています。
両手を横拳にして押し込む事は考えづらいですから、この場合は両胸落同様、両手は縦拳で握ってきている訳です。
縦拳に握られた時の襟十字は、掛け手がやや深くなります。十字小手の掛け手と同様なのですが、十字小手では手を低く守る事で掛け手をし易くする事が出来ましたが、それが出来ませんので、やや振りかぶるように肘で上段を守りながら掛け手を掛けます。腕骨打の方は、内側から外へ打ちこむのですが、その儘の流れで十字に被せますので、やや斜め下から打込むのがいいでしょう。
縦拳での襟十字、特に両手襟十字の修練は是非やってみて下さい。

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このように縦拳の襟十字もある訳ですので、片胸落との使い分けは、本当は握拳の縦/横ではなく守者がまずどちらの手で掛け手をするか、なのではないかと私は思っているのですが、そうであるなら何故そう規定しないのかの理由が判りません。
片胸落と襟十字という2つの法形を身につけるのに、握拳の縦/横で説明した方が初学者には取っ掛かりがいいという事なのかな、とも思っています。
色々研究しながら修練した方が楽しいですよね。皆さんも色々試して、色々考えてみて下さい。
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片胸落

2025年03月28日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


     ◆     ◆     ◆

片胸落は、旧・科目表では1級科目で最初に習得した羅漢拳(衣服取り)の法形です。その前の2級で出てきた羅漢拳の最初の技である片手上膊捕両手上膊捕は、羅漢拳と言っても腕を鷲掴みする攻撃でしたから、攻者が袖・襟をしっかり掴んでくる最初の法形になります。羅漢拳は攻者の腕っぷし・握力が強いと非常に難しいので、よく練習する必要があります。

攻撃は「上襟を握り拳を縦にして押し込んできた時」とされます。それに対しその拳を守者の両手で挟むように握り、我の胸に押し当てながら、両肘と身体の返しで攻者の握り拳の上下を返し、更にS字の形にして極めます。これは3級科目として既に修練してきている十字小手の動き(原理)を、我の胸前でやっている事になります。

羅漢拳では、攻者の襟・袖を握る力を無力化する為にS字を多く用います。
自分でやってみても分かりますが、S 字に手を返すともう全力で握る事は出来ません。逆小手-前指固にも通じますが、まず大拳頭を攻められると、もっと言えば手首を殺されるだけでも握力は激減します。そこに加えてS字の極めが手首に掛かる事で、攻者は完全に無力化される訳です。
しかしこの形に持っていく為には、攻者の拳の上下を逆さにしなければならず、それがこの系統の最大の要点になるのです。十字小手では攻者が我の手首を握ってくれているので、立てていた我の前腕を上下逆にするだけで、必然的に攻者の手首を返す事が出来ました。
羅漢拳を上達するコツの第一は「合掌する事の強さを認識」する事だと思います。SK拳士であれば日々お互いにしている合掌礼ですが、両肘を張って両手掌を押し付けると、そこに強い力が生まれます。合掌は我の身体から離れたところでやると力は出ません。我に近ければ近いほど強い圧着の力になります。その圧着の力を片胸落での手首の返しに用います。

鉤手守法を取りながらまず下の手をU字にして攻者の手首を握り(拇指と内拳頭で挟むような感覚の方がいい)、牽制の目打ち or手刀切りをした手で直ちに攻者の拇指から手甲を上から挟みます。この上下の挟み手が滑らないようにして下さい。この手が滑らなければ、我の張った両肘を回転させる事で、梃子の原理により俗に言う「万力で挟んで捻り上げるように」攻者の手首を返す事が出来ます。

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自分一人で片胸落の動きを確認し、攻者の掴み手の位置がどこにあれば一番自分の力が発揮出来るかを確認します。回転の中心は動かないのが一番なので、そこに「作り」を持っていくのです。
攻撃の「上襟を握り」とはこの片胸落の回転が出来る範囲で掴まれた時、という事を意味します。下襟では出来ないので別の技(腕巻/1級技)で対応します。高過ぎても出来ないのでその場合は送襟捕(四段技)になりますが、攻者が普通に前から襟元を握ろうとすれば、概ね対処出来る範囲になると思います。

ただ攻者が襟を握った後、引きつけてこようとした場合、最初は縦拳で握っても通常は回外するように捻じ引いてきますので、これは片胸落の回転と真逆になりますから攻者の力に勝てません。なので攻者が手掌を自分に向けるように握り引いてきた時には、別の技(巻落/二段技)が必要になります。
勿論、攻守の実力差次第では引こうとする攻撃でも握った刹那に片胸落も可能ですが、基本としては攻撃は「押し込んできた時」になります。肘関節を伸ばす動きは前腕の回内運動と協調するからです。

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とにかく攻者の握力や腕力が強いと難しい片胸落ですが、よく指導されるコツに「合掌する両手は少しズラして<棚(タナ)を作る>」「一旦押し付けた我の胸の反りも使って攻者の拇指を伸ばして無力化する」というものがありますが、これらはやはり道場で直接指導者に掛けてもらい修練するのが一番でしょうから、ここではこの程度で留めておきます。

片胸落 引胸落 両胸落Short Ver; 連続複数法形修練(金剛禅総本山少林寺公式Chより)
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片手押抜

2025年03月08日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


     ◆     ◆     ◆

片手押抜は、旧・科目表では1級科目として習得した龍王拳(抜き技)の法形です。
下段構えに前手を下ろした守者に対して、同側の手(守者右下段構えであれば攻者の左手)で下から順に内手首を掴んできた時に行なう技です。
攻撃法は一般的には腕後ろ捻り上げなので、切返抜の攻撃を対側の手ではなく同側の手から行なった場合という事になり、攻者は最終的には諸手で掴む事を意図しています。諸手で掴まれてしまったら諸手切返抜を行なう事になります。(諸手押抜はこの系譜ではありません。ここは初段受験の肝にもなりますので、後日またお話しします)
※片手切返抜等の示範に於いて、片手で捻り上げている攻者を時々見るのですが、攻守に相当実力差がある場合でないと、いつまでも片手のみで捻り上げる状況はまず無いと思われます。ただ諸手の腕後ろ捻り上げには行かず、同側の手で取った場合(片手押抜の状況)、もう一方の手は天秤を取ってくるというような攻撃はあり得ます(小手巻返ではこの攻撃法がよく説明される)。更に脇に深く入り、脇固めで潰してくる事も考えられます。

腕後ろ捻上げであれば肘を打上げるようにしてくる筈ですが、外に振って引っ張ってくる場合も考えられます(ハンマー投げなど)。何れにしても、我の前腕を回内するように捻上げて来るのは共通です。それに対してSK基本中の基本である鉤手守法で守ります。
片手押抜(龍王拳)は小手巻返(龍華拳)の母技ですから、鉤手守法で攻者の肘をやや内側に絞るように崩す事が出来たら尚佳し、です。

そこから攻者の掴み手の外側(拇指根の外側)で切り返すように抜きます。
片手切返抜では、抜きの補助として目打ちをした手を攻者=掴み手の内肘にから掛けましたが、片手押抜でも、当身をした手で攻者の肘をから充てるようにして、抜きの補助とします。肘に下から手を充てるので牽制の当身は中段突でも良いと思いますが、間合いが深い事もある為か、片手押抜でも目打ちを行なう事が多いようです。また下から肘に手を充てるのは、攻者が肘を曲げる事で抜かせない(握り続ける)ようにするのを阻止する為(肘を曲げさせないように)、とよく説明されますが、肘を曲げさせる形で固定し、目打ちした手でそれ(攻者の肘の外側)を支えるようにする先生も居ます。その場合掛手は上受投のそれにも似ています。開祖はそこで肘の急所を攻めたようです。
肘を曲げる形で固定する場合、抜きの回転の中心(支点)(攻者の拇指根から)ブレない事が尚のこと重要です。

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抜いてからの当身には、熊手突内腕刀打があります。これは両方修練しておいた方がいいでしょう。(前に押切抜の項で「熊手突は難しいのでは」と言ってしまいましたが、再検証すると抜いた方と同じ側の頬部へ打突可能でした。片手押抜でも掴んできた側の頬部への熊手突は可能だと思います)
熊手突と内腕刀打の使い分けは、間合いや角度で説明される事が多いと思いますが、実際には結構間合いがあっても(間合いが近い時と説明されがちな)内腕刀打は可能です。

抜いてからの内腕刀打は、水泳のバタフライの様な連続性のある動きが望ましいです。抜いて熊手突の場合にも私なりの工夫があるのですが、そちらはまた後日時間があれば書きたいと思います。
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巻十字小手

2025年03月07日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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旧・科目表では、2級科目の最後に龍華拳の巻十字小手を修練しました。
巻十字小手は、現在では略十字小手の変化技としてしか修練されていませんが、教範には正十字小手と略十字小手、両方の変化技として記載されています。

SKの中では押受系の技法の扱いが流転している件は以前にも書きましたが、外押受蹴内押受蹴は旧・科目表の更に一つ前の科目表では、何故か三段科目として巻十字小手と同じコマに3法形が詰め込んで記載されていました。巻十字小手と押受蹴との間に技術的な関連が強いとは思われないので、思い返しても何とも奇妙でした。
そういった事もあってか、武専などで扱われる際にもこの3法形は扱いがぞんざいで、巻十字小手が指導されたり話題に上る事は殆ど無かったと思います。
それが前回の科目表改訂で巻十字小手は突如2級科目に<昇格>となり、級拳士にも指導する必要が生じた事から、審判講習会などでも取り上げられるようになりました。

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教範の略十字小手の項には「十字小手を捕ろうとした際、攻者が背を向けて逃れようとした場合に巻天秤を掛ける」というような事が書いてあります。新旧科目表にも攻者は「背を向けて逃れようとする」とあります。ただ科目表では「十字小手より変化」とも明記されており、科目表では正十字小手からの変化とは書かれておりません。
本山資料でも巻十字小手の説明は専ら略十字小手からのものであり、現在本山としてはそれで行きたいのかも知れません。

技術的には正十字と略十字では掛け手が異なりますので、その後の巻天秤にも影響があります。巻天秤に関して言えば、略十字の掛け手の方が難しくなります。略十字からの巻天秤は切返巻天秤に近い形という事になりますが、切返巻天秤との違いは、攻者に握られていた方の手が掛手になるのか(切返巻天秤)、握られてない方の手で掛手するのか(巻十字小手)、という事です。私は捌き手で自由に挟みに行けない巻十字小手の方が難しいと思います。

巻天秤には巻十字小手・切返巻天秤の他に、送巻天秤袖巻天秤がありますが、これらは送小手の掛手であり、掛手側でコントロールしやすい。詰まり正十字小手からの変化としての巻十字(←送小手の掛手)と略十字小手からの変化としての巻十字でも、捌手が掴まれている後者の方が難しいと私は思います。

この法形がある事によって、私は巻天秤という技法に誤解があるかも知れない、と気づきました。いま述べた通り、巻天秤に移行する時点で挟む方の腕が自由になっていないのは巻十字小手だけです。正十字小手からの変化では掛け手がしっかり攻者・掴み手の手刀に掛かっているので、十字抜の要領で掴まれていた腕を自由に出来るかも知れません。しかし略十字小手からの変化では、掛手に引き剥がす力が無いので、手首を掴まれた儘の状態で<巻天秤>を捕らなければならなくなります。これは一般に行なわれている<巻天秤>とは異なる方法になります(ならざるを得ないでしょう)。
巻十字小手の巻天秤は、<巻天秤>の例外(別法)なのか。
この事は、また後日時間があれば検討したいと思います。

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審判講習会では巻十字小手について、「S字を用いる方法、巻天秤、いずれも可」という様な説明がなされてきました。その意味するところについて、確かに再三説明はなされているですが、現時点においても結論は全く判然としません。
一雑兵としてのこちらは、説明の度に「こういう事?」「それともこういう事?」と考えを巡らすのですが、次の講習会ではまた別の解釈なのかと思わされたり、武専で質問しても勿論先生毎にバラバラなお答えが返ってきます。

今や級拳士科目なのですから本当はこんな事ではいけなのですが、現時点では、いつも通り「許容範囲を広げて色々な方法を模索」していくしかありません。トホホ...

という事で、この法形と<巻天秤>はまだまだ発展途上の興味深い技法ですので、皆さんも自分なりの仮説・検証を楽しんで下さい。。。
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