(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

片手切小手

2025年01月28日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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片手切小手は、切返抜(片手/諸手)に続いて旧・科目表では2級科目で習得した龍華拳です。下段に構えた前手(逆下段構えなら後ろ手になりますが)を、攻者が対の手(守者右下段なら右手)で甲側を掴み、捻り上げようとする攻撃に対して行なう技です。
即ち、腕後ろ捻上げ or ハンマー投げ攻撃に対する一連の法形の一つで、攻撃法という視点からは、三角抜片手切返抜との関連をまず理解しなければなりません。(三角抜からの龍華拳は逆小手系である巻込小手になりますが、こちらはまだ先の高段技になります)

次に技の構造(理法)からの理解としては、俗に言うS字系にあたり、S字系には十字小手(旧・3級科目)とこの切小手があり、この切小手の登場を以て、いよいよSK柔法も全体像が見えてきます。(あとは初段科目押小手系だけになります)

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上述の通り攻撃は元々は諸手攻撃を意図したものですが、対の手で片手の手甲を取られた時点で、守法から技を施すのが片手切小手です。
抜き技である切返抜では、S字系である事を余り理解しなくても多くの場合抜けますが、逆技である切小手ではちゃんとS字を作らないと技が流れてしまいます。
S字系は、基本的には攻守が向かい合う事でS字を作ります。逆に守者が(鉤手守法を取ろうとする際に)体を開いてしまうと、送小手の理法が働いてしまい、技が流れてしまうのです。この事が理解出来ると切返天秤という変化技を使うのには良いですが、先ずは基本技である切小手を練習しましょう。

十字小手もそうなのですが、S字系を学ぶにあたって着目して欲しいのは技の間合いだと思っています。技が流れてしまう時、多くの場合で攻者の腕(肘関節)は伸びています。この時とS字が作れた時と、攻守の間合いはどうなっているでしょうか。
Sを作るという事は、当然伸びている時と比べて間合いは近く、イメージとしては「腕が短くなって」います。この「より短く(=近く)なる」というイメージと「向かい合う」とイメージを補助とすると、切小手(十字小手)がやり易くなると思うのですが、如何でしょうか。

あとS字系でありますので、上から腕を被せる十字小手程ではないにしろ、多少の危険があります。稽古する時は、最後の極めまで一気に掛けず、極める一歩手前のところを見定めるまでが技の練習だと考えましょう。

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SKの切小手は、下から掛手をするのが大きな特徴です。
合気道にも二教というよく似た技法があるのですが、こちらは上から手を充てて行なうようです。何故SKは、わざわざやりにくい下からの掛け手を選択しているのか、考えた事はあるでしょうか。それをウン十年考えて、私は自分なりの結論を得ているのですが、それはまた後日にしましょう。

ここで述べておいた方がいい事は、切小手の掛け手には大きく分けて3法あるという事です。これも多くの指導者は自分の方法しか弟子に教えませんので、この事を知らない拳士も多くいます。
写真を出せばいいのですが、それも時間があれば後日として、(1).掛け手を深く回して我の2-3指を攻者の小指側(手刀)に(文字通り)掛ける方法、(2).攻者の拇指球裏の手甲を、掛け手のUの字で下からしっかり挟み支えるように押さえる方法、(3).我の丁字手を攻者の返った内手首に嵌めるように掛ける方法、の3つです。

多くの拳士は(2)法でやっていると思います。私もそうです。(確か新井元会長は(3)法ではなかったでしょうか...)
問題は(問題では無いかもしれませんが)、開祖は(1)法だったという事です。

一応本部としては「やり易い方法でやればいい、どれも可能」という事になっている筈です。しかしそれぞれで技がかなり変わるのも事実ですから、技法を修練または考察する際には、考慮すべき point であると存じます。


(追補) 教範の写真を確認するとやはり開祖は(1)法で掛け手している様に見えるのですが、本文では(3)法を解説しているように読めます。当時から複数のやり方があったのか、開祖ご自身も使い分けていたのか。。
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各種講習会!@上板橋体育館

2025年01月27日 | 少林寺拳法
1月19日の日曜日、上板橋体育館で第2回の「次世代リーダーセミナー」が開催されました。今まで本部主催の「次世代云々」というと若手指導者に向けたものがあったと思うのですが、今回のは小中高拳士が対象で、多くの子ども達が集まりました。
東大拳法部などの大学生が指導側に回り、非常に楽しい講習会になったようです。

そこでは都連の錫杖研究会の発表と、錫杖体験会も行われました。
現在の錫杖研究会は、確か2016年頃にB藤先生やS木先生が中心となって始められたのではないか、と記憶しています。私も設立当初、武専終了後か何かで行なわれていた修練に、2−3回参加させて頂きました。その後、継続参加は出来なくなったのですが、研究会は活動し続け、2023年の世界大会 in東京でも修練の成果を披露されていたと思います。
錫杖は肩腰をよく返さなければならないので、SK徒手の体捌きにとっても非常に良い修練だと言われています。長得物を振り回すので、相対バランスの修練としても良いのではないでしょうか。

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当日は別会場で、考試員講習会も開催されました。
これは考試員(昇級・昇段審査の試験官)を対象に、考試に於ける要点を再確認する為の講習会でした。考試員は資格更新の為に、毎年都道府県単位で開催される考試員・審判員講習会を全員受講しなければならない決まりになっています。しかし毎年の講習会で同じ事を指摘されても、受験者に毎回同様の間違いが見られるという、謂わば試験の「鬼門」もあるようで、そうした細かいところをもう少し突っ込んで確認しよう、という講習会でした。

考試員は自分の所属では指導者である訳で、受験者は毎回入れ替わる訳ですから、何度も指摘される間違いを改善させる為には、指導者が学ぶ必要があります。考試の視点を確認してそれを指導に反映させ、正しい技が出来る受験者を送り出して欲しい、という趣旨でした。私のブログの趣旨にも非常に(というかまさに)マッチする内容でした。
講師のN井先生のお言葉には根本に武的要素(≒護身術・武術・格闘術としての有効性)があり、解り易い内容でした。
ただ、SKの昇級・昇格考試は試合の勝ち負けで合否の判定をしないので、そうすると「覚え」たものを「再現する」という要素が強くなります。この「覚える」という部分で「どれ位武的要素を以て記憶(習得)出来ているか」という事になるのですが、「再現する」の部分にはある程度決まった形(Aならマル、A以外はバツ)が示されてないと評価(判定)が難しくなる、という気はします。。

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屈身蹴

2025年01月23日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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屈身蹴は旧・科目表では、2級科目で登場した仁王拳(上段単撃に対する技法)の法形ですが、屈身突と同じ枠に入っており、同時習得でした。屈身突同様、横振突攻撃に対して屈身受で潜り込みながら反撃します。
屈身突同様、攻守の体格差が重要で、小柄な攻者に対して大柄な守者なら屈身がどうにも窮屈になるので、押受を選択した方が良いかも知れません。しかしそうした場合でも、修練としては楽しんでやって欲しいと思います。

屈身突と連続で修練する上で意識すべきなのは、屈身から蹴り間合いを確保する為の流水をスムーズに行なう、という事でしょう。屈身突の時には低い姿勢の儘、身体を逃す事なく突きを叩き込む意識が必要でしたが、それでは蹴りは出せませんので、元の前足を若干外に捌き、屈身-流水による体重移動を行ないつつ直ちにその足を軸足とした蹴りを放つ必要があります。屈身突の時より若干身体を抜く意識でやるとやり易いと思います(
逆に言えば、屈身突は身体を抜く意識でやってはならない)。何れにしても屈身突と屈身蹴では体捌きは同じではない、流水の捌きの程度が異なる、という意識が重要です。

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屈身突と屈身蹴では屈身-流水の体捌きに違いがある訳ですが、「屈身突蹴」ではどうしていますか。両者(屈身突→屈身蹴)の体捌きを滑らかに連続させる意識、或いは屈身蹴の捌きの途中で一回突きを打ち込む、という様な意識で私はやっています。
「屈身突蹴」は詰まり「屈身突-連反攻」という事ですが、わざわざ独立した修練項目として旧・科目表にも、屈身突・蹴に続いて記載されていました。

もう一つ、屈身蹴-転回連蹴という科目もあります。
これも教範には特に独立項目として解説されてはいないのですが、SK草創期より昇格考試(昇段審査)の規定組演武として出てきています。これは蹴ったあと素早く回転しなければいけませんので、剣道の抜き胴の様な意識で、蹴り足を向こうに下ろします。蹴り足の着地の段階で身体の回転を始めないといけません。すぐ振り向いて攻者の方を確認する事が大切です。
蹴り脚の着地点が次の足刀蹴(or 後ろ蹴)の軸足になるので、位置取りが大切になります。私が習った時は、最初に捌いた脚(屈身蹴の軸足)と、蹴り脚を下ろす場所(足刀蹴の軸足)は、攻者に対して三角形になるように指導されました。
中々難しい科目だと思います。

打上突 屈身突 屈身突蹴 short ver. 連続複数法形修練;金剛禅総本山少林寺公式Chより
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屈身突

2025年01月22日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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屈身突は旧・科目表では、級科目の5番目の法形として登場した仁王拳(上段単撃に対する技法)の法形です。屈身突で重要なのは、攻撃が振突であるという事です。上段振突に対する法形には、押受突(内/外)押受蹴(内/外)と屈身突・屈身蹴があります。押受系統の内/外は理法が全く異なりますので、6法形あると考えればいいでしょう。

直突に対しては、その攻撃線の「表によける」と「裏によける」という方法があった訳ですが、振突は横に薙ぎ払ってくる攻撃なので、それを躱す(攻撃線を外す)となると「下によける」か「上によける」という事になります。下によける法形が屈身突/蹴です。飛び上がる訳には行かないので、「上によける」代わりに「受け止める」のが押受なのです。

この6法形に於ける「屈身を選ぶか、押受を選ぶか」というのは虚実や彼我の体勢の問題もありますが、その前段階として体格差が非常に重要になってきます。
大柄の攻者に対して小柄な守者なら、当然押受より屈身の方が有利になります。逆だと守者の屈身はどうにも窮屈になります。
この様にSKの修練には、実際には体格的にやりにくい法形も含まれてきます。
他の格闘技やスポーツを見ますと、試合・大会に向けて「得意技」の会得が重要となる場合が多いと思うのですが、SKでは満遍なく修練する事を非常に重視します。それはやはり、ただのスポーツではなく修行だからです。
体格差の問題はどの技にだってあるのだから、私はよく説明した上で、楽しんで修練してもらう事を心掛けています。(得意技があるのが護身上は良い事なのは、言うまでもありません)

※「くっしん」は普通に変換すると「屈伸」となりますので、Netに投稿する時には「屈伸突/屈伸蹴」にならないように注意しましょう。SKには誤変換になりやすい技法名が幾つもあるのですが、題名などでも堂々と出していると折角の投稿の格が一つ落ちてしまいます。かく言う私もやらかしているかも知れませんが、書き間違いは読む方も萎えてしまいます(笑)。

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振突に対する屈身は「脇の下に潜り込むようにすると良い」と、私はよく指導します。どうしても怖くて距離を取りがちなのですが、攻者から見えた方が状況は良くないし、攻撃容器(拳)は腕の先端についているのだから、潜り込んだ方が当たっても衝撃が少ないのです。ただお迎えの膝蹴りを喰らうリスクはあります。

屈身のコツは、膝(と股関節)を「糸が切れた様に脱力(off)」して落下する事です。身体を沈めようとすると却って時間が掛かるので、膝が崩れるように落下した方が速いです。ただ真下ではなく、突き反撃の為に落下しながらでも左右の振り子を行なう必要があります。
上体を前傾させないように、と指導する先生は多いのですが、私は多少は前傾すると思っています(ボクシングのウィービングですので)。猫背になってはいけません。蹴りは警戒しつつも、目線が完全に下に落ちるのもNGです。

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振突に対して屈身・振り身を行なうとなると、攻撃に向かう方向とも言えます。その為、どうやって攻者の懐に潜り込むかに関して、先生毎に色々な工夫があります。これは内受蹴でも似たような議論があります。内受蹴も、上受蹴や流水蹴と比較すると、攻撃線に対する避け方が難しい話は、同項でも少し述べました。

また現行の屈身突・屈身蹴では、受け方は打上受だと思うのですが、私の所属では皆さん「先生(先代道院長)はそうは仰らなかった」と事で、「打上受ではない」と教えております。私は転籍組ですので、非常に驚きました。
しかし私自身、屈身突/蹴の打上受と、打上突/蹴のそれではかなり異なる、とは以前から思っておりましたので、さもありなん、という所もありました。
飛んでくる攻撃が全く異なりますし、前手受と後ろ手受けという違いもあります。用法が同じ筈もないでしょう。皆さんの道院では、屈身突の受けはどのように指導されているでしょうか。。

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両手十字抜と両手十字小手

2025年01月21日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。
 
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両手十字抜と両手十字小手は、旧・科目表では2級科目として修練した龍王拳(抜き技)とその龍華拳(制圧技)です。逆手の握りで掴まれた時に使う技であり、逆手の握りは4級科目片手切抜が、ついで3級科目として片手十字抜が出ていました。
切抜と十字抜の使い分けとして、切抜は攻者が引いてきた時、十字抜は攻者が押してきた時、と科目表にはありましたので、両手技に関しましても、合掌抜は「両外手首を握り引き崩してきた時」、十字抜は「両外手首を握って押上げてきた時」という事になるでしょうか。(合掌抜と"両手切抜"の関係については、合掌抜の項を確認願います)

両手技は攻者が肘・肩をコントロールしようとしてくるので、片手技より難しいです。巻抜や十字抜は他の龍王拳と比べても、更に両手技が困難になります。理由は、支点を固定しつつ肘を前に出さなければならない抜きだからです。
体を寄せる事の難しさは両手寄抜の項で既に述べましたが、巻抜や十字抜では今度は間合いを作る必要があります。
そういう難しさもある為か、片手十字抜の項でも触れたような、前手の肘を被せて前から抜く方法を選択する拳士もいます。しかし前手での十字抜は十字小手に繋がらないという話は、既に致しました。鉤手を低く取るなどの工夫で、後ろ肘を十字に被せられる体捌きを研究しましょう。(両手十字抜自体に関しては、前から十字抜く方法も許容されてはいるようです)

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両手十字抜の当身は「十字抜より肘当、切抜より上段突」と科目表にあります。これは1本目の抜きは十字抜いて横肘当てを行ない、2本目の抜きは切抜いて上段突を行なう、という意味です。反撃までの時間を考えて、2本目の抜きは切抜が優先される訳です。どちらを優先するか(基本技なのか)、というのは寄抜-巻抜にも通じる話なので、技の運用の上で理解しておいて欲しい所です。
前から十字抜いて後ろを切抜く拳士でも、十字抜いたら(科目表通りに)横肘当てを行なっているのをよく見ます。更には両手十字抜の癖からか、片手十字抜でも横肘当てを行なう拳士も結構おり、Netに動画が上がったりしています。

… 技法としては抜きが一番重要なのであって、反撃の当身は本来はその時々で何でも構わないと思います。しかし、科目として何故その反撃法が指定されているのか、よく考える事が必要ではないでしょうか。。
両手技を前から抜くと、多くの場合は横幅のスペースが狭くなり、反撃はしづらい状況になります。十字抜や突抜で言えば中段も深くなり角度も出来るので、本来肘当てはしづらい状況なのです。(勿論、科目表に従っている訳ですから、当身出来ているのであれば否定はしません)

私なら前から抜いちゃった時には、拳を縦に返して裏拳突を入れます。

ここは後ろから抜くので、横肘当がベストなのです。両手突抜でも後ろから抜けば裏手打(金的)も掌拳打(水月)もやり易いです。
片手十字抜でも肘当てで示範されているのを目にする事もありますが、基本技の指導からして頂けたら… と思います。。(反撃の間合いが近い順に、横肘当-掌拳打-裏拳打となろうかと思いますが、片手十字小手の反撃が掌拳打でない理由に関しては、別の理由もあると考えますので、それはまた後日お話しします)

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【追補】「両手十字抜」は1本目を十字抜き2本目を切抜きます。「1本目を切抜で抜いて2本目を十字抜で抜く方法」は現在認められておりません。
上述の通り巻抜・十字抜は肘を被せるスペース作りが一つの課題(難しさ)なのですが、1本目を前手の切抜でチャッチャと抜いてしまえば、2本目に十字抜をやるとなっても(最早片手十字抜なので)それ程難しくありません。これは両手巻抜で、1本目を前手で寄抜いてしまって、後は片手巻抜をやるのも同じです。

その修練もやって構わないとは思いますが、やはり基本技は切抜であり、寄抜なのです。1本目が切抜けたのであれば、2本目も当然切抜なのです(両手切抜)。要は「両手を逆手で捕まれた時、押し込まれて前後どちらでも切抜は出来そうにない」という条件があるという事でしょう。両手巻抜も、前後どちらかの手を外に崩されたからそれを利用して、まずは巻抜を行なう訳です。

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両手十字小手には重要な point があります。それは「片手にしか技を施さない」という事です。SK龍華拳の両手技には幾つかそういう法形があります。両手押小手もそれにあたります。片手にしか技を施さない理由は、その手を極めれば反対側は自然に解けるからです。龍華拳ではありませんが、肘抜より前天秤もこのグループに入ります。

両手を掴まれると前後の動きは非常に制限されますが、横への動きは比較的簡単に出来ます。鉤手守法の状態(肘固定)から、絞る要領で両手を腹前に寄せる事は、比較的簡単です。
片手十字小手の項でも述べました「低めの鉤手」がここでも効いてきます。
十字小手系は切小手系と共に、「S字系」と呼ばれる技法群に入ります。S字系の point は、攻者を前に崩す事です。その為にS字は攻者の前(正面)で作ります。十字小手の為に肘を被せますが、その後S字を作る為に向き直すのが point になります。十字小手の固めは基本としては十字固ですが、最終的な位置関係や固めの形、当身には先生方によって(彼我の状況によって)多少の異動があります。

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名称なのですが、科目表上では「十字抜(両手)」と「両手十字小手」になっています。十字抜は教範では龍王拳第十二系に「片手/両手」一緒に解説されておりますので、それで「十字抜(両手)」なんぞという表記にされているのでしょう(以前の考察参照)。
すると十字小手の方がちゃんと「両手十字小手」になっているのは、どういう事でしょうか?

これは、… 教範には実は「十字小手(片手/両手)」の項と、「両手十字小手」の項が別々にあるのです。そして写真付きで解説されているのは前の方でして、それが現行の「両手十字小手」なのです。どうも旧・科目表を作る際に、本部の先生がこの2項の存在に気付いたのは良いのですが…、そこで現行技法が「十字小手(両手)」であるにも関わらず、名称を「両手十字小手」にしてしまったのは痛恨と言わざるを得ません。それなら気づかないで「十字小手(両手)」としておいてくれた方がまだ良かった。。

では教範の「両手十字小手」には何が書かれているのか。
それは私のブログを読んで来た方なら察しがつくかも知れませんが「まず片手を抜いてから行なう十字小手」です。つまり合掌抜の項でも言った「<両手切抜>なんて技は無い、間違い等と教条的・早計に断言せず、両手切抜の形も修練してみる事をお勧めします」と同じ話が、ここでも出ているのです。

私は同士仲間に20年も前から同じ話をしていますが、(道院長含め)理解して頂けた人は一人もおりません。教範をお持ちの方は是非開いてご検討頂き、ひいては道場にて「両手切抜」と「本当の両手十字小手」を試して頂けると幸甚です。。。

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