(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

合掌抜

2024年12月30日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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合掌抜は、旧・科目表では2級科目の最初に習得した両手取りに対する龍王拳(抜き技)です。
守者が高目に掲げた両手を、攻者は逆手に掴んで引き崩そうとします。それをまず鉤手守法で守り、両手同時に切り抜いて上中二連攻で反撃するのが合掌抜です。
攻撃は「引き崩す」ですが、順手の握りより逆手の握りの方が引き崩す力が肘から肩に伝わり易く体勢を崩しやすいので、この攻撃は投げを意図していると思います。しかし守者がどっしり構えれば逆に安定もし易く、攻者の投げ自体も本当は面白い修練科目だと思うのですが。何れにしても、攻者がただ手を伸ばして掴むだけでは、守者を崩す事は出来ません。運歩と左右の崩し(前後・捻り)の使い分けで、守者の重心を崩す事が必要です。

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この法形は両手取りに対する同時抜きですが、SKには同時抜きの技法が幾つかあります。基本法形としては合掌抜の他に、両手打抜があります。旧・科目表では両手打抜は片手抜きと同時に習得する二段科目でしたので、級拳士科目としては合掌抜だけという事になります。
現行の基本法形としてはこの2つだけのように思いますが、別伝と申しましょうか古伝と申しましょうか、実は他にも幾つか同時抜きで修練されていた法形があります。しかし今のところ当ブログは基本事項の確認を行なっておりますので、この件は後日に譲りましょう。

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合掌抜は左右の腕を逆手外手首で掴まれているので、片手切抜(外)の形x左右という事になります。ギュッと凝縮すると「合掌抜とは切抜(外)を両手で同時に行なう」と言っても良い技法です。なので逆に、鉤手守法で守ってから左右それぞれを(片手)切抜(外)で抜く事も可能です。現行の修行科目には、両手切抜(片手切抜x2)という基本法形はありません。合掌抜が両手切抜より難しい技法でもなく、合掌抜の方が有効と判断されて除外されたのだと思いますが、実は開祖の教範では、切抜の項(内・外・両手の別は無く一項目)で解説されているのは両手切抜なんですけどね(苦笑)。
なので「<両手切抜>なんて技は無い、間違い」等と教条的・早計に断言せず、両手切抜の形も修練してみる事をお勧めします。

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合掌抜は、ギュッと凝縮すると「切抜(外)を両手で同時に行なう」と言いました。
つまり基本的には攻者の拇指を攻めつつ、手首(前腕)の回外、切り・引き抜きを併用して抜く技法です。更に両手の同時抜きである事を利用して「拍手をする(柏手を打つ)ように両手を打ち合わせつつ一気に抜く」のが基本になっています。
相撲に猫騙しという技法がありまして、立合いの際に目の前で柏手を打つと相手が驚いて一瞬の虚が生じ、そこを撞くという奇襲戦法ですが、合掌抜でも猫騙しを行なうと教えている先生も多いです(私もそう習いました)。
拍手して-抜くという動き自体が、守者にとっても素早いon-offをし易い目安になっており、攻者に虚を生じさせつつ素早く反撃し易くなっている訳です。

ただよりスピードを抑えた形で確実に両手を抜く練習や、両手掌を打ち合わせないでも抜ける合掌抜(同時抜き)も練習しておいた方がいいとも思います。突抜などもそうなのですが、基本的には勢いを利用する技法でも、スローで出来るようにする練習は完成度を確実に高めます。

合掌抜の攻撃は「両手を逆手に掴んで引き崩す」と申しましたが、実は攻者が本当に投げを打ってきた場合、守者が柏手を打てるような鉤手守法に入るのは結構難しいです。左右の腕が別々の動きをするからです。
なので図解コーチ(成美堂)では、攻撃法について「攻者が両方の肘を張って守者の両手を挟み込んで引きつけようとする」と書かれている位なのです。(これは少し合掌抜をし易くさせ過ぎている「守者に優し過ぎる攻撃」な気もしますが…)

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折角、攻者の虚を撞いて両手を同時抜きしたのに、守者の方も「虚」になってしまって反撃が遅くなっているパターンもよく見かけます。切抜でもよく見る事態ですが、抜いて即、上中二連突する事も心掛けて(指導して)下さい。

まず攻撃法を楽しんで練習してもらい、反撃の同時抜きも楽しんで修練してもらい、もし修練に余裕があれば鉤手守法の練度を上げたり、両手切抜なども試してみるのがいいのではないでしょうか。

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裏返投より裏固

2024年12月27日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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裏返投より裏固とは、逆小手から裏固に連絡する技法を指します。逆小手は旧・科目表では5級が初出の龍華拳で、倒したらそのまま仰向けで前指固に固めていました。仰向けでは攻者に逃げられたり蹴られたりする危険があるので、本来は攻者を腹這いに制圧出来た方が有利です。その為の技法が裏返投より裏固になる訳です。3級科目として出てきておりました。腕十字からの立合掌固3級科目でしたので、茶帯ともなればいよいよSK拳士と呼んでもいいような技術をマスターしている、という事なのでしょうね。

意外な事に、裏返投げは教範では龍華拳の一項目、第一系9番として独立して記載されています。もっとも教範でも「連絡技」と明記されており、第一系(逆小手系)12技の中では唯一逆を取って投げる立ち技ではありません。

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基本的な事を言えば、逆小手で攻者が倒れる際に腰の側面が地面に着いた瞬間に、そこを独楽の芯棒(軸)に見立てて水平回転に攻者を回し、そこから<作り>の部分を、投げる時とは逆回転に捻る事で送小手の原理で攻者の肩を送って腹這いにする、という技法です。

一旦会得すると面白いように攻者の身体を回せるので、3級科目で柔法の面白さを再確認してもらうのに最適な技術です。また繰り返す事で、自然に我の体重位置取り(足捌き)を用いる事を覚えますので、どうしても動きが小さい拳士を「素人」から脱皮させるのにも良い科目だと思います。

それでも中々出来ない拳士もおりまして、多いのは綱引きのように倒れた攻者を引っ張って回転させようとするパターンです。倒れる一瞬に、適切な方向に適切な体勢で力を加えればそんなに力は要らないのです。まず原理を理解してもらうのに、お互い正座で行なう方法が良いと思います。利点は少ない労力で復位し素早く繰り返せる事でして、左右両方徹底的に繰り返す事により、左右両方で技を理解するという本来やるべき修練もできます(取り敢えず左右どちらかだけ教えればいいんだ、というやっつけ指導者が結構いるのでいつも苦労しています…)。

現行で行なわれている裏返投とは、地面に対し平行な円運動、即ち水平回転が最も力を要しないので、勿論それが身につくように繰り返す訳ですが、実は「本当の裏返投はそうではないのでは」と私自身は思っています。
これは(現在の)基本では無いので詳説はしませんが、その前提として開祖の逆小手が現行の逆小手ではない(!)という事があります。現行の逆小手も開祖の頃から指導されてきた形ですし、それで充分有効だと私も思っているのですが、私は広く行なわれている逆小手は、逆小手<倒し>ではないかと思っているのです。逆小手には、本当は逆小手<投げ>もあると思っています。
諸手巻小手では投げている方も多いと思いますが、逆小手では別に投げる必要も無いので殆どの拳士は、先生も含めて投げておりません(森先生位ではないでしょうか…)。しかし教範の写真を見れば一目瞭然ですが、開祖は逆小手でも投げています。私自身は、…技術能力的な理由で投げておりません(号泣)。

逆小手<投げ>からの裏返投げは、投げが接地する直前の体捌きと<作り>の円回転によってクルリと腹這いにするのだと思います。これは本部制作のDVDで、川島前会長がされていたように思います。

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龍華拳に編成されている裏返投げですが、本部の井上先生は修練に積極的に取り入れようとなされています。つまり逆小手以外の場面でも、仰向けの相手を腹這いにする技法として応用可能なようなので、チャンスがあったらトライしてみては如何でしょうか。
合気道や他流の護身術でも肘関節を攻めながら裏返す技法が幾つかあるようですが、無理をすると相手を傷める事になります。天秤を用いるのは要研究ですが、自然に返せるようにしたいものです。

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続けて行なう裏固ですが、私は有段者になってかなり長い間、裏固=逆小手系の固めというイメージを持っていましたが、旧・2級科目では両手送小手より送横天秤として、横天秤で引き倒して裏固が出てきています。裏返投で逆回転に返す際に掛け手を逆小手系から送小手系に持ち替えてますので、裏固は本来は送小手系の固めなのですよね。
送小手を行なうと送り固をしたり、巻天秤をしたり、肘攻でもS字に固めたりして中々横天秤から腹這いにして裏固をしません(面倒臭いので…)が、本当は必要な修練だと思います。

単独演武の龍の形でも固めは裏固ですが、どうにもおかしな裏固をよくみます。
膝は後ろ三枚(何れにしても横隔膜を制限する)を押さえます。掛け手でない方は、丁字手で肩関節を押さえます。掛け手は大拳頭を肩方向に極めます。それぞれが仕事をしている筈なのに、みな平行に同じ方向を攻めているおかしな拳士をよく見かけます。
それぞれの位置と攻める方向を確認して下さい。
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肘抜より前天秤

2024年12月26日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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肘抜より前天秤は、旧・科目表では3級科目で習得するSKの両手技で、龍王拳(抜き技)の一つです。両手寄抜・両手巻抜・二段抜・両手突抜に続く3級最後の両手技です。
両手技は3級で一気に出てくる、3級柔法の一大テーマです。両手寄抜を基本法形として、その最初の変化として巻抜・突抜、応用として二段抜や肘抜-前天秤がある、という位置付けだと考えます。
二段抜や肘抜-前天秤は両手だからこそ対処しなければならない応用技なので名称に「両手」が必要無い、と思っています(片手肘抜や諸手肘抜が無い)。詰まり片手を握られて「内側に捻り上げられ」たり、「奥へ高く押し込まれ」ても、(3級科目を修練する)4級拳士であれば、運歩と体捌きを用いてそれ迄に習得した技法で処理出来なければなりません。 

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前項の二段抜では攻守にいくつものパターンがある事を示しました。本当に、二段抜は先生によって言ってる事が(実は)違う法形なんですよ トホホ。しかしそれぞれの技法自体は、理解さえ出来ていればそれ迄の法形と比べて殊更に難しい訳ではありません。全体の事情を理解しておくと、習う側がラクなのでお話ししました。(こういう話はなさらない先生の方が多いと思いますので…)

変わって今回の「肘抜より前天秤」に関しては、それ程先生毎の異同はありません。
しかし技理解の為に押さえておくべき基本事項はありますので、お話ししたいと思います。
まず攻撃は「片手を引き、反対は押す」詰まり前後に引き剥がすような動きです。押込みが低い場合両手巻抜で対応すべき攻撃ですので、科目表や教範にはありませんが、基本的には肘抜は押込みが高い場合(両手巻抜で対処出来ない)に行ないます。

指導する側として是非確認して欲しい点は、守者が肘抜きの際にちゃんと攻者の手を返しているかを見て欲しいのです。手甲が上の儘であるなら、攻者に抜かせない事を意識して押さえるように指示すると、嘘のように抜けなくなります。「抜ければいいじゃん」と間違った方法が蔓延する状況には、お互いで抜けない現実を見せてあげるのが一番のクスリです。
肘抜の一番の要点は、抜く際に我の耳にしっかり押し当てる過程で、攻者の手を返して握りのランドルト環(視力検査のあのC字のコトです)を上に向ける事です。そこから肘を天に打ちあげれば抜けます。

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「肘抜より前天秤」な訳ですが、SKに於いて「前天秤」には別々の2つがあり、こちらの前天秤は金剛拳で出てくる前天秤固とは全く別の技法です。「固め」が語尾についておらず、肘抜をした状態から攻者の肩を送って前に崩すまでを「前天秤」と呼んでいるようです。
「肩を送って前に崩す」と書きましたが、詰まりこの技法は送小手系統の技法である事の理解が重要です。送小手の変化技とは基本的に「変化する事で攻者を送小手の形に崩す」技法なので、結局送小手を行っているのです。この事は逆小手の変化技の多くでも言えます(全てが逆小手ではない)。

天秤の急所を打って肩を送る訳ですから、その前の肘抜の段階での位置取りと抜き方は大切になってきます。抜いてから前天秤の事を考えるのでは手遅れです。
指導する側としては Key word として「背中が見えてから倒そう」と伝えます。前天秤の形になったつもりでも、攻者がまだ我の方に身体(腹)を向けていたら前傾に出来ず(頑張られて)失敗する可能性が高くなります。まず天秤を打つ事で攻者の背中がこちらを向くようにします。そこから身体を捌きつつ送り落とせば、まず成功する筈です。

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肘抜-前天秤の前天秤には、とっても言いたいとっておきの事が一つあるのですが、基本事項でもなければお叱りを受けかねない事でもあるので、次回に見送ろうと思います。それでは。

【宗門の行としての少林寺拳法】龍王拳 肘抜金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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二段抜

2024年12月21日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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二段抜は旧・科目表では3級科目で習得するSKの両手技で、龍王拳(抜き技)の一つです。3級では両手寄抜・両手巻抜に続く3つ目の両手技で、二段抜の後に両手突抜・肘抜-前天秤と続きます。
多分拳歴20年以上の指導者になると科目表の配置など余り気にして無いでしょうが(…)、成程、旧・科目表の段階で3級柔法のテーマは「両手技」だったんですね。3級の片手技は十字抜だけです(両手十字抜・合掌抜は2級科目)。

変化技とは言え、巻抜・突抜にはまだ<基本技>の感覚があります。二段抜や肘抜-前天秤というと、何かいよいよ「応用技に入ってきた感」があるのです。茶帯技なのも当然な気がします。

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二段抜・肘抜-前天秤の2技には「両手」とありませんが、基本法形としては両手のみの運用です。これは攻撃が片手であれば、この2技を用いなくとも別の片手技でより簡単に処理できるからです。やはり基本技→応用技がある、という認識は必要でしょう。「最速の寄抜」から、ちょっとした変化技の巻抜・突抜で「変化する為の運歩・体捌き」というものを実感します。しかし両手を掴まれて二段抜・肘抜の攻撃に変化されると、この「変化する為の運歩・体捌き」が巻抜・突抜の時以上に制限されます。その上での変化技なので、ちょっと応用感が強い(ハイレベル)訳ですね。

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さて二段抜での攻者の攻撃は「手掌を上にするように捻り込みながら身体に押し付けてくる」という変化です。勿論、その第一の意図は鉤手守法の阻止です。
片手寄抜の項で既に述べた通り、寄抜とは我の肘を攻者の掴み手の肘に内側からぶつける様に打ち出して抜く技なので、肘よりも内側に手首を押し付けられると、寄抜では抜けなくなります。
攻者は両手を握っており、片手を絞るように捻れば反対も同じ様な捻りになってくると思うのですが、前手を押し付けるのは難しいので、身体に押し付けてくるのは守者の奥手に対して、という事になります。

二段抜の攻撃法に関しては、先生によって細かい所に異同が見られます。
一番の違いは「押し付けてくる」の程度に差があります。思い切り押し付けて来るように指導する先生もいれば、捻り上げる方が主で押し付けはしてこない先生もいます。これによって技自体が多少変わるので教わる側は注意が必要です。但し、捻りながら奥手を引っ張る事はしません(しづらいですしネ)。

なので私自身は、二段抜の攻撃での一番の要件は「手掌を上に向ける(=守者の奥手を回外させる)ように(肘の)内側に捻り込んで来る」という事だと思っています。身体への押し付けに関しては「あればそれを利用するが、それ程ではなくても出来る二段抜」を心掛けています。

攻者の心構えとしては守者の腕を捻り上げる以上、下(足)から突き上げる様な腰使いが必要だと思っています(前後方向へは押さえつけようがつけまいが)。よく「ただ掴んで捻っているナンチャッテ攻者」を見かけますが、我の身体から離れた捻りなんぞに何の力もありません。当然、一歩踏み込みながらの捻り上げになる筈です。

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次に重要な「先生による攻撃方法(変化)の異同」は、押込む(捻上げる)「高さ」です。「下から捻り上げる」という事で、胸に押し付ける様にさせる先生もいれば、腹に押し付けるようにする先生もいます。これも攻撃によって技自体がかなり変わるので教わる側は注意が必要です。

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…という事で、正直二段抜には細かい事を言うとかなりのパターン(やり方の違い)があると思っています。上記の通り、攻者によって(先生によって…)攻撃に違いがある事と、もう一つは、抜きのイメージに大きく2種類(或いは3種類)ある事によります。

抜きイメージの2種とは、①一気に抜くか、②二段階で抜くか、です。
更に言えば①の一気に抜く場合は、①-(1)上に抜くか、(2)水平(下)に抜くか、でも分かれます。因みに②の「二段階で抜く」とは「下で押さえて上に抜く」という事なので、②法では抜き自体は必ず「上に抜く」事になります。
更に細かい事を言えば、②の二段階法でも「下に押さえる」の程度に大きく分けて2種あります(見た目にもかなりの違いになります)

詰まり私(た)が観察するに、二段抜には先生によって、
一気に抜く:①-(1)上に抜く or ①-(2)水平(下)に抜く
二段階で抜く:②-(1)一旦下に強く押さえてから反動で上に抜く or
 ②-(2)一旦腹前にグッと押さえてから反動で上に抜く
の4種(…)がある事になります。攻撃法の指導にも違いがあるので、話は更に複雑なのです(…)。

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ハナシが長くなったので具体論は次回に持ち越しますが、私自身は「攻撃は捻り上げ主体で押込みは強調しない」「抜き方は②-(2)法」が一番しっくりしています。
なんか高級料理店でステーキを注文してるみたいですが…(苦笑)。
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両手突抜

2024年12月20日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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両手突抜は旧・科目表では3級科目の後半に出てきていた法形(SKの技)で、前半に出ていた両手寄抜や両手巻抜と同様、龍王拳(抜き技を集めた拳系=グループ)の一つです。

片手巻抜(5級技)や片手突抜(4級技)が片手寄抜の変化技であったのと同様に、両手巻抜も基本法形としては両手寄抜の変化技でした。よって同様に、両手突抜も両手寄抜の変化技という事になります。

何故、寄抜の方が基本技であって巻抜や突抜が変化技に甘んじなければならないのか(笑)、という事に関しては片手寄抜の項で述べてますので、お暇だったら読んで下さい。しかし「基本的には変化技」であっても、それを最初からチョイス出来なくは無いのです。やりたくて可能であれば最初から両手突抜を行なって下さい。しかし突抜というのは自分も前屈になるので、攻者が押込んでもいない状況で行なうのはリスクがあります。だから基本的には変化技なのです。考試(審査)では基本の理解を問いますから、攻者が変化もしていないのに巻抜や突抜を行なったら減点されます。

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攻撃は「両手を下に押込む」です。目的は鉤手守法の阻止ですが、鉤手守法に限らず、攻者は守者の両手をギューっと下方へ押さえつけることで抵抗出来ないようにさせようとしている訳です。
勿論SK拳士は「下への押込みにも強い鉤手守法」を研究しなければなりませんが、まだこれからやろうかという所で両手を下に押下げられたのでは仕方ありません。衝立手法に移行するのですが、片手突抜の項で述べた通り、鉤手守法をやろうとしていたものを衝立守法に切り替えるのは中々に訓練を要します。ただ片手突抜で片手を押し込まれて衝立守法に移行するより、両手で行なう方が却ってやり易いかも知れません。

そこから突抜を行うのですが、この法形の(衝立守法になれんのかに続く)2番目のキモは、1本目を突き抜いたら2本目は寄り抜く、という所です。
両手突抜は順手外手首x左右ですから、1本目は突抜(外)という事になります。この1本目の突抜を行なっている間に反対の手を鉤手守法に戻して2本目の寄抜を行なう、いうのが本法形の最大のキモになります。

守者であっても攻者であっても、両手を別々にコントロールするのは難しいのです。だから攻者も両手を押え込んでくるし、守者も両手を同じように衝立守法する方が楽です。その一本が抜かれてしまうと、攻者の注意は必然的に抜かれた手や、守者の反撃に集中します。それを利用して守者は反対の手を鉤手守法に戻すのですが、守者の方も別々の動きとしてやると難しいのです。なので、この「両手突抜」の法形で一連の動きとして身体に刷り込んでいる訳ですね。

この1本目の突抜は前手からでも後ろ手からでも可です。攻者の押込みによってやり易い方(前/後)が変わるので、両方修練しておいた方がいいでしょう。両方出来るようにしておいて、やり易い方からやります。それぞれで2本目の為の鉤手守法を取りやすい体捌きというものがあります。

実は教範によると、両手とも突抜いても良いようです。実際私も最初に「それも可」と習いました。ただその場合、低くなり過ぎて2本目で地面を叩いてしまう事があります。私もそれをやって笑われましたし(本人は痛い)、後年後輩が同じ事をしているのを目撃しました。最初から2本共突き抜こうとすると、前傾になり過ぎて体勢としても危険です。1本目を抜いた時に鉤手守法に戻れなかったら、2本目も衝立守法から突き抜いても良い、位の意識がいいのではないでしょうか。

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片手突抜の項でも書きましたが、反撃法は「裏手打または掌拳打」です。突抜は前腕を回内させて抜くので、抜き終わりは我の肘が攻者を向いている形になります。なので掌拳打が基本なのです。片手突抜では攻者の水月(or三枚)に掌拳打を打込む事が多いと思いますが、攻者が前傾して頭部が落ちてきていたら三日月への掌拳打が有効です。
両手の突抜の場合、我が低く入りがちですので、片手技以上に金的への裏手打が有効でしょう。

反撃法は攻守彼我の間合い・体勢で決めますが、両手突抜は特に彼我共に前傾になって近づき過ぎる事がありますから、(2本目の寄抜の為の)鉤手守法を作る際に、間合いを取るよう意識した方が良いと思います。

【宗門の行としての少林寺拳法】龍王拳 突抜(両手) 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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