(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

外受突

2024年11月30日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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外受突は表裏共に旧・科目表の4級科目であり、4級科目の最初が「外受突(裏)」次いで「外受突(表)」、続けて「外受蹴(裏)」「外受蹴(表)」でした。この外受4法形を理解する為には、当然外受が解っていなければならないのですが、私にはどうにも外受を誤解している拳士がかなりいるのではないかと思えるのです。

外受は拳を握って肘関節を曲げた状態で受ける受け方ですが、外受突での外受について、図解コーチ(成美堂出版)では「腕刀を引き払うように使って受ける」、教範でも「引き払う如き独自の受け方である」と述べられています。しかし見た目が空手の内受け(流派によっては内回し受け・横受けとも言う?)に似ているので、引き払う事をしないで身体から前腕を打ち出すように受けている人がかなりいるのです。

因みに空手では身体の内側から受けるから「内受け」と呼ぶようです。腰の返しを用いて力強く受けるので、受け終わりは受けた腕側の腰が前に出る形になります。
また空手では、身体の外側から立てた前腕(肘)を上半身の回転で打込むように受ける方法を「外受け」(流派によっては外回し受け?)と呼ぶようです。これはSKでは内受内押受に相当する方法ですが、空手では内受け・外受け共に拳は硬く握り、肘は90°程度曲げた位置で腕全体を硬く固定して打込んでいる様に見えます。
SKと空手では似た受けの名前の内外が逆なんですね。そしてその受けの思想も全く異なるのは非常に面白いです。この事は時間があればまた後日考察したいと思います。※今回調べてみると、SKと同様の内外で呼んでいる流派も、中にはありました(マギラワシイネ〜)。

外受の誤解は基本稽古から始まるのではないか、とも勘ぐっています。皆さんは開足中段からの基本の外受はどのように行なっていますか。現在の本部のやり方を確認出来ていないのですが、かなりの道場で外受を空手(の内受け)の様にやってはいないでしょうか。
外受突での引き払いの動きは腕でやるのではなく、身体で行ないます。敵の攻撃線に対して引き払うので、横振り身で身体自体がまず避ける事が大前提です。そして受け手の肘関節は、離れるどころか(上体の捻りと共に)寧ろ身体に引きつけるように行なうのです。
それを基本稽古で空手の内受けの様にやっていたら(=外に弾く)、法形の中で引き払う受けが出来なくて当たり前ではないでしょうか。私も学生の時は基本の受け練習は、ずっと空手の方法でやってました(部がそうやってましたから)。卒業してから「違うんでは?」と思い立ち、やり方を変えました。道院で基本稽古を任された時は、その辺を説明した上で引き払う外受をしていたのですが、それを引き継いでくれる人は誰もいませんでした(道院長はどうやっていたかなぁ…でも引き払う方法ではなかったと思う)。
私は外受と内受の体捌きは同じだと考えています。受ける手が前手(内受)なのか後ろ手(外受)なのかの違いです。ですから外受で受けた時の腰は、攻撃線を躱した後ろ腰になります。

「基本稽古のやり方」ですから、かなりの重大問題ですよね。でも…実際の所、私の方法でやっているひとを見たことが無いので、現在☝️私のやり方は間違いです。私からの提案だと受け取って下さい。

因みに教範の開祖も受けの項目での「外受」では、「肘から拳頭までの内腕刀をもって、外方へ強くはねるように受けるのである」などと言っておられますので、開祖の時代から基本稽古では「空手法」だったんかも知らんなぁ〜と思ったりもしています。それでも私の考えは提案させていただきます。

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基本稽古での(「空手と同じ」との)誤解と、もう一つは法形のタイミングへの誤解もあると思います。内受突の基本法形の構成は、(1).前千鳥に出ながら前手で内受、(2).腰の返しで逆中段突き、でタイミングとしては(1)-(2)の2拍、後の先が基本です。それを外受突でもご丁寧にわざわざ2拍で修練するので、即ち(1).逆突の様な体捌きで後ろ手で外受、(2).腰の返しで順中段突き、の様になってしまうのです。黄色帯緑帯の子供にはこの方法でも良いと思いますが、この修練は却って外受突に悪い癖を植え付けると私は思っています。
私は外受突の基本構成は、(1).前千鳥に出ながら後ろ手で外受しつつ(横振身)、(2).順中段突、だと思っています。この(1)-(2)は本当は1つの一貫した動きです。ですから茶帯有段者では「同時に突け」と指導します。<裏>であっても基本から対の先であるべきなのです。

これが出来ていないのは、やはりやる側に(教える側にも)「振り身で攻撃線を躱す」という意識が弱いからではないか思います。それと、ひょっとしたら攻者の攻撃に対して後ろ手を差し入れて橈骨を突き手に合わせる(触れる)、という最初の動きが理解されていないのかも知れません。

本日述べました基本稽古の外受については、あくまで個人的見解です。しかし根本的な基本事項だとも思っています。さて皆さんの道院ではどうされているでしょうか。…

内受突 外受突 開身突 Short Ver.:連続複数法形修錬 (金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより)
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片手巻抜

2024年11月26日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。
末端の人間の認識なんてまぁこの程度だとお思い下さい。

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片手巻抜は、旧・科目表では片手寄抜に続いて5級科目で習う、3つ目の龍王拳(抜き技)でした。巻抜は寄抜の変化技ですから、寄抜のすぐ次に早速「変化技」というものを学ぶ構成になっています。

まず名称ですが、新旧科目表では片手の巻抜は「巻抜(片手)」と記載されています。「片手巻抜」ではないのです。どうしてそう書くかと考えますと、教範では巻抜は「巻抜」の項に説明されておりまして、片手/両手の別については触れていません。諸手については次の項で「諸手巻抜」として掲載されています。つまり開祖の意識の中で「諸手巻抜」は攻撃法を含め独立して解説すべきと考えたのですが、「片手巻抜」と「両手巻抜」については核心だけ述べて同一項目とした、という事なのだと思います。突抜・切抜・十字抜もその様な扱いになっています。
私は片手の巻抜について一般に表記する時は、「片手巻抜」で良いのではないのかと思うのですが。。一般にも広く使われている表現です(ex.図解コーチ)。
真面目な本部の方が科目表を、教範に準じて記載してしまった為に、片手巻抜は正式には「巻抜(片手)」となったようです。。。(他に理由がある事をご存知の方が居たら、是非教えて下さい!)

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順の握りで外手首を握られた時の基本の抜き技は、片手寄抜です。基本技という事は、可能であれば優先してそれを行なう、という事です。攻者が片手寄抜を封じてきた時に、初めて変化するのです。
基本法形としては、巻抜は攻者が掴んだ腕を外に捻るように振ってきた場合に行なう、と教えます。既に述べました通り、寄抜は我の肘を相手のそれにぶつける様に打ち出して抜く技なので、攻者の腕の内側から肘をぶつける事が出来ないと、寄抜は出来ないという事になります。そこで守者は直ちに攻者の掴みに寄るように転位(移動)しつつ、手首を下から巻き返して巻抜の鉤手守法になります。
巻抜の基本の抜き方は、既に学んだ小手抜の方法です。肘を出すのを省略してしまう方が多いのですが、まずは教範の開祖の様に、しっかり肘を出して抜く巻抜から始めて欲しいものです。小手抜→片手寄抜→片手巻抜、とまさに習った事を土台に次の技法を積み上げてゆく漸々修学(step-by-step)が、SKの修練の面白いところです。

…と言ってますが、一方で敵を欺き翻弄する為に、必要も無いのに敢えて変化技を行なう事も可能です。その場合、自分から積極的に巻抜の鉤手守法に移行する訳です(それは普段の修練では「振られてもないのに巻抜しないだろ」と注意する所です)。寄抜の鉤手守法から、一歩外へ運歩しつつ止まらずに一気に巻抜く事も可能です。
以前に述べた通り、片手送小手の母技は片手巻抜では有りますが、片手寄抜の状況からでも送小手を施す場合があります。基本法形とは別に、そういった柔軟な思考をする事が、SKを真の護身の技術とする為には必要になります。

【宗門の行としての少林寺拳法】龍王拳 巻抜(片手) 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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片手寄抜

2024年11月25日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

片手寄抜は旧・科目表では、6級での小手抜に続き5級科目で習う、2つ目の龍王拳(抜き技)です。小手抜と寄抜の2つで、まず左右それぞれの手で掴まれた場合を学びます。それぞれで鉤手守法を学ぶ事で、鉤手守法の本質への理解も進むと思います。小手抜はSK柔法の2大潮流である逆小手の入り口ですし、寄抜とその変化技である巻抜はもう一つの潮流である送小手の入り口です。

小手抜に続いて学ぶ事で、pointとなる事が幾つかあります。
まず牽制の当身ですが、小手抜では攻者の掴み手(肩)が邪魔で攻者の頸部を打つ事は出来ませんでしたが(なので牽制の当身は目打ち)、片手寄抜では攻者の表側に位置取ることにより、頸部がガラ空きになります。なので基本の当身は手刀切になります。

攻者の表に出るという事は、当然反対側の拳で攻撃されるリスクがあります。その点でも我の脇が空きがちな目打ちより、我の正中線を守りながら頸部に切り込める手刀切が良い事になります。

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片手寄抜の抜き方は、(1).まず寄せ身、(2).続けて握られた手の肘を相手の肘にぶつけるように打ち出して寄抜、(3).その儘熊手突で当身、なのですが、ここでかなり広く行われている間違いがあります。

それは「寄せ身と寄せ足を間違えて覚えている」というものです。言葉が似ているので、小手抜の時に習った後ろ足の寄せ足を、寄抜の時にもしているひとがかなり居るのです。後ろ足の寄せ足をしてしまうと、多くのひとでは我の身体が攻者に向き直す様に作用してしまい、鉤手守法の安定が弱くなってしまいます。
小手抜の寄せ足が抜きの予備動作であるのと同様に、寄抜の寄せ身も寄り抜く為の予備動作になっていなくてはなりません。身体を敵に寄せる事で、防禦を維持しながら肘を打ち出す間合いを作るのです。
ここはかなりのひとが間違えるところなので、指導者は注意して修正する必要があるでしょう。(※熊手突は逆突になりますので、突き込む際には後ろ足を寄せる事はあり得ます)

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先生・先輩にハッキリ言われた事はないのですが、私は寄抜は「少林寺拳法最速の抜き技」だと思っています。そう確信してから、後輩にはそう教えています。勿論、級拳士では(1).肘をぶつけるように打ち出して抜く、(2).内掌を返して熊手突、という動きを身につける為に、2拍で技を行なって構わないのですが、有段者になったら抜きから当身迄は基本的に1拍で打込むように修練しなくてはいけません。また級拳士では、寄せ身の時に肘を後ろに振上げる動きも許容されますが(野球に於いて打者が行なうバックスウィング(テイクバック)の動き)、有段者では鉤手守法の位置から抜けるよう修練すべきです。
「最速の抜き技」であるからこの握りに於ける基本技なのです。攻者が寄抜を封じてきた時には、変化技になるのです。
両手寄抜での2つ目の抜きの当身は、長く行なわれてきたのは直突ですから、寄抜から拳を握って直突でも突ける心積りが必要です。

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もう一つ前から気になっている点は、片手寄抜の基本修練では、何故か熊手突をしてから連反攻をしないで間合いを切る事が多いのは何故なんでしょうか。小手抜片手巻抜では、抜いて裏拳打の後に逆中段突の連反攻を入れる事がデフォルトではありませんか? なのに寄抜の後に順中段突を入れない理由が、何かあるのでしょうか? 分かる方が居たら是非教えて頂きたく願います。(私は中段突を入れるように指導しています)

【宗門の行としての少林寺拳法】龍王拳 片手寄抜 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより

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流水蹴(前)

2024年11月22日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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流水蹴は前後2形あり、流水蹴(前)はよく「前流水蹴」とも呼ばれます。旧科目表では5級科目で最初に習う技でした。
守者:一字構えより、後ろ足体重に逃れ、流水受けの体勢で順蹴で蹴り返すのが「後ろ流水蹴」です。なので当然前流水蹴では、「前足体重に逃れ、流水受けの体勢で逆蹴で蹴り返す」訳です。しかし最初の足の位置のままで前体重になると、突き反撃の間合いになってしまい、無理に逆蹴りを出そうとすると体が「くの字」に折れ曲がった体勢からの弱い蹴りしか出せなくなってしまいます。それは流水蹴とは呼べません。

流水蹴の特徴は、上段は「流水」の形に躱しつつ、下半身からは強烈な蹴込みを入れる事なので、前流水の時でも攻者に対し蹴込みを入れられる体勢になっている事が重要です。

なので転身蹴とは異なり、流水の体勢を作る為に前足を横に捌くのですが、イメージとしては、例えば守者が左一字構えより行なう場合、左足を横に捌いた際に「一字構えから後ろ流水受けを行なった体勢」を作るのです。その時上段を突いてくる攻者からすると、守者はかなり右に回った様に見える筈です。極端に言えば、運歩としては逆転身の一種と言ってもいいかも知れません。左右をスイッチして蹴るイメージなのです。

転身蹴の項でも言った通り、流水蹴(前)と転身蹴はハッキリ区別しなければなりません。上述の前流水受けがしっかり出来ていれば転身蹴と間違われる事は無いのですが、そうは言っても後ろ流水以上に中々大変な体捌きだと思います。
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片手送小手

2024年11月20日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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片手送小手は、旧・科目表では4級科目として修練した龍華拳の法形です。
母技として対応する龍王拳(抜き技)は片手巻抜になります。即ち、片手寄抜の変化技である巻抜の鉤手守法の体勢より、
当身の手刀切からその儘攻者の手甲に掛け手を行ない、一足(ここでは便宜上「寄せ足」としておきます)入れながら攻者の肩を送り、前傾に崩します。送小手の名前の由来はこの攻者の掴み手(腕)の肩を送る事にあり、肩が送れない限り攻者は抵抗が可能なので、送小手で前傾に崩す事は出来ません。

如何にして肩を送るかですが、基本の方法としては、掛け手と「鶴の首」の形にした捌き手(=掴まれた方の手)で攻者の手首をロックして(この全体の形を「作り」と呼びます)、手首をロックする事で力が直接肩に伝わるようにして、送ります。

龍華拳ではどの技に於いても、まずこの「作り」をしっかり作るという事が大切です。「作り」が緩いと相手にリリースされて(抜かれて)しまったり、そうでなくても力が伝わらず、或いは力を逃がされて技が掛からなくなります。

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送小手の肩の送り方には色々あります。それには転回時の軸足となる、寄せ足の寄せる位置が非常に重要なのですが、古くからの先生は比較的深く踏み込んで、攻者の肩を反対の奥足の方まで押込むように送って倒す方法で習った方が多いようです。教範の開祖も、攻者の上体を後ろ足の方に崩れるように折って崩しているので、開祖は基本的にはこのように指導していたのではないかと思われます。
他にも、独楽の理を利用して我が転回する力で攻者の肩を送る方法も広く行なわれています。ただこの方法は攻者の肩がしっかり送れていてこそ上体が前に崩れてきますので、独りよがりに転回すると攻者は上体が前傾せず、失敗します。
この失敗時には攻者の腕をただ引っ張ろうとする形になってしまうのですが、この失敗とは別に、殆ど攻者の腕を振らずに小さい動きで攻者の肩を最小限送り、真下に叩き落とすように攻者を崩す送小手もあります。これは崩しの上手い先生方がなさりますね。送小手の崩しのエッセンスが凝縮されてそうなった感じです。

この様に送小手の肩の送り方も様々ですが、もう一つ大きな分水嶺として、攻者の掴み手の肘を曲げるように用いるかどうかがあります。私は複数のルートで「開祖は送小手は肘を曲げてはいけないと指導していた」と聞いてますので、現在では開祖が指導していた送小手は、基本的には攻者の肘は伸ばした状態で掛けていたのだと思っています。
送小手では「作り」の部分でのロックで攻者の手首を固定し、それによって我の体幹の力を攻者の肩に伝えるのですが、間にある肘関節もその時はロックされた状態になっています。肘関節を伸ばす形で技を行なう場合、腕は一本の棒になりますので、作りへの力はその儘ダイレクトに肩に伝わります。
一方、肘関節を曲げて行なう方法ではちょっと違いまして、腕はS字形でロックされます。肩を送る際には攻者の前腕には回内の回転が掛かっているのですが、肘を曲げて肩を送る方法では、前腕を回内する回転が、肘関節を外から被せるような動きにして肩を送る助けに出来るのです。その際に攻者の上体にのけぞるような崩しを与える事も出来ます。この崩しは特に送小手投の時には広く行なわれているような気がします。
*実は私は学生の時はこの方法で習ったので、ずっとこの方法で行なっていました。なので肘関節を伸ばして一本の棒として行なう方法を見た時には非常に驚きました。
ただ肘を曲げる方法は、肘関節が力のクッションになってしまうリスクがあり、ロックの掛け方が解っていない拳士が行なうと、相手に力を吸収されて却って肩を返せなくなります。漫然と行なうのではなく、それぞれの方法で腕全体をロックする事で力を肩に伝える事を目的にしているのだ、と理解する事が大切です。

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先程来「肩を送って攻者を前傾に崩すのが送小手」だと言っている訳ですが、この「肩を送る」という事は色々な先生が仰っているのですが、他の先生方から聞いたことが無いキーワードがこの技にはあると私は思うのです。
それは「腰を折る」という事です。
なかなか送小手が掛からない人は、勿論「作り」などのロックが緩かったり攻める方向が間違っていたりするのですが、掛かっていない人の体勢を見ると、体幹がドッシリして全く崩れていないいんですよね。送小手は一体どこが崩れて立っていられなくなるのだろう、と或る時じっと見ておりましたら、結局股関節〜腰の所で体幹が折れて前に倒れるのだと気づきました。
当たり前のひとにとっては当たり前の事なのですが、この(お辞儀のように)「腰を折る」という事を強調して送小手を指導している先生を、私は見た事がありません。皆もっと上の肩を送る事ばかりに一生懸命なんです。
いきなり腰を折ろうとしても、勿論ビクともしません。しかし肩を送ってちょっと不安定にすると面白いように腰が折れるのです。腰を折る為に、肩を送る。肩を送るだけは勝手には腰は折れてくれません。肩を送り、そして腰を折る。
私自身は社会人になって暫くしてこれに気づきまして、これを意識して送小手を行なうようにした所、やりやすさが格段に向上しました。つまり注目点を変える事で、動きが修正されたのだと思います。もうお上手な方はいいでしょうが、自分の送小手に満足していない方は是非参考にしてみて下さい。

【宗門の行としての少林寺拳法】龍華拳 片手送小手 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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