島岡幹夫さんからの報告書をアップします。
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06年11月29日岡山市内のピュアリティまきびホテルにおいて農林水産省の主催する前題の地域コミュニケーション会議が開かれた。
中国四国9県の農業関係者と消費者の代表15名が発言者として、同じ位の方々が傍聴者として報道関係者カメラなど十名位参加をしていました。 事前に高知県農林部から貴方を県代表に指名するので会議に出席するようにという要請があり本省の許可を得ての出席の運びであった。
会議に先立った説明では北海道、東北地区と地区ブロックに分割して開催され中四国地区が七回目、九州沖縄地区が8会場となる予定。各会場に三十名程度の代表者を指定して4,5時間の説明会を開いて遺伝子組み換えとバイオテクノロジーの問題について国は十分説明を行い国民の理解を得たということになっている。
私自身農業者であっても遺伝子組み換えやバイオテクノロジーについては全くの素人であり充分な知識もないけれども大変重大な問題であり、安全性あるいは国内の流通の実態についても高知県から代表として出席した以上はこれらについて報告する義務を負っていると考え文章とした。
遺伝子組み換え農作物が創り出されて約20年余が経過しているが、アメリカの多国籍企業である農薬メーカー・モンサント社が、大豆・トウモロコシなど広大な圃場で栽培される作物に対し除草剤を多用するとスーパー雑草と言われる除草剤では枯死しない雑草が多く残存するようになったことから、栽培する作物の遺伝子を組み替えて一部には魚や動物の遺伝子まで入れて組み替えているとも言われるが除草剤耐性大豆やトウモロコシ、ナタネなどを創り出した。スーパー雑草を除去するためには増々大量の除草剤を散布することになる。
組み換えに用いられる遺伝子そのものは常に同じ形状のものをつくり出していく作用ともう一つは基本的には蛋白質をつくり出していく役割を持っている。この二つの作用を活用したわけである。
我国でも三菱モンサント、住友モンサントや各農薬製造メーカー、日本たばこ産業など12,3の企業が技術提携や業務提携などで繋がっていてラウンドアップ除草剤、ラウンドアップレディなど製造販売しているが、この多国籍企業モンサント社は世界の農薬の六割を支配しそれぞれ栽培される耐性除草剤種子の九割を独占支配する結果となっている。
遺伝子組み換え農産物の実態について調べてみると、11年前96年にはモンサント社のあるアメリカで170万ヘクタールの栽培であったものが現在は地球上の各地で約1億ヘクタールという広大な面積になっており我国の国土面積3700万ヘクタールと比較して考えれば三倍に近い面積で、アメリカ、カナダ、ブラジル、アルゼンチンなど南北アメリカ大陸を始めオーストラリア、中国と世界の主要な農業生産国には組み換えられた農業物が多く栽培され流通している。
世界最大の輸入国と言われる日本の実状は大豆が500万トン(内遺伝子組み換え86%)、トウモロコシ1700万トン(50%以上が組み換え)の多量で家畜の飼料と国民の食料に大別される輸入大豆500万トンのうち大豆油、即ち食用油用が350万トン、食品加工用が110万トン、家畜の飼料用40万トンであるが、油を搾った後の大豆糟(豆糟)と言われるものは全部飼料用に回るのでそれなりに活用されている。
食品加工用の110万トンの大豆は主に豆腐・油揚げ・味噌・醤油・納豆・菓子類となる。一番最初に問題になったのは約5年前、納豆に「この商品は遺伝子組み換え大豆を使用しました」という表示があり驚かされましたが、それ以外豆腐、味噌、醤油、加工品に表示義務は課せられていないので遺伝子組み換えの商品がそのまま大手を握って流通しているのが現状、加工前の原料でも混合率が5%未満であれば非遺伝子組み換えとして承認されている。
1700万トン輸入されているトウモロコシについては家畜の飼料用に1300万トン、食用油用
200万トン食品用に200万トン、トウモロコシも様々な加工がありコーンスターチ・糖類・砂糖・水飴・スナック菓子など、産地がアメリカ、カナダ、南米大陸、オーストラリア、東南アジア、タイ国他、中国からも60万トンで種類も多く組み換え率も現在は50%である。
大豆・トウモロコシが食料食品として重用されるのは食用油でマヨネーズやマーガリンなどにも加工されるが、近年バイオエタノールの原料として大きく注目され地球温暖化防止農作物の代表になりつつある。成長が早く成長の過程でCO2をどんどん吸収して大きくなる実から油を搾って燃料としてもプラマイゼロであるというバイオエタノール事業が本格化すると食用として世界最大の輸入大国日本は増々高い大豆・トウモロコシを買入れなければならないだろう。
遺伝子組み換え農業物に五つの大きな品目があり次はジャガイモです。これは食品、そのまま食用とデン粉に加工され各種のポテトチップスや菓子類などになっている。西洋ナタネは年間300万トンも輸入され国内の工場で搾油され食用ナタネ油として市場に出ます。
意外と思われるのは綿実で大豆粒位の大きさですが非常に総合的な栄養価が高く油と飼料用に使用されている。
遺伝子組み換え農産物の輸入と国内流通について安全審査の手続きを経た食品添加物は大豆4品種、トウモロコシ28品種、ジャガイモ8品種、砂糖の原料のてん菜3品種、西洋ナタネ15品種、綿実18品種、モヤシの原料であるアルファルファ3品種、食品添加物のαアミラーゼ14品種合計79品種の多くが国内で流通、これらを用いた加工食品が全国の店頭で販売されている。
また現在審査中の遺伝子組み換え食品はパパイヤと大豆、トウモロコシなど9品種が継続審査中となっている。
遺伝子組み換え農作物の安全性について、96年5月厚生省の諮問機関である食品衛生調査会ではアメリカ等から輸入の申請が出されていた遺伝子組み換え食料品の安全性を認める答申を提出した。同年12月までに大豆、ナタネ、トウモロコシ、ジャガイモなど6種類20品目の輸入が承認され、以降国内流通と消費が進められてきた。
岡山市でのコミニュケーション会議でも私は度々質問を行ってきたが一番不審に思えるのが日本の食品安全審査委員会ではラットなどを使った動物実験を必須と規定していない。従来の品種と組み換え品種が形状と食味が同種であれば従来の育種法を技術的に発展進歩させたものとして同じものであると判定していることである。 これについてロシアの科学アカデミー予防医学リスクマネージメント学会のイリーナエルマコバ博士がラットにモンサント社のラウンドアップレディ大豆の粉末を日量5~7g通常の餌に加えて妊娠前2週間、妊娠期間中、分娩後2週間与え続けた実験では新生児の45匹中25匹が死亡し死亡率55.6%。 ラット用の餌に非遺伝組み換えの大豆粉末を同じ条件下で与えたら33匹中3匹が死亡して死亡率9%であった。三番目としてラットの餌のみで同じ実験を行ったものは44匹産まれた中で3匹が死亡。死亡率6.8%であったと報告されている。
イギリス、スコットランドのローウェット研究所のアッパード・ブッシュタイ博士は日本でも何度も講演された方ですが、ラットに遺伝子組み換えのジャガイモを少量ずつ食べさせたら免疫力が低下して内臓機能障害を起こして死亡が多発した事を報告している。
私がお二人の博士の実験例を質問したことに答えは学者の売名行為で事実はない、と切り捨てた。
動物実験をまったく実施しないまま安全宣言をする厚生省の取り扱いに不審を抱くものだ。
東京都中央区に本社のある醤油メーカー(ヤマサ)の取締役の談話を紹介すると、「醤油を作ることだけは我々は生産者でそれ以外は総て農作物の消費者である。自分自身が食べ子供や家族に食べさせて安心出来る商品を作ることが我々の使命である。組み換え農産物が決定的によいものであると評価され結果が出てくる20年、30年、50年後に人体に影響が無いと証明されたら私も認める。しかし、今の段階でその大豆やトウモロコシについた青虫やテントウムシが食べて死ぬことを考えたら果たして人間が食べ続けることが安全かどうかということには大きな疑問を持っている。」
遺伝子組み換えの農作物を栽培するために繰り返し多量の除草剤、農薬を散布する。トウモロコシや大豆、ナタネなどの残留農薬の数値が急激に高くなる。アメリカ政府は家畜飼料用農作物の農薬残留基準を15PPMから一挙に100PPMに引き上げた。アメリカの要請を受けた日本政府は99年食品の残留農薬基準を6PPMから20PPMに改定した。
今後国際的にも大きな問題になるだろうと心配される作物に稲の遺伝子組み換えがある。
多国籍企業は既に開発中であり、日本国内でも国民の主食である稲の種子を外国の企業に独占させない・米を守り国民の健康増進と消費者メリットを高めるためにを謳い文句として農林水産省は2006年度だけでも遺伝子組み換えとバイオテクノロジーの開発研究費として約4000億円の巨費を助成している。当初補助対象であった民間企業は消費者団体などの激しい抗議と反対を受け三菱化学、日本たばこ産業、キリンビールなどは撤退をはじめているが三井化学は現在も開発中の模様である。研究機関は国立大学、農業試験場、公的機関が主で大部分は独立行政法人を名乗り実態は不透明である。試験圃場から実証圃場へと拡大されてゆくと施設の周辺から花粉の飛散やハチ、チョウなど昆虫による媒介など従来型農業への汚染の問題も生じつつある。アメリカの各地ではこの環境汚染、破壊が深刻な問題になっている。
東京都を中心とする大都市消費者団体や学者、有識者などの安全性の確保と環境破壊の厳しい監視と抗議もあり、東京都、北海道、岩手県、茨城県、滋賀県、新潟県、千葉県、島根県、徳島県、つくば市など地方自治体が次々と規制条例を制定施行するに至っている。
現在国は安全審査基準に適合した食料食品のみが流通、消費されているという見解であるけれども組み換えられた遺伝子が新しい毒素を発生させたり、あるいはアレルギーの原因となる可能性もあり長期的な影響は予測不可能で環境と健康という両面から国民に大きな大きなリスクを生じさせることも考えなければならない。
2013年7月11日 四万十町本堂755 島岡幹夫