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高音質の理由② 吸音材の不使用

2023-01-09 10:07:58 | 日記
 吸音材を使うと音が死ぬので、使用は最小限にとどめる。

 これは教科書に載っている、スピーカー自作の常識です。
音を悪くするのになぜ使用するのかというと、箱内定在波対策です。
定在波がユニット振動板に悪影響を与え、不要な癖となるのを防ぐために使われます。
でも、悪を悪で制するという形ですので、あまりよろしくはありません。
そのため、どこでバランスをとるか、聴き込んでの調整が必要となります。

 さて、ではなぜ吸音材を使用すると音が死ぬのでしょうか?
ただ音を吸収する材料を入れただけなのに。
 実はここに落とし穴があります。
皆さんは吸音材は音を吸って、無くしてしまうと思っていませんか?
そんな訳ありません。
有が無になるはずがない。
音、つまり空気の振動が吸音材の振動に変換され、最終的には熱エネルギーに置換される。
間違ってはいません。
しかし、音が死ぬ理由の説明にはなっていない。

 密閉型エンクロージャーを想像してみてください。
まずは吸音材無しの場合です。
コーンが振動すると空気バネが働きます。
コーンの動きはスムーズで滑らか。
抵抗なくリニアに動きます。
例えるなら、中身のない(空気だけの)エアクッションです。
指で押すと軽くスッと指が入り、抜くときもスムーズに指の動きに追随してきます。
 これに対して吸音材入りの箱の場合は、一般的な綿入りのクッションとなります。
指で押すには力が必要ですし、抜いてもすぐには戻ってきません。
綿はフリクションが極めて大きいのです。

 この差はどこから生まれるのでしょうか?
エアクッションでバネの働きをするのは、空気の分子です。
極めて質量が小さいので、簡単に、自在に動きます。
 綿クッションの場合、バネの働きをするのは空気を含んだ繊維の束、ということになります。
 綿の繊維自体(一本一本)にはバネのような弾性があり、自由振動すると思います。
しかし、綿の繊維は複雑に絡み合っています。
つまり、向きが揃っていないのです。
そのため、ある繊維が振動の入力にバネのように反発しようとしても、他の繊維が邪魔をします。
綿はどの方向からの入力に対してもフリクションが大きく、自由振動できない素材なのです。
 吸音材が音のエネルギーを減衰させるという性質は、このフリクションの大きさに由来します。
繊維内の空気に振動が伝わってきても、繊維が抵抗、エネルギーが減衰するのです。
もしフリクションを減らそうと、繊維の向きを揃えるとすれば、綿ではなく、綿(めん)の布地ということになります。
フリクションと同時に、吸音性能も一気に落ちます。

 では、振動板(コーン)から見ると、綿(吸音材)はどういう存在でしょうか?
実は、そのフリクションの大きさが極めて厄介な存在となります。
指で押したときと同様です。
コーンが空気を押しても抵抗が大きく、引いても戻ってこないのです。
間違いなく音に悪影響が出ると考えられます
特に尖ったパルス音への影響が大きく、鮮度を失ったような平板な音になるでしょう。
これを防ごうと思ったら、教科書どうり、吸音材の使用は最小限にするべきです。


 吸音材は、一般的には箱の内側に薄く貼り付ける、という使い方が多いようです。
私はこの方法は、メリットが少ないのではないかと考えています。
というのも、薄い吸音材は高音域には有効でも低音域にはほとんど効果がありません。
低音は吸音材を透過して普通に壁で反射、ユニットの放射音と干渉して定在波を発生させます。
低い周波数の反射音は、定在波発生周波数以下だから問題なし?
そんな訳ありません。
反射波の周波数が低くとも、高次の共振周波数では共振するのです。
つまり、薄く吸音材を貼っても定在波は発生します。
薄い吸音材は、定在波抑制効果もまた薄いのです。

 話を戻します。
吸音材の使用を最小限にする、という事は吸音材以外の空気の容積が増えるという事になります。
つまり箱全体、トータルでフリクションを減らした方が音が良い、と言えます
 フリクションを減らす方が良い、となるともう一つ別の方法が考えられます。
フリクションの少ない吸音材を使えば良いのです。
吸音材の繊維を、極力細くすればフリクションは減ります。
具体的なイメージとしては、ごく軽く、ふわっふわの最高級ダウンでしょうか。
これだと軽く動き、レスポンスも上々となります。
 ただし、フリクション低下と合わせて(容積あたりの)吸音性能も低下します。
ですが、これは無視して構わないと思っています。
箱の内側に貼り付ける、という一般的な吸音材の使い方の場合、既に発生した定在波を吸音するという消極的な意味しかありません。
しかし最高級ダウンだと音質劣化が少ないので、箱全体に充填できます。
つまり定在波の発生そのものを抑制できるのです。

 最高級ダウンは吸音性能が劣るので、高音域には有効でも、中音域の定在波には効果がない。
そのとうりです。
でも、あまり意味がありません。
中音域の定在波に対処しようとすると、通常の(重い)吸音材を厚く貼る必要があります。
もちろんそんな事をすれば、完全に音が死んでしまいます。
つまり一般的な吸音材であっても、高音域の定在波にしか対応していないのです。
差はなく、変わりません。

 結論として、吸音材は最高級ダウンのような極軽量なものを使用するのがベスト、となります。
そして吸音材は箱の内側に貼り付けるのではなく、音のエネルギーが集まる焦点に設置するのがベターだと考えます。
具体的には、箱の中央に吊り下げるという方法です。
これで定在波の発生自体を抑制するのです。


 随分遠回りしましたが、定在波が実用的には(ほぼ)存在しない魁スピーカーは、この厄介な吸音材を使用する必要がありません。
これは大きなメリットです。
鮮度の高い、生々しい音が出る理由がこれだろうと思っています。
 

  (おまけのアイデア①)
 誰も試した事がないであろう吸音材を思い付きました。
スチールウールです。
吸音性能は高いだろうと予想していますが、その分の少量使用で効果大となるでしょうか?
実験してみます。

  (おまけのアイデア②)
 こちらはもっと突飛?
箱の中央に、窒素ガス等を封入した風船を置く、というのはどうでしょう。
空気と同じく収縮しますので、低音では普通に空気バネとして作用します。
でも、中高音は密度が違うので屈折、反射、内容積を小さくしたのと同様の効果が得られる······。
まあ、妄想の可能性の方が高そうですね。