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過去編 魁スピーカー、本日も順調に迷走中!

2023-02-19 17:50:32 | 日記
 前回、新ユニットを予告しましたが、まだ手元にありません。
そこで先に過去編を記事に上げます。
当時と現在では認識が異なっていますが、敢えて当時の視点で書いてみようと思います。


 (2式魁1a型、最初のタイプ。この状態からスタートです。)

 このスピーカーで、真っ先に考えなくてはいけなかったのは、「スピーカースタンドをどうする?」問題でした。
そして、なぜ低音が増強するのか、謎を解きたいと思っていました。
スピーカースタンドの方は、なかなか良い方法を思い付かなかったので、まずは謎解きから取り掛かりました。
 最初に行ったのは、1a型(前半丼+ゴム板)の後ろを塞ぐ実験です。
以前のブログ記事でも少し触れましたね。
具体的にはゴム弾性板の振動を妨げないように、リング状のスペーサーを介して壁に押し付けました。
本当に背面のゴムで低音が増強されているのか、確認しようと思ったからです。
 ところが結果は、全く予想を裏切りました。
ほとんど音が変わらなかったのです。
これには私は ??? となりました。
音の出口を塞いでも音が変わらなければ、これはバックロードホーンではない。
ではどうして低音が増強する?
なぜ?
当時の私にはわかりませんでした。
謎解きは一番最初から、いきなり挫折したのです。

 狐につままれた気分でしたが、それでも考えを進めました。
後ろを塞いでも音が変わらないのならば、そのまま密閉型にしてしまえばいい。
こうすればバッフルボードは必要ないし、「スピーカースタンドをどうする?」 問題も解決するじゃないか!
 実は先ほど出てきたリング状のスペーサーは、スピーカースタンド問題を解決すべく、コンパネ(12mm厚の建築用規格合板)を切り抜いたものです。
(ホームセンターでジグソーを借りました。)
 後ろを塞ぐとなると、前半丼と同じ直径のものがあれば簡単です。
そしてすぐに思い付きました。
この丼は100円ショップの大量生産プラ製丼、同じ丼を買ってくれば即ピッタリ!
 すぐに100円ショップから同じ丼、大小2セットを買ってきました。
そして前半丼と同じ箱鳴り対策を行いました。
大小丼の間にモルタル(≒コンクリート)を挟んで硬化です
こうして後半丼が完成しました。
 前半丼と後半丼をくっ付ける方法もすぐに思い付きました。
ビニールテープです。
黒のビニールテープを通常版、幅広版2種類買ってきました。
丼も黒なので、目立たずに、きれいに仕上がります。
こうして2式魁1b型、密閉タイプ完成です。

 さっそく試聴してみました。
そして愕然としました。
「全く低音が増強されていない!」
スペーサーを付けて壁に押し当てると低音が増強するのに、いざ密閉型にすると増強されない!
なぜ?
今度は本当に頭を抱えました。
全く意味不明だったのです。

 どう対策したら良いのか全くわからず完全に五里霧中でしたが、とにかく何か手掛かりが無いか、動いてみる事にしました。
1b型を分解、ゴム製弾性板を取り外し、代わりに様々な物を入れて、低音が増強しないか試します。
 すると、低音を増強するものがありました。
発泡断熱シートです。
保冷バッグなどに使われる、アルミが蒸着してある、あれです。
この結果にも驚きました。
密閉型エンクロージャーの真ん中に、こんなペナペナの膜一枚を挟んだだけでなぜ低音が増強する?
本当に不思議で不思議で仕方がありません。
ともかくもこれを取り付け(張り)、丼2つをビニールテープでくっつけました。
こうして改めて魁1b型、完成です。

 さて、今度は難問だったスピーカースタンド問題です。
これも密閉型になった事で目処がつきました。
実は良い物があったのです。
リング状のスペーサーを作ったときの、余った木片です。
丼のRに合わせて切ったので、木片も同じRで残っています。
これを前後に2枚、横を別の木材で繋いで簡単なスタンドを作りました。


適当な高さの台が無かったので、旧メインスピーカーを降ろして、その上に載せました。
でも、もう少し高さが足りない。
そこで、そこらに転がっていた前半丼の失敗作を載せ、その上にスピーカーを設置しました。
これで高さもちょうど良くなりました。
 しばらくはこの状態でしたが、この魁1b型を見ていて思いました。
なんかサイクロプス(一つ目の巨人)みたいだ。
せっかくだから、ネクタイを着けてやろう。
 こうして(おそらく)世界で唯一の、蝶ネクタイを着けたスピーカーが完成しました。
このブログの最初の回、ごあいさつの見出し写真にこの1b型を使ったのは、これが最もキャッチーな外観だったからです。


 それでは肝心の音質評価です。
密閉型になったので、低音の回り込みによる減衰が無くなったはずです。
でも、あまり低音が伸びません。
容量が小さくて、空気バネが硬いせいでしょうか?
結局、1a型と大差のない低音でした。
そして音に少し癖が出てきました。
容量が倍増して1.5L程になったので、定在波の影響が出てきたのだろうと思われます。
それでも音が良いのは間違いありませんが、私的には今一歩、1a型のような感動はなかったです。
比べてみると、少し窮屈なイメージでしょうか。

 その後どう改良したものか方針が定まらず、魁スピーカーはしばらくそのままでした。

 その頃私が読んでいたのが、㈱薩摩島津 代表 島津知久氏のブログです。
(当時は A&CオーディオのMr.Hippo氏でした。)
私が書いた小難しい話のうち、吸音材はふわっふわの最高級ダウンが良いという話と、ユニットはエンクロージャーにがっちり取り付けるよりもフローティング構造で浮かせて取り付けるべきだという意見は、島津氏の主張がオリジナルです。
吸音材は、私が様々な種類を揃えて実験した訳ではありません。
 フローティング構造の方は、島津氏が独自に開発したDSS振動板の特長を生かすために開発したものです。
一般的な箱に固定する取り付け方だと、木の響きで厚み感がでるものの、これは同時に音が濁る原因になる。
解像度が極めて高いDSSユニットには余計な響きは不要で、そのためには箱から浮かす構造の方が正しい。
島津氏はこの結論に基づき、高度で本格的なフローティング構造を採用しています。
 私の方はもちろん一般的なユニットですが、P波ノイズが音に悪影響を与えるという観点から、やはりフローティング構造の方が望ましいという考察に至っています。
まあ、どちらも結果が同じと言えばそのとうりなのですが······。
でも、宣言しておきます。
私の方は完全な素人工作です。
とても同列に並べられるものではありません。

 ここから少し個人的な宣伝をします。
島津知久氏のブログは、ぜひ読んでみる事をおすすめします。
スピーカー自作派にはとても参考になると思います。
スピーカー購入を考えている人は、リストの中に薩摩島津を入れる事を検討してみてください。
小型ブックシェルフで安くもありませんが、それ以上の価値があると思っています。
私自身も欲しいと思いますが、かすりもしません。
だからこういう安スピーカーのブログを書いているのですが。
実際にその音を聞いてみたいですね。
でも地方在住者のハンディで、ちょっと無理です。

 話が遠回りしました。
魁スピーカーに戻ります。
島津知久氏のブログを読んだ私は、先に出た2つ、フローティング構造と吸音材の追加を考えました。
魁1b型の音が今一つなので、これを取り入れたら改善するかもと思ったのです。
 フローティング構造は以前に書きましたね。
ユニットと箱の間にゴムパイプを挟み、ビスで止めました。
ビス止めなので完全ではなく、セミ・フローティングですが、コンクリートの箱を加工する訳にもいきませんので、ここは妥協です。
 吸音材ではもちろん最高級ダウンを使いたいところです。
当時のA&Cオーディオでは、これを単品で販売していました。
当然これを購入したかったのですが、かなりのお値段です。
最高級なので仕方ありません。
でも、魁スピーカーは雑誌の付録ユニット、100円ショップの材料で作られた激安スピーカーです。
「このスピーカーで最もコストを掛けたのは何ですか?」との質問に、「吸音材です。」などと答えたら絶句されそうです。
いや、うけるかな?
 とにかく最高級ダウンは諦めて、身の回りにある手近なものでふわっふわな物がないかと考えました。
そして目を付けたのがティッシュです。
これを細かくちぎって、ふんわりと詰め込もうという作戦です。
もちろん最高級ダウンには及びもつきませんが、相当軽量かつ音響特性も素直だろうと思います。
 ただ、実際にやろうとなると、かなり根気のいる作業です。
最初は細かくちぎっているのですが、次第に大雑把に。
スピーカーの右と左で音響特性が異なってしまったかもしれません。
(細かい事を気にしてたら、頭が薄くなるぜ、兄貴!)

 それと、カウンターウェイトを追加しました。
具体的にはZ角座(木造住宅用のZ規格に基づいた角座)1/2インチをそのままマグネットに貼り付けました。
 こうして完成したのが魁1c型です。

ではその音質評価はというと、これもあまりパッとしません。
若干は良くなりましたが、やはり何となく1a型には及ばないのです。

 そしてある日、とうとうぶちギレました。
魁1c型を分解、吸音材を取り出しました。
そしてゴム製弾性板を取り付けました。
つまり、1a型に戻したのです。
ただし、セミ・ フローティング構造とカウンターウェイトはそのままですので、魁1a改型とでもいうべき状態です。
そして新しく準備したスピーカースタンドに取り付けました。


 このスタンドはコンパネ長そのままで、高さが1.8mあります。
上を重くする事で、前後に振られにくくしようという発想からです。
でも、このボルトとナットの取り付け方では効果は無さそうです。

 結局今になって振り返ると、最初の魁1a型でスマッシュヒットを飛ばしたものの、その後は泣かず飛ばず、迷走を重ねていただけだったと思います。
これは魁スピーカーの謎が解けず、小手先の対応しかできなかったのが原因です。
どうして低音が増強されるのだろう?
振動板になったつもりで考えてみよう。
こうして、やっとたどり着いた結論が、低音再生編に出てきた三文芝居です。
そしてバックロードホーンの原理に思い至ったのは、その応用です。
 ここからは現在の私の視点から魁スピーカーを論評しようと思います。

 過去、私は魁1a型の後ろを塞ぐ実験を行いました。
リング状のスペーサーを介して壁に押し付ける方法です。
その結果、音が変わらず ??? となった訳です。
でも考えてみればこれは当然です。
壁に押し付ける方法では、隙間があって空気が漏れます。
ゴム弾性板はあまり影響を受けず、ホーンロード効果は維持されます。
でも完全密閉型になればこうはいきません。
空気が漏れないので、空気バネが働きます。
それも強く、です。
容量が小さいので、硬いのです。
これではゴム弾性板は強く制動されて動けません。
結果、この箱は小さすぎる密閉箱となってしまったのです。
このような状態では、弾性板は発泡断熱シートのような「ゆるい」素材の方が向いています。
重いゴムよりはまだ動けるので、ホーンロード負荷を掛ける事が出来ます。
 でも後半丼の容量が小さいので、発泡断熱シートでもまだ動きが渋い(大振幅で振動できない)と思われます。
そのため、低音を伸ばすには、容量を増やす(大きくする)必要があります。
でも、仮に大容量化したとしても、ホーンロード効果はゴム板の方が大きいと考えています。
なぜなら発泡断熱シート+空気バネは軽量です。
通常のバックロードホーンと同じく、周波数が下がればホーンロード効果が効かなくなります。
重いゴム板の方が、ユニット振動板を振り回す(ホーンロードが掛かる)のです。

 改めて過去を振り返っても、あまり参考になる話はありませんね。
実は思い立って、魁1a改型に本格的なバッフルボードを追加してみました。
当初はコンパネで製作予定だったのですが、昨今の値上げのせいで、2枚3000円。
魁スピーカーの場合、100円ショップの素材という意識が働いて、どうしてもコスパに厳しくなります。
ルビコン川を渡れなかった私は、ダンボールで妥協しました。
2枚で500円です。

 実際に製作に取り掛かってみると、ここでも問題になったのはやはり
スピーカースタンド問題です。
元々の構想では、次のスピーカーで考えた方法を使う予定だったのですが、1a型とは形状が異なっていて使えなかったのです。
やむを得ず、元のスピーカースタンドのままバッフルボード(というより後面開放バッフルボックスと言った方が正確か?) を被せました。
一応計算上は、65㎐くらいまでバッフル効果が出るはずです。



 ではその結果です。
低音が伸びてはいるのですが、程度は若干です。
そして副作用として音像定位が悪化しています。
これではあまりメリットがありません。
実際にダンボールに触れてみると、振動を感じます。
内部損失の大きい素材ですので、共振というよりも自然振動でしょう。
後面開放で音圧が掛からないから大丈夫、と思っていたのですが、甘かったようです。
振動が透過するのではバッフルの役目は果たせません。
もしもダンボール以外のもっと硬くて重い (振動しにくい) 素材を使えば改善するとは思います。
でも感触として、劇的に変わるとは思えません。
もちろん現状の低音でも8㎝フルレンジとしては優秀だろうと思っています。
(実際にバスレフBOXを作って比較すれば良いのですが、タイパが悪いとか理屈をこねてサボってます。)

 ここに来て、私も本格的に低音を増強する方法を考えてみようと思い立ちました。
魁スピーカー、中高域は素晴らしく、低域も質は高いのですが、量は普通です。
いろいろとアイデアはあるのですが、どの方向が良いのか考察してみようと思います。


  次回  上記のとうり、低音増強の考察
      まとまらなければ次のスピーカーネタかも。









私のスピーカー命名法

2023-02-07 15:17:09 | 日記
 今回はちょっとコーヒーブレークです。
おそらく皆さんは見当が付いていると思いますが、私のスピーカーの名付け方を書いてみたいと思います。
読み飛ばしても特に問題はありませんので、興味のある方だけどうぞ。

 当ブログを最初から読んでいる方はわかるでしょうが、魁スピーカーは当初、前半丼の再利用から生まれた謎の高音質スピーカーでした。
望外の大成功を受けて、名無しのままでは駄目だ、何か名前を付けねばと思いました。
例えばラグジュアリースピーカー、8㎝口径で、LS-800などと名付けても没個性的で、何も面白くありません。
多少は目立つ、個性的な名前が欲しいと思いました。
それとスピーカーは洋風の名前が付く事が多いので、和風の名前にしたいと思いました。
大風呂敷ですが、ジャパン・オリジナルと主張できるようになりたいという願いも入っています。
 さてどうしようと考えて目を付けたのが、旧日本海軍の航空機の命名法です。
例えば有名な零戦の正式名称はこうです。
「零式艦上戦闘機21型」
これは真珠湾攻撃から使用された初期の型です。
最初の零式とは皇紀(古事記の記述を元に、神武天皇即位から数えた年式。考古学的には根拠なし。)2600年に制式採用された事を意味しています。
ちなみに陸軍は零式とは言いません。
例えば同年制式採用の機体には「百式重爆撃機 呑龍 1型」と名付けています。
こんなところにも海軍と同じ事はしたくないという、つばぜり合いが見られて面白いですね。
 次の艦上戦闘機はわかるでしょうから、最後の「21型」です。
最初の2は機体の型式を表す数字で、後ろの1はエンジンの型式を表します。
機体が2ということは、その前に1があったことになります。
そのとうりで、最初に採用された零戦は11型です。
実は新開発の機体には初期不良がつきものなので、最初は空母で運用せず、陸上基地のみで運用したのです。
その後品質が安定したので、着艦フック等を装備、晴れて21型として真珠湾に投入されました。
 ちなみに零戦には愛称がありません。
他の海軍機を見ても、俗称はあっても、正式な愛称の付いた機体は(当時は)ありません。
おそらく愛称を付けるという発想自体が無かったのだろうと思います。
 ところが、いざ戦争が始まってみると、陸軍は同時期の戦闘機、1式戦闘機「隼」を大々的に宣伝しました。
加藤隼戦闘隊などと映画まで作られました。
当時の国民は、緒戦の日本の快進撃は「隼」によるものだと思っていたのです。
多くの若者がパイロットになるべく飛行学校入学を希望しました。
でも、陸軍希望者の方が圧倒的に多かったのです。
 現在では日本を代表する戦闘機は零戦になっています。
実はこれは戦後になってからの話です。
実際に対戦した米軍パイロットの評価で逆転したのです。

 話を戻します。
この隼戦闘機の大人気に、苦虫を噛み潰したのが海軍です。
海軍航空機にも、国民にアピールできる愛称を付けるべきだという声が大きくなりました。
かくして「2式大型飛行艇(大艇)」を最後に、以後は愛称を付ける事が決定しました。
そして零戦の次に制式採用された戦闘機の名前がこれです。
「局地戦闘機 雷電 11型」
これを見て、すぐに気がつくと思います。
年式表記を廃止したのです。
陸軍の真似をしたと、よっぽど言われたくなかったのでしょう。
本当にどうでもよい事でいがみ合っていたことが良くわかります。

 ちなみに愛称の付け方にも法則がありました。
主な例です。

甲戦  (艦上も含む)軽戦闘機  風    例:烈風 陣風
乙戦  (陸上、局地)重戦闘機  雷、電  例:紫電 震電
夜間戦闘機            光    例:月光 極光
攻撃機 (雷撃機を含む)     山    例:天山 連山
爆撃機              星    例:彗星 流星
偵察機              雲    例:彩雲 瑞雲

 一方、陸軍の方は終戦まで変更はありません。
この命名法の伝統は、現在の自衛隊にも引き継がれていると思います。
例えば大戦初期の陸軍主力戦車は「97式中戦車 チハ」です。
陸軍は戦車には愛称を付けませんでした。
「チハ」は愛称ではなく、中戦車の「チ」とイロハの「ハ」、つまり3番目に製造した中戦車という意味です。
陸軍には、戦車は主力兵器ではなく、あくまでも歩兵を支援する兵器だという意識があったのでしょう。
陸上自衛隊の戦車も64式戦車に始まって、74式、90式、そして最新鋭の10式へと続きます。
 一方、航空自衛隊の戦闘機の方は、F― 86F「旭光」から始まって F―104J 「栄光」、そこから先は英語の愛称をそのまま使用となって、ファントム、イーグルと続きます。
旧陸軍ではなく、旧海軍航空隊の後継だという意識があるのだと思います。
終戦時、海軍航空隊は全力で米軍と戦い、消耗し尽くしました。
それに対し、陸軍航空隊は本土決戦に備えて相当数を温存していました。
当然ではあるのですが、陸軍は肩身が狭かったようです。
これも影響しているのかもしれません。
なお、航空自衛隊の最新鋭戦闘機、F―35A はなぜか愛称が広がらず、F―35で通用しています。
「ライトニング Ⅱ」が愛称なのですが。

 余談が長くなりました。
なお、以上の話は私の記憶ベースであり、史料的正確性を期したものではありません。
雑談だと思って、記憶違いは笑い飛ばしてください。
 では、本題の魁スピーカーの命名法です。
正式には、2式スピーカー「魁(さきがけ)」1a型 と名付けました。
最初の「2式」はもちろんわかりますね。
令和2年製作です。
そして愛称の「魁」です。
当時、高音質ではあっても皆目見当がつかない状態でしたが、ここから発展して行きたいという願いを込めて命名しました。
そして最後の「1a型」は海軍機とは逆です。
最初の1がユニットを表し、後ろのaがエンクロージャー(箱)の方を意味します。
ユニットにフォステクス M800を使い、箱に前半丼を使用しているのが1a型です。
箱の表示をアルファベットにしたのは、9回改良したら表示できなくなるからです。
 近日製作にかかるであろう(多分)次のスピーカーが完成した暁には、2式魁2d型という名前がつく予定です。
あれ? と思った人は鋭いです。
実は新しいユニットを採用する予定です。
特に金回りが良くなった訳ではありませんので、高級ユニットではありませんが。
まだ手元にありませんので、次回に発表予定です。


  次回  上に書いたとうりです。
      もしかしたら、次のスピーカーネタが入るかも。

高音質の理由④ 魁スピーカーの低音増強について

2023-02-05 16:54:41 | 日記
 さて、私のあまり面白くない技術(?)講座も最終回、低音再生編です。
参考になるかはわかりませんが、低音再生に関する私の考察を述べてみます。
よろしければ読んでみてください。

 実はこのブログの下書き段階では前面バッフル、密閉箱、バスレフと解説していました。
かなりのボリュームになりましたが、よく考えてみるとこれは皆様には釈迦に説法、今さら私ごときが解説しても仕方がないので、思いきって割愛します。
(ただ単にタブレットに打ち込むのが面倒なだけだろう、という外野の声は、事実ですので、無視します。)
 ただ、一つだけ私の意見を言わせてもらうと、いずれの方法も振動板自身、空気バネ、あるいはバスレフダクトの共振を利用しています。
共振を利用して振動させるということは、同時に振動が止まりにくいということも意味します。
低音再生を欲張ると、ブーミーで締まりのない、鈍重な低音になる可能性があります。
やり過ぎは禁物です。
(特にダブルバスレフ。)

 では本題に入ります。
低音を出すために、全てのスピーカーが共振を利用しているのかというと、そんな事はありません。
共振を使わないで低音を増強するスピーカーもあります。
想像がつくと思いますが、バックロードホーンです。
 では、バックロードホーンはどういう原理で低音を増強しているのでしょうか?
例えばバスレフの場合、ポートに耳を寄せれば盛大に低音を放射しているのがわかります。
一方、バックロードホーンの開口部からはもう少し高い、中音から低音が出ていますが、特に重低音を増強しているようには感じません。
イメージとして、バックロードホーンは、ユニット、開口部、そして箱そのもの(箱鳴り?)と、全体が一体となって低音を再生しているような気がします。
(私見です。ただし、比較したバックロードホーンはフォステクスの10㎝フルレンジ、今となっては型式名不明の「かんすぴ」ですので、異論は受け付けます。)

 以前のブログで、私は長岡鉄男先生の言葉を引用しました。
再掲します。
「バックロードホーンは、ユニット振動板の小口径、大振幅の振動を、大口径、小振幅の振動に変換する、変換器である。」
当時も書きましたが、これは私のうろ覚えの記憶ですので、もし間違っていたら謝罪いたします。
私は長岡先生の著作を持っていませんので、どういう文脈だったのかはわかりませんが、ユニットの振動を大口径、小振幅に変換したら、どうして低音が増強されるのでしょうか?
小口径ユニットで重低音を再生するのは、基本的には困難です。
これを実現するためには、ユニット振動板は入力された電気信号よりも大振幅で振動しなければなりません。
あるいは開口部から重低音を放射するというのなら、大口径、小振幅では駄目で、中振幅くらいは必要だと思います。
もちろん振動板自身、あるいは空気バネによる共振での低音増強はあるでしょうが、これは密閉型でも同じです。

 ここからは私の、バックロードホーンの解釈です。
私が読んだ(大昔です)オーディオ誌には、バックロードホーンは切れ味の良い低音が出る、などと結果が書いてあるだけでその理由には触れていません。
専門書には書かれているのかもしれませんが、私なりに考えたバックロードホーンの低音増強原理を述べます。
正しいかどうか、判断は読者の方々に任せたいと思います。

 バックロードホーンはユニットの付いた空気室があり、そこから後方に長大なホーンが付いているのが基本構造です。
高い周波数では動作は密閉型と変わりません。
一部の音が後ろに洩れますが。
そして特定の周波数以下になると、ホーン内の空気全体を、振動板が押したり引いたりする動作に変わります。
つまり、ホーン内の空気の重量が振動板にかかり、大きな負荷となります。
これはユニットの振動系(振動板+ボイスコイル)を重くしたのと同等の効果を生みます。
具体的に言います。
振動板が空気を押すと、その圧で空気が動きます。
次に振動板が逆方向に動こうとしますが、空気の方は自らの自重ですぐには止まれず、そのまま振動板を引っ張って動かします。
つまり、振動板は重い空気に振り回されて、フラフラと大振幅の振動をするのです。
これがホーンロード効果の正体なのではないかと思います。
 そしてさらに周波数が低くなると、ホーンロード効果は次第に下がっていきます。
なぜなら、周波数が下がるという事は振動板の振動スピードが遅くなることを意味します。
振動スピードが遅くなれば、空気も振動板の動きに付いていけるようになるからです。
つまり、空気が振動板を振り回さなくなるのです。
振動の波長がホーン長を越えるくらいになると、ホーンロード効果は失われ、単なる空気抵抗になるのではないかと思います。
 もしこれを嫌って、重低音までホーンロード効果を確保しようと考えるなら、ホーン長を増大させる(長くする)という方法があります。
こうすればホーン内の空気の自重が増すので、空気の動きが渋く(動きにくく)なり、振動板のスピードが下がっても付いていく事ができず、振り回し続けます。
ただし、これにも限界があります。
振動板にかかる負荷がどんどん増えるので、あまりやり過ぎるとホーン内の空気を動かすこと自体が困難になってしまうからです。

 では、あらためて結論です。
バックロードホーンは開口部が重低音を放射しているのではありません。
振動板が大振幅で振動することによって低音を増強しているのです。
 以上が私の解釈です。
私は正しいと思っていますが、どうでしょうか?

 それでは次に、私の魁スピーカーです。
このスピーカーが低音増強する理由を述べます。
もちろんこれも推定ですが、おそらく間違いないと思っています。

 魁1a型は、箱の容量が極めて小さいのが特徴です。
ユニット振動板のすぐ後ろに、ゴム製の弾性振動板が張られた構造です。
 ではまず、ユニット振動板の立場で考えます。
振動板が音楽信号で振動すると、後ろの弾性板も動きます。
自然振動ですので、ユニット振動板と同相、同じ向きに振動します。
彼ならきっとこんな文句を言うでしょう。
「なんで後ろに重いゴム板があるんだ!
「これも動かさないといけないじゃないか!」
「普通の箱だったら、軽くて楽なのに!」

 次に、後ろのゴム製弾性板の立場に立ちます。
こちらから見ると、立場が逆になります。
重いゴム製の弾性板は、軽量アルミ製の振動板を軽々と動かすでしょう。
さしずめこんな感じでしょうか。
「どけどけ! 俺が動くと止まらんぞ!」
「逆らうやつは力ずくだ!」

 そして最後に、ユニットのボイスコイルの立場で考えます。
こちらから見ると、ユニット振動板とゴム製弾性板を同時に動かしている事になります。
きっと盛大に愚痴っているはずです。
「何て重い振動板なんじゃ!」
「制動力が足りん! フラフラじゃ!」
「足腰立たんようになったら訴えてやるぞい!」

 完全に三文寸劇になりました。
でも、ここまで書けばわかると思います。
そうです。
魁スピーカーは、バックロードホーンと同じ原理で低音を増強しているのです。
空気の自重による負荷が、ゴム製弾性板の重量に置き換わっただけです。
レスポンスの良い低音が軽々と出る、という特長も同じです。
 でも、比較すると魁スピーカーの方がメリットが多いのではないかと思います。
何と言っても超小型で箱鳴り、内部定在波が(ほぼ)存在しないというのは大きいです。
逆に大型化してしまうバックロードホーンは箱鳴り、定在波対策に頭を悩ます事になります。
 次にバックロードホーンは周波数が下がると次第にホーンロード効果が失われ、最後はスルーになってしまいます。
でも、魁スピーカーにはこれがありません。
なぜですかって?
当然です。
重いゴム板が、振動板のスピードに付いてこられると思いますか?
例え20㎐でも10㎐でも無理でしょう。
魁スピーカーは最低再生限界までホーンロード効果がかかり、かつスルーにもならないのです。

 ただし、現状の魁1a型ではこの特長が生かされていません。
ユニット振動板とゴム製弾性板が同相で動き、かつその距離が近いため、回り込んだ低音が干渉、打ち消し合ってしまうからです。
これを解消するためにはバッフルボードを設置、双方の放射音を分離する必要があります。
前回のブログに書きましたが、もう一回言います。
「次のスピーカーではバッフルスカートを採用します。」
おそらく効果大なのではないかと予想しています。

 話を戻します。
 逆にバックロードホーンの方が有利なのは、大口径ユニットが使えるという点です。
音道も自由に伸ばせますし、重低音追及ならば間違いなくバックロードホーンの方です。
 魁方式では、大口径ユニットは物理的に入りません。
かと言って容量を増やせば、魁スピーカー最大のメリットを損ないます。
現状では、魁スピーカーは8㎝フルレンジの一本槍です。
でも、将来的には容量を増やして2Way化を検討するかもしれません。
(一応魁スピーカーを名乗るなら)なるべく箱内に高音を入れないようにクロスオーバー周波数を低くとり、かつ急峻なハイカットとかなるでしょうか?

 次に、少し先の話です。
おそらく次の次になるとは思いますが、魁スピーカーの低音増強策としてバスレフの追加を考えています。
(別にバックロードホーンに対抗しようと考えている訳ではありません。)
 実は実験的に試作したスピーカーがあるのです。



 4式試作スピーカーです。
バスレフ併用でさらに低音を増強できるか、可能性を探るために製作しました。
結果は一応成功です。
8㎝フルレンジで、市販の10㎝2Wayバスレフ以上の低音が出ることが確認できました。
これを受けて、一時はこのまま発展させて次のスピーカーにすべく動いていました。
4式スピーカー「標(しるべ)」と名前まで考えていたのですが、結局断念しました。
理由はこのスピーカーが2式魁1b型(密閉タイプ、いずれこのスピーカーの詳細も記事に上げる予定です。)の構造をベースに容量拡大、バスレフダクトを追加したものだったからです。
前にも書きましたが、魁スピーカー最大のメリットを失ってまで低音増強にこだわる気はありません。
製作したとしても低音だけが優れた、平凡な中高音のスピーカーになったことでしょう。
 でも、可能性だけは示すことが出来ました。
これは次の宿題にしておきます。
(夏休みの宿題は、最後までやらないタイプだった気が····)

 最後に言っておきます。
少し前のブログで、魁1a型の低音増強はバックロードホーンの原理ではないと私は断じています。
ここに慎んで謝罪、訂正させていただきます。
何が変わったかというと、前記事の段階ではバックロードホーンの作動原理を考察しておらず、バックロードホーンは開口部から重低音を放射していると、単純に思い込んでいたからです。
 この記事を上げるために、バックロードホーンの「かんすぴ」を久し振りに引っ張りだしてきて鳴らしました。
これを入手した当時には既に魁1a型が出来ていました。
メインスピーカーと同じく、やはり箱鳴りが気になって倉庫行きになっていたものです
でも、改めて聞いてみると、何かアナログ的な良さがあります。
自由を満喫、謳歌しているような伸びやかさを感じて、これはこれで魅力的でした。
 魁1a型に戻ってみると、こちらはデジタル的です。
精密、精緻で余計なものは一切加えないというイメージで、美しさも感じますが、比べてみると生真面目です。
 結局、どちらが上という問題ではなく、好みの問題になると思います。
私もバックロードホーンよりも魁スピーカーの方が上だ、などと誇る気はありません。
興味の有る方は参考にしてください、というだけです。
ちなみに魁スピーカーはすごく単純な構造なので、製作は簡単です。


  これで小難しいシリーズは終了です。
  次回から実践編に戻ります。
  さて、どこから手をつけましょうか?


  (おまけのアイデア)
 この世にダブルバスレフがあるように、ダブルホーンロードは可能でしょうか?
バックロードホーンでは絶対無理ですが、魁方式では少なくとも構造的には可能です。
振動板を後ろのゴム板が振り回し、それをさらに後ろのゴム板が振り回す·····。
暇な時にでも実験してみます。
(いや、サボるかも····。)









高音質の理由③ 箱鳴り対策

2023-02-02 09:27:34 | 日記
 魁1a型は、あくまでもピュアな高音質実現のために、プラスチックとコンクリートの積層ハイブリッド構造を採用しました。
これにより高剛性、重量級のエンクロージャーを実現、不要な共振、箱鳴りを排除することに成功しています。
その効果は一目瞭然、純度の高いクリヤーなサウンドに、あなたは驚かれる事でしょう。

 宣伝文句風に言えば、こんな感じでしょうか。
嘘はついていません。
JAROから誇大広告と言われるかもしれませんが。
でも、これで終わらせては見も蓋もありません。
エンクロージャー(箱)についての、現在の私の所見を述べておこうと思います。

 ユニットをエンクロージャーに納めるのは、もちろん低音再生のためです。
そしてユニットの振動は直接、あるいは空気を経由して必ずエンクロージャーに伝わります。
あなたがどうしても箱鳴りを嫌うのであれば、話は簡単です。
アンプのスイッチを切りましょう。
はい、問題解決!

 冗談はともかく、前述のとうり、音を出せば必ず箱鳴りは発生します。
スピーカーは、録音された電気信号を忠実に空気の振動に変換すべき、という理想論からいうと、箱鳴りは不要な附帯振動ですから、望ましくはありません。
でも、どうしても発生するものならば、うまくコントロールする事が必要になります。
 この方法には2つの考え方があります。
1つ目は箱鳴りを極力抑え込み、目立たなくしていこういう、スピーカーを音楽再生装置と捉える考え方。
そしてもう1つは、箱鳴りが不可避であるならば、うまくチューニングして美しく響かせようという、スピーカーを楽器のように捉える考え方です。
後者の考え方には方程式がありません。
とにかく作り込んで経験を重ねる。
つまり、職人の永年の勘による音作り、という世界になります。
そのような深淵に、私など到底踏み込めません。
そこで私は前者、箱鳴りを目立たなくする方向で考えていきたいと思います。

 まずは最初に、ユニットから直接箱に伝わる場合を考えていこうと思います。
ユニットから箱に伝わる振動は、進行方向に対して振幅が縦方向(前後)に伝わるP波と、横方向(直角)に伝わるS波が存在します。
地震波と同じですね。
音への影響が大きいのはS波の方です。
エンクロージャーの場合、具体的には次のような振動になります。


     (この方向の振動が)   (伝わっていく)

 一般的なイメージの箱鳴りはこれですね。
エンクロージャーの板には弾性があり、特定の周波数で共振します。
S波の特徴は、振動の向きが板の共振と同じ方向だということです。
そのため、板は固有の共振周波数で大きく振動します。
振動板と異なる位相で、大きく振動するのですから、干渉が起きて音が濁ります。
実はこのあたりは微妙で、これが豊かな厚みのある音だと評価される場合もあります。
でも基本的には箱鳴りは有害である場合が多いので、対策がとられます。

 S波箱鳴りへの対策は普通に一般的に行われている事ですので、ここでは簡単に触れておきます。

 ①箱の剛性を上げる
これにより共振への抗性が高まり、共振の波高が下がります。
具体的には、剛性の高い素材を使用する、板を厚くする、構造を工夫する、等が考えられます。

 ②板の重量を増やす
重くすると共振周波数が下がります。
音のエネルギーは低音になるほど大きくなるので、共振周波数が下がれば共振にも大きなエネルギーが必要となり、相対的に箱鳴りが少なくなります。
一般的には剛性の高い素材は重量級になるので、この2つを同時に満たすことになります。

 ③補強を加える
補強すると共振周波数が高くなりますが、剛性を大きく上げたのと同等の効果が得られるので、総合的には箱鳴りを抑えることができます。

 ④内部損失の大きい素材にする
内部損失が大きいと、伝わる振動も減衰、箱鳴りも減ります。
ただし、これを重視して剛性を下げると逆効果となるでしょう

 こう考えてくると、理想のエンクロージャーは高剛性かつ重量級、例えばコンクリートで固めた箱だ!
とかなりそうです。
でも実際に製作した例では、あまり芳しくはないようです。
私も「理想スピーカー」では期待外れに終わりました。
なぜそうなるのでしょうか?
これには2つの理由が考えられます。

 1つ目の理由はもう1つの箱鳴り、P波箱鳴りです。
P波は、S波とは異なる特徴があります。 

 ①P波は反射する


 ②(同質の素材であれば)P波は接合部を透過する


 P波では共振は起きません。
そのため、音圧は低いです。
でも、P波はエンクロージャーをぐるりと回り、様々な周波数で混ざり合って干渉、共鳴してユニットのフレームを揺らします。
実態としては、P波は箱鳴りというよりも、ノイズと言った方が適切でしょう。

 では、このP波ノイズを防ぐ対策を考えます。

 ①内部損失の大きい素材を使用する
これは極めて大きな効果を発揮するでしょう。
例えばダンボールでエンクロージャーを作れば、P波ノイズはほとんど無視できます。
ただし、剛性が低いのでS波箱鳴りには不利です。
いや、それ以前に低音再生そのものに不利ですが。

 ②板を薄くする
板が厚いと、多くのP波が反射して ''生き残り'' ます。
薄いと、ほぼ直進のP波しか残らないので、大きくP波を減じる事ができます。
(3次元に拡がるP波を、2次元に狭める。)

 これくらいしか思い付きません。
では、逆にP波ノイズに不利なエンクロージャーは、どのような箱でしょうか?
そうです、すぐに思い付きますね。
コンクリートで固めた肉厚、重量級の箱です。
この箱では板の共振は起こりませんが、盛大なP波ノイズがユニットを揺らすでしょう。

 そして2つ目の理由です。
こちらの方がむしろ大きな問題でしょう。
ユニットの振動板は、当然ながら箱内に音を放射します。
コンクリート等の硬く、重い素材は、音のエネルギーを吸収せず、そのまま反射します。
コンクリートは内部損失だけでなく、外部損失(?)も少ないのです。
大きなエネルギーを持ったままの反射音は、そのまま盛大な箱内定在波を生みます。

 では、次にユニットから空気を経由して伝わる箱鳴りを考えてみます。
実は、ユニットから直接伝わるS波箱鳴りはバッフル面(ユニットの取り付け面)のみで、そこから先は振動の向きが変わるので、P波として伝わります。
つまり、バッフル面以外の上下左右、裏板のS波箱鳴りは全て空気振動から伝わります。
そして音圧は全ての板に均等に伝わります。
ということは、S波箱鳴りには振動の焦点、節があるという事になります。
具体的には、板の中心点が最も大きく振動する、ということです。

 次に、P波も空気を介して伝わるでしょうか?
アパートの、部屋の間の壁をイメージしてください。
安普請、薄く軽い木材の壁だったとします。
隣室の物音がよく聞こえますね。
板が軽く薄いという事は剛性が低いということであり、板は音のエネルギーに抗する事無く簡単に振動します。
つまり、隣室の音が壁全体を震わせ、特定の周波数では共振して(S波箱鳴り)伝わってくるのです。
では次に、壁が硬い材料だったとしましょう。
隣室の物音は壁で反射、こちらにはあまり洩れません。
遮音性が高い壁と言えます。
では、壁に耳を付けて聞き耳を立ててください。
意外と明瞭に隣室の話し声が聴こえると思います。
実際には、壁の表面に壁紙などの(内部損失の大きな)仕上げ材が貼られるので、聞こえにくくなりますが。
 これらの事から、空気振動が壁の中を伝わっていると考えられます。
振動レベルが低く、壁は音を発しませんが、耳を付けると聞こえます。
そうです。
音は空気を介して板に伝わり、P波として板の中を走るのです。
結論です。
スピーカーユニットが音楽を再生する限り、必ず箱でP波ノイズが発生します。
ならば箱のP波ノイズをいかにユニットに伝えないか、それが重要となります。
P波ノイズ対策を、真剣に考えるべきと思います。

 それでは、エンクロージャーを設計するに当たって、どのような方向で考えれば良いでしょうか。
まず、P波ノイズ対策のため、箱の素材は内部損失が大きい(柔らかい)木材等を使用すべきだと思います。
でも、内部損失の大きな素材を使用すれば、S波箱鳴りには不利となります。
当然その対策として、補強を加えることになります。
ごく普通に行われている、一般的な方法ですね。
 参考までにですが、私おすすめの補強方法があります。
一般的な形(四角形)のエンクロージャーの場合、反対面の板、例えば上板と下板は相似形状です。
ということは、同じ周波数で共振します。
そしてその位相は逆相です。
上板が上に動くとき、下板は下に動きます。
ならば、上板と下板の焦点、中心部を補強材でつないでしまえば良いのです。
お互い反対側に動こうとするので、振動が相殺されます。
これは左右面でも同様です。
前後面では条件が変わりますが、これも有効だと思います。
そして補強材には剛性が要求されます。
P波ノイズを考えると、薄い鉄板などが良いでしょう。
と思いましたが、あまり太くないボルト等がもっと良いですね。
もしこの考え方でエンクロージャーを作るのであれば、ユニットは箱の中央に取り付けるべきでしょう。
端に取り付けると、板の共振が相似でなくなり、箱鳴りが増えると思います。

 そしてP波ノイズ対策として有効な手がもう一つあります。
箱のP波ノイズを、物理的にユニットに伝えなければ良いのです。
フローティング構造とでもいうのでしょうか。
例えばユニットを板に直接取り付けず、間に厚い吸音材を挟み込む、などの方法です。
こうすればP波ノイズの悪影響が大きく減るでしょう。
ならば、次のような考え方が浮かびます。
フローティング構造でP波対策が出来るのならば、箱の方はS波対策に専念すれば良い。
そうすれば二兎を得られるじゃないか。
 おそらく間違ってはいないと思います。
でも、かなりの困難が予想されます。
P波対策まで考えた軽量箱の場合、箱鳴りは主に板の共振です。
定在波もあるでしょうが、まずは板の共振対策に頭を悩ますことになります。
つまり真っ先に必要なのは、箱の補強です。
でも、コンクリート等の重量箱の場合、箱鳴りはほとんど箱内定在波です。
S波箱鳴り無し、P波ノイズも遮断。
でも残るのが、定在波対策という厄介な問題です。
もし重量箱に挑戦するというのなら、箱を四角形にしないことを私はおすすめします。
上下、左右など正対面の壁がなければ定在波は減少します。
ただし、減少はしますが無くなる訳ではありません。
対策として、吸音材を使用する必要があるでしょう。
どこで妥協するか、細かいチューニングが必要になると思います。
高難易度は間違いなさそうですね。
 なお、四角形にしない方法は、軽量箱にはあまり効果が期待できません。
軽量箱の主な箱鳴りは、板の共振なのですから当然そうなります。

 今回の私の論考の結論は簡単です。
皆さんが普通に行われている、王道箱作りは合理的で正しい、と確認しただけです。
特に新しいアイデアがあった訳でもありません。
ただ、エンクロージャーに対する自分の考え方を整理、確認するために書いてみました。
今後何かアイデアが浮かべば記事に上げるかもしれませんが、現在ではこんなところです。

 では最後に、私の魁スピーカーです。
実は魁1a型を製作した時点では、まだP波ノイズという考察にはたどり着いてはいませんでした。
そのため、箱は剛性が高く、重量級の方が良いと単純に考えて、プラスチックとコンクリートで製作しました。
それでもあまり問題にならなかったのは、箱が極めて小さい(半球状なのでP波ノイズが後ろに回り込まず、縁で反射して折り返す。)ので、あまり共鳴しなかったのだろうと考えています。
 その後、一応のP波ノイズ対策として、セミ・フローティング構造を取り入れました。
具体的には、ユニットと箱の間にゴムパイプを挟んで、ビスで止めています。
ビス止めなので完全ではありませんが、P波ノイズをそれなりには防いでくれていると思います。
 現在構想中の、次のスピーカーでは本格的なP波ノイズ対策を取り入れます。
木製、完全なフル・フローティング構造、バッフルスカートなどが採用される予定です。
100円ショップから外れそうなのが······。

  小難しい話が続いて、申し訳ありません。
  あと一回で終了予定です。
  次回  魁スピーカーの低音増強について


 (おまけのアイデア)
 先日、ぶらタモリ(宇都宮編、再放送)を見ていたら、特産品として 大谷石(おおやいし)が紹介されていました。
気泡を大量に含むのが特徴で、加工性、断熱性に優れています。
音響特性にも優れていて、音楽ホールに採用されているそうです。
これはいい、エンクロージャーに使えないか?
と考えて、閃きました。
発泡コンクリートです。
ALCと呼ばれ、主に外壁材として使われます。
実際に手にした訳ではないので、あくまでも予想ですが、高剛性で内部損失が大きく、音の反射も少ないという理想に近い特性なのではと思います。
唯一の欠点は、軽量な事でしょうか。
水に浮くそうです。
将来製作するエンクロージャー素材の有力候補です。






高音質の理由② 吸音材の不使用

2023-01-09 10:07:58 | 日記
 吸音材を使うと音が死ぬので、使用は最小限にとどめる。

 これは教科書に載っている、スピーカー自作の常識です。
音を悪くするのになぜ使用するのかというと、箱内定在波対策です。
定在波がユニット振動板に悪影響を与え、不要な癖となるのを防ぐために使われます。
でも、悪を悪で制するという形ですので、あまりよろしくはありません。
そのため、どこでバランスをとるか、聴き込んでの調整が必要となります。

 さて、ではなぜ吸音材を使用すると音が死ぬのでしょうか?
ただ音を吸収する材料を入れただけなのに。
 実はここに落とし穴があります。
皆さんは吸音材は音を吸って、無くしてしまうと思っていませんか?
そんな訳ありません。
有が無になるはずがない。
音、つまり空気の振動が吸音材の振動に変換され、最終的には熱エネルギーに置換される。
間違ってはいません。
しかし、音が死ぬ理由の説明にはなっていない。

 密閉型エンクロージャーを想像してみてください。
まずは吸音材無しの場合です。
コーンが振動すると空気バネが働きます。
コーンの動きはスムーズで滑らか。
抵抗なくリニアに動きます。
例えるなら、中身のない(空気だけの)エアクッションです。
指で押すと軽くスッと指が入り、抜くときもスムーズに指の動きに追随してきます。
 これに対して吸音材入りの箱の場合は、一般的な綿入りのクッションとなります。
指で押すには力が必要ですし、抜いてもすぐには戻ってきません。
綿はフリクションが極めて大きいのです。

 この差はどこから生まれるのでしょうか?
エアクッションでバネの働きをするのは、空気の分子です。
極めて質量が小さいので、簡単に、自在に動きます。
 綿クッションの場合、バネの働きをするのは空気を含んだ繊維の束、ということになります。
 綿の繊維自体(一本一本)にはバネのような弾性があり、自由振動すると思います。
しかし、綿の繊維は複雑に絡み合っています。
つまり、向きが揃っていないのです。
そのため、ある繊維が振動の入力にバネのように反発しようとしても、他の繊維が邪魔をします。
綿はどの方向からの入力に対してもフリクションが大きく、自由振動できない素材なのです。
 吸音材が音のエネルギーを減衰させるという性質は、このフリクションの大きさに由来します。
繊維内の空気に振動が伝わってきても、繊維が抵抗、エネルギーが減衰するのです。
もしフリクションを減らそうと、繊維の向きを揃えるとすれば、綿ではなく、綿(めん)の布地ということになります。
フリクションと同時に、吸音性能も一気に落ちます。

 では、振動板(コーン)から見ると、綿(吸音材)はどういう存在でしょうか?
実は、そのフリクションの大きさが極めて厄介な存在となります。
指で押したときと同様です。
コーンが空気を押しても抵抗が大きく、引いても戻ってこないのです。
間違いなく音に悪影響が出ると考えられます
特に尖ったパルス音への影響が大きく、鮮度を失ったような平板な音になるでしょう。
これを防ごうと思ったら、教科書どうり、吸音材の使用は最小限にするべきです。


 吸音材は、一般的には箱の内側に薄く貼り付ける、という使い方が多いようです。
私はこの方法は、メリットが少ないのではないかと考えています。
というのも、薄い吸音材は高音域には有効でも低音域にはほとんど効果がありません。
低音は吸音材を透過して普通に壁で反射、ユニットの放射音と干渉して定在波を発生させます。
低い周波数の反射音は、定在波発生周波数以下だから問題なし?
そんな訳ありません。
反射波の周波数が低くとも、高次の共振周波数では共振するのです。
つまり、薄く吸音材を貼っても定在波は発生します。
薄い吸音材は、定在波抑制効果もまた薄いのです。

 話を戻します。
吸音材の使用を最小限にする、という事は吸音材以外の空気の容積が増えるという事になります。
つまり箱全体、トータルでフリクションを減らした方が音が良い、と言えます
 フリクションを減らす方が良い、となるともう一つ別の方法が考えられます。
フリクションの少ない吸音材を使えば良いのです。
吸音材の繊維を、極力細くすればフリクションは減ります。
具体的なイメージとしては、ごく軽く、ふわっふわの最高級ダウンでしょうか。
これだと軽く動き、レスポンスも上々となります。
 ただし、フリクション低下と合わせて(容積あたりの)吸音性能も低下します。
ですが、これは無視して構わないと思っています。
箱の内側に貼り付ける、という一般的な吸音材の使い方の場合、既に発生した定在波を吸音するという消極的な意味しかありません。
しかし最高級ダウンだと音質劣化が少ないので、箱全体に充填できます。
つまり定在波の発生そのものを抑制できるのです。

 最高級ダウンは吸音性能が劣るので、高音域には有効でも、中音域の定在波には効果がない。
そのとうりです。
でも、あまり意味がありません。
中音域の定在波に対処しようとすると、通常の(重い)吸音材を厚く貼る必要があります。
もちろんそんな事をすれば、完全に音が死んでしまいます。
つまり一般的な吸音材であっても、高音域の定在波にしか対応していないのです。
差はなく、変わりません。

 結論として、吸音材は最高級ダウンのような極軽量なものを使用するのがベスト、となります。
そして吸音材は箱の内側に貼り付けるのではなく、音のエネルギーが集まる焦点に設置するのがベターだと考えます。
具体的には、箱の中央に吊り下げるという方法です。
これで定在波の発生自体を抑制するのです。


 随分遠回りしましたが、定在波が実用的には(ほぼ)存在しない魁スピーカーは、この厄介な吸音材を使用する必要がありません。
これは大きなメリットです。
鮮度の高い、生々しい音が出る理由がこれだろうと思っています。
 

  (おまけのアイデア①)
 誰も試した事がないであろう吸音材を思い付きました。
スチールウールです。
吸音性能は高いだろうと予想していますが、その分の少量使用で効果大となるでしょうか?
実験してみます。

  (おまけのアイデア②)
 こちらはもっと突飛?
箱の中央に、窒素ガス等を封入した風船を置く、というのはどうでしょう。
空気と同じく収縮しますので、低音では普通に空気バネとして作用します。
でも、中高音は密度が違うので屈折、反射、内容積を小さくしたのと同様の効果が得られる······。
まあ、妄想の可能性の方が高そうですね。