On The Bluffー横浜山手居留地ものがたり

山手外国人居留地(ブラフ)に生きた人々の「ある一日」の物語を毎月一話お届けします。

■山手ゲーテ座(1885-1923年) ~プール嬢のアルバムから

2024-01-31 | ブラフ・アルバム

今回は番外編としてイギリス在住のメイトランド氏から提供頂いたエリノア・プール嬢のアルバムから、1890年代から1904年にかけてゲーテ座で上演されたアマチュア演劇と演奏会の写真をご紹介します。

メイトランド氏はエリノアとその夫、イギリス人N. G. メイトランドのご子孫です。

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エリノア・プールは茶の輸入商社に勤める父オーティス・オーガスト・プールの長女としてアメリカのシカゴに生まれました。

父が横浜の製茶貿易会社スミス・ベーカー商会に招かれ一家で日本に移住することを決めたため、1888(明治21)年4月、9歳の時に両親と兄ハーバート、弟チェスターと共に来日しました。

一家はブラフ(山手町)89番地Aに居住します。

プール家は社交的で家族ひとりひとりが文化的な生活を大切にしていました。

父オーティスは太平洋を汽船で82回横断するほど仕事で多忙だったようですが、アマチュア写真家として有名な人物でした。

母エリノアはピアノが上手で、横浜文芸協会や横浜コーラス協会の会員でした。

兄ハーバートもアマチュアのヴァイオリン奏者で、東京音楽学校教師ユンケルとたびたび共演しています。

弟のチェスターは水泳やテニスなどのスポーツに堪能でした。

エリノアも母と同じくピアノの演奏に優れ、さまざまな音楽イベントでその腕前を披露しています。

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エリノアのアルバムには、彼女が横浜で過ごした青春時代の出来事の数々が記録されています。

ブラフやバンドで催されたパーティー、演奏会など様々な催し、親しい友人たちとのピクニック、鎌倉や江ノ島、富岡(現 横浜市金沢区)などへの遠足、箱根への旅行などなど。

今回はそれらの中からゲーテ座に関する写真をいくつかご紹介したいと思います。

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エリノアは17歳で横浜の欧米人の社交界にデビューし、25歳で結婚するまでの間に何度かゲーテ座で上演されたアマチュア演劇に出演しました。

一番初めに出演したのは、王女会が主催した1896年11月25日の文学カーニバルで17歳の時でした。

このプログラムはいくつかの寸劇から成っており、同年代の少女たちが多数出演しています。

彼女はミス・クーンと共に屋台のキャンディ売りの役を務めました。

次いで1898年12月6日に上演された「治安判事」では、ヒロインであるポスケット夫人の妹役を、翌年1899年4月7日の「三人の母」では、ヒロインの娘たちのひとりとして出演しています。

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1901年5月22日に上演された、中国の宮廷を舞台にしたコミック・オペラ「サン・トイ」に、エリノアは皇帝の側室のひとりとして出演しました。

この時には将来の夫となるN. G. メイトランドがヒロインの相手役で共演しています。

 

こちらは「サン・トイ」の舞台セットです。

 

「サン・トイ」の出演者一同。

エリノア(右端)が洋装していることから、ゲーテ座での公演に先立って行われたモリソン邸での上演の際に撮影されたものと思われます。

 

中国服に身を包んでポーズをとるエリノア。

「サン・トイ」についてはこのブログのほかの記事でもご紹介しているのでそちらもご参照ください。

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こちらの写真については演目を特定中ですが、男性陣の一部が顔を黒く塗っているのが特徴的です。

中央左寄りの白い衣装の女性がエリノアと思われます。

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この写真についても演目が分かっていません。

中央の椅子に座る王様の左に立つ人物がN. G. メイトランド、その隣がエリノアと思われます。

トップの写真も同じ時に撮影されたものです。

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兄ハーバートはゲーテ座での演奏会にたびたび出演しています。

 

この写真がいつの演奏会かのものかは特定中ですが、中央左寄りにヴァイオリンを手にしたハーバートが写っています。

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手の込んだ舞台衣装やセット、そして観客たちの華やかなファッションからは、当時の横浜の外国人コミュニティの豊かで華やかな暮らしの様子が覗われます。

 

図版:
・すべてアントニー・メイトランド氏所蔵

参考資料:
The Japan Weekly Mail, Nov. 28, 1896
The Japan Weekly Mail, Dec. 10,1898
The Japan Weekly Mail, Apr. 15, 1899
The Japan Weekly Mail, May 25, 1901

 

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