4都府県に緊急事態宣言が出されました。大阪の入院待機患者数をテレビで見て驚きました。さらに入院せずに亡くなった人も少なくありませんでした。入院する病院が見つからずに救急車内で夜を越した患者さんもいるそうです。
先日、重症化が進むコロナ患者を高次病院に転院要請した先生から聞いた話です。80代の患者さんでしたが、転院を断れられました。そのお断りの理由として、「70歳以上は気管挿管処置(人工呼吸管理、すなわち重症治療)はしません。ですから、転院してもらっても、貴院以上の治療はしないので、転院してもらう理由がありません。」と言われたそうでした。
年齢で断られたのでした。そして、70歳以上には挿管処置をしない、と方針が決まっていると。
ちなみに、大阪府での話ではありません。緊急事態宣言もまん延防止措置もされていない県での話です。70歳以上は挿管処置をしない、ということがひそかに県の方針として決まっているとのことでした。
70歳以上は気管挿管処置をしない。人工呼吸器をつけない。そして年齢の若い人に人工呼吸器を譲る。
これは、昨年パンデミックのイタリアであった話で、そのことはテレビ等でも大きく報じられていたので、憶えている人も多いのではないでしょうか。
私は、イタリアのこの報道は忘れられません。年齢で治療を区切らないといけなくなるかも、ということがとても恐怖でした。その病気が日本で広がらないでくれ、と医療者として強く願った、最も大きな理由でした。
ところが、ひそかにすでに自分の周りにその世界がやってきていたとは、、、その話を聞いて、愕然としました。
イタリアのことはあんなに大きく報じていたマスメディアも、イタリアの時のように報じているでしょうか?本来なら、自分の国のことですから、さらに大きく報じていても不思議がないと思うのですが、そんな差し迫ったニュースに触れた記憶は私にはありません。
きっと、イタリアの時のように差し迫って報じられない理由は、死者数がイタリアに比べて少ないからでしょう。あれほどの感染者や死者数になってはおらず、すぐ身近に悲劇の人が普通にいて悲しんでいる、という状況ではないからだと思います。コロナ患者はまだまだ一部で、運が悪かった感染者の話、という報道スタンスや政治スタンスなのでは、と思います。
だからこそ、深く考えてみてもらいたいと思います。
日本は今、感染者数が欧米に比べてはるかに少ないのに、この感染者数ですでに、「70歳以上は気管挿管処置(人工呼吸管理、すなわち重症治療)はしません。」という方針がまかり通っているのです。その方針で亡くなっていく人がすでにいるのです。
こんなことなら、医療機関が力を尽くして戦った上で、力尽きて、涙を流しながら「70歳以上は気管挿管処置(人工呼吸管理、すなわち重症治療)はしません。」と言ったイタリアの医療機関の方が、医療機関としては筋が通っているように思えてしまいます。日本の医療機関は、誰を助けて、誰の役に立ちたいと思っていて、どこへ向かおうとしているのでしょうか。
続けるつもりです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます