NHKスペシャル「病の起源」第5集は糖尿病。例によってとっても「へぇー」って思うことが多かった番組でした。
糖尿病というのは、血液中の糖の濃度(血糖値)が病的に濃くなってしまう病気。血糖値が高くなると、いろんな不都合を引き起こします。毛細血管の壁を糖が壊してしまって出血、血管外に出た血が固まって、血管がつまってしまい、比較的心臓から遠くて血液が届きにくい足の先とか網膜とか腎臓とかが機能不全を起こしてしまうって。
最悪、足が壊疽を起こして切断しなくてはいけなくなったり、失明したり、腎臓病になって人工透析が必要になったりしてしまうとか。
おそろしい;
なんで血液中の糖の濃度が濃くなってしまうのか。
人間の細胞は、すい臓から分泌されるインスリンというものの働きかけにより、血液中にある糖を受け入れる入口を開きます。
インスリン、理科で習いましたね!
すい臓のランゲルハンス島っていうのが分泌するんですぜ。
細胞の糖吸収口が開くと血液中の糖が細胞に取り込まれていきます。
うち、筋肉がエネルギーとして使う分は使い、余ったのは脂肪細胞が取り込んで
蓄えるわけですな。
でも、飯を食べ過ぎて、運動もしないでエネルギーとしても消費しないでいると、
脂肪細胞が糖を蓄えすぎて、「もうお腹いっぱいです」ってなります。
そうなると、脂肪細胞が血液中の糖を取り込み切れなくなるから、血糖値が高く
なってしまう。肥満が糖尿病に直結するというのはそういうメカニズムによるものなのだそうです。
なるほどねぇ。
このシリーズのミソは、こういう病気は人類の生物学的な進化が、科学技術文明の
進化のスピードについてこられなくて起こるんですよ、というところをテーマにしてる点でございます。
太古の人類は、狩猟と採集の生活で、すっげー運動して獲物を追っかけまわしても
必ずしも獲物にありつけるとは限らなかったから、肥満とか無縁だったんですぞ。
が、「農耕と牧畜」が発明されると、人は、安定的に食糧を得ることができるようになり、食べたいときに好きなだけ食べられる生活を手に入れることになりました。
肥満の始まり。
現代社会では、豊かな国の人たちは、うまいもの食べまくり。うまいからといってあまりにも食べまくりすぎると、薬物中毒患者と同じで、とにかく食べなきゃ気がすまなくなる脳みそになってしまうとか。食べすぎ注意!
まぁ、ここまではわかりやすいですよね。
「へぇー」と思わされるのはこっからですよ!
日本人は、標準体型でも糖尿病になる人が多いそうです。
実際、イギリス人、アメリカ人の糖尿病患者の平均は肥満レベルなんですが、日本人の平均は標準体重レベルのちょい上の方くらいなんだとか。
なんで;
アフリカを出て、欧州に行った人々は、気温が低くて農業に適さない地が多かったから、牧畜中心の生活になりました。牛を飼って、肉を食べまくる生活になった。
で、肉は、細胞の糖吸収の入口を狭める働きをするものが含まれてるそうで。
でも吸収しなきゃいけないから、細胞が糖を吸収する入口を大きく開けるために、
すい臓が発達して、インスリンを大量生産できる身体になりました。
インスリンたっぷりだと、脂肪細胞もガンガン糖を蓄えられるから、肥満になりやすいわけですが、肥満で済んでるうちは血液中の糖は脂肪細胞が取り込むから、血糖値は標準に保つことができます。
現代の欧米人は、そういう生活を何千年も続けてきて生き残った人々の子孫です!
だって。
一方日本人は、明治になるまで肉を全然食べてきませんでした。
だから、インスリンを生産する能力も、何千年に渡り鍛えられてきた欧米人とは違って貧弱。
しかし、今や日本人が肉や脂肪分を食べる量は欧米並。
欧米人が何千年も前に直面した肉食への身体の適応がスタート地点。
だから日本人は、たくさん肉を食べるようになったくせに、脂肪細胞が糖を取り込める量が少ないから、その取り込めない分が血液中に余って、標準体重でも血糖値が高くなるんだそうな。
輸送手段が発達して、食生活が変化して起こる現代病の例。
以前もこの番組で、似たような例が紹介されていたのを思い出しました。
極地付近で、日光が少ないところに住んでるのに肌の色が割りと濃い、イヌイットの人たち。
紫外線が少ないのに肌の色が濃いと、日光を浴びてビタミンなんとかを作り出すのに支障が。なのに大丈夫だったのは、イヌイットの人たちは、古来、アザラシとか魚とか鯨とか?を生で食べる食文化があり、それらにはビタミンなんとかがいっぱい含まれているからだったんです。
が、今は欧米流のスーパーマーケットで、いろんな食べ物を買えるようになり、伝統の食文化も廃れて、結果、ビタミン欠乏症が増えてると。
豊かな生活もいいことばかりではないなあと。
自然の中で生きるっていうのは、全てに理があったんだなあと思うじゃんね。
で、もうひとつ「へー」って思ったことが。
お母さんの話ですよ。
第二次世界大戦中のオランダで、食糧難で妊娠中の方々が十分な栄養を取ることが
できない中で、たくさんの未熟児が生まれました。
そういう未熟児の人たちは、胎内で、外界の様子を敏感に感じとって、「生まれても栄養が少ないから、省エネモードで生まれよう!」という身体のスイッチをONにしてしまうそうです。
省エネモードとは、インスリンを少なくしか作らないようにして、細胞があんまり糖を必要としないようにするんだっけ? <記憶曖昧;
ともかく省エネモードのスイッチが入ると、血液中の糖を細胞が取り込みにくくなるので、高血糖になりやすい体質になります。
が、戦争が終わって、食糧事情が改善すると、想定以上の食べ物が食べられる生活に。
高血糖になりやすい体質で生まれたので普通に食べてても血液中の糖は多くなり気味、糖尿病が増えたって。
同じ理屈で、今の日本人の赤ちゃんも、高血糖になりやすい体質で生まれる割合が
増加中だとか。別に食糧難でもないのにスイッチが入るんだって。
なんでか?
多くの若い女性がやせたい願望で、なるべく食べない。
妊婦さんになっても、太るのは嫌だから食べない。
要するにそういうことだと。
病院が妊婦さんに、生まれてくるお子さんが糖尿病体質になってしまうから、生まれてくるお子さんのために!10kg太るくらいを目標に十分な栄養を摂取してくださいと指導している様子が紹介されていました。
みんな真剣な表情でね、受講後は、「太るのは嫌だと思ってたけど、今は生まれてくる子のためにたくさん食べなきゃ、という気持ちです」だって。
そうしてください;
子どもを産むのってたいへんなんだな;
と思った。
食べ物は本来、生きるために食べるものだったのですが、今は生きるためは勿論ですが、それよりも欲望の赴くままに!みたいな生活になりましたね。それってどうなん?だって。
そうですよ、アリカさんも言ってるでしょ。生きることは食べること。人生美味礼賛。
・・・全然違うじゃん(笑)
最後に、糖尿病にならないためには。
運動すること!
食べても運動して筋肉が血液中の糖をエネルギーに変えて消費してれば無問題。
また、筋肉が大きくなれば、動かしたりパワーを出したりするのに必要な血糖の消費量も増えるから一石二鳥!
だそうですよ。
というわけでみんな野球しようぜ!
んじゃまた。