NHKスペシャル。「100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪の謎~」。
面白かったです!常人には全く縁のない数学の世界、遠い遠い世界なもんで妙に神秘的であこがれちゃいますよね。
番組の説明がとても判りやすかったんですよ。その上で数学者の数奇なヒューマン・ドラマが織り交ぜられて。ハッピーエンドではなかったけれど、妙に強い印象で、記憶に残りそうな番組でした。
番組の受け売りですが、簡単に説明します。
「ポアンカレ予想」とは、1904年に、フランスのポアンカレという数学者によって提出された予想です。ポアンカレは、レオナルド・ダ・ヴィンチや、ニュートンと並び「知の巨人」と言われた人物とか。(その割にはダ・ヴィンチやニュートンの方がだいぶ有名だな)
この「ポアンカレ予想」は、21世紀になって、ロシアの数学者グレゴリー・ペレリマンが証明するまで、ほぼ100年に渡って未解決でした。
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相と言えるか?」。
意味が判りません。
簡単にいうと、こういうことだそうです。
長ーい紐をお尻に括りつけたロケットを宇宙に向け打ち上げます。紐のもう一方の端は地球で持っておきます。ロケットは宇宙の三次元空間を自由自在に飛び続けてもらいます。そうして帰ってきたロケットの紐の端を引っ張って回収します。
このとき、どんな場合でも、そのロープがどこにも引っ掛からずに全部回収できたら、宇宙の形はだいたい丸いといえるのでは?
というのが「ポアンカレ予想」です。
逆に、どこかに引っ掛かって引っ張っても回収できないときがあったら、宇宙はドーナツのような形かも知れません。
ポアンカレ自身は、宇宙のような捉えどころのない形を考える問題を解決するのに、従来のようなユークリッド幾何学では難しい、全く違った発想が必要だと考えました。
この、「だいたい丸い」とか「ドーナツのような」とかいう形を考える数学で、「位相幾何学」という比較的新しい幾何学の分野ができました。位相幾何学。英訳すると「トポロジー」。
トポロジーでは、お皿とスプーンは同じ形です。ティーカップとドーナツは同じ形です。つまり、引っ張ったり縮めたりして粘土のように形を変えていくと同じ形になるかどうかが重要なんだそうですよ。
ポアンカレ自身は、ポアンカレ予想を証明することはできませんでした。で、これを証明するのに、たくさんの数学者が人生を狂わせながら挑んでは失敗し、挫折し、結局100年かかったということなんですね。
番組の主役は、これを証明したペレリマンです!この業績により、2006年のフィールズ賞を受賞しました。が、本人は受賞を辞退し、行方をくらましてしまっています。幼少の頃から数学の天才。いつも笑顔な明るい人だったそうですが、ポアンカレ予想の証明にはまって以来は、人が変わってしまった・・・なぜ?
ポアンカレ予想に挑んで失敗したある博士の言葉が印象に残りました。その博士を泥沼から救ったのは、家族のある言葉でした。
「お父さんは今ポアンカレ病にかかってるわ!ウヒャヒャ( ・∀・)」
「今は話もできんね~」
その博士は、「こうやって茶化してもらわず、『お父さんの研究は人類史上とても重要なことなんだ!』とか言われていたら最悪だった。家族は本気で自分を『日常の世界』へ連れ戻してくれた」
って。その家族愛に妙に感心させられたなぁ。
ポアンカレ予想証明への挑戦過程で生まれたウイリアム・サーストン博士の予想もすごかった。「サーストンの幾何化予想」というそうです。(1982年)
「どんな空間も最大8種類の基本形の組合せで構成されるだろう」。
わからん;
どんな三次元空間も、球形、ドーナツ型、変な形その1・・・というような8つの基本の形の断片が繋がりあってできている、逆にいえば、どんな三次元空間も必ず最大8種類の要素に分解できると。
宇宙空間が球形以外の要素が1つでもある形だったら、ポアンカレの紐は回収できません。つまり、サーストンの幾何化予想(どんな空間も8種類の組合せ)が証明できれば、紐が回収できれば必ず球形である、ということが言えます。
どうしても解けないポアンカレ予想の解法の有力な手がかり、アプローチ方法になるんですね。
サーストン自身は、自分の予想を証明することはできませんでした。「行き詰ったからなんか別のことに挑戦したくなった!」んだって(笑)
が、この予想を提出した業績でやはりフィールズ賞を受賞しています。
番組を通して感じたのは、数学者って変人なんだけど、面白い人が多いな、すげぇ情熱を持ってる熱い人が多いなと。なんだかスポーツ選手に通じるものがあるではないですか。はっきりいってカッコイイです。
面白そうでしょ!
見逃した方は再放送を待ちましょう。