劇場いってきました!感想を書いておこうと思います。
例によってネタバレありなのでネタバレが困る人はここから先は見てはいけません。
わかりましたか!
でははじまりはじまり~
「燃えよ剣」はご存じですか?土方歳三を主人公にした司馬遼太郎原作の小説です。
私は司馬遼太郎は唯一ファンといってもいい作家で、主な著作はほぼ全部読んでいると思います。
特に好きなのが「坂の上の雲」。次点は月並みですがやっぱり「竜馬がゆく」ですかねー。
この「燃えよ剣」も、何度も読み返すくらいには好きです。
幕末って流れを理解するのはけっこう難しいと思うのですが、そのとっかかりになったのは司馬さんの小説でした。
「最後の将軍」は徳川慶喜、「花神」は大村益次郎、「世に棲む日日」は高杉晋作、「峠」は河井継之助・・
ほか短編で、「王城の護衛者」(松平容保)、「人斬り以蔵」(岡田以蔵)、「酔って候」(四賢候)とかでしょうか。
で、司馬さんのおかげでこのあたりの歴史に興味をもって。
私くらいの世代だと、年末に「大型時代劇」って、民放で激アツな幕末ドラマをやってました。
代表的なのが日テレ系列のやつ。「白虎隊」「奇兵隊」「田原坂」とかや!
「奇兵隊」がよかったなぁ。周布政之助(津川雅彦)の最期とか超激アツだったよ
「五稜郭」では渡哲也の土方歳三が、宮古湾海戦で!アボルダージや!ガトリング砲を乱射や!
ってね、まぁかっこよかったですねぇ。
NHK大河ドラマは幕末を扱うと視聴率が低迷するジンクスみたいなのもありつつもおもしろい作品があります。
いちばん好きなのは福山の「龍馬伝」。次点はやっぱり司馬原作の「翔ぶが如く」!
モックンの「徳川慶喜」は架空人物が多くてイマイチ。
三谷幸喜脚本の「新選組!」は評価が分かれるようですが私は否定派。最後までみましたがチャラすぎてダメ。
会津を描いた「八重の桜」はまぁまぁだったかな。八重桜の松平肥後守は誰でしたっけ、あのひとはよかったですねぇ。
「花燃ゆ」はクソすぎて論外。
司馬さんは随筆もおもしろくて。「街道をゆく」とか「この国のかたち」とかですかね。
司馬さんの本を読んでいると、司馬しか勝たん、みたいな感じになって、他の本を読まなくなるっていうのが弊害だと思います。
それくらいはまりました。
前置きが長くなりましたが、その「燃えよ剣」の映画化。
岡田准一は大河ドラマ「軍師官兵衛」とか、戦争映画にも何本か出てましたっけね、ジャニーズですが存在感のある役者だ。
これは観にいかねば!という感じ。
が、同じく岡田准一主演で、たぶん監督も同じ「関ケ原」が正直かなりイマイチだったので、半信半疑でいきました。
・・・
感想は、「思っていたよりもよくできてた!」
少なくとも、「関ケ原」のときの残念感はぜんぜんありませんでした。そこはよかった。
一部除いて役者もいいし、殺陣もすごいし、血もすごいし、おっぱいも辞さない(そこか
てか、これ地上波放送できるんですかねこれ
殺陣といえば、「るろうに剣心」のアクションが記憶に新しいですが、あれをもっとリアルにしたらこんな感じか!
っていうくらいにはすごかった!
時代が剣から銃になって、銃弾が飛び交う戦場も、「主観アングル」っていうんですかね、実際に戦場に放り込まれたらこんなか!
っていうのに近い感覚になるくらいにはすごい。
内容も硬派で、かなりの幕末歴史オタでないとついていけない(そうでないひとはおいてけぼり)テンポとセリフまわし。
登場人物も「この人は〇〇です」みたいなテロップとか説明とかも一切ないので、キャストがわかってない人物は、いつのどんなシーンかとか、
セリフとかで「この人は〇〇か」って類推しながら観ることになる(いろいろ知ってればだいたい「この人は〇〇役だな」っていうのはわかる)。
この手の邦画にありがちな「チープさ」は全く感じられなかったので、その意味での満足感は高かったです。
ただ、芹沢鴨粛清から池田屋くらいまではなかなか丁寧でおもしろく見れてたけど、そこから以降は駆け足過ぎ。
残りの尺で「燃えよ剣」の流れをおさえることにいっぱいいっぱいになってしまった感じ。
山南の切腹とか、伊東甲子太郎の暗殺とか、近藤との別れとか、鳥羽伏見~箱館戦争までの一連の戦いとか・・
見どころ描きどころはいっぱいあったはずなのですが、そのひとつひとつをポンポンと雑に流して終わった感がありました。
前編後編に分けて、前編を池田屋くらいまでにして、後編もその調子で、大鳥圭介とかもちゃんと出して、丁寧に描いてもよかったのでは・・とは思った。
それからもうひとつあるとしたら、「映画」をみたときにあるとうれしいことが、この映画は全然なかったこと。
映画って、このシーンに感動して涙した!とか、めっちゃ笑った!とか、めっちゃハラハラドキドキして引き込まれた!とか。
「あああいいなあこれ」とおもった、とか。なんかそういう「こころが揺さぶられたよ!」っていうのがあってほしいものじゃないですか。
それがまったくこなかったんですよねぇこの映画には。なんでだろう。そこは残念。
まぁ、原作ありきだし、ストーリーは承知したうえで見てるのでそうなりがちな気はするのですが、それにしても。
でも逆に、「狙いすぎてすべった」感もなかった(それがあるとすごい残念な映画になる)ので、無難な評価になったって感じです。
そうですね、鈴木亮平の近藤勇はよかったですね。
もう少しコワモテでもいい気はしないでもないが、すごく近藤のイメージにマッチしてた。
このひとはNHK大河ドラマ「西郷どん」で西郷役をしてたひとですが、そのときもなかなかよかったんですよね。
こういう「でっかくていいやつ、いい男」を演じさせるとはまりますねー
岡田准一の土方歳三もよかった。
その意味では「新選組!」の香取慎吾&山本耕史は(私にとっては)とてもイマイチだったので、
この映画観ながら「そうそう、こういうのでいいんだよ!」っていう感じがすごくしてました。
※余談ですが、「新選組!」の原田左之助は、いまは「れいわ新選組」の山本太郎だったですねぇ
もうひとりの重要人物、沖田総司・・はあんなもんかなあ。悪くはなかったけど・・くらい。
沖田は労咳なのでごほごほ咳をしてるのですが、ちょっと病人すぎでしたかね。
沖田はもっともっとメチャメチャ強い沖田が見たかった。
伊藤英明の芹沢鴨もよかった。まともに正面からぶつかったらやばい、っていう剣の腕前。
豪快でキレると何しでかすかわからない怖いヤツ、っていう感じもよく出てたですね。
存在感はあまりなかったけど永倉新八もそれっぽかった。このひと「下町ロケット」にいましたね。
意外とウーマンラッシュアワー村本の山崎烝がよかった。ここはちょっと狙ったキャストと脚本だとおもいますが当たりでは。
逆にイメージ違ったのが山南敬助、藤堂平助、斎藤一あたり。
藤堂の立ち位置はもうちょっと熱いドラマにできた場所だとおもうんですよ。
山南は残念なやつに寄りすぎてた感あり。なにあの武田観柳斎感w
山南には山南なりの武士道とかもあってですね、孤立と苦悩と・・そこはもっとかっこよくしてあげてもよかったのでは。
一橋慶喜は小物に描きすぎな感じ。
まぁ慶喜は高度な政治判断から「逃げた」んで、喧嘩師の土方の目線からしたらそうなるか。
いまは「青天を衝け」の草なぎのイメージが強いんで、落差を感じてしまった。
「八重の桜」の小泉孝太郎くらいな感じでよかったのでは?
坂本竜馬の名を劇中に出してたのはちょっとわざとらしさを感じた。必要性を感じなかった。いらなかったのでは。
原作にあったか忘れたけど和泉守兼定の刀剣屋は柄本明、これは雰囲気があってよかったねぇ。
原作架空人物のお雪さんと、七里研之助もちゃんと出てきましたが、あんまりでしゃばることなくほどほど。
これはこれでまぁよかったか。
松平容保公と土方が立ち話するシーンは違和感。さすがにその身分でそれはないのでは・・
近藤の死がやや唐突。
いちばんといっていいほどの重要シーンなので、こことそこに至るまでの道筋はもっと丁寧に描きこんでほしかった。
ラストの土方の自殺的特攻。あの最期は土方らしくない気がしてあまり好きにはなれない。
ここが死に場所と決め、戦局は絶望的。で、あってもやっぱり戦いの中で戦死のほうが土方らしくないですか。
細かな演出はなかなか。
原作や司馬作品を読んでれば、ああ、そういうところは細かくちゃんと描いてるねぇ、っていうのは全部伝わってきました。
「おみや~ん」とかね。長州は江戸のほうに足を向けて寝るとか。孝明天皇の宸翰とか。
幕末の細かい政治情勢の流れとか、「幕末」という時代の街の風景、夜の風景、京都の風景とか・・
以蔵の土佐弁や会津とか肥後とかの方言もなかなかよかった。
そういえば以蔵は原作では土方とやりあったりしてなかったとおもうんですが、映画では登場。
土方と互角、強くてなかなかよかった。
そんな感じですかね。あんまり深い感想がでてこないw
全体的には無難で、よくできてて、マイナスイメージがそんなになかったんですけど、なんか普通に終わってしまった読後感。
星は3.5くらいかなあ。
悪くはなかったよ!
そういえば、映画がはじまる前の映画の予告編で「峠」の映画化の予告をやってました。
役所広司主演でやるみたいですね。
劇場で観るかどうかはわかりませんが・・
なんか予告編からは「美化」しすぎな臭さを感じてしまったのと、役所の雰囲気がなんか河井のイメージと違ったんで。
だけど気になるといえば気になる。
いまいちオチのない感想になってしまった。
ではまた!