未来を拾いに

aikoのことしか頭にないひとのブログ

坂の上の雲 (1)

2006-08-20 04:58:01 | 雑記

もはや説明不要の司馬遼太郎さんの最高傑作。「あなたが今まで読んだ全ての中で最も好きな本を一つ」と言われたとき、私が迷わず挙げる作品です。 

欧米列強の帝国主義が世界を席巻する19世紀後半、ようやく近代国家建設をスタートさせたばかりの明治日本。外貨もなく、外征軍もない、産業といえば農業だけのこの国が突貫で近代産業を興し、陸海軍を建設し、人智の限りを尽くして日露戦争に辛うじて勝利するまでを3人の伊予人にスポットを当てて描いています。が、主人公はこの3人だけではなく、この時代に生きた全ての明治日本人たちではないかと思います。 

第1巻、四国は松山からこの物語は始まります。伊予松山藩は旧幕側であったために、若者にとっての飯の種、将来の夢は「学問で身を立てる」ことでした。 
明治は明るく、エネルギー溢れる時代。四民平等、能力さえあれば官につき、ゼロベースからの国家建設に参加できる時代。 

この時代を背景に、秋山好古・真之兄弟、正岡子規の3人がそれぞれの運命に向かって進みはじめます。秋山兄弟の微妙な距離や同年代の真之と子規の友情、それぞれの夢や希望。明るく切なく、時にはユーモアも交えて感情豊かに描かれます。 

同時に、好古が選んだ陸軍、真之が選んだ海軍。明治日本がどのような思想のもとに建設を始め、どのような困難に直面したのか。 
綺羅星の如く登場する明治期の指導者たちのエピソードが豊富に織り交ぜられつつ展開されていきます。 

真之と青春を共にした子規は早くも病床につき、道を確かに歩み始めた真之を羨みながらも、自分の運命を呪うことなくポジティブに文芸の道を究めることに没頭していきます。 

この巻は3人のキャラクターと人間関係が確かに印象づけられ、感情移入させられます。3人と明治日本の運命はいかに。 

作品全体からすると、牧歌的なスタートという印象の第1巻。