小松版「インデペンデンス・デイ」というと判りやすいかも知れませんが、安っぽいSFにありがちな荒唐無稽で単純なストーリーではありません!
実に見事に国際政治の滑稽なるグラン・ギニョールを描き出しており、読み応えがあります。スピード感も十分で、まるで映画を見ているように「この先どうなるんだろう」とわくわくしまくり、一息に読み終わってしまいました。
これがなんと1968年の作品。「まえがき」で小松左京氏自身が書かれていますが、当時の時代背景はベトナム戦争は泥沼化、中国は国連に議席を持っておらず、人類はまだ月にもいっていない、旅行客の持出し外貨は500ドル。米ソ首脳会談の場所の設定がアイスランドというのも予言的。毎度ながらその想像力と筆力には脱帽です。
米中ソの外交的な力学に翻弄される国連安保理や、秘密裏に展開される軍事的情報戦、外交的駆け引き、主体的な判断を持てず右往左往する日本政府・・・
現在ではソ連は崩壊して冷戦も終結していますが、このような危機が突然地球的規模で襲いかかったら。やっぱり世界はこんな感じになるんじゃないかなと思わせられます。
感動して心洗われる深い作品というわけではありませんが、単純に読み物として面白い作品だと思います。