NHKスペシャルの再放送。
正直とっても感動しました。特に広重がっ!
歌川広重。江戸後期から幕末までに活躍した、風景画の巨匠ね。広重40歳のとき、風景画の頂点に君臨していたのが77歳の北斎でした
・・・ってところから始まる一連の絵の物語。
江戸時代って、いい時代だったんだなー。文化史は面白くなくて勉強も進まなかったけど、今こうして見ると、
なんかいいなーと思いました。興福寺の仏像とかもね、中学時代に見るのと今見るのとでは、やっぱり感じ方が全然違うんだろうなと、当時を思い出して思いました。
もう一回、1人で修学旅行やり直すのもいいかもね。
一時は「もう江戸の風景は描かない」と宣言した広重でしたが、黒船がきて、安政の大地震がきて、江戸の時代が風雲急を告げて、その生活や風景も変わっていきます。再び筆をとった広重の、その時代背景の移ろいを伺わせる作品の数々。
悲しく寂しい;
幻の天才・歌川国政の話。国政について熱く語る例の外国人の研究者さんもよかった。ボストン美術館で秘蔵の浮世絵を特別に見せてもらえて、「はぅーっ」と溜め息をつき、「実物は、写真よりもはるかに美しい」「人物が、絵から飛び出してきそうです」「国政はジーニアス(「天才」)」っていってた。
それぞれの絵に隠された話がとっても面白かったです。
「暫」(しばらく)ってあるでしょ。顔に赤い隈取りして「あいやしばら~あーく」とか(←勝手なイメージ
って加藤茶がやってたじゃないですか。
「暫は正義の味方。弱者が窮地に陥ったとき、『暫く!』と声をかけて現れ、悪人どもを蹴散らす江戸っ子のヒーロー」
隈取りは怒りのために血管が浮き出てるんだって。
東洲斎写楽って有名ですよね。「江戸時代後期、彗星のごとく現れ、9ヶ月で忽然と消えた天才絵師」だと。9ヶ月であんな有名になっちゃったんだ。知らなかった・・・
美人画の巨匠鈴木春信の色彩革命の話。露草っていってたかな、経年劣化するから今はもうその色が見られないんですが、ボストンコレクションは奇跡的な保存状態で、その青色が残ってる。春信は、いろんな色を使うことで、白紙に人物だけの世界から、背景の中に人、っていう構図を編み出し、「錦絵」ってジャンルを切り拓いたとか。
1枚の絵にも物語があるんですね。ぱっとみたときは判らなかったんですが、解説を聞いてうなりました。
軒先は漆黒の闇(黒)、そこに浮かび上がる梅だっけ?の花。女が軒に出てきたそのとき、すそをつかむ手。灯火をかざすとそこに恋人が!
なるほどなぁ。
最後に、広重のいくつかの傑作が紹介されました。
名所江戸百景。きっと、ものすごく江戸を愛してたんでしょうね。
大はしあたけの夕立。
「一転にわかにかき曇り、雨。墨の濃淡を使い分け、微妙に角度を変えた百本の雨足からは、音さえ聞こえてきそうです」。
猿わか町よるの景
「満月の夜、芝居が終わったばかりです。芝居は、江戸の庶民の最大の愉しみ。満足気に家路につく人々の足元に、やさしく、影がおちています」。
そして、「両国橋の花火」。
広重が、生涯最後にこの世に残したのは、両国の花火の絵でした。江戸の人々が、最も愛した風物詩。
変わらぬ江戸の姿をその絵に残し、1ヶ月後に広重は世を去りました。享年62歳。それから、江戸が明治になるのに、10年もかかりませんでしたって。
広重ぇ(T_T)
そして、近代化の渦の中で江戸の文化は否定され、多くの美術品が国外に流出しました。
ボストン美術館もそのひとつというわけですな。
とても良い物を見ました。
当時の人々の生活や風景が、本当に絵から飛び出してくるようでした。
大正時代にこれらの浮世絵をコレクションしてくれて、「絶対に一般公開してはならない」という約束のもとにボストン美術館に寄贈したスポルディング兄弟と、その約束を忠実に守り、極めて良好な保存状態で現代に封印してくれたボストン美術館と、それをこんな形で世に紹介してくれた、この番組を作ったスタッフに感謝したいと思います。