スズキさんが角を曲がって見えなくなった頃、サトウさんが患者や見舞い客用の自動ドアから出てきた。「タカハシ君、帰ろうか」と喫茶店を出ていくときとはすっかり別人みたいな顔をしてサトウさんが言った。
「お待たせしてすみません」と僕は言ったけど、サトウさんの機嫌の悪さは僕が待たせたせいではないと思った。アキエさんとケンカをしたのなら、車に戻ってタバコを吸えばきっともとに戻る。
でもサトウさんは競歩の選手みたいな勢いで歩いていた。こんなスピードは長くは続かないとは思ったけど、僕は小走りにサトウさんを追った。
サトウさんは逃げるみたいに急いでいる。おせっかいしたことを後悔しているからではないと思う。
僕はすぐにサトウさんに追いついて、サトウさんは立ち止まった。「家まで送るよ」とサトウさんが車のキーを取り出した瞬間、「オヤジ」という声が聞こえた。息をきらした、背は低いけど体格のいい男がサトウさんをまっすぐ見ていた。
第4章につづく
「お待たせしてすみません」と僕は言ったけど、サトウさんの機嫌の悪さは僕が待たせたせいではないと思った。アキエさんとケンカをしたのなら、車に戻ってタバコを吸えばきっともとに戻る。
でもサトウさんは競歩の選手みたいな勢いで歩いていた。こんなスピードは長くは続かないとは思ったけど、僕は小走りにサトウさんを追った。
サトウさんは逃げるみたいに急いでいる。おせっかいしたことを後悔しているからではないと思う。
僕はすぐにサトウさんに追いついて、サトウさんは立ち止まった。「家まで送るよ」とサトウさんが車のキーを取り出した瞬間、「オヤジ」という声が聞こえた。息をきらした、背は低いけど体格のいい男がサトウさんをまっすぐ見ていた。
第4章につづく