その2つを説明するにあたっては概論としてなので、ここでは誤解を恐れずばっさり2つに分けて大まかに言ってしまうことにする。
(1)1つ目のステージ(図の上)
ここでは開発とか試作などの段階を言う。ここで間違ってしまっても商品には直接影響は無くて修正が許される。この時点ではバラバラで断片的な情報を集めたり仮定したり想像したりアイデアを出してみたり何でもやってみる。技術を仕事にしている人はここでは独裁者であり遊び人でもありと、ちょっと楽しい思いをすることもできる。
(2)2つ目のステージ(図の下)
ここの段階は実際の生産に入った段階で、ここまで来ると(1)とは違って"キープ"を第一に考えなければならなくなる。今やっている方法が多少ダメだったとしても、相当にダメでなければ安定した状態を保つようにしなければならない。その理由は工業生産品は可能な限り同じ状態の物でなければ信用できなくなるからだ。だからダメが少しあってもそれをわかった上で"キープ"なのである。
(1)はまだ誰が何をしても自由なのだけれど、(2)のときに(1)のような考え方でやってしまうとこれは相当に混乱を招くし、もし仮に良い物ができたとしてもそれが偶然なのか正解なのかが誰にもわからない。つまり良い物でも信用できないものでしかなくなってしまう。はっきり言ってそんな物はお客さんに対して出荷できるものではない。偶然できたものなんて、誰もそれを保証できはしないからだ。品質保証と言うのはすごく良いかも知れません、と言うのでなくて、一定ですよと言う事だ。
良くてもダメだなんて一見矛盾しているように思うかもしれないが、工業生産とはそう言うものなのである。ダメがあるならダメをちゃんとコントロールするのが正しいやり方で、散発的にこっちの方が良いからこっちに変えるなどしていたらそれは木彫りの1品物と同じことで、1点1点に誰かがサインして出荷しなければならなくなる。(3つ位しか作らない工業製品だってあるのでそう言うやり方も無いではないが。)
よく間違えるのが、歩留(ぶどまり)やNG率に関してだ。
歩留が良ければ、または逆のNG率が低ければ品質が良いと普通は考える。歩留は一つの指標なので間違いとは言えないが、全く正解とも言えない。
全体の数に対してNGの数と言うのは、よく考えると端っこの議論だ。どこまで許されるからここまでならOK。その線の内側に入っているなら"一応"あるレベル以上の物になっていると言う考え方だけれども、それは本当に品質の議論なのかと言うとそうでもない。
本当に"品質"を言うのならば、あれとこれとそれがどれだけ影響していてその結果としてターゲットになる中心あたりにどれだけの物が集まるかと言うことを言わなければならない。(ターゲットと中心がいつも同じであるとは限らないが、それも踏まえて中心にどれだけ集められるかと言うこと。)それがどれだけ正確に毎回同じにできるかと言うのが品質なのであって、単純に"良い物"ができると言うのは品質と言うものを簡単に捉えただけの幼稚な発想と言える。
エンジニアって言う人種は時々そう言う間違いを犯すことがある。単純にこっちのが正しいやり方だからこっちにしちゃえ、と(2)の時に考える。技術的には間違いではないので誰もそれを否定できないと言うのもあって、全体をそれによって間違った方向へ迷い込ませることになってしまう。
技術の仕事も技術そのものについてばかりじゃなく、いろいろ考えてやらなければならないのである。
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