横浜イチバのおさかな職人 村松享のブログ

横浜市場の水産仲卸 プロのおさかなマイスターが 魚のあれこれをお伝えします。

魚の旨み1 うま味成分

2022-05-06 18:15:14 | ムラマツ式 魚の話

2章 旨味

 牛肉等と同じで、魚も熟成しないと本来の旨味は出てこない。魚というのは生きたままでは味がない。死後硬直をして旨味成分であるイノシン酸に分解されて初めて旨味がでてくる。

 鮮度を保つということと、旨味は根本的に違う。

 獲ってからすぐに、何でもかんでも血抜きするという手法が必ずしも良いとはいえない。魚のプロであれば、身質の変化に注目し、素材の良さを活かすということを重視して欲しい。

(1)旨味成分

 旨味は、今から約100年前に日本人が発見したとされている。旨味は風味を増加させ、食欲をかきたてる働きもある。

 味の基本要素のうち、甘味・酸味・塩味・苦味の4つは、古来から認識されていた。甘味の砂糖、酸味の酢、紀元前から馴染みのある塩、そして、危険な味の苦味。

 1908年にこの4つのどれにも該当しない味として、東京帝国大学(現東京大学)の池田菊苗氏が、日本人が出汁をとるのに使っていた昆布からグルタミン酸を抽出して旨味と命名。

 次いで1913年に、弟子の小玉新太郎氏がかつお節からイノシン酸を発見、さらに1957年に國中明氏(ヤマサ醤油研究所勤務)がグアニン酸(グアニル酸)を発見して、旨味成分の3つの要素が確立された。

 そして、1985年に第1回うま味国際シンポジウムで世界に発信され、世界中の料理に係る人々の共通用語として英語で「umami」と表記されるようにまでなった。

出典:日本うま味調味料協会

 

以下、グルタミン酸から少しずつ説明を追加します。


魚の美味しさ -5つの要素ー

2022-05-06 12:14:32 | ムラマツ式 魚の話

 魚のおいしさは、次の5段階で、順番に感じられるものである。

 魚を料理に使う場合、この5段階のどこを売りにする料理なのか、どこに力点を置くのかが大切である。いわゆるどこで勝負する料理なのか(五味の説明ではない)。

食べ始めから終わりまでを上げると、次のようになる。

①見た目、②香り、③(口全体での)食感、④(舌で感じる)味、➄(飲み込んだときの)余韻

まず、魚の色つやがきれいで、程よく形が整っていれば、それだけでおいしそうに感じられる。これが血だらけだったらどうだろう。

「この魚を料理します:と目の前で見せられた時、血だらけ・・・。まあ普通の料理人ならそんなことはないでしょう。

 なので、目の前に出された料理の見た目。

 出来がよくない? 盛り付けが雑だったり見た目だけで食欲を損なったり、まず第一に入ってくる情報だ。見た目の印象が悪ければ、食べようという気持ちもなえてくる。

次に香り。2番目に感じるのは、その香りである。香りが最も脳を刺激する。

香りでおいしさを感じる食材の代表格はマツタケである。

 実は、マツタケは身を食べてもそんなに味はしない。あの香りと希少性による価格でおいしさを感じるのである。

 国産マツタケの香りは随一であるが、外国産マツタケに香りスプレーをかけておいしさを増して販売させて販売している様を見かける。

 魚に関しては、血から香りがでる。獲ってすぐ血を抜くと、保存は良いが、見た目と香りが損なわれることになる。日本人は鮮度を好むので、獲ってからすぐ血抜きを行うことが近年多いが、そこで、香りが失われてしまう。

したがって、消費者が香りの良い魚を見かけることが近年は少なくなっている。

3番目には口全体での食感である。

 3番目が柔らかさやコリコリ感などの食感。香で脳が刺激された後で、食感が反応してイメージが形成される。

 近年、日本人に好まれるのはコリコリ感であり、鮮度を保つのが好まれる。しかし、食感はコリコリの他に、厚みや冷たさ・暖かの温度によっても違ってくる。お客様にどのように味わってもらいたいか、その魚はどのように食べてもらうのが良いか、これは目利きによる魚の状態によっても違ってくる。

 その魚をどのような漁法で獲り、どのような状態になっているかの目利きができなければ、食感を引きだたせることはできない。

4つ目は味。まさしく下で感じる味。ここに5つの味が来ている。

 旨味は魚の口意に入れ、舌で感じる。

 獲ってからすぐに血を抜く手法は、鮮度は保てるが旨味をなくすというデメリットもある。

 鮮度の良い白身魚に味(旨味)が感じられないことがあると思うが、何でもかんでも取ったらすぐに〆て血を抜く、まさしく馬鹿の一つ覚えをやってしまう結果が、うま味をもたらさないということになってしまう。

 鮮度を優先した結果である。

 鮮度の良いヒラメの薄造りなどは、味がないからポン酢で食べている。

 人間が感じる5つの基本の味は、①甘味、②酸味、③渋味・苦味、④塩味、➄旨味である(中国は生ものを食べない文化なので辛味がくるが)。

 料理人には、旨味を引きだたせる技術を持って魚に接して欲しいと思う。

 

 最後の5番目は、飲み込んでからの余韻である。和食の澄まし汁等のみ終わった後に感じるふわーっとしたものである。余韻は骨から出る成分が関係する。魚を獲ってからすぐに骨を外すと余韻のない魚となってしまう。

 ちなみに、この余韻はすーっと消えるものである。喉の奥に余韻がいつまでも残っていることがあると思うが、それは化学調味料のせいである。化学調味料の味に慣れ切ってはいないか。

 魚には、「新鮮さ」という思い描くおいしさもあれば、熟成させた「食べ頃」を舌で味合うおいしさもある。魚は海で食べている餌の状況によって身質が違うし、魚の種類によっても熟成される時間が変わる。血合いの部分が平均20%ある赤身に分類されるイワシやサバは、白身魚に比べて熟成の時間も短い。

 


アジの話

2022-05-06 00:01:01 | 魚のあれこれ

アジの話を一つ。

魚屋やスーパーの鮮魚コーナーでよく見かけるアジ。こんな違いがある。

1尾~3尾程度、時には5尾以上がパッケージされ、あるいはざるに載せられ売っている。

 なかなか素人には見分けがつかないが、魚の取り方や場所によって見え方が変わってくる。並べるとわかるだろう。

 

もちろん見た目の大きさが違う。

実は同じアジでも

1)釣り方の違い(定置網か一本釣りか)

2)食っているえさの種類が違う  といった影響がある。

 

基本的に定置網で捕る魚の方が身が大きいことが多い。

そしてやや黒っぽいことが多い。

 一つには陸地に近いところで撮れることから、食っているエサの量が多く、身が大きくなる。また水深が浅いところまで上がってきていて、それに慣れているので、日焼けをする。それが身の色が黒っぽく見える理由でもある。

 

 水揚げされる場所が近くても、警戒心が強くて深いところしか回っていない魚は身が小ぶりなものが多い。そういうのは釣りもんとしてあがってくる。

 深いところから吊り上げられた魚は網でこすられたり、ほかの魚とひしめき合って重なったりしないという、いわばストレスフリーの状態であがっているからで、魚自体がきれいなままでいる。

 尻尾から背中に入っている黄金のラインは、脂がしっかりのっている証拠でもある。

 

 両者に優劣はなく、お刺身なら釣りの味がうまいが、濃い味付けにするなめろうやフライ、煮物にするなら定置物の方がいいだろう。

 季節と場所、そして食い方がきちっとあっていれば、まずくてどうにもならない魚は見当たらない。

 旬や食材にあった調理法がわかっていれば、美味しい魚、美味しいお料理は誰でも楽しむことができる。