伊豆大島ジオパーク研究会 ブログ

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第7回日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓 参加報告

2022年10月13日 00時03分48秒 | 日記

第7回日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓 参加報告

このたび日本ジオパークネットワーク関東大会in浅間山北麓に参加させていただきましたので大会の概要・気づいた点を報告します.


 全国各地に郷土を詠んだ「かるた」が存在するようですが特に有名と思われる「上毛かるた」では群馬県の形状を 「鶴舞うかたちの群馬県」 と歌っています.この鶴の形の左下長野県との県境群馬県側が浅間山北麓ジオパーク (以下GP) となります.「北麓」とはGPを構成する群馬県嬬恋村と長野原町の二自治体を指すそうです.

一日目 (9月23日)
 開会式は9月23日13時から群馬県長野原町住民総合センターで開催されました.
手頃な規模のホールや多目的室を持つ近代的な地域の中核施設で人口5400人の自治体の総合センターとしてはかなり豪勢な印象を受けましたが後にガイドの方から八ッ場ダム建設に付帯する多くの事業のお話を聞きムベなるかなと得心した次第です.

首長の開会宣言や地元選出の小渕優子議員の挨拶の後JGN副理事長の桂雄三氏による基調講演 「風土の記憶を辿る」 を受講しました.内容は元文化庁主任文化財調査官の経験をふまえ多岐にわたりましたが,当日が彼岸の中日であることから説き起こし宇宙の誕生からウクライナ戦争まで広いパースペクティブを持つお話でした.環境と文化の表裏一体性や過去に学ぶこと,進歩の意味を考察する事の重要性を強調され,レヴィ・ストロースの 「世界は人間なしに始まったし,人間なしにおわるだろう」 という言葉をペシミスティックに紹介したのが印象的でした.

プログラム二番目 は地元長野原高校 (冬季五輪で活躍した荻原兄弟の母校) 生徒たちによる「八ッ場ダム周辺の校外学習」と「浅間山天明噴火に関する大型紙芝居」の活動発表でした.大島高校同様の生徒数100名ほどの小規模高校ですが,ジオパークに係る活動を継続的に行っているようでした.

プログラム三番目 は箱根・筑波山地域・下仁田・浅間山北麓の各GPガイドによるパネルディスカッション 「明日に伝える物語」 です.「伝える」 を主題に各々パワボにて発表されました.箱根GPの充実したガイド活動に繋がる 「いつも笑顔」「参加者に発見させる」「むづかしいことをわかりやすく」 etc. はとても共感できる内容,筑波山の 「山名由来のGP 」 中活火山でないところは僅か4か所で,その火山に由来しないGPのお話, 下仁田の付加体の解説にリボンを使用するテクニックの披露,浅間山北麓の 「キャベツから地球」 の意外な必然性に納得のお話,どれも工夫された興味深い発表でした.
当日は17時に閉会し翌日参加するジオツアー別にホテルまでバスで移動しました.

二日目 (9月24日)
本大会のジオツアーは「スカイロックトレイル」 「八ッ場ダム・吾妻渓谷」 「火山が作った台地と人々の物語をめぐるツアー」 「天明噴火で何が起きたのか探るツアー」 の4コースが設定され,私は「八ッ場ダム・吾妻渓谷」に参加しました.

ダム建設事業は 「故郷の水没」 を伴うことがあり,ほぼ必然的に反対運動がついて回ります. 八ッ場ダムも1952年の計画開始時点から地域を二分する反対運動が始まりました.住民への説得と苦渋を伴う納得,着工までには実に40年の時間を要し,巨大ではあるものの,ガラス細工のような繊細さで組み上げられた事業のようです.その後の政治判断による突然の工事中止.政権交代による再開と関係する住民は翻弄され続けた末令和2年にダムは完成しました.このプロジェクトに要した費用は5000億円を上回り年間国家予算の0.5%に迫る大事業でした. 
ツアーでは1億3000万円の水陸両用バスを使用した村営のダム湖面観光の後,天明3年(1783)の浅間山噴火に伴う土石なだれにより一瞬にして埋没した鎌原村の出来事を伝える「やんば天明ミュージアム」を見学しました.昼食後は八ッ場ダムの巨大天端歩行やダイナミックな放流に感嘆し,ダム下流面到着後はよく整備された吾妻渓谷の遊歩道を散策しました. ミズナラやカエデ・クヌギ等々大島ではほとんど見ることのできない落葉広葉樹に覆われた初秋の渓谷・森歩きは島育ちには珍しく心踊るリバートレッキングでありました. ツアーの時間配分は適切でガイドの解説もよく吟味された内容だったと思います.願わくばダムの構造や噴火の歴史に加えて,渓流沿いの樹木名や森の特徴についてもう少しお聞きしたかった.大島では見ることのできない高原の広葉樹林はすっきりと涼やかな印象があります.テイカカズラ・フウトウカズラ・葛等々の蔓が樹々に絡まる様子がほとんど見られないことは高原の森の美しさの大きな要素だと感じました.
今回の関東大会では箱根の市川さん,浅間山北麓の古川さん・梅沢さん,那須烏山の吉川さん,かすみがうら市の松澤さん・岡本さん,秩父の肥沼さん 等々と名刺交換させていただきましたが,奇しくも全員が自治体職員の方でした.三連休を利用しての大会開催は勤め人には参加しやすい反面プロガイドにとっては繁忙期であり,開催日程に一考あってしかるべきだったかもしれません.

主要日程
9/22 ジェットフォイルにて上京,(中軽井沢前泊)
9/23 1140 軽井沢駅集合 (会場までバス移動)
   1300 開会式 各次第 ジオツアー参加者ホテル移動
9/24 ジオツアー・終了後 都内移動 (都内泊)
9/25 ジェットフォイルにて帰島

大会・ツアー点描




住民総合センターのロビーフロアに埋め込まれた縄文遺跡 
     



桂雄三氏による基調講演




長野原高校生の発表 
                       



1億3000万円の水陸両用バス




やんば天明ミュージアム 
             



ミュージアムに併設された旧校舎 (水没メモリー)




八ッ場ダムの天端歩行(幅10m)




台風接近に供え大量放流中.瀑布にかかる虹がきれいでした





下流側に降りるとダムの巨大構造に圧倒される 
   




吾妻渓谷は多くの部分に架設歩道が敷設されている.




今回ガイドしていただいた浦野さん          



お別れの言葉は「また来てください」でした.


---以上---

文責 田附克弘
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