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カサバ村の北に広がる黒と白の森。
その森の奥深くには、エディアがまだ足を踏み入れたことのない場所があった。
今日、彼女はふとした思いつきでその未知の場所に足を向けた。
タマ吉がいつものように彼女の後ろをついてきて、森の中を軽やかに進んでいく。
「ここに、何かある気がする…」
エディアはそう呟きながら、黒い樹木の間を進んでいった。
タマ吉が一瞬立ち止まり、五秒先の未来を垣間見る。
そこには小さな木の家が見えた。
彼はエディアの手に頭を擦りつけ、進むべき道を示す。
「ありがとう、タマ吉」
エディアはその頭を撫で、猫の導きに従ってさらに奥へと歩みを進めた。
やがて、二人は小さな木の家に辿り着く。
白い扉と黒い窓が特徴的なその家は、どこか古びていて、それでいて暖かみを感じさせるものだった。
「ここに誰かいるの?」
エディアが静かに扉をノックすると、しばらくしてから扉がゆっくりと開いた。
中から現れたのは、小さな背丈の男。まるでエディアと同じくらいの背丈だが、顔つきからは30歳ほどの風格を感じる。
「おや、君はこんなところまでどうやって来たんだ?」
男は驚いたようにエディアを見つめた。
彼の名前はシースクワット・エリ・ポンジャット。
遠く離れた終わりの大陸から来た小人族の冒険者だ。
彼はこの森の中に隠れ住んでおり、グレゴールの紹介でここに定住していた。
「私はエディア。この森に、何かを感じたんだ」
エディアは簡潔に答えた。
その一言で、シースクワットの表情が柔らかくなる。
「そうか、君はこの森が君を呼んだんだな。ここは特別な場所なんだ。よかったら、中に入ってお茶でもどうだい?」
エディアは一瞬迷ったが、シースクワットの優しそうな表情に誘われ、家の中へと足を踏み入れた。
タマ吉もその後ろをついて入る。
家の中は外観からは想像できないほど広々としていた。
壁には古い地図や冒険の記録が飾られ、棚には珍しい植物や奇妙な道具が所狭しと並べられている。
エディアはその全てが魔法で作り出されたものであることを直感的に理解した。
「君、冒険者なの?」
エディアが興味深そうに尋ねると、シースクワットは笑いながら答えた。
「そうさ。僕は世界中を旅して、いろんな場所を見てきたんだ。今はこの村で落ち着いているけど、まだまだ冒険は終わってない」
彼は棚から古びた魔法の書を取り出し、エディアに手渡した。
そのページは不思議な文字で埋め尽くされており、エディアは目を凝らしてそれを読もうとしたが、理解するのは難しかった。
「それは古い魔法の言葉だよ。君もいつか、これを理解できるようになるかもしれない。僕もまだ学びの途中だけどね」
シースクワットの言葉に、エディアは目を輝かせた。
彼女はその日、シースクワットからいくつかの簡単な魔法の技術を教えてもらい、彼との交流を通じて新しい魔法の世界を垣間見た。
彼女はシヴィーから教わっていた魔法とは違う、冒険心や自由な精神に触れ、新しい世界への興味を深めていった。
「ありがとう、シースクワット。また来てもいい?」
エディアがそう尋ねると、彼は快く頷いた。
「もちろんさ。君の冒険はまだ始まったばかりだ。いつでもここに来て、色々な話を聞かせてくれ」
エディアは嬉しそうに微笑み、タマ吉と共に家を後にした。
森を抜ける途中、彼女はシースクワットから教わった小さな魔法を試してみた。
彼女の手のひらで、白い光が静かに灯る。それは彼女にとって新しい始まりの象徴だった。
その夜、エディアはシヴィーにシースクワットとの出会いを話した。
シヴィーは少し驚いたが、彼の存在を知っていたので安心した様子だった。
「エディア、出会いは人生を豊かにするものよ。その出会いが、あなたをさらに強くしてくれるわ」
シヴィーの言葉に、エディアは深く頷いた。
彼女はこれからも、未知の世界に飛び込んでいく勇気を持つことを誓った。
その夜、エディアは新しい魔法の書を胸に抱えながら、夢の中で新たな冒険へと旅立った。
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