酸化ストレスとは、生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れて前者に傾き、好ましくない状態に置かれることです。酸化ストレスの原因は体内で発生した過剰な活性酸素やフリーラジカルです。酸化ストレスは生活習慣病や老化の進行に最も重要に関わっています。メタボリックシンドロームでは、過食や運動不足によって劣悪なミトコンドリアが増加します。劣悪なミトコンドリアは大量の活性酸素を撒き散らし、酸化ストレスを惹起します。
活性酸素は、エネルギープラントであるミトコンドリアで絶えず産生されています。ミトコンドリアは呼吸によって摂り入れた酸素と、食事によって取り入れたブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として消費する際に、電子伝達系で必然的に活性酸素を産みだします。この活性酸素の割合は、性能の優れたミトコンドリアでは酸素消費量の1% 以下ですが、性能の悪いミトコンドリアでは2~3%に達すると言われています。ミトコンドリア電子伝達系は加齢とともに機能が低下し、電子が鬱滞しやすくなって、活性酸素を作る割合は増加します。加齢にしたがって酸化ストレスが増大するのはこのためです。
内臓脂肪の蓄積もまた、酸化ストレスの原因です。近年、メタボリックシンドロームが重篤な合併症に進行するためには内臓脂肪に端を発する酸化ストレスが重要な役割を果たすことが明らかになってきました。
活性酸素のような過激分子はフリーラジカルと呼ばれています。フリーラジカルが老化の原因であるという、「老化のフリーラジカル仮説」は1956年にアメリカ、ネブラスカ大学のデンハム・ハーマン博士によって提唱されました。生きていくうえで必然的に産生されるフリーラジカルが、DNAやタンパク質などの高分子を変性させて細胞機能の異常をもたらし、その蓄積が老化となって現れるという説です。DNAの損傷や突然変異は、遺伝情報に基づいて作られるタンパク質に異常をもたらし、細胞機能を劣化させます。突然変異は発ガンの原因ともなります。
人間の体は酸化されやすい物質でできています。細胞膜やミトコンドリアを含む細胞内小器官もすべて酸化されやすいリン脂質やタンパク質でできています。リン脂質に含まれる不飽和脂肪酸が酸化されると、過酸化脂質となります。加齢臭の原因となるノネナールは、皮脂腺の中のパルミトオレイン酸という脂肪酸と過酸化脂質が結びつくことによって作られた物質です。過酸化脂質はタンパク質とも結合してこれを変性させます。タンパク質は生物の構造を決定し、すべての生命現象の源となっています。タンパク質が酸化されると、体の構造が破壊されるのみならず、物質の輸送、栄養の貯蔵、筋肉の収縮や感染症に対する免疫が損なわれます。また、酸化ストレスはこれらの機能を調節するシグナルとして働くタンパク質にも異常をきたし、私たちの体を正常に維持することができなくなります。
フリーラジカル仮説は、これのみで老化のすべてを説明できるわけではありません。また、フリーラジカルすべてが有害ではありません。しかしこの説は、50年以上経った今日でも「酸化ストレス仮説」と名前を変えて多くの研究者に支持されています。
酸化ストレスに曝されない生活習慣、それこそが健康長寿への近道です。それではどのような生活習慣を送れば酸化ストレスを回避できるのでしょうか。その方法は次回からご一緒に考えたいと思います。
このブログは風詠社出版の『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著は真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場からメッセージを送ります。
活性酸素は、エネルギープラントであるミトコンドリアで絶えず産生されています。ミトコンドリアは呼吸によって摂り入れた酸素と、食事によって取り入れたブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として消費する際に、電子伝達系で必然的に活性酸素を産みだします。この活性酸素の割合は、性能の優れたミトコンドリアでは酸素消費量の1% 以下ですが、性能の悪いミトコンドリアでは2~3%に達すると言われています。ミトコンドリア電子伝達系は加齢とともに機能が低下し、電子が鬱滞しやすくなって、活性酸素を作る割合は増加します。加齢にしたがって酸化ストレスが増大するのはこのためです。
内臓脂肪の蓄積もまた、酸化ストレスの原因です。近年、メタボリックシンドロームが重篤な合併症に進行するためには内臓脂肪に端を発する酸化ストレスが重要な役割を果たすことが明らかになってきました。
活性酸素のような過激分子はフリーラジカルと呼ばれています。フリーラジカルが老化の原因であるという、「老化のフリーラジカル仮説」は1956年にアメリカ、ネブラスカ大学のデンハム・ハーマン博士によって提唱されました。生きていくうえで必然的に産生されるフリーラジカルが、DNAやタンパク質などの高分子を変性させて細胞機能の異常をもたらし、その蓄積が老化となって現れるという説です。DNAの損傷や突然変異は、遺伝情報に基づいて作られるタンパク質に異常をもたらし、細胞機能を劣化させます。突然変異は発ガンの原因ともなります。
人間の体は酸化されやすい物質でできています。細胞膜やミトコンドリアを含む細胞内小器官もすべて酸化されやすいリン脂質やタンパク質でできています。リン脂質に含まれる不飽和脂肪酸が酸化されると、過酸化脂質となります。加齢臭の原因となるノネナールは、皮脂腺の中のパルミトオレイン酸という脂肪酸と過酸化脂質が結びつくことによって作られた物質です。過酸化脂質はタンパク質とも結合してこれを変性させます。タンパク質は生物の構造を決定し、すべての生命現象の源となっています。タンパク質が酸化されると、体の構造が破壊されるのみならず、物質の輸送、栄養の貯蔵、筋肉の収縮や感染症に対する免疫が損なわれます。また、酸化ストレスはこれらの機能を調節するシグナルとして働くタンパク質にも異常をきたし、私たちの体を正常に維持することができなくなります。
フリーラジカル仮説は、これのみで老化のすべてを説明できるわけではありません。また、フリーラジカルすべてが有害ではありません。しかしこの説は、50年以上経った今日でも「酸化ストレス仮説」と名前を変えて多くの研究者に支持されています。
酸化ストレスに曝されない生活習慣、それこそが健康長寿への近道です。それではどのような生活習慣を送れば酸化ストレスを回避できるのでしょうか。その方法は次回からご一緒に考えたいと思います。
このブログは風詠社出版の『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著は真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場からメッセージを送ります。
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