禅宗において、食事の前に唱える言葉があるそうです。
それが、五観の偈(ごかんのげ)といって、これからいただく食事に対する心構えとなるような意味を含んだ五つの偈です。ひとつひとつの文章は難解ですが、その意味を解釈すると、とても深いことを考えさせられます。
順に紹介しますと、
『一には、功の多少を計(はか)り、彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る』
これは簡単に説明をすると、これからいただこうとする食べ物が、どれほど多くの人の苦労や自然の恵みによってもたらされたものであるかを考え、感謝するというものです。
『二には、己が徳行(とくぎょう)の全欠を[と]忖(はか)つて、供(く)に応(おう)ず』
これは、今までの自分の行いを振り返り、この食べ物をいただくのにふさわしい自分であるかを、自分自身に問うというものです。
『三には、心を防ぎ過(とが)を離るることは、貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす』
これは、食べ物に対する好き嫌いや選り好み、そういった食事に対する不満を持つと、仏教が厳しく説いている、「むさぼり」や「憎悪」「心の迷い」といった三毒(煩悩の内で特に問題となる盲目的な欲望)に堕ち入ることになる、というもの。
『四には、正に良薬を事とすることは、形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為なり』
これは、食事をいただくということは、生きるため、この五体の健康を維持するための、良薬としていただくのだというもの。
『五には、成道(じょうどう)の為の故に、今此(いまこ)の食(じき)を受く』
最後には、食事をいただく究極の意味は、悟りを得ること、つまり自分を解放するためであるという決意を唱えることになります。
以上。
どうでしたでしょうか。いつもは、「いただきます」と、無意識に流して言っていた自分をちょっと反省。それどころか、「いただきます」と言わないこともけっこう多かったりして
食べ物に対する感謝の気持ちや、食べることの大切さについて改めて意識してみることは、自分自身も気分がいいものです