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「おおばあちゃん、新聞だよ。」
「ありがとう。」
新聞を居間に持って行くと、曾祖母は日当たりのいい廊下に出て、眼鏡をかけて読み始めました。曾祖母は、助産婦さんで、私の出産に関わりました。だから、私のことは、優しさと厳しさを持ち、親しみ深く見ていました。行儀、時間の大切さ、倹約精神、躾のひとつで、話してくれました。
母は、台所の釜戸で炊飯、味噌汁の支度をしていました。いい香りがして来ました。台所では、唯一の部屋用裸電球が点灯していました。私は、灯り照らししなくていいから、フラッシュライトで遊びながら、手触りを楽しめるから、ずっといたずらしていました。祖母は、裏庭の畑から、トマト、茄子、キュウリ、ユウガオ、カボチャなどを朝採りして並べていました。祖母が畑から居間に戻ると、相手をしてもらいました。
「おばあちゃん、見て!」
右手で胴体握りながら、筒先を向け、スライドとボタンを操作して、点灯方法を説明し始めました。
「キレイなボタン。挟んでるね。」
「うーん。だんだん、凹むよ。ギュッ。親指と人差し指、半分止めて、それから、ギューッ。ほら、ぺっしゃんこ。」
「挟んで凹ますんだ。」
「そうだよ。それでね、ボタン、人差し指で押さえて、スライド親指で動かすんだけど、硬ーい。」
「動かないね。」
「だからね、人差し指緩めてあげるよ。半分ボタン止めて、スライド親指で動かすよ。カチッ、ほら、点いた。」
「ほんとうだ。」
「ボタン挟むよ。ギュッ。まだ凹むよ。ギューッ。ほら、ぺしゃんこ。」
「消えないね。」
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