ぱんどらのへや

ちょっとした子育てに役立つ話を紹介していこうと思います。

不登校状態のお子様とのやりとりを絵本にまとめました。

2024年09月23日 | 職業


 臨床心理士・公認心理師等の資格を取得する前に、治療的家庭教師としてお会いしていた不登校状態のお子様との思い出をまとめました。
 何人かのお子様とのエピソードや言葉を基本にして、個人が特定できないようにしてあります。
 絵を担当してくださった、せきぐちみほさんのやさしい絵が、私の周りでは人気です。
 自費出版なので、基本書店には並んでおりません。図書館等にリクエストしていただいて、手に取っていただき、お気に召したら、お手元に置いていただけると嬉しいです。
 図書館・書店に以下の情報(特にISBNナンバー)を伝えいただければ、司書や本屋さんはわかります。取り寄せて下さいます。また、アマゾン、紀伊国屋書店ウェブストア、タワーレコード、楽天ブックス等で購入可能です。
 書名『待ち時間』 文:やまもとふさえ 絵:せきぐちみほ 出版社:文芸社 ISBN:978-4-286-28006-6 1,100円+税


【制作裏話】
 本を制作するのは、2回目です。部活で作った同人誌や、院で学んでいた時に、大学の紀要を編集したことを加えれば、もう少し多くなります。
 前回本を作成した時は、編集グループに加わっていましたし、同人誌や大学の紀要も、仲間とわいわいやりながらの製作でした。 
 今回も、編集者やイラストレーターの方と、いろいろ意見を交わしながら、制作していくのだと思っていました。
 ですが、今回は違いました。編集者と私、編集者とイラストレーターの方というやり取りで、私は最後まで、イラストを担当してくださったせきぐちさまとお会いするどころか、お顔も、お声も知りません。
 せきぐちさまは、私の拙い文に、素敵な絵をつけて下さって、感謝しています。物語がより豊かになったと思います。
 それでも、編集者を間に挟んだやり取りで、もどかしい思いもしていました。
 「読字障害の方にも、少しは読みやすいレイアウトにしたい」「色の見え方が異なる方々にもわかるようにしたい」と編集者に伝えたのですが、「字を大きくしましょう」などと頓珍漢な答えが返ってきて困りました。説明したのですが、解ったふりをされてしまいました。返ってくる言葉をきけば、解ってくださったかはわかります。顔を突きあわせていれば、せきぐちさまにイメージの見本をお見せすることもできたのですが、それは編集者に断られました。それで、私なりに、「文と文の間を空けて下さい」など指示をしました。最初に見本としていただいたせきぐちさまのイラストはきれいなグラデーションで心安らぐものでしたが、あえて縁取りをしてもらいました。紙質は変えられませんでした。
 実際、そのような特性を抱えている方にとってはいかがでしょうか。改めて、”マス”への合理的配慮の難しさを思い知った次第です。

 他にも、直接お会いできない中でのやり取りで難しいと思ったことがありますが、今回は≪共同注視≫について記したいと思います。

 絵本の中に、二人が虹を見つけるシーンがあるのですが、そこに添えられている絵は、二人が見つめあって笑っているようにしていただきました。
 でも、最初にせきぐちさまが描いてきてくださったのは、二人で虹を見ている絵でした。「見つめあうように描き直してください」とお願いすると、編集者から、それは「変だ」と答えが返ってきました。それでも、描き直すようにと伝えると、せきぐちさまが「変だ」と言っているとの答え。それでも、描き直してもらいましたら、今度は校正者から「おかしい」という指摘をいただきました。でも、ここは譲れません。見つめあっている絵にしていただきました。絵本をご覧になった方の中にも、「おかしい」と思った方がいらっしゃるかと思います。

 こだわったのは、≪共同注視≫のシーンにしたかったのです。
 ≪共同注視≫とは何か。要は二人で同じ感情を共有して確かめ合っていることです。
 例えば、一語文が出始めた幼児が、犬を見つけて、覚えかけの「わんわん」と言って指を差し、幼児にとって大切な年長者(ご両親様、祖父母様等)を振り返る。その振り返ったお子様の顔を見て、満面の笑顔で「そうね、わんわんいたね」と返すと、お子様も満面の笑顔になる。その時、お子様は「これは”わんわん”でいいんだ」と確信を持てた喜びと、犬を見つけた喜びを大切な年長者様と分かちあえた喜びで、自信を持ち満面の笑顔になります。次に犬を見つけた時は、その喜びが再体験できるものと確信して、見つけたとたんに、「わんわん」と言って、満面の笑顔で大切な年長者を振り返ります。そこで同じ体験ができれば、確信はより強固となり、自信にあふれかえります。喜びや怖れ、苦しみを、大切な方と共有でき、同じ言葉で分かち合うことで、言葉を始めとする様々なことを体得してゆくのです。子どもは学んでいることを、確実にものにするまで、繰り返します。なので、面倒くさくなっても、何かを発見した喜びをお子様が表現しているときは、笑顔で返していただきたいです。
 幼児だけではありません。授業中でも、思春期前なら、うまくいったとき、
授業参観なら、後ろにいらっしゃる保護者の方を向いて喜びを分かち合うシーンはどこでも起こります。
 大人でも分かち合うでしょう。例えば、野球場。応援しているチームの、ホームランのバットの軽快な音が聞こえた時、そのボールの行き先を確かめた後、親しい人と目を合わせ、喜びを分かち合うことはありませんか?一人で来ていて、知らぬ人と目を合わせてしまって気まずい思いをしたことはありませんか?知らぬ人でも、同じチームを応援している仲間として喜びを分かち合った後、急激に親しくなったような気になることはありませんか?
 それこそ、喜びは倍に、悲しみは半分にです。お互い、瞬時ででも視線を交わし、お互いの想いを確認するのです。

 この絵本の主人公は失敗を皆に笑われて、皆に裏切られたような気持になっていました。そこにやってきた治療的家庭教師が主人公の気持ちを理解し、喜びは倍に、悲しみは半分にという状態になったところだったのです。だから、このシーンは≪共同注視≫している絵にしたかったのです。

 ≪共同注視≫は、人との関係においても、学びにおいても、自分に確信を持てるようになるためにも、とても、大切なことです。もし、お子様が≪共同注視≫していなかった、今、そういう相手がいないようでしたら、お近くの心理職か、児童精神科に相談に行っていただけたらと願います。ギャングエイジ以降は、共有する相手は広がります。友達・仲間・恋人、先生…。気持ちを分かち合える誰かがいれば大丈夫です。


【治療的家庭教師】
 この絵本のご家族のように、「学校に行っていなくとも勉強は」と考えるご家族やご本人は多いです。塾に行くこともあれば、家庭教師を雇う場合もあります。最近は、動画で授業を配信というものも多くなりました。オンラインで授業してくれるところもあるようですね。昔ながらの通信教育もあります。
 大手塾の中には、不登校状態にある方を対象にしたメニューを揃えているところもあるようです。個人経営でも、登校していた頃に通っていたご縁でというところもありました。塾も、授業形式から、先生1人に対して、児童・生徒が2,3人とか、寺子屋形式のものもあるようです。フルースクールやサポート校でも行っているところはあるようです。
 塾は特に、その塾独自のメソッドがあります。上記のどの方法でも、不登校ご本人に合うやり方が良いのではないかと思います。勿論、特性、エネルギー状態も含めたレディネス、未来をご本人がどう考えているかによってです。エネルギーの枯渇した時期では無理でも、充填してきて動き出すレディネスが整ってきたら、何らかの形で学習を始めるということもありますので、一度ダメだったからと言って諦めないでください。様子を見守っていてください。
 ところで、上記の家庭教師等は、学習習得を目的としたものです。
 治療的家庭教師は、学習習得も視野に入れますが、現状を変えることを主眼にしています。この絵本の主人公で言えば、ご両親は「勉強を」と言っていますが、「心を閉ざした主人公への働きかけを」と、契約の時に話をしています。だから、勉強だけでなく、一緒に遊んでいるのです。勉強したご褒美に遊ぶ家庭教師もいますが、そこをちゃんと契約時に保護者の方と話しておかないと、「遊んでばかりいて!」と契約を切られてしまいます。この主人公に関しては、「人とつながりたい気持ちを取り戻す」ことによって学校へ戻れるようにと関わりました。小学校低学年の場合は、半分保育士の代わりだったこともあります。外にでることができなくなった子は、外に出る援助をと、その子が行きたいと言った映画に同行したこともありました。でも、緊張があまりにも強くて、関わり方の方針・目標を変えようと話をしたこともあります。
 治療的家庭教師は、多くは、学生・院生です。親や先生のような縦の関係ではなく、同年齢の横の関係ではなく、ちょうど中間の斜めの関係です。それが程よい効果を与えることもあります。治療的家庭教師を志望する方は不登校という状態に関心を持っている方が多いので、心理・福祉や教育を学んでいる学生が多いです。まったく関係ない学部の学生もいます。この経験をもとに、心理・福祉・教育に興味を持つこともあります。
 子ども家庭支援センターや児童相談所、教育相談センターなどが制度として治療的家庭教師を派遣している自治体もあります。心理職・福祉職・教員養成機関を持っている大学で対応してくれているところもあります。勿論、身近な方に頼んでも良いと思います。ですが、不登校の問題はセンシティブで、場合によっては双方負担が大きくなることもあるので、治療的家庭教師がスーパービジョンを受けられる体制を作っておくことが大切と私は思います。「治療的家庭教師が、知らない人に相談すると、我が家のことが筒抜けに」とご心配になる方もいらっしゃるかと思います。心理・福祉は守秘義務を倫理として掲げています。教育領域も、個人情報保護の観点をお持ちです。契約時に確認しておくことがよいかと思います。
 

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