有終の美にはまだ早い？

本流ロッドの入魂式といきたいところだが、今日は午後から仕事。
とりあえず秋川へ朝めし前のチョイ釣りに行くことにした。
東の空が白々と明ける頃、西に沈みゆく見事な満月を追っかけてハンドルを握る。
渓流シーズンも残りわずか。
あと何回行けるのだろうか。

仕事に行くまでの時間を逆算して、そこそこのところで支流に入る。
今日は１匹釣れたら帰宅する予定なのだ。

谷間の冷涼な空気は、もうすっかり秋のそれで、薄手のフリースを着てちょうどよいくらいだ。
木々の葉も隙間が目立ってきたように感じた。


蜘蛛の巣もだいぶ減り、、たまにあっても糸の太さが夏に及ばない。
その繊細なトラップに掛かる虫も減っているみたい。


水量はそれほど多くない、というよりかなり少なめなので、アプローチに気を遣う。
ゆっくり、そーっと、でもキャストは大胆に。
減水した沢では、勝負は一度きりなのだ。


本日３投目のキャストは、実にいいところに送り込めた。
派手なアクションはつけず、スローリトリーブ。

白泡の下から黒い影がぐるんと動いた。
一瞬背中に電流が走ったが、バイトならず。

イワナだったら、もう一度あるかな？　同じ所を通してみる。


出ない。。。

ルアーの色を変えて、さらにもう一回。

出ない。。。

やっぱり、ワンチャンスなのかなと思いつつ、諦めきれずにキャスト。
今度は、右側の浅い所を通してみた。
すると、黒い弾丸がさーっと近づき、躊躇無くルアーにどすんとのしかかった。

一発煽りを入れてから、ロッドを立てる。
久々味わう重さにアドレナリンが吹き出す。
ラインの先の弾丸は、下流に立つ自分の方へ向かってきた。
落ち込みの岩でラインが擦れたら、即ブレイクだ。
背中のネットに手を伸ばし、すっと近寄りランディング。
自分でも驚くほどスムーズにことが運んだ。

勝負あり！



３８ｃｍ。　シーズン終盤の大金星だ。
しばらく撮影につき合ってもらおう。






このふてぶてしくも威厳ある面構え。
まるで太古よりこの沢を見つめ続けてきたような深いまなざし。


４０オーバー、いや５０オーバーになったらまた会おう。
それまで、この沢の番人をキミに任せるから。