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「正しい神との交渉のために」その4  ヒーラーの危険性

■『神道の神秘 古神道の思想と行法』 山蔭基央(やまかげもとひさ)著
第九章「正しい神との交渉のために」より抜粋掲載  


●古神道は霊媒養成をしない

古神道は、こういう危険な霊媒を養成することはしない。山蔭神道もそうである。つまり、やたらに霊感・霊能力を売り物にすることを認めず、歴史的に積み重ねられてきた正しい法則、厳しい教えを授けることを旨とするのである。霊感よりも、正しい思想、清明な生活、人格の陶冶を旨とするのである。

古来、神道家というのは、鎮魂行や祈藤などの根幹は秘伝としていた。むやみに一般人に公開するのは、霊的に危険な事態を招くことがわかっていたからである。山蔭神道では、時代の要請もあって、特に危険のない行法の部分や秘伝を公開したが、これとてもただ知っただけでは充分ではなく、きちんとした指導が必要なのである。

また、古神遭家と受け身の霊媒との問には、一つ大きな違いがある。それは、霊媒の場合、向こうからの通信を受けるだけであるのに対し、古神道家は積極的に霊界へ調査・探究に向かうことができるということである。詳述はしないが、たとえて言えば、霊媒とは一方的な受信アンテナであるのに対し、古神道家はレーダー探査の技術を持っているということである。

真の霊的能力を持った古神道家には、「大神様から直接の通信がある」などと大それたことを考えている者はいない。神々の働きは、大神霊に仕える多くの高級霊や、さらにその使いの霊など、たくさんの霊によってなされているのである。それに比せば、自分の存在などは小さいものであり、賎しい者であるから、何か示しがあったとしてもそれを絶対化したりする高慢を排するのである。

いずれにせよ、一般の人がむやみに霊能力に憧れ、それを獲得しようと思うことは、よろしいことではない。臨済宗の中興の祖と言われる自隠禅師(1685-1768)は、禅にすぐれたばかりでなく、神仙界にも出入りしたと言うが、この人が、「天狗・山人・神仙などに瞳れてはならぬ。それは地上の人間よりは苦行の多いもので、普通の人間として素直に生き、世の進運に寄与するような勤勉な人物になることの方がどれだけ幸せかわからぬ。またその方が正しい死後世界に入ることができるのだ」という趣旨のことを述べているが、これは含蓄の深い言葉であろう。


●「ヒーラー」の危険性

近年のニューエイジ・ブームで、「ヒーラー」と称する人々がたくさん出てきている。薬や物質的手段を用いず、手かざしや祈りなどによって、病気を治すというのである。もちろん、そのような主張をしている人すべてがでたらめであるわけではないし、他人に奉仕しようという心構えを持っている人は素晴らしい。

私も、先代の指導を受けて鎮魂の行に励んでいた頃には、自分の精神統一の深さを試すために、実験としてのヒーリングを行なったものである。未熟なうちは、気合いを入れて九字(陰陽道・神仙道から来た作法)を切っても、患者が笑い出すだけだったり、また、逆にむちゃくちゃに気を入れすぎたために、患者の婦人が後ろにひっくり返って失神してしまったこともあった。これは二十四、五歳の頃の実話である。今ではもちろん、しかるべき時にはしかるべきヒーリングを行なっている。奇跡のような治癒がしばしば起こることは、私自身よく知っている。

しかし、人を癒やすということは、気を付けなければいけない面もあることをよく知っておいていただきたい。まず、手かざしや祈りなどによる治療は、どのような仕組みがあるのかをわかっていなけれぱならない。

一つには、その人の持っている「気」の力で治療する場合。そしてもう一つは一その人を介して「霊的存在」が治療を行なっている場合。さらに、後者の場合であれぱ、その「霊的存在」がどのようなものであるのか、という問題がある。

「気」というものは、機械による測定も試みられたりして、その存在はおおかたの人が認めるものとなっている。これを巧みに使えるようになれば、他者の体に向けてそれを発して、病気を治すことは可能である。ただし、「気」による治療は、本人の生命エネルギーを消費させる危険が大きい。若いうちはまだいいが、四十、五十歳になると、体がついていかなくなることが多い。むやみに気を使いすぎて、衰弱し、病気になってしまう人もいる。私は有名なヒーラーの実例を知っているが、ここで実名を紹介することはできない。

それに、「気」による治療は、一過性で終わる場合も多々ある。その時「気」を受け、一時的に病人の「気」の流れがよくなり、症状がなくなっても、根本的な体の問題がそのままであると、しばらくすると元に戻ってしまうのである。また、憑霊による病気などにはあまり効果がない。

「霊的存在」による治療は、病人の四魂に働くので、完治の度合いは高い。憑霊が原因の病気も治すことができるし、また遠隔治療なども可能である(実際には「気」による治療をしていると言っている人も、「霊的な存在」の助けを惜りていながら、それを伏せているだけの人もいる)。

問題は、その「霊的存在」が高級霊か、低級霊かということである。すでに述べたように、幽界あたりの低い霊は、現世に大きな力を及ぼすことができるが、その見返りを求めたり、また突然その働きをやめてしまったりする。働いている霊が高いか低いかを判断することは、なかなか難しい問題であるが、少なくとも、ヒーリングにはこのようなさまざまな種類のものがあるということだけは、しっかりと心得ておいてほしいものである。


次回へ続く


神道の神秘―古神道の思想と行法
山蔭 基央
春秋社

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