■四十九日の意味するもの
●「三週間後のお別れが何故多い?」
死者が夢枕に立ってお別れに来るのは死の直後ばかりではないようです。いろんな話を聞くと何故か3週間後あたりに夢枕に立つことが多いようです。今回はその理由を考えてみることにします。
●「中 蔭」
人の死後49日の間を仏教では中蔭と呼び、この間死者は六道輪廻(りくどうりんね)をさまよい、次生を決定する期間とされました。また49日目に中蔭が明けたとして「満中蔭の法要」を行います。これが俗に言う「四十九日の法要」です。四十九日という言葉は誰でも知っていますが、何故この法要を行うかの意味を知っている方は意外と少ないようです。
本来の意味は死者があの世で審判を受け、次生が決定し成仏して天国へ(人によっては地獄の場合もありますが)行くまでの待機・審査期間が49日間というわけです。この間仏教では中蔭の法要として一週間ごとに法要を行い、死者が成仏(霊界へ旅立つこと)できるよう遺族は供養を行います。そして七週目に無事成仏することを祈願するのが、「四十九日の法要」という訳です。
(注:釈迦が説いた原始仏教では転生の教えは在りませんでした。また一部の仏教が説く転生は、一定期間霊界での修行無しに、すぐさま生まれ変わるとされています。日本仏教が説くところの閻魔大王の審判などの話は中国の道教的な思想がかなり影響しています)
●四十九日の真相「21日+28日=49日」
人は死ぬと魂が肉体を離れますが、21日間(3週間)はまだこの世に留まるのだそうです。つまりこの世からあの世へと、魂が旅立つための準備期間が21日間らしいのです。死者の魂が自分の葬式や遺族が悲しむ様を見て、自分の死を認識するための期間というわけです。いつまでたっても自分が死んだ事を自覚できない魂や、この世に強い未練を残した魂は、次の「幽界」にも行けず、自縛霊とか浮遊霊となってこの世をさ迷い続けることになります。
また21日間を経過しなくとも、既に死を認識している魂であれば、すぐさま次の「幽界」に移動することが出来ます。死に対する心構えが平素から出来ていれば、死と同時に幽界へと旅立つことも可能なのです。死者が最後のお別れに来るのは、死の直後や3週間目あたりが多いのは、死者の魂がこの世からあの世(幽界)へ旅立つ間際に、最後のお別れを告げに来るからではないでしょうか。
そして次の「幽界」では指導霊(ガイド)のもと、今生での己の行いを振り返り、魂の目的に会った生き方をしたかどうかを追体験や反省をしなければなりません。これが諸宗教でいうところの「審判」です。けして閻魔様が審判を下すわけではありません。この反省結果による、自己の魂のレベルの判定によって、次に行く「霊界」の階層が決められます。この反省・審査期間が28日間(四週間)というわけなのです。もちろん魂のレベルが特に高い場合は一足飛びに「霊界」の上級階の「精霊界」へと移るそうです。
ちなみにわが国の神道では死後50日目の忌明けを五十日祭とし、供養の祭祀を行います。忌明けまでは神棚の前に白い半紙を下げ神棚封じを行い、遺族が神棚を触ること禁じています。(その間は10日ごとに死者への供養は行います)
神葬祭が一般的に行われるようになったのは明治以降です。神道では血や死は「穢れ」とされ忌むべきものとされてきました。その為、江戸期までは葬祭はお寺の仕事で、神道では葬式を行いませんでした(江戸中後期以降国学運動の影響で一部の神社で実施)。
明治になると、新政府による神祇政策の一環として神葬祭が奨励されました。ただし神の鎮まる聖域である神社で葬祭を行うことはほとんど無く、故人の自宅か、または別の斎場にて行います。
これは私見ですが、四十九は音が死と苦に通じるのを嫌って(神道では言霊は重要ですから)仏式の四十九日法要にあたる祭祀を、忌が明ける五十日目としたのではないでしょうか。
■仏教が説く「中陰」(四十九日)
人が現世で死に、次に来世がはじまりますが、その来世を仏教は、生まれ変わり、死に変わりして、生存し続ける輪廻の世界と考えます。
その輪廻の世界を初期仏教は「五趣」と言いました。「五趣」とは次の、天人・人間・畜生・餓鬼・地獄の五つの世界で、この五つの世界を人が輪廻転生すると考えられていました。
後の大乗仏教になると、天界のうちの怒れる魔類を阿修羅(修羅)と呼び天界から独立させて人間以下の存在とし、次の六つの世界を考えました。天道(天上道、天界道)・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道を「六道」(りくどう・ろくどう)と呼ぶようになりました。これら六道で生死を繰り返すことを六道輪廻と言い、この輪廻の道からはずれたものを俗に外道と言います。「趣」も「道」も、ともに往くという意味です。五趣六道とは、私たちが「死後に往く世界」を指しています。
この世界のどこに行くかは、現世で作った業(ごう)によって決定されます。そこで、現世でどのような業を作ったかを調べる必要があります。つまり生前の行いを調べ、来世はどの世界が相応しいかを決める審判が必要となります。その審判の期間が「中陰」と呼ばれる期間で、四十九日間とされています。中陰とは現世と来世の間にある、待機期間と考えれば良いでしょう。
中陰の期間が四十九日間とされ、七名の裁判官が七日目ごとに亡者を裁くと、考えられるようになったのは室町時代のことです。それ以前は閻魔大王が一人で亡者を裁き、中陰の期間もはっきりとはしていませんでした。
室町時代に成立した「中陰」の考え方はつぎのようなものです。現在もだいたいこれと同様の考え方です。中陰には七人の裁判官がいて、七日目ごとに亡者を裁きます。その七人の裁判の名前は
初七日(しょなのか) 秦広王(しんこうおう)
二七日(ふたなのか) 初江王(しょこうおう)
三七日(みなのか) 宋帝王(そうていおう)
四七日(よなのか) 五官王(ごかんおう)
五七日(いつなのか) 閻魔王(えんまおう)
六七日(むなのか) 変生王(へんじょうおう)
七七日(なななのか) 泰山王(たいせんおう)
となります。
閻魔大王として有名な閻魔王は五七(いつなのか)日の審判担当で、最終の判決は泰山王が行います。その審判の結果、死者は天人、人間、修羅、畜生、餓鬼、餓鬼、地獄の六つの世界のどれかに生まれ変わることになります。こうして七七日(なななのか)目に中陰が終わるので、七七日目すなわち四十九日目を満中陰といいます。死後の法要が七日ごとに七回行う(最近は省略することが多い)のは、審理のたびに各王に対し死者への減罪の嘆願を行い、良き境遇に生まれ変われることを祈るというわけです。
※過去記事の中でアクセスが多い「四十九日の意味するもの」PART1 PART2を読みやすいように一つにまとめ、一部修正を行いました。
■今日のミコトノリ
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