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ケム散布機『E-6』のミッションを探る ③

●GWEN(地上波緊急ネットワーク)とELF(極極超長波)の関係

E-6の原潜とのVLF(超長波)による通信方法には大きな弱点があった。VLF(超長波)は水中でも電波が減衰しにくいため10Mくらいの深度での受信は可能である。フローティングアンテナを潜水艦から繰り出せば、深深度での受信は可能であったが、送信情報量が少ないため、エスカレートする電子戦に対応できなくなってきた。さらに潜水艦からの送信は出来ない受信オンリーのワンウェイ通信であった。

VLF(超長波)による通信方法は目新しい技術ではない。現代では化石のような無線技術である。水中でも受信可能なVLFに目をつけ、最初に対潜水艦通信を実用化したのは旧日本海軍であった。真珠湾攻撃で有名な「ニイタカヤマ ノボレ」の無線通信は愛知県依佐美(よさみ)の送信所から南雲艦隊とは別働隊の潜水艦部隊に送信されたという。戦後、依佐美送信所は米海軍に接収され、原潜への送信所として利用され、1993年に日本に返還された。

91年のソ連崩壊によって米ソの冷戦がなくなっただけの理由で、送信所が返還されたわけではないだろう。時期を同じくして、E-6の任務形態の変化や大々的な装備の改装がされたことなどから判断して、核戦略そのものの見直しと通信技術の大変革があったと考えた方が納得がいく。

アメリカは世界初の原子力潜水艦ノーチラスが就航した1960年代から、潜航中交信可能な極低周波と高周波の同調発信方法の開発を始めており、様々な通信技術の開発が試みられてきた。その経緯を裏付ける、次のような記述がジョン・コールマン博士の著作『300人委員会 バビロンの淫婦』にある。一部を引用してご紹介する。

第三章 静かなる殺人兵器、ELF放射線を知っているかより

(前略)

しかし防衛への懸念は、地上波の通り道に入った人間が危険なのではという反対意見を上回り、新バージョンのSANGUINE地上波としてOMEGAを焼きなおしたものを、400キロ間隔てアメリカ全土に設置するよう命令が下された。さらに1、2ヵ所ずつの中継局が南アフリカ、ハワイ、ノルウェー、アメリカのモノロウ゛ィア、インド洋のレユニオン島、オーストラリア、そして日本に設置された。

GWEN/OMEGA地上波によるナビゲーションシステムは、原子力潜水艦の航行とミサイル誘導のあり方を変えた。OMEGAは100パーセントの正確さで、上空波のような不正確さは一切ない。さらには周波数は10.2~13.6キロヘルツでSANGUINEとほぼ同じで、超長波(VLF)の利点も備えている。アメリカの潜水艦は信号を受け取るために海面に浮上する必要がない。これは大きな利点だ。OMEGAの地上波は水深15メートルまで届くことが知られているが、「上空波」は水面下1.5メートルまでしか届かない。
★注:GWEN(地上波緊急ネットワーク)

(中略)

GWEN/OMEGAは電磁波や熱核兵器による攻撃であらゆる通信が破壊され、海軍電子システム司令部や艦隊衛星通信システムが機能しなくなったり、ホワイトクラウド、ライヨライト、クリッパーバウ、クラシックウィザードといった衛星が燃え尽きても、動き続ける。

GWEN/OMEGAがソ連をおおいに悩ませたのは明らかだ。これでは電磁波や熱核兵器で先制攻撃しても意味がない―アメリカのオハイオ級原子力潜水艦は、トライデント型やポラリス型の核ミサイルを恐るべき正確さで照準を合わせて発射してくるのである。

しかも、その射程距離は1万1000キロ以上もあって、ロシアの攻撃型潜水艦の航続距離をはるかに越えている。このような攻撃を受ければソ連はたいへんな被害を被るだろう。これについてはソ連国防省の『クラスナヤズウ゛ェズダ』でふれられていて、1973年10月4日付で、不満を伝える記事が掲載された。

アメリカ海軍がテストを繰り返した結果、原子力潜水艦を深度150メートルではるかオーストラリアの南岸にまで配置すれば、ソ連の攻撃型潜水艦の航続距離を越えたところから、ソ連へ向かって恐るべき正確さで核ミサイルを撃ち込めることがはっきりした。だからこそソ連はこの不利を埋めようと、SALT交渉のたびにポラリスおよびトライデント・ミサイルを条約に盛り込むよう要求していたのである。

★注:OMEGA航法は既に過去のものとなり、現在ではGPS航法に取って代わられている。
(引用終了)

理論上、電波の波長が長くなればなるほど減衰しにくくなり、水中深くまで届く。そこで冷戦下の米・ソで技術開発競争が進み、その後ELF(極極超長波)での通信が可能になった。ELFは周波数帯が3Hz ~ 30Hzで、波長はなんと10000km~1000kmにもなる。 ELF(極極超長波)による電波は水深100M以上にも届くとされ、水中だけでなく地中深くにも到達するため軍事地下施設との通信にも利用されている。

ELF波といえば聞き覚えのある名称ではなかろうか。地球が発する周波数、シューマン共振と同じ帯域である。そして天才学者二コラ・テスラは、ELF波を使用し、地面を媒介として膨大なエネルギーを送信する理論を提唱した。

続く



●『300人委員会 バビロンの淫婦』

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