浅野和三郎は前回ご紹介した講演の中でイギリスの古典文学者で詩人のフレデリック・マイヤース(1841~1901)の通信から祈りに関するマイヤースの言葉を引用している。
マイヤースは生前、自分の死後、霊界から通信を行うことを公言していた。死後30数年の後に霊界から送られてきた彼のメッセージをまとめたものが『永遠の大道』『個人的存在の彼方』である。マイヤースはこのメッセージの中で『類魂説』を紹介し、スピリチュアリズムの生命哲学に飛躍的な発展に貢献したことで有名である。『類魂』については後日ご紹介したい。
●マイヤースの通信から
日本人の心のふるさと《かんあがら》と近代の霊魂学《スピリチュアリズム》
近藤千雄(著)星雲社 より引用掲載。
(引用開始)
それゆえ、祈りの行為に入る時は神の国に入ろうとしていることを忘れてはならない。即ち、ちまちまとした日常の煩悩の世界から無限の世界へと入るのである。永遠の生命と一体となろうとするのであり、従って純真で一途な目的を持ち、疑念や恐怖心や不信、その他もろもろの地上的煩悩を捨て去らねばならない。なぜなら、そうしたものが神の国への門を閉ざすからである。
神へ近づく道について本格的に書けば一冊の書物になるであろう。しかしいかなる祈りにせよ、祈る場所によって神聖化されるものではないことを知っていただきたい。寺院、教会、大聖堂、こうした場所は大霊との交わりを得ようとするその心を正しく導く上では効果があるかも知れないが、世界から隔絶した山中でも、小我から脱する為の条件は同じである。要するに恐怖心、不信感、利己心、怒り、妬みといった煩悩を振り落としさえすればよい。こうした雑念は小鳥を捕らえる罠のようなもので、祈りの翼をもぎ取ってしまう。
カモメを思い浮かべていただきたい。断崖絶壁にある巣を飛び立って大地を離れると、海の上を素早くそして雄大に飛翔し、気流に乗って高く高く舞い上がって行く。人間が祈る時は、このカモメのように魂を世俗から断絶して飛翔させ、創造の大霊を求めて上昇しなくてはならない。
私の説くところは完璧を要求しているかに思えるかもしれない。が、各自それぞれに分相応の努力をすればよい。各自の知性ならびに情的本性に応じて、私が述べたことを人生に応用していただきたい。ただし一つだけ共通して言えることは、口にする祈りの言葉の背後に確信と誠意がなくてはならないことである。(中略)
そういう次第であるから、年齢を重ね、青年期から中年期へと至り、煩わしいことや複雑な人間関係でがんじがらめになった中で祈る時は、より慎重に自己を見つめ直し、神に向かって自分の願い、あるいは他人のための願いを申し述べることは取りも直さず神の聖域に足を踏み入れることであることを忘れないでいただきたい。
(引用終了)
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