青森駅から八戸に向かう電車の中、私はスマホで三陸方面の事を調べていました。
八戸線の久慈から、さらに三陸鉄道で宮古まで行くかな~。
時刻表を調べると、電車の本数が少なく、宮古や釜石の方に宿をとらなければ野宿することになりそうでしたが、どうにもこうにも宿が見つかりません。
そうこうしているうちに、八戸に着きました。
さて、このまま八戸線に乗るかどうするか、と考えるより先に、私は八戸線に乗り込んでしまいました。
動かされているな~と思いながら、いやはや、とりあえず久慈まで行くしかない。
ま、行ってから考えようと、スマホを見る目を車窓に移すと
4月の巡礼のとき、四国ではもう田植えが始まっていましたが、この辺りは今が田植えのシーズンのよう。
水が張られた水田に青空が映え、早苗ちゃんたちがお行儀よく並んでいます。
おお・・・(息を飲む)
美しい三陸の海が見えてきました。
これはやっぱしスマホとにらめっこしている場合ではない。
絶景を楽しもう。
久慈からまた八戸に戻って八戸で泊まる事にして(やっと宿がとれた)
美しい海を眺めて至福の時を過ごします。
さてしか~し!久慈に到着する直前に嫌な予感がしました。
久慈駅に近づくにつれ、この美しい海が遠ざかるのです。
これはまさか、まさか。
案の定、駅に降り立って案内板を見ると、海の方や観光スポットに行くにはタクシーを使うしかない事が判明。
ガ…ガ~~~ン!これぞ久々のずっこけ。
久慈駅周辺には、海はなく、道の駅やあまちゃんハウスのようなものしかありません。
買い物やあまちゃんにはまったく興味がなかったので、駅中をうろうろしていると
琥珀専門店があって中のおばちゃんと目があったので、冷やかしに入ってみる事にしました。
知りませんでしたが、ここ久慈は琥珀で有名なのだそう。
琥珀など高級品で手は出ませんが、販売のおばちゃんとのお話は興味深い物でした。
震災の事にも少し触れましたが、やはり海のそばで被災した方の話とは感じる物は違いました。
琥珀は、恐竜時代の樹液の化石。そう言えばジュラシックパークの恐竜は琥珀の中の蚊のDNAを、
という話になりましたが、久慈の琥珀の中にもアリが入ったものなどありました。
その頃にもアリはいたんですね。樹液の化石に混じっていたアリさんを恐竜にできるのかな。
そう言えば先日偉大なるアリさんが亡くなりましたが、関係アリません。ありがとう。
おばちゃんに、久慈に来たいきさつや、周辺に何もなくてショックだったけど、あなたとお話が出来て、久慈によい思い出が出来ました。
と伝えると、おばちゃんは(私と同年代だと思うけど)とても喜んでくれました。
地元を愛する気持ち。旅人によい思い出を持って帰って欲しいと思う気持ちが伝わって来てこちらも嬉しくなりました。
次の上り電車に乗って、八戸に戻ります。
あああ・・・でも時間と交通費(この辺安くないんだよな)だいぶ無駄にしたなあ・・・と多少の後悔が。
その時、ふと車窓を見ると、森が切れて少し開けた場所に大きくて頭の赤い、美しい鳥が歩いているのが見えました。
あ!あれは確か雄の雉だ!!
初めて見た雉に感動し、ああ、久慈まできた甲斐があったと、納得させるきじ、じゃなく、つる。
幼い頃、親が「雉は滅多に人に姿を見せない」と言っていたのを思い出し
あの雉も、まさか電車からみられているとは思わなかったろうな、と思いつつ、きじにするべーと考えつつ、まわりに犬やサルはいないかな、と目を皿にするつる。
再び見えてきた三陸の海の果てを見ていると・・・
あれ?最近近くも遠くもよく見えなくって来た目をこすります。
写真では分かりにくいので本当に残念なんですが。水平線の上の雲の隣が虹色になっているのです。
この写真では左側の雲の右端の方です。見やすくしようと加工してみたのですがこれ以上は無理でした。
太陽は反対側にありますが、虹とも違うようだし、太陽の近くに出る彩雲ではありません。
アークと呼ばれる現象も太陽の方向に現れると書いてあります。
この時太陽はすでに反対側の西に傾き始めていたように思うのですが。
この写真では、右半分の中央辺りです。みえませんか?みえませんかね~。
調べた限りでは環水平アークというものに一番近いのですが、
明らかにならない方が夢があるかな、とも思いました。
ため息が出るほどの美しい海の果てに、美しい虹の光景を眺めながらの旅。
この虹色の空と、綺麗な雄の雉。
無駄に思えたこの時間が、輝く宝物になりました。
ものは考えようだ。何でも都合のよいようにとらえよう(笑)
この日は無理に東京に戻る事を諦めて、途中スマホでホテルを予約しましたがスマホを見ている時間が長くなってしまい、次からはやっぱし色々調べて泊まるところも確保してから旅に出ようと、この旅2つ目の学び。
車窓の、何か素敵な物を見落としてしまうかも知れないし。
スマホはいざという時だけのツール。旅中はネットから離れて過ごそう。
この日は、八戸手前の本八戸という駅のホテルに宿泊。
この町は面白い取り組みをしていて、地元の方の町への愛が伝わる場所でした。
詳しい事は長くなるので、機会があれば書きます。
地方の取り組みは、私にとって興味深い物なんです。将来のためにも。
さて、酒の飲めない私も、ホテル近くにあったこんなところに興味津津で
かつての酒のみの血が騒ぎ、屋台村の一件に入ってみました。
ノンアルコールビールと、もうマグロは食べたので
イカのさしみと青森ニンニクの丸あげ、それから牛タンをとりあえず注文。
頼むものはまさに酒飲みのおつまみ(笑)
おススメは〆ていない鯖のお刺身と言われたのですが、疑っている訳じゃないけど胃腸に自信がなかったので控える事にしました。
青森の丼ぶり屋さんでもそうでしたが、地元の人と話せるのが小さなお店のよいところだといい気分でノンアルコールビールをぐびっとし、秋田出身だというお店のおばちゃんと話していると、
まだ5時過ぎなのにぐでんぐでんに酔っぱらったおじさんが乱入してきました。
カウンターの一番端に座って、幸せな時間を過ごしている私に、おじさんが顔を近づけてきて
「おねえさん、一緒に飲みましょう」と言ってきたので
「(おねえさんじゃないし)すいませんが一人で飲みたいのでお断りします」ときっぱり。
一瞬お店の中に緊張感が走り、おじさんが言葉を失って、お店屋さんのおばちゃん二人とアルバイトの女の子一人も、私の対応に驚いたようでした。
以前なら気を遣って言葉を濁したかもしれませんが、せっかくの一人旅。
昼間から酔っぱらっているおじさんのせいで台無しにしたくなかったのです。
帽子をかぶったままの私に、「顔をみせろ」と言いよってくるおじさん。
「いやです」と断るワタシ。(おばさんだし・・・(笑))
酔っ払いに慣れているおばちゃんたちがいたから、このような態度が出来たかも知れませんが、私自身、自分にもこういう事が言えたんだ、と驚きました。
時と場合、相手にもよりますが、やっとNOと言える日本人になれたかな、と思いました。
お店のおばちゃんたちは、私に気を遣って何度も謝ってくださったのですが
いやいや、おばちゃんのせいじゃないです。
一人というのはこんな時にちょっと困る。声かけられたくて一人でいるわけじゃないし。
実はこのおじさん、私が来る前に一度入ろうとして断ったのだそうですが、また来て入り込んだようです。
何故かティッシュの箱を持参したおじさんは、さんざん訳分からない事をしゃべった後間もなく出て行ったのですが、
ティッシュを忘れた事を思い出したか、また舞い戻ってきました。
勘弁してよ・・・。
なんとなく興ざめして、ノンアルビール一杯でお店を後にしました。
お料理は美味しかったです。御馳走様でした。もうちょっとおばちゃんと話したかったな。
ホテルに戻り、さて明日はどうしようかと、ベッドでスマホに見入ります。
もう一ヶ所行きたいところはあったのですが、アクセスが大変そうで、下手するともう一泊することになりそうだったの
で、結局欲張らないで明日は帰るだけにしようと決めて眠りにつきました。
恐山と青龍寺、そして素晴らしい三陸の海で今回はもう十分。
しかし、つる姫人生一番の激セマホテル。隣の音がうるさくて寝た気がしないまま朝を迎えました。
海はいいなあ~~、でもつる姫はやっぱし山が好き。
海に憧れた山猿もやがては山に帰る。
つづく
感謝 合掌
つる姫
後で知ったのですが、この日遠く離れた東京で環水平アークが観測されたそうです。
場所は違いますが、この時期は見えやすいのだそうで、やはりあれはアークだったのかな。
いずれにせよ、三陸の海の上の虹色の空は忘れる事の出来ない思い出の一つ。