岡本綺堂の
「番町皿屋敷」
配役
青山播磨 中村隼人
腰元お菊 中村種之助
放駒四朗兵衛 中村橋之助
腰元お仙 中村鶴松
用人柴田十太夫 大谷桂三
奴権次 中村蝶十郎
後室真弓 中村錦之介
怪談ではなく
男女の悲恋のお話でした
時代が移り
手討ちこそなくなりましたが
男女の恋愛模様はいつの時代も変わらないもの
歌舞伎初心者でもわかりやすくて
深い心理描写に
感情移入しながら見てしまいました
※ネタバレありなのでご注意を
旗本の青山播磨に腰元として使えるお菊は
播磨との秘めた身分違いの恋に
いつも気を揉んでいます
信じて待つように言われ
播磨が嘘をつくような人柄ではないと知りながらも
縁談話の噂に
もしかしたら自分は捨てられてしまうのではないかと
不安でたまりません
猜疑心は大きくなるばかりで
激情を抑えきれなくなったお菊は
謝って傷つけようものならお手討ちになってしまうほど大切な家宝の皿を
わざと割って
播磨の気持ちを確かめてみたいという思いが強くなります
播磨の気持ちが本物ならば
許してくれるはず・・・
何度も迷いながらも
とうとう皿を割ってしまい
騒ぎになりますが
粗相であろう?
と播磨はあっさり許し
お菊の涙がうれし涙に変わります
さらには
この機会に
2人の関係を公にして
お菊の母を屋敷に呼んで一緒に暮らそうと
一気にプロポーズ?
とても甘いムードが漂い
ホッとしたのもつかの間
腰元のお仙が
お菊がわざと皿を割るところを見ており
それを知った十太夫がとんできて
再び騒ぎに
播磨はそれでもなお
何かの間違いだろうとお菊をかばい
ふたりきりになって
話をきこうとします
最初は笑顔の播磨でしたが
観念したお菊から
真実が告げられると
空気が一変!
女遊びもせず
女性からのお酌でさえ断って
毎晩屋敷に戻り
男の真(まこと)を尽くしていたのは
お菊を愛すればこそ
なぜ裏切った!と
激しく落胆すると同時に
激高します
可愛さ余って憎さ百倍?
心から愛するがゆえに
許すことができないと
お菊を手討ちにしてしまいます(涙)
種之助さんのお菊
播磨の気持ちを疑って
いつもどこか上の空?
落ち着きがなかったのに
手討ちを覚悟したとたん
正気をとりもどしたように
肝をすえて
乱れた髪をそっと直すのですが
その仕草、横顔が
ハッとすくるらいなまめかしくて
綺麗でした
播磨の刀が振り下ろされた瞬間
本心を確かめるという本望が叶った喜びからなのか?
これで女のサガから逃れられるという安堵からなのか?
なんともいえない幸せな表情になったのが
とても印象的で
同時に
可哀そうで可哀そうで
もう
涙、涙
播磨は
優しくて純粋な男ですが
皿が惜しくて大切な命を奪うような小さな男ではない
と皿を次々に割ってみせたり
仲間とつるんで喧嘩に明け暮れるくせに
おばさまに頭があがらなかったり
裏を返せば
気が小さくて優柔不断で子供っぽい!
そんな危うい播磨が
悲しみと怒りにまかせ
自らの手でお菊を手討ちにしておきながら
「播磨が一生の恋も滅びた」と
絶望の涙を流すのを見ると
こんどは
播磨が哀れで可哀そうになって
これまた
涙、涙
自ら命じてお菊の亡骸が投げ込まれた井戸に
片足をかけて
のぞきこんだかと思うと
くらっとよろける場面
端正で清潔感あふれる隼人さんだからこそ
落差が大きくて
狂気が際立って
よけい胸を締めつけられました
ところで
先日Wowowで
ミュージカル「ミス・サイゴン」
25周年記念のロンドン公演を収録した映画が放送されました
ベトナム戦争末期、ベトナムの少女とアメリカ兵の悲恋の物語で
サントラはフィギュアスケートのプログロムで馴染みが深く
歌唱力も演技力も音楽も素晴らしくて
ロングランも納得の感動のストーリーでしたが
ん十年前に
「オペラ座の怪人」を劇場で観て以来
あまりにもひさしぶりの本格的ミュージカル!
音が次から次に押し寄せてくるようで
すこしだけ疲れてしまいました
※あくまでも個人の感想です、ファンの方ごめんなさい!
CS衛星劇場特選歌舞伎で
ほんのすこし慣れ親しんだ程度ですが
台詞まわしとか
浄瑠璃とか唄とか三味線とか効果音とか
歌舞伎のあらゆる音が
もちろんビジュアルもですが
とても心地よく感じる今日この頃です