付記2c: 癌になった犬
東宮御所の一室に監禁されていた私は、隙を見ては何度か、廊下への逃走を試みた。しかし、私が椅子から離れるたびに、長テーブルの向う側から、皇太子妃雅子が薬剤銃で撃って来た。一度は、どうにか
付記2d: 鳥の玩具
その子供が両腕で抱えている物が何であるのか・・・ しばらくの間、判らなかった。正殿は広く、照明が暗いので、子供の影に半分隠れた瓢箪(ひょうたん)のような形は、動物を模倣した玩具か...
付記3a: 試し撃ち
この日は天皇に拝謁するというので振袖を着せられた私は、衣がたっぷりと重なった袂を揺らして、「兎みたいだ」と上機嫌だった。それを、案内役の侍従が、裕仁がいる部屋へ連れて入ると、私の
付記3b: 結核の話
皇太子明仁と、何度か「お茶の時間」を伴にしたことがある。明仁は閉塞的な御所での楽しみの一つとして「食事」を考えていたようで、幼児との退屈な時間を、エスカルゴやキャビアといった当時...
付記3c: 自白剤
「どうなっても、知らないよ」と、皇太子明仁が言った。濃いネズミ色の背広を着て、まるで郵便局の窓口で小銭でも数えていそうなこの小男と、その傍らに立っている明仁の倍以上の体躯である武...
付記4a: 北方領土
就学前に、侍従と護衛官を付けられて、海外へあちこち連れて行かれた中、「北方領土」へ行ったことがある。しかし、行ったことがあると自慢げに言うのも実は複雑な心持で、幼児の私にはどの辺...
付記4b: 頭が良くなる薬
四歳にして、すでに女官候補に挙がった。何のことはない、「倭国王の宝物」を所有する源氏の血統である私を、一生、宮内庁で管理しようというのだ。お妃教育ならぬ女官教育の「いろは」として
付記4c: ダイヤモンド、見たいでしょう?
皇居では、大抵、来客用の休憩室に通された。ちょっと高級なホテルの一室といった風で、二十畳くらいある寝室の右側の壁に作り付けの衣装箪笥があってその奥のドアを開けると、化粧室、またさ
付記4d: 跳ぶンだ!
アメリカの軍用機の中は暗かった。私たち幼児は(全員が皇室関係者の子供だったが)、飛行機が離陸すると、数分も経たないうちに座席から立たされて、乗降口辺りへ連れて行かれた。
付記5a: おや、まだ居たのかい?
「また、来ると言うんだが・・・」 曾祖父が重苦しい口調で呟いた。つい数日前に、皇太子妃美智子さんが結婚の挨拶に来たばかりである。一般人と同様、親戚になる家や関係者の
付記5b: 宿直/ 妾について
神官が厭なら、女官はどうか、という宮内庁職員のいい加減な発言で、七歳頃だったろうか、数日間、後宮へ放り込まれたことがある。女官たちと同じ、丈の長い内掛けを着せられて